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WILL second 1

 

 

 静かなノックの音に、我愛羅は顔をあげる。

「入るぞ」

 カンクロウはいつものように声をかけた。部屋の中の机には、いくつもの書類を前にした我愛羅一人しかいない。我愛羅は、カンクロウの後に見慣れた顔を見つけて、思わず立ち上がった。

「オッス!」

 出会った頃と変わらない笑顔。それを見てなんだかホッとしてしまう。

「悪いな、わざわざ来て貰って」

「我愛羅は風影なんだから、しょうがないってばよ。オレのが身軽だしさ。それよかあんま早く来れなくて、悪かったってばよ」

「お前にも任務があるんだろう…それに」

「ん。色々と…あるからな」

「悪いが、待っててくれ。後、少しで終わる」

 カンクロウは穏やかな顔付きの弟をみて笑顔になる。このところ忙しく外出はもってのほか、執務に明け暮れる毎日だった。少しでも気休めになればと、木の葉からナルトを呼んだのは正解だった。

「ナルト、なんか飲むか?」

「そ〜だなぁ。オレはなんでもいいんだけど…」

「じゃあ、適当に持ってくる。我愛羅も何か飲むだろう?」

 我愛羅は書類に顔をむけたまま、「ああ」とだけ返事をする。余程ナルトの来訪が嬉しいのだろう。いつもよりも少しだけ顔色がいい。

 執務室に置いてある植物に興味を示したナルトは、その葉っぱを触りながらにこにこと笑っている。そんな二人を見つめたカンクロウは静かに執務室の扉を閉めた。

 

 

 

「なにが面白いんだ?」

 ナルトは大きな葉っぱを四方八方から眺めながら、ぶつぶつと独り言を言っていた。

「悪りぃ、うるせーよな」

「いや…別にうるさくなどない。…ただ興味を持っただけだ」

 一通り目を通した書類に印を押した我愛羅は、ナルトに視線を向けた。

「この部屋にある植物、木の葉じゃ見た事ねぇなって思ってよ。葉っぱの形もおもしれえし」

「砂隠れの里でしか育たない植物だ」

「へぇ…そうなんだ」

「少ない水でも育つ、貴重な植物で年に一回だけ花をつける」

「すっげぇな。その花、オレも見てみたいってばよ」

「……そうか、それはもう花をつけたばかりで」

 我愛羅は少しだけ寂しそうに笑う。ナルトは、にししと笑いながら立ち上がった。

「そんな顔するなって!じゃあ、また見に来たらいい話だろ?」

「…見に、来るのか?」

 我愛羅は驚いたように顔を上げる。

「ん。いいだろ?また来ても」

「ああ」

 嬉しそうに笑った我愛羅を見て、ナルトもホッとした笑顔を見せた。

「なぁなぁ、これってどうやって作ってんの?」

 ナルトは机の上に置かれた硝子の器を手にした。色のついた砂が何層にもなって、模様を作っている。砂隠れの里では珍しいものではないが、ナルトにしたら初めて目にするものなんだろう。

「中に入っているのは砂だ。少しずつ色のついた砂を入れてこうやって模様を作る」

「へぇ、コレ…風影って模様になってる」

「アカデミー生がくれた」

「我愛羅、いい風影やってんだな!オレも早く火影になってお前に追いついてやるからよ。待ってろってば!」

 いつも向けてくれる、変わらない笑顔。我愛羅はその顔を見られる事が嬉しい。最初から、自分を認めようとしてくれたナルト。彼に関わって、初めて自分を化け物意外のものだと言うことに気付かされた。そう思おうと、自分でない他人を愛そうと思えるようになったのだ。

「でも、ほんとにオレが来ても良かったのか?」

「どうしてだ?」

「我愛羅の邪魔になるんじゃねぇかって、ホラ…今も仕事忙しそうだし…」

「それは…」

「心配することないじゃん」

 ナルトと我愛羅の前に、湯気のたつ湯のみが現れる。

「我愛羅はナルトのいる間は、仕事も休みってことになってる」

「カンクロウ!」

 驚いたのは我愛羅だ。そんな話はひとつも聞いていない。

「へ〜!そうなんだ。じゃあ、久々に我愛羅とゆっくり話ができるってばよ。サ〜ンキュ、カンクロウ」

「カンクロウ…」

 カンクロウはにやりと笑うと、我愛羅の肩をポンと叩いた。

「大丈夫だ、兄ちゃんからのプレゼント」

「ぁ…ありがとう」

 カンクロウは照れたように鼻の頭を撫ぜる。我愛羅が変わるきっかけを作ったのは、うずまきナルトだ。そんなナルトに我愛羅が惹かれる気持ちは分かる。だから、不器用な弟が少しでも喜ぶ事をしてやりたい。風影になった我愛羅に、今の自分がしてやれる事は少ないのだから。

「カンクロウ、仕事が終わるまでナルトの相手をしてやってくれないか。ナルトもこんな部屋に閉じこもっているのは退屈だと思う」

「え?」

「ナルト、まだ時間がかかる。カンクロウと…」

「いいってばよ〜!カンクロウだって色々とあんだろうし。オレは待つのは平気だって。やっぱ、我愛羅は誰か居ると集中できないってば?」

 後半は我愛羅の事を気遣った言葉にかわる。我愛羅は首を振った。

「違う。せっかく、砂隠れの里に来たのに…ナルトを退屈させたくない」

「退屈じゃないってばよ。我愛羅は気にしすぎだってば」

 我愛羅の人間臭い一面を見たカンクロウは嬉しくなる。兄である自分やテマリ相手とはまた違う一面が見られることが嬉しいのだ。

「まぁ、ナルトは茶でも飲んでのんびりしてろよ。我愛羅ももう少しでキリが付きそうなんだろ?」

「いや…でも」

 ナルトが居てくれるだけでも嬉しい。だけれど、彼に退屈な思いをさせたくはない。そんな気持ちが交差する。

「気にすんなってばよ!」

 ナルトの一言で、事は決まってしまった。さっさとカンクロウは退散し、我愛羅は執務の為に椅子に座る。そこから見える金色の頭がふわふわ揺れているのを見て、なぜか優しい気持ちになった。

 

 

 

 

 

 時が遡る事、1か月前。

 砂隠れの里の上忍であるテマリが、木の葉を訪れた。だが、彼女が真っ先に向かったのは、火影である綱手の所ではなく、うずまきナルトの所だった。

「やはり、ここにいたのか?」

 一楽の暖簾から顔を出した気の強い美人を、ナルトは麺をすすったまま振り返る。

「あっれ〜?テマリの姉ちゃん!」

 カウンター席に座ると、ナルトの顔を覗きこむ。

「元気そうだな?」

「うん、ま。元気だってばよ!それより、どうしたんだってば?」

 テマリは少し考えたようにしながら、出された水を口に含む。

「店主、悪いが食事は改めて来させてもらう」

「ラーメン食わねえの?」

「ああ、タイミング悪く食事をすませてしまったものでな。ところで、この後、時間はあるか?」

 にこやかな笑顔を向けられてナルトは不思議顔のまま頷いたのであった。

 ナルトが買った缶ジュースを手に、公園のベンチに腰かける。テマリは肝心な話をしてくれない。ナルトはどうしたものかと迷ってしまった。

「えっと…テマリの姉ちゃん?」

「ああ、悪いな。うずまきナルト、悪いついでに砂隠れの里に来てもらえないだろうか?」

「へ?」

 突然の話の方向にナルトは間抜けな返事しかできない。

「砂隠れの里って…我愛羅に何かあったんだってば?」

「いや…ないが……あるとも言えるというか」

「煮え切らないってばよ〜」

「この話は我愛羅の姉としての頼みだ。砂隠れからの要請ではない。我愛羅は目を放すとすぐに無茶をする。休息をとりながら仕事をしろと注意しても、暖簾に腕押しだ」

 そんな我愛羅の事を思い浮かべて、きっとテマリの話は大げさなものではないのだろうと推測できた。

「そこで、ナルト…お前が我愛羅を訪ねてくれれば…」

「う〜ん…姉ちゃんの頼みは聞きたいけど、任務以外で他国に行くには綱手のばあちゃんの許しもいるし、これからの任務のこともあるし…オレだけじゃ決められないっばよ?」

 テマリはにやりと笑う。

「大義名分は考えてある。もちろん、ぬかりはない。まず先に、お前の気持ちを聞いておきたかったものでな…」

「ふうん。オレとしてはオッケーだってばよ!姉ちゃん、用事終わったら甘栗甘いかねえ?団子がめちゃくちゃうまいってばよ〜」

 満面の笑顔を向けられて、テマリも笑顔になる。ナルトには不思議な魅力がある。自分ともすぐに打ち解けて、好意を向けてくる。こんな彼の事を我愛羅は好きなのだろう。

「火影様に挨拶に行ってくる。滞在中に、一緒にいけるといいな」

 ナルトはうんうんと頷いた。我愛羅もタイプは違うにしても、こうやって甘えてくれればいいのだ。自分で何もかも抱え込んでしまう癖は直りそうにない。ナルトとの触れあいで、少しは砕けてくれればいいのだが。

 砂隠れの里の使者としての役目は、木の葉の医療術や薬草などの生育の相談だった。砂隠れの里では薬草が育ちにくい。徹底した温度や湿度の管理をしても、土地柄なにかと植物が育ちにくいのだ。それについて、綱手に指南を願い出たのである。もちろん、火影としての綱手が里を空ける訳にはいかず、その弟子であるサクラの名前が浮上した。そして、バディを組むのがナルトと言うわけだ。

 テマリの思惑通りに事が進み、ナルトとサクラは任務の合間を見て砂隠れの里へ行く事になったのである。

 

 

 

 

 我愛羅が視線をソファに向けると、一定の動きをする金髪があった。風もないのに、ふわりふわりと揺れる髪。我愛羅はそっと腰を上げると、ナルトを覗きこんだ。頭に浮かんだ通り、ナルトは船をこいでいる。木の葉の里からここまで三日はかかる。到着してすぐにここに来てくれたのだろう。疲れているのは当たり前だ。ナルトの隣に座ると、肩を貸してやる。自分の肩口に寄りかかるようにしている金の髪。木の葉を訪ねると言ってから、かなりの時間がたっている。我愛羅個人としては、ナルトの恋人がどんな奴なのか気になる。だが、風影としての職務を放り出す事も出来ない。

 我愛羅はそっと、ナルトの顎に手をかけるとその顔を覗きこんだ。すうすうと寝息を立てて眠るナルトは起きそうにもない。子供のように安心して眠るナルトが愛しい。彼に心に決めた人が居ると知り、自分の気持ちはそこで玉砕したのだが、ずっと友として居たいという事は告げてある。この気持ちはきっとずっと変わらないだろう。

 無意識の内に、ナルトの唇に自分のそれを重ねていた。それは、ほんの数秒にも満たない僅かな時間。だけれど、身体が熱くなるような不思議な感覚に襲われる。血液が顔に集まってくるのが、分かった。顎から手を外すとカクンと首が我愛羅の肩に落ちた。そっと、自分もナルトに頭に額を寄せて目を閉じた。

 トクリトクリと鳴る心臓の音が、心地よく響く。

 こんなに穏やかな時間を過ごしたのは、いつぶりだろうか。もしかしたら、初めての事かもしれない。そんな事を考えながら、我愛羅も夢の中に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ単に、我愛羅を可愛がるテマリとカンクロウが書きたかったのです。

我愛羅って、切ない片思いだよなぁ…

報われないんだもん。シカナル前提です!