house town ワーキングホリデー

 

 

 

WILL second 1   side shikanaru

 

 

 

 カップにこぽこぽとお湯を注いでいると、シカマルの不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「ナルト〜…」

 扉に寄りかかった彼は、腕を組んでナルトを見ている。ナルトは不思議な気持ちでシカマルを見つめ返した。彼を不機嫌にする理由が自分には見当たらない。お互いに任務についていたので、こうやって顔を合わせるのも久し振りなのである。

「シカマルも食うってば…?」

 ナルトは新しいカップ麺に手を伸ばす。

「まぁ…食う」

「醤油しかないけど、いいってば?味噌はこれが最後なんだってばよ」

「なんでもいいわ…」

 シカマルは呑気な会話を続けたくなくて、重い溜息をついた。それから、薬缶を手にするナルトの背中に張り付く。

「シカマル?」

 背中からぎゅうぎゅう抱きしめられて、ナルトは首を傾げる。今日のシカマルは少し変だ。そのくらいはナルトにでも分かった。

「どうしたんだってばよ?腹減った?」

「ちげーよ…」

「なんかシカマル、不機嫌そうだってばよ?」

 腹が減って不機嫌になるのは、自分だろうと言い返したいのをぐっと我慢する。その代わりにかぷりとナルトの耳朶を噛む。もちろん甘噛みなので、ナルトはくすぐったそうに身をよじっただけだ。

「ちょ…やめ…シカマル!」

 悪戯なシカマルの舌が、耳朶を舐める。ぴくんと反応したナルトがぎろりと睨みつけてきた。

「メシ食いたいってばよ〜」

「まだ三分経ってねぇだろうが…」

「すぐにたっちまうっての!」

 シカマルが腕の中でナルトの身体を回転させる。後ろから抱きつくのもいいが、向き合って抱き合うのもいい。顔を覗きこむと、恥ずかしそうにしたナルトの顔がある。シカマルは自分が不機嫌だった理由も忘れて、ナルトの唇にキスを落とした。ナルトはそれに素直に応える。久し振り会うならば、いがみ合うよりキスをした方がいい。シカマルの与えてくれる熱は、難なくナルトの思考をシカマルに向けてしまう。

「ん…」

 甘い吐息が漏れて名残惜しそうに離れた唇。シカマルはぽんぽんとナルトの頭を撫ぜる。

「用意するから、お前は座ってろ」

「ありがとだってばよ!」

 先程まで不機嫌だったシカマルの表情が柔らかくなっている。その事にすこしホッとしてしまった。理由がわからないのでは、弁解の余地もない。そんな事をシカマルがするとは思えないが、彼も人間だ。疲れていたり、嫌な事があった時は人に当たる事もあるだろうし。

 シカマルがカップ麺の中身を丼に移している。彼はいつもそうだ。味気ない食事は嫌みたいで、シカマルなりの拘りがあったりするのだ。

 テーブルについてわくわくしながら、ラーメンの到着を待つ。ナルトの目の前に器と箸が置かれた。

「いっただきますだってばよ〜」

 手を合わせると、前にシカマルが座った。ナルトは一人きりですると思っていた食事が、彼と二人になった事が単純に嬉しい。

 ずるずると麺をすすった所で、シカマルが思い出したように顔を上げた。

「お前、我愛羅に会いに行くんだってな…?」

 ラーメンを咀嚼したナルトは驚いたように目を丸くする。

「それちょっと違うってば。我愛羅に会いに行くんじゃなくて、砂隠れの里に行くんだってばよ?」

「サクラから聞いたが、木の葉の土を持って行って、あっちで薬草の生育経過を見るらしいじゃないか」

「うん、オレはサクラちゃんとバディで行動するんだって!」

 シカマルも醤油ラーメンをすする。

「お前の役って、土運ぶだけじゃねぇか?医療忍術は全くの範囲外だろ?…で、あっちでは暇を弄ぶ事になる」

「あ〜…言われてみれば、そうだってばよ。う〜ん、でもオレだけ先に帰ってくる訳にもいかねえし」

「怪しい…」

 ナルトは何も答えずに味噌ラーメンをすする。これ以上会話を続けたら、ボロが出そうだ。テマリから我愛羅に会いに来てほしいとは言われていた。もちろん、それについてはシカマルに伝えていない。変に誤解されても困るのだ。ナルトは普通に我愛羅の事が好きだし、テマリが弟を心配する気持ちも分かる。大義名分だとしても、砂が木の葉に薬学などの指南を受けたいのは本当の事だし、それに同行するのが自分になっただけだ。テマリの口ぶりからすると、最初からそのつもりで火影の元へ行ったのだろうが。

「最近、…何度か木の葉で見たな」

「なんだってばよ?」

「我愛羅の姉貴…」

 ナルトは無視して食事を再開した。過激に反応するときっとシカマルに勘繰られる。

「シカマルも早く食わねえと、のびるってばよ」

「まぁ、いいか」

 シカマルは自分の中で勝手に納得してくれたらしい。ナルトは思わずほっと息をつく。もちろんそんな些細なナルトの行動も見落とさないのがシカマルなのだが。

 両手を合わせて食事を終わらせる。食事が終われば、ナルトが茶を淹れるのだ。最近では慣れた手つきで、なかなか上達していると言えよう。シカマルの湯呑を彼の前に置くと、何も言わずに茶をすすった。ナルトからしてみれば、なぜか静かなシカマルは気味が悪い。ついさっきまでは、我愛羅の事で突っかかってきたくせに、今は静かに茶を楽しんでいる。

 テーブルにことりと湯呑が置かれた。

「さ…」

「ん?」

 ベッドに腰かけていたナルトはシカマルの掛け声に顔を上げる。彼はベストの前を肌蹴て、床に脱ぎ捨てる。ゆっくりとナルトに近づいてきたかと思うと、ナルトの手から湯呑を奪った。

「飲んだな?」

「…飲んだけど、それがどうしたってばよ?」

「こーゆうこと…」

 シカマルの指が、つんとナルトの額を押す。たったそれだけの事なのに、ナルトはベッドに仰向けに倒れてしまった。

「あれ…?」

「お前、ぼけっとしすぎなんだよ」

 シカマルの声は半分呆れていた。仰向けに寝転がったナルトの肩を押さえる。

「簡単に組み伏せられんな」

「か、簡単にって、相手がシカマルだからじゃん!」

 気を許しているというか気を抜いているというか、あまり警戒心を持っていない。

「やっぱ、危ね〜な…」

 シカマルはそう言うと、ナルトの頬にキスをした。ちゅっという音を立てて離れた唇をナルトは不思議な気持ちで目で追う。

「シカマルの言ってる事、全然分かんないってばよ…」

 まさにお手上げ状態といった所だ。

「俺の推測するところ、お前が砂隠れの里に行く事は前から決まっていた。しかも、任務として火影様から言われる前に…違うか?」

 全くその通りでナルトは言葉を失う。

「続けると、お前はそれをテマリから頼まれた。……我愛羅の相手をしてやって欲しいとか言われてな」

「…なんの、話だってばよ?」

「砂隠れが薬草の生育について火影様に指南してほしいのは本当の事だろう。だが、俺が思うにそれは大義名分……ナルトが砂に行くための」

 ナルトは素直に驚いていた。シカマルの言う事は全て当たっている。一言一句間違ってはいない。

「ごかい…ゴカイ、誤解してるってばよ!別に頼まれたから行くんじゃなくて、任務だから……」

 シカマルが目を細めてじいっとナルトを見据えた。語尾が小さくなったナルトはしゅんとしてから「ゴメン」と呟いた。別段と悪い事をしている訳ではないのに、なぜかもの凄く悪い事をしている気になってしまう。

「今のごめんは何に対して?」

「えっと…テマリの姉ちゃんに、我愛羅に会いに来てほしいって頼まれたの…ほんとだから。それ、知らないふりしたし…」

「俺を騙そうなんて、百年ぐれー早い」

「騙そうなんてしてないってばよ!」

 余分な事を言わなかっただけだ。それはシカマルに隠していることになるかもしれないが、騙すつもりは毛頭ない。

「まぁ、お前に浮気は無理だな。すぐにばれるし」

 嘘がつけない性格。ナルトの好きな所の一つである。

「我愛羅は友達だってばよ……なんで、シカマルはそうゆう取り方すんだってば?」

「そりゃ、隠されれば勘繰りもするだろ」

「う…」

「どうして恋敵のとこに喜んでいく恋人の事、楽しい気持ちで見てられるんだ?」

 ナルトはかあっと赤くなる。こんな風にストレートな言葉をもらう事は少ない。くすぐったくて、なんだか嬉しい。それが顔にでていたのか、シカマルがはぁと溜息をついた。

「にやけんな〜、真面目に言ってんだぞ」

「だって、嬉しいってばよ。なんかシカマルに好かれてるみたいじゃん」

「…十分、好きだろ、俺」

 ナルトはシカマルの首に腕を回した。ぎゅっと抱きついて、ふふふと笑う。

「シカマルは分かりにくいんだってばよ〜」

 言葉にしたらしたで、クナイを床に落とすほど驚く癖に…この変わり様は一体どうだろうか。不器用なナルトが、複数の相手と付き合えるはずもなく。それは十分に分かっているのだが、やはり黙って居られた事は腑に落ちないのだ。ちっぽけな嫉み根性だと思う。ナルトの事を全て知っておきたいという、ちっぽけな独占欲もある。

「でも、友達の為になにかできるならしたいって思うのって…悪りぃ?」

「悪くねぇ…」

 問題はその友達が、ナルトに好意を持っていることにある。ナルトの頭の中からはそれがすっぽり抜け落ちているのだろうか。少しだけ我愛羅が可愛そうになる。彼は、自分の思いが叶わない事を知っている。それでも、ナルトの友で居る事を選んだ。

「浮気したら、俺が見つけてやるから隠すなよ?」

「……いや、しないってばよ」

 ナルトは真面目な顔で頷いた。

「って言うかさ…オレってば、シカマルが浮気しても分かんねえかもしんない」

 ナルトはむうっと膨れる。

「不公平だってばよ…」

 ナルトの言葉にシカマルはくすりと笑う。浮気をする暇があるなら、こうやってナルトを構いに来ている。する気もないが、する暇もない。ナルトに、本当に自分の気持ちが伝わっているのか、かなり不安になった。

「まぁ、気をつけて行って来いよな」

「シカマルの不機嫌が直った?」

「最初から素直に言えばいいんだろ?おめえが、話をめんどくさくしてんだ」

 シカマルはナルトを抱き返す。結局は惚れた弱み…自分はナルトにたいして砂糖菓子のように甘い。シカマルはそれを自覚してしまうのであった。

 

 

こんな馬鹿な会話をした数日後、ナルトはサクラと共に木の葉を出立したのだった。

 

 

 

 

 

 

ただの、バカップルです(-“-)

かなり痛い二人だな…

なんか、ここまで相思相愛でいいのだろうか…と思うくらいの馬鹿さ加減。

シカマルのがナルトの事を好きみたいです……発覚!