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Position 6
「って事で、お前には先に報告しとくぜ!」 キバのいい加減に組み立てられた話を聞いたチョウジは「ふーん」と一言答えただけだった。その態度に拍子抜けしたのはキバである。 「お前、……怒るかと思った」 「なんで?」 「いや、だからさ。ナルトとシカマル勝手にくっ付けちまったし」 キバが申し訳なさそうにする表情にチョウジは、ぷぷっと笑う。その態度にもちろんキバはむっとしたのだが。 「キバがくっ付けたんじゃなくってさ。ナルトとシカマルの意思でくっついてんじゃないの?それって誰も文句言えないし、当人同士の事だからね」 「それが俺にも分かんねえんだわ。ナルトはシカマルの事マジで好きじゃん?俺としてはちょいからかうつもりでシカマルが“付き合う”なんて言い出したとか思ったし。その場を収めるためにとか。それと俺の手前?」 「あー……ないない。キバってシカマルの事分かってるようで分かってないんだよ」 「いちいちなんか腹立つ言い方すんなよな〜!」 本当はチョウジにシカマルとナルトの事は二人の事だから関係ないと言われて、内心ホッとしている。シカマルが友達に蔑ろな態度を取るようには思えない。だけれど、ナルトとシカマルの関係が気まずくなったときに責任を取る自信がキバにはないのだ。 学校の廊下で話す内容ではないのかもしれないが、とりあえず朝イチにはチョウジの耳には入れたかった。チョウジとシカマルとキバとナルト。小学校の頃からの付き合いだが、一番古いシカマルの友はチョウジだ。もちろんチョウジがシカマルに特別な感情を持っている訳ではないのだが、大切にしている事は知っている。 「でも、シカマルから付き合おうなんてさ……正直驚きかな」 「最初は冗談のつもりで、ほら…引っ込みつかなくなったみてーな感じじゃねのかよ」 「シカマルはそんないい加減な男じゃないって」 「そうか?」 女と付き合ってもひと月もマトモにもった試しがない。それでも何故かシカマルと付き合いたいと言う女が絶えないのも不思議だ。 「反対にそつないと思うけどね。実際ボクが付き合った彼女じゃないから本当のところはどうなんだろうってのが本音だよ……」 「ま、とりあえず耳には入れとくぜ。時間あったら、昼飯ン時に」 ホームルームを告げるチャイムにキバが慌てて隣の教室に入っていく。その背中を見つめて、チョウジは思わず吹き出してしまう。友人思いなのは人一倍のキバの事だし、本当は現状がつかめなくてやきもきしているのだろう。 「何年、シカマルやナルトとつるんでると思ってるんだよ。キバ、本当に分かってないのかなぁ……」 チョウジも視界に廊下をゆったりと歩いてくる担任教師を見つけて、さっと自分の席へ戻った。教室の中に入ると、自然とシカマルに視線を向けている。いつもの如く、机に突っ伏して寝ていた。変わらない彼の前の席が自分の席でもある。 「おはよ、シカマル。今日は早かったんだね」 特に決めていないが、毎日のように駅近くでなんとなく落ち合って一緒に登校する事が多かったりする。シカマルが居なかった理由が、キバの話を聞いて繋がった……ような気がした。 「おはよーさん」 大きな欠伸をしながら身体を起こした彼は、まだ眠たそうだ。 「ナルトと付き合う事になったんだって?」 「早えーな…」 「こうゆう事はすぐに人の噂になるってもんじゃない?」 「嘘つけ。キバだな?あいつって、結構お喋り」 チョウジはにやりと笑うシカマルにいつもの彼らしさを垣間見る。全てが彼の計略の一つなのではないかと思えてしまうし、多分そうなのだろう。 「キバはちょっと心配してんだよ。シカマルがどんな気持ちでナルトと付き合おうとか行ったのか謀り損ねてる。付き合いが長いくせに抜けてるのはナルトと同じレベルなんだよ」 「それで? お前には全部分かってるって事か?」 「まさか!全部なんて分からないけど、シカマルの考えそうな事とかは“少しだけ”想像がつくとこもあるよ。だから、キバやナルトよりは分かってるのかもね」 シカマルにはきっぱりと言葉にするチョウジが、事の全貌を見抜いているんだろうと推測する。核心には近づいていないにしても、すぐに答えを見つけてしまうのだろう。 「付き合いが長いってのも考えもんだな〜。隠し事もできやしねえよ」 「シカマルは隠そうとなんて、してたっけ?知らなかったよ」 のんびりと大らかな性格の持ち主である事は確かなのだけれど、チョウジはシカマルとは違った意味で観察眼が鋭い。シカマルはそれ以上、余分な事は話そうとしない。大きな欠伸をもう一度すると、再び机に突っ伏してしまった。 キバには時間があったらなどと言ってみたが、さっそくナルトをからかうために昼休みは隣のクラスへ押しかけようとチョウジは考えていた。
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赤信号の横断歩道。 信号待ちをしながら、気が重たい。幼馴染である友人たちの前で、シカマルとどんな顔をして会えばいいいのか躊躇してしまう。そんな自分の気持ちを知ってか知らずか、隣を歩くキバはいつもと変わりない。 「ナルト、寄ってくだろ?」 キバの指差すのは放課後のたまり場になっているファーストフード店。 「あ…うん、どうしよっかな……」 「なんだよ、もうシカマルと喧嘩とかしてんじゃねえだろうな〜」 からかうキバの言葉にナルトの反論が一瞬遅れた。 「おいおい、マジかよ?……冗談だぜ?」 その一瞬をどう取ったのかキバの表情も険しくなって、ナルトは慌てて首を振る。 「ち、違うってばよ。一昨日もシカマルと遊び行ったし!今朝だって、なんとなく一緒に登校したし……普通だってばよ」 「そっかよ」 「う…ウン」 微妙な間にナルトはこくこくと頷く。最近は自分の気持ちも含めて分からない事だらけで困惑気味なのだ。 「なぁ、ナルト〜」 「なんだってばよ」 青に変わった信号に、人波が動く。その間を縫いながら歩く二人は視線を合わせないまま会話を続ける。神妙に聞こえるキバの声色にナルトは少しだけ緊張していた。 「お前さ、」 「だから、なんだってばよ」 信号を渡り切って、二人の歩みが止まった。キバとナルトの間をすり抜ける人間。そこで改めてナルトとキバの視線がぱちりと合う。 「お前ってシカマルの事、好きなんだよな?」 「なっなっ何…いきなり…!!」 ナルトは熱が顔に集まってくる感覚に冷や汗がどっと噴き出した。 「好きだって言ったよな?」 「………――――――― うん」 「特別な感情の、恋愛的なソレっつーやつだよな?」 「恥ずかしいから、あんま真剣に確かめんなってばよ」 「悪りぃ。なんとなく、お前らって本当はどんな関係なのかなとか考えちまってよ」 尋常でないくらい慌てるナルトの照れた顔を見て、愚問だったとキバは感じる。いつもグチグチ聞かされていたが、ナルトの気持ちが真っ直ぐにシカマルへ向かっている事は確かなようだ。 「キバ」 まだ赤い顔にしかめっ面。キツイ眼差しを向けられてキバは目の前に片手を立てる。 「だから、悪りぃって」 「あのさ、正直……シカマルが何考えてんのかオレも分からねえってか、自分が受け入れられるとか考えた事なかったから、驚いててびっくりしてて、ずっとドキドキしてて。んで、怖くなるってばよ。オレはシカマルの事好きだけど、だから付き合いたかったとかなのかって……今となっちゃよく分かんねえ」 ナルトがふっと笑う。らしくないその笑みにキバの胸がチクリと痛んだ。 「付き合ってんだろ?お前ら……」 「正直、オレもよく分かってねえって言ってんじゃん!」 「おいおい、当人がソレかよ」 「だって、キバ……よく考えてみろってばよ。シカマルは別に男が好きとかそうゆうんじゃねえし。それなのに、オレと付き合うとか言って……ま、そうなんだけど。オレからしてみたら嬉しくってたまらねえけど、いまいちシカマルの事は何考えてんのか分かんねえんだって。だから、いつこれは冗談だって笑われるか、オレってば怖いんだと思う」 「お前だって、男が好きとかじゃねえだろ?」 ナルトの正直な気持ちは素直に喜べないと言った所だ。上手く言葉にして表現することはできない。ありがたい事にキバもナルトと似たようなタイプで感性で通じてしまう節がある。だから歯痒いようなナルトの気持ちも、なんとなくの雰囲気で感じ取る事が出来た。 「……とにかく、寄るか?昼メシん時にチョウジが牽制に来たじゃん」 「牽制? そうだっけ……」 「お前、マジで抜けてんよな〜。夕方は久々に一緒に、みてーな事言ってたじゃん。あいつらのクラスのが先にホームルーム終わってたし、普通に考えて居るだろ?今さら、なんか行かない訳にもいかねえ感じ」 キバなりに気を使っているのだろうか。仲のいい仲間内で、しかも男同士でくっついて付き合うなんて事は、周りもはた迷惑なのかもしれない。 「なんか、ごめんな。キバにも余分な気ぃ回させちまって」 キバはひょいっと肩をすくめる。 「うじうじ愚痴られるよりマシっつーか……」 かなり驚愕の展開なのだが、ナルトが“好きな人”と付き合えることになって良かったと思っている。この際、男同志で幼馴染で仲良しさんな事は度外視だ。 「お前とは付き合い長げーし、気にすんなよ。借りはいつか返してもらうしな」 にししっと笑うとナルトが笑顔になった。 予想通りと言うか、なんとなくの口約束通りなのか、やっぱりいつもの場所に彼らはいた。キバやナルトを見つけたチョウジが軽く手を振っている。 「遅かったね〜」 にこにこ顔のチョウジの隣に腰を下ろしたキバは、突っ立ったままのナルトを見上げて首を傾げた。 「ナルト?どうしたんだよ」 「なんでもねえってばよ」 トレーを持ったままのナルトは少しだけ視線を泳がせた。トレーをテーブルの上に置いてから座ろうとして声がかかる。 「お前はココだろ?」 「シカマル……」 シカマルとチョウジは向き合うようにテーブルを挟んで座っていた。チョウジの隣1つ開けてキバは座ったのだ。そこでナルトは考えてしまった。こうゆう場合はどうしたらいいのだろうと。深く考える事はなかったのかもしれない。普通に空いていて座りやすい席に腰を下ろせばいいのかもしれない。だけれど、その場所がシカマルの隣であったとしても、二人が付き合っていると知っている友人の前で彼の隣に座りたくなかった。 「別に遠慮すんなって」 にやりと笑ったキバの顔にナルトはぎろりと彼を睨みつける。 「してないって!!」 「そっか?」 からかうキバを無視してシカマルの隣に素早く座る。色々と考えすぎることが邪推に繋がってしまう。ナルトは気まずい気持ちのままシェイクを口にした。 「甘い匂い」 「なにが?」 「シェイク。バニラ?」 「ストロベリー。チョコにしようか迷ったんだけど」 自分の顔を覗きこむようにしてきたシカマルにドキドキする。する方がおかしいのかもしれないが、こうやって至近距離でシカマルを感じるとひどく緊張してしまうのだ。シカマルはそんなナルトの事を楽しんでいる風ではあるけれど、チョウジやキバに不愉快な思いをさせてしまうのではないかと無意識に顔を反らしてしまった。 「一口、ちょうだい」 「へ…?シカマルってシェイク飲んだっけ?」 声を掛けられて、思わず視線をシカマルに戻した。ナルトの手からシェイクがシカマルの手へ移っていく。ナルトは不思議な気持ちのまま、流れるようなその仕草を見つめてしまった。ストローに口を付けたシカマルがナルトを見て、口角を上げた気がする。にやりと笑ったようだと。 「やっぱ、めちゃ甘めぇ」 「シカマルって甘いのあんま好きじゃねえじゃん?」 小さな頃は一緒にバニラのアイスクリームも食べていた記憶がある。当たり付のバニラアイスで、当たりを引く為に必死になって食べていたような覚えがあるのだ。 「間接キス、みてーな?」 シカマルの科白にナルトは固まってしまった。ついこの間、同じことをサイに言われてからかわれたのだが、ここまで動揺はなかったはずである。ただ、バカな事言ってんじゃねえくらいには思ったけれど。固まったままの思考と身体。急に顔も身体もかあっと熱くなる。 「おいおい、シカマル。ナルトからかうんじゃねえよ」 「キバ、これは十分に遊んでるって感じだよね。ボクはシカマルから、誇示された気分なんだけど?」 「はあ?難しい言葉使うなよ」 ナルトは気持ちだけはオロオロとしてしまう。キバとチョウジが会話しているのは分かるのに、その内容が上手く理解できない。 「ん〜〜〜…、雄特有のなんていうのかな?」 「オス?なんか動物くせー」 「人間は立派な動物だって」 「んで?」 「見せつけられた、って感じ?目の前でマーキングを見せつけられたみたいな」 チョウジの言葉にナルトはひどく狼狽する。シカマルとの仲を見せびらかすつもりもないし、友人は友人でそれ以外のものではなく、特別にシカマルを自分の物だと見せつけるつもりも毛頭ない。 「そ……ち、ちっ違うっ」 慌てて出た声は上ずっていて、顔を見合わせたチョウジとキバに吹き出されてしまった。 「笑うなってばよっ!!」 変わるのは嫌だし怖い。沢山の友達ができたけれど、この四人は特別なのだ。小学校からの付き合いというのもあるかもしれないが、長さだけの問題でなくずっと仲良くしていたい。 「おいおい、ナルト。なに怒ってんだよ」 キバの困ったような声にナルトは首を振った。 「違う。悪りぃ…… ――――――― 帰る」 神妙な顔つきになったナルトは立ち上がると脱兎のごとく駆け出した。キバやチョウジが何か言ったのが聞こえたかもしれないが、それも右から左だ。階段を下りて、駅までの道を全力疾走。 息が切れて苦しかった。そして、気が付いてしまった。一番先に四人の均衡を崩したのは自分なのだ。シカマルを好きになって、彼の一番になりたいと思って。友人のラインを超えた。それを受け入れてくれたのがキバやチョウジなのだし、悪いのは自分なのだと気が付かされた気がした。 むっとする空気の中で胸が苦しいと感じたのは、全速力で走ったからじゃない事にも気が付いてしまった。
取り残された三人はナルトのいきなりの行動に驚きを隠せない。 「ったく……しゃーねえな。俺は行くぜ?」 立ち上がろうとしたシカマルにキバがちろっと視線を向ける。これ見よがしな視線にシカマルも反応した。まるで喧嘩を売るような視線に答えない訳には行かない。 「…ンだよ? なんか、文句アリマスみたいな感じ?」 「違う。確かめてーってか……シカマル」 「俺、、急いでんだぜ?これでも。早めに済ませろって」 ふざけたようなシカマルの言い回しの中にも、彼の焦燥が珍しく感じられる気がする。強ち、シカマルの科白も嘘でないような気がした。 「お前さ……ナルトの事、真剣か?」 逐一報告して欲しいわけではない。お互いに子供だけれど、子供でない。シカマルが至極プライベートな事を吹聴する性格でない事も知っている。でも、ナルト自身が一番持て余している感情にキバなりに責任みたいなものを感じてしまっていたのだ。 「キバ。お前も、俺とは付き合い長いだろ?」 「……だな」 「ならよ、ンな当たり前な事聞くなって。バーカ」 皮肉っぽい笑みを浮かべたシカマルは脇にあったカバンを掴むと、ゆったりとキバとチョウジに背中を向けた。 素知らぬ顔でいたチョウジがキバの脇を肘で突く。 「ナルトとシカマルのトレー、片付けるのキバだからね……全く、シカマルってばらしくなく怒ってたよ。あの質問…… ケッコー堪えるよねぇ」 「痛い腹探られてんだろ?」 キバの一言はストレートだから、キツイのだ。チョウジはくすりと笑った。 「いいんだって。結局のとこはさ、当人同士だって言ったでしょ?外野がどうこう言ってもね、どうにもならないし。シカマルがどんなに狡くても、それを受け入れてんのもナルトなんだよ」 ナルトが残しって行ったストロベリーシェイク。きっと溶けてしまっているそれから甘い香りが漂ってきたような気がした。
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なんちゃってプロット通りに書いてみようと頑張ったら……
意外と長くなってしまってびっくりです(笑)
2〜3行がこうなっちゃうんだよな…
やっぱ、だらだら続いちゃうんだろうか。
取り巻く悪友たちを登場させたら、こんな風に。
場面がぷちぷち途切れてんですが、意味がニュアンスで読んで下さい(ダメな書き手です)
シカとナルの気持ちが交錯してくれない……