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Position 3
キバがにやにやと笑う。 結果オーライだと思っているのだろうか。シカマルから付き合おうと言われ……もちろんナルトからすれば天と地がひっくり返るくらいの出来事で嬉しいのだが。 「顔がにやけてんぜ、ナルト〜」 「へっ?う、嘘だよなっ」 「嘘だけど?」 完全に遊ばれて、さすがのナルトもムッとした。少しだけその頬が紅潮しているのだが。 「それで?具体的に“付き合う”ってどーゆー事だ?」 キバの素朴な疑問にナルトも黙ってしまう。とにかく、分からない。お互いに惚れて付き合いだした訳でもない。ナルトはシカマルが好きで好きでしょうがないのだけれど、シカマルからすれば嫌いでない…くらいのノリだと思うのだ。友達の延長…くらいに考えているのだろうか。 「うるせえな、キバ。そんなん個人のペースってのがあるんだから、お前は気にしなくてもいいんじゃねえの?」 「ますます胡散臭せーな」 じっとりと見てくるキバの瞳は軽くスルー。シカマルにも他意はない。最初から形のある関係なんて興味もない。そういったシガラミが鬱陶しくて面倒なのだ。三人で顔を突き合わせて、微妙な雰囲気でいるところに呑気な顔が飛び込んできた。 「あ、やっぱりナルト…ここだったんだね」 にこやかに愛想笑いを浮かべたクラスメイトは、ナルトの前にいるキバにも笑みを向けた。 「サイ、どうしたんだってばよ?」 「どうしたじゃないよ。ナルト、今日自分が日直って事忘れてるんじゃないだろうね」 あっと狼狽えたナルトはサイの言葉を表情で認めた事になる。両手をパチンと合わせて頭を下げた。 「悪りぃ。本気で忘れてた!」 「ボクに全部を押し付けて自分だけ腹を満たしてるなんて、良い根性してるよ」 言葉で言うほど怒っていない事はなんとなく感じる。ただ、一言言っておこうくらいの気持ちだったのだろう。ナルトが徐に手つかずになっているハンバーガーの包みを指差した。 「冷えちまったけど、食う?」 「食べないの?」 「ちょっと今、腹いっぱい」 少しだけ前の出来事で、胸もいっぱいなのだ。 「それなら、有難く。ここに同席してもいい?」 「もちろんだってばよ。ホント、今日はサンキュな〜」 ナルトの笑顔を見たサイは、しょうがないと言うようにくすりと笑った。それを腕を組んでいたシカマルがチラリと見上げる。知らない顔ではない。クラスが違うのでキバやナルトのように腹を割った中でないにしろ、顔と名前くらいは一致する。 サイの背中を見送ったキバが、コーラを一口飲んだ。 「サイってナルトには甘いんだぜ?最初はウマが合わないって感じだったのにな」 「甘いとか言うなってばよ」 「ナルトに恩売りにここまで来たのか?」 「ンなんじゃねえよ。サイはそんな奴じゃねえし」 シカマルの嫌味にも気が付かないナルトは鈍感に言葉を返す。キバは心の中で、「さすがナルトだな」と呆れてみたのだが、この声は彼に届くはずもない。 「俺、話とかしたことねえから分かんねえな」 ただインスピレーションで波長が合わないと感じてしまった。笑みは浮かべているが当たり障りがないといった風で、まるで猫を被っているか偽っているような顔に見えるのだ。 「最初はいけ好かない奴だったんだけど、良い奴だってばよ。不器用な奴だけど、シカマルも気が合うかもしれねえってば」 キバは心の中でナルトの言葉を完全否定する。ありえない…のだが、ナルトは何を基準に断言できるのだろうか不思議で堪らない。シカマルはふっと笑う。視線をゆっくりとナルトの瞳に合わせた。 「ナルト、ちゃんと紹介しろよ」 「サイを?」 「違う、俺を」 「シカマルを?」 完全に楽しんでいるシカマルの横顔。ナルトをからかって遊ぶのは自分の専売特許だと思っていたのに、シカマルも悪戯好きな一面は変わっていないらしい。 「お前の彼氏だろ?俺は」 「へぇ、そうなんだ。気持ちが通じて良かったね、ナルト」 そこにいつの間にか戻って来たサイがいた。ぎょっとしたナルトはギロリとサイを睨みつける。余計な事を言うなといった瞳の色。サイはナルトの隣に座ると、容器の蓋を開けてポーションのミルクを入れる。ふわりと漂うコーヒーのいい香り。 「さてと、ボクはどれを貰えるのかな?」 「えっと、こっちがチキンでこっちはフィッシュバーガー」 サイはナルトが差し出したのとは違う包みを指差す。 「これは、チーズバーガーだけど…食いかけだってオレの」 「ナルト、お腹いっぱいだって言ったよね」 「そうだけど、さすがに自分の食い残しをお前にやるなんて……」 サイはナルトの言葉を無視して、半分になっているチーズバーガーを手にする。 「ボク、冷めたチーズバーガーって好きなんだ。冷めてる方がチーズの味がしっかりすると思わない?」 そう言うと、しれっとそれを口にした。 「やっぱり、おいしいや」 柔らかな声と話し方。まんまと大人しそうな外見に騙される所だった。柔和に見えるのとは比例して強引なのである。おっとりと話を進められて自分のペースにきっちりと乗せる。シカマルはサイとナルトのやり取りを目にしながら、サイと言う男を観察してみた。その視線を感じたのか、サイがシカマルに向かってにっこりと笑う。 「はじめまして、だよね。ナルトからは聞いてるけど…こうやって話すのは」 「そうだな」 さらりと当てつけがましい嫌味な内容を口にされても動じるつもりはない。対抗意識なんて持った瞬間に負けを認めるような気がするのだ。 「あ、ごめん。ナルトとシカマルって付き合い始めたんだっけ?これって、間接キスだよね」 「はぁ――――――?! 間接キス?」 激しく反応したのはナルトだ。 「ばっかじゃねえの?ンな事言ったらジュースの回し飲みだって、間接キスになんじゃんっ」 「そう言われたらそうか〜。それなら、ナルトといつも間接キスしてるってことになる?」 「お前の頭ン中がわかんねえよ!!」 憤慨したようなナルトはむっと口元を歪める。こんなにハメやすいならからかうのも楽しいだろう。絶好のおもちゃ扱いされている事を当の本人は気が付いていない。シカマルは余りにもバカらしくて相手をする気にもなれなかった。それをサイも望んではいないだろう。ただ、ナルトというおもちゃで遊んで楽しんでいるのだ。 「お前は小学生かよ……いちいちリアクションが大袈裟すぎんだ」 「そうだよね。だから、ナルトと居ると飽きないんだよ」 シカマルはふっと笑う。それから、ぶつぶつと反論を口にしているナルトを見つめた。その視線に気が付いたのか、真っ赤になって俯いてしまう。ふと、こんなに可愛い奴だったのかと思ってしまった。顔の造作の事を言っているのでなく、仕草や反応の事だ。 「ナルト、腹膨れてんなら帰るぞ」 「え…?あの、どうしたんだって…なんか気分でも悪りぃの?」 「そりゃ、違うだろ」 無言でいたキバが久しぶりに口を開く。 「カップルらしく、一緒に下校ってやつじゃねえの?」 ナルトは開いた口が塞がらないのか、口をぱくぱくさせながら顔を赤く染めていく。 「そーゆうコト。じゃあな」 沖に上がった魚のように口をパクつかせているナルトの腕を取ると、少し強引に引っ張った。
「あ、残念」 二人の後ろ姿を見送ったサイがコーヒーを口にする。 「お前、性格悪いな〜」 キバがふっと笑った。ナルトで遊んでいる事はシカマルにも、もちろんキバにも分かっている。無反応なキバやシカマルよりも、過剰反応してくれるナルトを見ていたかったのだろう。 「それよりも、シカマルって彼女いたよね。本当は男が好きな性癖だった?」 「あんなぁ…そんな事知る訳もねえだろ?ま、俺の今までの記憶の中にはねえよ」 「ふ〜ん…それじゃ、ナルトも早々に失恋するのかな」 「楽しそうに言うんじゃねえって。そーゆうのが性格悪いって言うんだよ」 サイはチキンバーガーの包みを開いた。 「でも、ナルトは相当シカマルの事を好きみたいだから彼からフラれない限りそれはないか……二人が本当に付き合ってるのか疑念が残るけどね」 それはキバも同意見である。シカマルシカマルと煩かったナルトはいい。余程の事がない限りシカマルを振るなんて事は考えられない。ただ、シカマルがどういった認識でナルトと付き合うと言ったのかが解せない謎のひとつだった。 ナルトは確かにシカマルに対して特別な感情を抱いている、と思う。シカマルの一番になりたくて、いつも一緒にいたくて堪らないといった風だった。キバにとってもシカマルやナルトは友人の一人として、確かに一緒に居て楽しいし、付き合いもそれなりに長いぶん気兼ねもする事もない。だから、シカマルとナルトだって共に時間を過ごす事は楽しいだろうし苦痛ではないはずである。ただそれに恋愛感情が絡むとどんな化学反応が起きるのか、キバにも興味があった。 「キバは友人と恋人の境目ってなんだと思う?」 「唐突だよな、お前の質問。でも、俺も今同じような事考えてた」 「別にセックスしたからって恋人になる訳でもないし、しなくても恋人であるとも言えるよね。……ってのはこの間読んだ雑誌からの受け売りなんだけど」 ナルトとシカマルを当てはめるのは、なんだか難しく感じた。 「ナルトは、シカマルの一番になりたくて大好きなんだろ?恋人って意味じゃなくて一番の親友って気持ちだったのかもしれないよね。もちろん、ボクはナルトがシカマルに具体的にどんな感情を抱いてるのかは知らないよ?ただ単に好きって事だけしか」 キバの口調は淡々としている。からかう相手がいなくなってつまらないのかもしれない。 「そうだなぁ。シカマルに彼女が出来て相手してもらえなくて、ちょい寂しかったんじゃねえの?ナルトって典型的な一人っ子なんだよな。だから構ってほしかったのかもしれねえな。そこそこ構ってもらったら満足するんじゃねえの?いちいち、あいつのうぜー愚痴聞いてるよりマシっつうもんだぜ」 「ナルトの気持ちも強ち、恋愛感情とは言い難いかもしれないって推測?」 「知らねえよ、ンな事」 キバは真剣に訪ねてくるサイに眉を顰めた。 「ナルトとシカマルの友人としては、少し冷たい言葉だね」 「うるせー」 痛い所を突かれてキバは少しだけ不安になる。そして、この場に居ない幼馴染の事を思い浮かべて頭が痛くなった。のんびりしているのに、核心をついてくる物言いはシカマルの一番古い友人でもあるのだ。ナルトとは違った意味でシカマルを大切にしている。自分の言動でナルトとシカマルが付き合う事になったと知れば煩そうだ。いつばれるかは時間の問題なのだが、まだ厄介な問題は消えていないのだとキバは深い息を吐いた。
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サイみたく引っ掻き回すタイプのキャラを投入(笑)
お約束程度に。
空気が読めないってより、意地悪く楽しんでますが(^^ゞ
今回の話はシカとナルの話ってより、取り巻く人たちの話になっちゃいました。
次回は二人きりなので、なにかしら進展させたいです。
たまに自分が何を書きたかったのか忘れそうになります。
それくらい先の長い話になりそうな予感…