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LOST WORLD 4
ヒナタと別れたキバとシカマルは、とりあえずナルトが帰宅していると想定して彼のアパートに向かう事にした。 意味もなく二人の間に無駄な会話はない。個々に何かを考えている風ではあったが、あえて口にしていないと言った方が正しいのかもしれなかった。 「良かったな、シカマル」 ぽつりと呟いたキバは真っ直ぐに前を向いている。その横顔を見たシカマルはふっと笑った。 「そうだな。……あいつ、人に心配ばっかかけやがって」 「愚痴は本人に言ってやろーぜ!」 そこでキバがニカっと笑う。彼らしい笑顔を久し振り見たシカマルは、口元に笑みを乗せたままで軽く頷いたのだった。
ナルトのアパートの呼び鈴を鳴らすと、中から出てきたのは疲れ顔のサクラである。 「さっき、病院から帰ってきたの」 にっこりと笑ったサクラは、シカマルとキバを中に通した。部屋の中に入ると、ベッド脇に沈んだ顔付きのナルトが座っている。 「ナルト!キバとシカマルが来てくれたわよ」 サクラの声にはっとしたナルトは、顔を上げてニカっと笑った。 「サンキューだってばよ!」 その表情を見てキバがほっとしたような息を吐く。 「あんま、心配させんじゃねーぞ!バカナルト!!」 「ば、バカって……ひどいってば」 少しむっとしたナルト。見慣れたその顔にシカマルは胸をなでおろし、少し離れた場所にいるサクラに耳打ちするような小声で声をかけた。 「おい、サクラ。病院行ったって……なんかあったのか?ヒナタから大雑把に聞いてるけど」 「ああ…、外傷はないってかね。多分、ナルトの驚異的な治癒能力で治ってるってトコかしら?とにかく、記憶障害って言うか、曖昧な所があったから念の為に頭部の検査だけ済ませたんだけど、異常なしよ。ほんっと丈夫だけが取り柄なんだから、アイツ」 「ふ〜ん、そっか」 キバと話をしているナルトを盗み見るが、大して可笑しな態度でもない。 「ま、終わり良ければ…って感じか?綱手様は?」 「暫くは療養って形をとって、任務からは外される方向かしら。さっきまでカカシ先生やヤマト隊長もいたんだけどね」 確かにベストでないナルトを任務から外すのは、当然の処遇であろう。 「お前、顔が疲れてるぜ?」 「当たり前でしょ。気をもませられたんだもん……自力で帰って来てくれて、本当に良かった」 「とりあえず、茶でも淹れてやるよ。お前もナルトんとこ行ってろ」 「はいはい。手慣れたもんだもんねぇ〜」 ナルトの台所事情も把握している事をからかわれたシカマルは、別段と隠すつもりもなくひらひらと手を振る。吹聴していないが親しい仲間内では周知の事実なのだ。 人数分の湯呑を用意して、いつものように茶を淹れる。それを盆の上に乗せて、軽口を叩く仲間の元へ戻るとナルトと不意に視線が合った。少し驚いたようにした後、にこっと笑いかけられる。その瞬間にチクリとした痛みが胸の奥に湧き上がる。その違和感を抱えたままで、床に盆を置いた。 「お〜サンキュ、シカマル。こいつさ、マジで自分が失踪したって感覚ねえみてーなの。無自覚もいいけどよ、ほんっと人騒がせだよな?」 「ま、それがナルトっちゃナルトだろ?」 湯呑を手にしてそれに口をつける。同じようにしているナルトに視線を向けて、思わず観察するように視線を厳しくしてしまった。人間観察は嫌いでない。身についたものと言っていいのか、無意識の内にそうすることが幼少の頃から癖になっているだけだ。 「……ナルト、まだ混乱してんのか?」 シカマルの声にぴくっと反応したナルトが、じっと視線を返してきた。 「ああ、あんま覚えてねーことばっかってか……変な風に記憶が混乱しちまうってか。たまに、人の名前も分からなくなる」 「そうか……」 真面目に返してしたナルトは不安そうな表情を浮かべる。それに気がついたキバがぽんと肩に手を置いた。 「気にする事ね〜って!今は混乱してるってだけで、検査も異常ねえんだろ?少し骨休めすりゃ元通りのお前だって!!ま、俺としては九尾の事もあるしな……ちょい心配してたんだわ」 「きゅ…うび?」 「お前が人柱力だってのは、……隠しようもねえことだからな。それで、お前が危険にさらされてんじゃねえのかって心配したって事だよ。取り越し苦労させた分、奢れよ?」 「じんちゅう…りき、か」 キバの言葉を復唱したナルトは、何かを考えるように黙ってしまう。 「ちょっと、キバ!」 言葉がストレートな所はキバの長所でもある。釘を刺されたような形になったキバは、バツがわるそうにぺろりと舌を出した。 「気にしてないから、大丈夫だってばよ」 キバを庇うように、へへっと笑ったナルトは空になった湯呑を床に置いた。コトリと響いたそれにナルトの溜息が重なる。 「悪りぃ……今日は、疲れてて。帰ってくれねえかな?」 ナルトには珍しい神妙な声色に、キバとサクラが顔を見合わせる。 「あ、ああ……そうだな。お前のバカ面見れただけでも安心したぜ、ナルト」 「また、明日も様子は見に来るからね!じゃあ…」 腰を上げたキバとサクラは、座ったままのシカマルをちらりと伺う。このパターンからすると、二人きりにさせるのが一番なのだろう。 「シカマル、先に帰るわね」 「じゃあな!」 背中を向けた二人と座ったままのシカマルを見て、ナルトは眉を潜める。ナルト的には一人になりたいのだけれど、シカマルは落ちついた風に腰を落ち着けて居る。当のシカマルはナルトの言葉の意図をくみ取ってはいるが、行動を移そうと言う気はなかった。 「ありがとだってばよ〜」 「おやすみ、ナルト」 にっこりと笑ったサクラに、ナルトも笑顔を返す。 「うん、おやすみ。キバもサクラも」 サクラとキバを見送ったナルトは、くるりと向き返るとドアを背にじっとシカマルを見つめた。 「あの……シカマル?オレ、考えたいことあって……」 「邪魔ってか?」 「そんな事は言ってねえってば!!」 慌てて否定したナルトに、シカマルは渋い顔をしながら立ちあがった。 一歩一歩と、ナルトとの距離を縮める。その真剣な面持ちにナルトは耐えられないと言った様に俯いた。その顔の横に、ばんっと手をつく。そこでナルトは顔を上げて、自分の顔の横で固定されたシカマルの腕と顔を交互に見た。 「な…んだってばよ?」 「お前、どこからどこまで記憶が混乱してるんだ?元々、混乱って言うレベルなのか?」 「どうして、そんなこと……」 ナルトはごくりと唾を飲み込む。視線がかちあって、シカマルは皮肉な笑みを浮かべた。 「お前は、サクラを呼び捨てになんかしねえ」 大きく見開かれる青い瞳。 「違うか?」 「……それは、」 「混乱?本当に、そんなものなのか?」 「シカマ……っ!」 シカマルはナルトの唇を乱暴に奪う。びくりと反応したナルトは、その行為に心底驚いているようだ。シカマルの胸元に手をつけると、力を込めて身体を押し返した。 「やめろっ!」 はあはあと息をついたナルトはギロっとシカマルを睨みつけ、口元を手で覆う。 「帰って……くれって、一人になりてえんだ」 傷ついたように瞼を伏せたナルトにシカマルは大袈裟な溜息をついた。わざとらしいその行為に、ナルトはぎゅっと唇を噛みしめる。 「明日には……はっきりさせるからな」 自分を見ようとしないナルトに悔しい気持ちがこみ上げる。二人きりでいると言うのに、いつも当たり前に感じてきた高揚感をよりも不安が募った。 ナルトのアパートの階段を降りながら、ふっと振り返る。頭を過るのは、嫌な思いばかりだ。しかも、明日は任務が入って居てナルトと落ちついて話を出来るのは夜半になることは必至である。 こんな状況であるからこそ、ナルトには監視もつくだろう。大人しくアパートに居てくれればいいのだが、ナルトである。
シカマルの胸騒ぎが杞憂でなかったのが裏付けされたのは、翌日の夜の出来事であった。
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シカとナル対面っても、ちっとも甘い雰囲気でなく(笑)
いや、分かりやすい展開だと思いますが(^^ゞ
こんな風にパタパタ続きます。