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LOST WORLD 3

 

 

 見慣れた道を歩く。

 その隣には今日も一緒に任務についた赤丸が、静かに寄り添い歩いていた。綱手への報告を済ませ、帰路についているのだがキバの心は重たい。探索任務は失敗に終わったのだろうか。ナルトが見つかっていないのだから、失敗なのかもしれない。

カカシの曰くそれだけが目的でない事は知らされているが、どうもしっくりこない。どちらかと言うと頭でどうこう考えるのは苦手だ。それはナルトと似ているのかもしれない。当たって砕けてしまった方が幾分か清々とするものだと思えてしまうのは、バカにしている幼馴染と同じく向こう見ずな部分が自分にもあるからだろう。

 ふと視界の中に、幼馴染の一人の背中を見つけた。こんなに近くに来るまで彼の匂いすら気に掛けていなかった事に嘲笑してしまう。別に示し合わせた訳ではない。そう“たまたま”居ただけの事。

だから、キバは彼に背中を合わせる様にベンチに座った。

 風に乗って鼻につく煙草の臭い。

「くっせーな…ったくよう、な〜…赤丸」

「お疲れさん」

「疲れてねえし…!厭味な奴」

「収穫ナシってか?」

「さあな」

 暗くなった空に街灯の灯り。

 二人の間には暫しの沈黙。

「お前こそ、綱手様から…何か聞けたのか?」

「さあな」

 くすりと笑った気配に、ちっと舌打ちした。

「おい、メシ行こうぜ」

 特に空腹を覚えた訳ではないが、この居心地の悪さから解放されたい。キバが振り向くと、丁度煙草を消した彼と視線が合う。

「酒にしねえか?」

「メシも酒も一度に済ませられるトコにしようぜ」

 腰を上げたキバにつかず離れずの距離で、後ろからシカマルの気配を感じる。そんな些細な事にキバは思わず口元に笑みを浮かべてしまっていた。

 二人が暖簾を潜った店は、食事もできるし酒も楽しむ事ができる居酒屋と食事処の中間的なこじんまりとした個人店。

 ざわついた店内。解放的な室内ではあるのだが、席の間に衝立のように植物が置かれている。人の話声が雑音に聞こえる様な絶妙な距離感。

 冷たい酒をグラスで煽ったキバは、気が付いたように足元にいる赤丸につまみの一つを分けてやる。

「そんで?…なんかあんだろ、わざわざ俺とメシなんだからよ」

「メシに行こうって言ったのはお前だろ?」

「ったく…、食えねえ奴」

 キバと同じようにグラスに口をつけて居たシカマルがにやりと笑う。その笑みを見てキバは内心安心してしまった。もっと、やさぐれた雰囲気でいると思っていたのにシカマルは違った。面倒が嫌いなシカマルの時折見せる真剣な視線。少しきつく感じるそれを無視しながら、焼き鳥の櫛を銜えて見つめ返す。

「…もっと、確信に迫った話しようぜ。俺はシカマルと違って、頭使うの好きじゃねえんだわ」

「簡単な事だって。―――― 直接サクラに聞いた」

 キバは思わず噴き出して、テーブルの上に櫛が転がった。

「ストレートだなぁ…お前」

「手っ取り早いだろ?あいつが居なくなった時の当事者だぜ?」

「サクラは綱手様の弟子だろ?あいつの口が重てーことくらい分かるっての」

 シカマルは空になっているキバのグラスに酒を注ぎたす。

「別に厳戒令ってな訳じゃねえみたいだ。ほのめかしたら、教えてくれた」

「いや、それってさ……誘導尋問的なことじゃねえの?」

 呆れた口が塞がらないと言う様にシカマルを凝視する。

「そんな大層な事じゃねえよ」

 にやりと不敵な笑みを見せるシカマルに脱力してしまったキバは、とりあえず腹を満たすために食事を再開させたのだった。特に確信に迫る話もしない。お互いの腹を見せるつもりもなく、黙々と食事を作業のように進める。

 そんな二人の間に、この場に似つかわしくない人物が飛び込んできたのは食事が終盤に差し掛かった時であった。

「キバくんっ!! やっと…見つけた〜」

 安堵の息を吐いた彼女は、柔らかな笑みを見せる。

「ヒナタ?」

 今日も一緒に任務についていた同僚を見上げたキバは、息を切らしているヒナタに水を進める。

「ま、落ちつけって。まず座れよ?」

「え…あ、ウン」

 キバの隣に腰を落ち着け、グラスを口に付けた彼女はふうっと息を吐いた。

「落ちついたか?」

「……落ちついて居られないんだもん。あのね…」

 ちらりと一瞬視線をシカマルに滑らせた彼女は、小さな声で呟く。

「あの…ナルトくんが、帰ってきたんだよ。今、カカシ先生とサクラさんと一緒に木の葉病院に行ってるけど」

 ヒナタの言葉はキバとシカマルの動きを止めるのに十分な威力がある。

「ちょ…ちょっと待てよ!なんだ…それって俺たちの任務は無駄足だったって事なのかよ?」

「ヒナタ、木の葉病院に行ってるってどうゆう事だ?」

 二人同時に責められてしまったヒナタはビクリと狼狽えた。

「わ、悪りぃ…ヒナタ。順を追って説明してくれるか?」

 シカマルの柔らかな問いに、こくりと頷いたヒナタは自分の知っているだけの情報を口にする。

 

まず、ふらりとナルトが木の葉に帰って来た事。

自分が失踪した経緯については記憶が曖昧である事。

綱手との面会は済ませており、万一の事を考えて病院で検査を受けて居る事。

 

「…ンで、ヒナタ。ナルトは?」

「私も少しだけ見ただけなんだけど、特にチャクラの乱れも感じられないし外傷もない風に見えた。記憶が混乱しているのは、一時的ななんらかのショック状態って感じだったんだけど……火影様も心配してみえて、サクラさんとカカシ先生が同行して検査を受けるって………」

 多少元気がないように見えたけれど、憔悴しているようにも見えなかった。記憶の混乱はあるらしく、自分が知っているナルトのようには見えなかったけれど、彼は帰って来た。

その事にヒナタはホッとして居る。もし、九尾を狙う輩に拉致されたという線は完全に消えた。

「九尾絡みって線は消えたんだな〜…」

 安堵の呟きにシカマルも苦笑を浮かべる。もちろん、故意的にナルトが里を抜けたのではない証明もできたと言えよう。

「シカマル、アホ面見に行こうぜ?」

 食事もあらかた済ませているシカマルは、安堵した気持ちで頷く。

「そうだな……心配させたツケも清算してもらわねーと割に合わねえし?」

 シカマルは巡らせていた危惧を胸の奥にしまいこむ。自分が骨を折る前に、彼が里に帰って来てくれたことは嬉しい。今までどうして居たのかも聞きたいし、体裁はどうでもよく抱きしめたい気持ちもある。

お互いの任務で顔が合わせられないのは仕様がない事。それは己たちが忍であるからこそ。それでも、いつも彼の安否が気になる。大丈夫だと、疲れ切った身体も心も安息を得られる場所だと思えるから、シカマルはナルトの元へ帰ってこられる。

大袈裟だけれど、いつ死を迎えるかもしれない自分が、生きる事を諦めないでいられる理由のひとつがナルトの存在だと言えてしまうから。

「んじゃ、行くとすっか」

 機嫌の良さそうな笑みが、彼らしく皮肉なものだったけれど、その声色は幾分とキバの心情を上向きにさせているように感じた。苦笑を浮かべたシカマルは、くいっと残りの酒を煽って店を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

  

 

 

ごめんなさい。

ちまちま更新にシフトしてるので、すごい中途半端で句切れてます…

とりあえず、シカマル側の心情展開?

次回はシカとナルの久々対面っす!