新築 堺 ウィークリーマンション 福岡

 

 

 

KOIGOKORO 2

 

 

 ネクタイを首からぶら下げながら、ドアを開ける。

 そして、部屋から出て廊下に出た瞬間に隣の扉も一緒に開いた。

 ナルトの心臓がどきりと鳴る。

「あ…」

 思わず声を出して、昨夜の出来事が鮮明に思い出されナルトは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

「…ンだ?」

 眠たそうな声で返してきたシカマルは、訝しげな表情を浮かべている。

「いや…あ、…おはよ」

 俯きながら、視線をちらっとシカマルに向けるが彼は小さな欠伸をしていた。ナルトがシカマルからのキス&告白をされた昨夜。もちろんシカマルはナルトが寝ていたと思っているので、彼の気持ちを知ってしまった事は知らない。普通にまたナルトを起こしにきたシカマルと、ダイニングテーブルに着いた昨夜の晩御飯の味が思い出せないでいた。忘れようとしても、触れた柔らかい唇の感触が忘れられなくて。思い出すのはヨシノの美味しい食事よりもソッチばかりだ。

「おい、ナルト」

「ん?」

 シカマルの手が伸びてきて、ナルトの髪を撫ぜた。それだけの事で体がカチンコチンに固まる。

「お前、寝癖すげーぞ?」

「こここ…これから顔とか洗うし!メシも食ってないし!」

「まだ顔も洗ってねえのかよ?」

 くすっと笑ったシカマルの笑みにナルトは顔が真っ赤なるのを感じた。今まで普通に接してきたはずの、シカマルの全てがなぜか眩しく感じてしまう。

「じゃ、先に…行くってばよ」

「はあ?」

 ナルトのおかしな態度にシカマルは首を傾げる。慌てたように階段を降りようとした後ろをついて行ったシカマルは、思いっきり階段を踏み外した背中を空しく見つめたのだった。

「なにやってんだよ、あいつ。朝から騒々しい奴だぜ」

 派手に転んだナルトは大きなたんこぶを頭に作る事になった。その隣でトーストをかじっていたシカマルは直ってない寝癖を見てふっと笑った。

「早く食わねえと、電車間に合わねえぞ」

「…わかってるけど、めちゃ痛てーし!」

 半泣き状態のナルトは、目の前でどんどん冷めていく朝食をちびちびと食している。子供みたいな…と言うか小さな頃から変わらないドジな一面。痛い事は基本嫌いで、風邪をひいて注射などという事になれば自分よりも小さな子供より大騒ぎをしていた事を思い出す。

「マジでタイムリミット。俺は先に行くからな」

 立ち上がると、まさか置いて行かれると思っていなかった青い瞳がシカマルを凝視する。

「ちょ、ちょいマジ?」

「マジっつったろ?お前んとこは良いけど、ウチの担任うるせーの!」

「いやいやいや、なんつーか。遅刻したらカカシ先生もうるせえって。シカマル、あと少し待ってくれってばよ!」

 懇願した瞳はきれいにスルーされた。

「待てねーよ」

 ぽんっとナルトの頭を叩くと、頬を膨らませたナルトがぎろっと睨みつけてきた。凄んでみてもちっとも怖くないし、リスを髣髴させるような表情が可愛く見えてしょうがない。きっと、こんな事を思ってしまうのは惚れた弱み的なしかも欲目込の発想なのだろう。

「お前に付き合ってたら、万年遅刻だっての!」

 ひらひらと手を振って背中を向けると、どたばたとまた騒がしく動くナルトの気配を感じた。なんだかんだ言っても、少しだけ歩調を緩めてしまうのは……やっぱり、惚れた弱みなのかもしれない。

 かじりかけのトーストを持ってやって来たナルトに茶々を入れながら、駅までの道を小走りに急ぐ。それでも、いつも乗るはずの電車は目の前で、空しく二人を置いて行ってしまった。

「あ〜あ……マジかよ」

 トーストを食べ終わったナルトはと言うと、自販機に飲み物の調達に行っている。ベンチにどっかりと腰を下ろすと、申し訳なさそうなナルトが缶コーヒーを差し出してきた。

「シカマル、悪りぃ…」

 少しだけしゅんとして見えるナルトの頭には、直していない寝癖がぴょこんと何かを主張している。

「別に…いいけどよ。次の電車でも、遅刻にはならねえし…」

 遅刻にはならない。しかし問題がある。一本逃した事により、完全に通勤・通学ラッシュにはまってしまうのだ。たかが数十分で電車内の人口が増える。不思議なくらい。学校に到着するまでに体力を消耗するラッシュアワーを、なるべくなら避けたいのだ。

 プルトップを開けたシカマルは温かいコーヒーを口にする。ナルトの手にはミルクティが握られていた。

「電車来る前に飲めよ?」

「あ…ウン」

 本当に悪いと思っているのかしおらしい態度のナルトが上目使いにシカマルを伺う。こうゆう時のナルトの視線はヤバいと常々思っているシカマルだ。庇護欲を掻き立てられると言うか、説明できないけれど危険信号だったりする。同性に可愛いなんて感情(下心コミ)を抱いてる自分は、健全なのか不健全なのか、その分類は分からないがそれなりに男だったりするのだ。思わず抱きしめたくなってしまう。そして、昨夜盗み取った唇の感触をリアルに思い出してしまう。

「寝癖」

 シカマルに指摘されて、ナルトは自分の髪に手をやって確かめる。

「忘れてたってばよ。濡らしてこっかな…」

「ホントにお前バカだな。そんな事してたら完全遅刻だぞ。次こそ決定」

「わ、わかってるって!学校に着いたら直すって意味だってば」

「嘘つけ」

 ナルトから空になった缶を受け取ったシカマルはごみ箱にそれを投げ入れる。ナルトはぶちぶち言いながら、電車の扉が開く三角マークの前に移動したのだった。寝癖が気になるのか何度か髪に手をやる仕草が目につく。

「ナルト。女じゃねえんだから、あんま気にすんなよ」

「はあ!?シカマルが寝癖寝癖って言うから……」

 ナルトの反論は、すぐに到着した電車の音にかき消される。ぴゅうっと吹いた風が少しだけ冷たい。この駅で降りる人影はほとんどいない。だから、隙間を縫ってシカマルは車内に入り込む。終着駅が降車駅であるのがありがたい。同じ制服を着た学生も多く、途中でサラリーマンやOLが降りても座る事はできないと観念して、ふとナルトが居ないことに気が付いた。居ないと言うのは近くにと言う意味で、車内には金色の頭が見える。

「…なにやってんだ?アイツ」

 出入り口の近くに居たら、もみくちゃにされるだけだと言うのに……こんな場合は上手く窓際や端っこに移動するのがセオリーだろう。鈍臭い幼馴染の姿に思わずため息が漏れる。扉が閉まって、ガタンと揺れた車内。ふらふらとしているナルトの金髪を見つめたシカマルは、隣のサラリーマンの迷惑そうな顔を無視しながらしょうがなくナルトの近くまで移動した。

「おい、ナルト」

「シカマル!」

 ぎゅうぎゅうに人が詰め込まれた箱の中では、ただの迷惑行為。それは十分に承知なのだが、やっぱりほっておけない。

「しょうがねえな…」

 それは自分に対しての呟き。いつから、こんなにナルトに対して甘くなってしまったのだろうか。生まれた日もほとんど変わらない。年下の期間なんてほんの少し。弟的立場とも少し違う。他のダチともやっぱり、違う。頭が痛くなる現実だが、これは憂鬱な恋心だ。ナルトの制服の袖を引っ張ると、無理矢理にナルトを移動させようとした事で、若い女性からギロリと睨みつけられた。

「すんません。こいつ、ゲロしそーなんで」

 にっこりと笑うと、綺麗にメイクされた女の顔が歪んでそっと場所を開けてくれた。

「どーもー」

 ナルトは意味が分からないというように眉をひそめている。そのまま上手く奥まで移動して、ナルトの腕を離した。

「シカマル、オレ…別にゲロなんて…」

「うるせー。嘘も方便って知らねえのか?」

「……知らねえ」

 むすっとしたナルトはぷいっと横を向く。その瞬間、大きく電車が揺れた。

「…あ?」

 体制を崩したナルトが隣人にぶつからずに済んだのは、シカマルのお蔭だ。どうしてこんな体制になったのかは不明だが、なぜかナルトはシカマルの腕の中に居た。

 身長差はほとんどない。だから、顔をずらせば目の前にシカマルの顔がある事になる。ナルトはその事実に気が付いて真っ赤になって俯いた。心の中はパニック寸前だ。直視できないし、わざわざシカマルから離れるのも変だ。だから、ナルトはこつんと額をシカマルの肩口に当てる。

「ナルト?」

 声が耳の近くで聞こえた。これだけ密着しているのだ。当たり前と言えば当たり前。小さな声で直接吹き込まれるみたいなシカマルの声に、ぞわりと鳥肌がたった。

「だ、大丈夫……タンコブ、痛くてさ、その、悪りぃけど。肩かしてくれってばよ!」

「別にいいけどよ……」

「シカマル! 耳、……こそばゆいから、あんま近くで喋るのなしにしてほしいって…」

 無言のまま、電車が揺れる。

 密着したままの身体から、この鼓動が伝わってしまうかもしれない。

 

たまにはラッシュアワーも悪くない。二人とも心の中でそう思ったのだった。

 

 

 

 

  

 

 

勝手設定第二弾!(笑)

翌日の二人です。

シカマル、本当に気が付いてないのか?!と不思議。

ゲロゲロすみません…