柏 不動産 川口市 賃貸

 

 

 

KOIGOKORO

 

 

 帰宅すると、いつものように忙しく動く母親の背中。

「シカマル、おかえりなさい」

「…ただいま」

 挨拶という基本中の基本であるコミュニケーションを無視すると、母親のお小言が増えるのは経験済み。だから、二度とそんなヘマはしない。夕方になると外気温も随分と下がる季節に突入した。衣替えで冬の制服になった時は、まだ日中も暑く制服のネクタイですら鬱陶しかったというのに。

「母ちゃん、飯?」

「そうねぇ。今日もお父さん遅いみたいだから、先に済ませちゃいましょうか。シカマル、ナルトくん呼んできてくれる?」

 シカマルは頷くと鞄と引っ掴んで階段をゆっくり上った。

 

 

 ナルトとは随分と長い付き合いだ。自分の十七年の人生の殆どを彼と一緒に過ごしているような気がする。父親の知人の子供を預かるという事になり、その子供がナルトだったのはもう十年以上昔の話。あれは、小学校に上がる前の話だったような気がする。当たり前に、同じ小学校、中学校へと上がり高校も同じ学校に通っていた。

 兄弟みたいに、それでも友達で、いいことも悪い事もそれなりに一緒にしてきた幼馴染。

「おーい、ナルト?」

 ナルトの部屋は自分の部屋の隣だ。扉をこんこんとノックするが返事がない。シカマルは遠慮もなくその扉を開けて、中を覗き込む。電気は点いていた。机の上には散らかったノートや教科書とシャーペン。ナルトはその机には座っておらず、壁際にくっついているベッドの上で蹲っている身体を見つける。

「……寝てんのかよ」

 推測するに、勉強を始めたのはいいが捗らず現実逃避の為にベッドに逃げ込んだ結果という所だろう。大の字になって眠る事もあれば、こうやって丸まって眠っていることもある。今日は夜になって一気に気温が下がった。その為に少し寒いのかもしれない。

「ナルト、起きろよ。メシだって、メシ」

 身体を揺さぶると、「う〜ん…」と唸りながら、ナルトが身を捩った。俯き加減で寝ていた所為か、その頬が少しだけ紅潮して見える。金髪の柔らかい髪の毛が汗で額にくっついていた。そして瞼が上がると、青く大きな瞳が見えるはず。……だけれど、シカマルの意を反してその瞳が自分を見つめる事はなかった。余程深い眠りに入っているのか、ナルトはすうすうと規則的な呼吸を繰り返しながら眠り続けている。

「……寝汚ねぇな、起きろよ。バカナル…」

 年齢よりも子供っぽく見える表情。

金色の髪に、青く大きな瞳。初めてナルトに会った時、シカマルは少しだけカルチャーショックを受けた。これが“ガイジンさん”って奴なのか?と思ったのも覚えている。だけれどナルトの口から出てきたのは、日本語で。笑える事に今でも英語は彼の不得意科目。

でもシカマルは忘れられない。初めてナルトに会った午後の事を。舌足らずに一生懸命話す姿が自分と同じ年に見えないくらいに可愛く見えた。

ナルトが男だとか女だとか関係なく、それがシカマルの初恋だったのだと思う。一緒にいるのが当たり前で、遊ぶのも学校へ行くのも、いつもいつも一緒で。隣に居ることも当たり前になって、それが当然過ぎて……その恋心が勘違いかもしれないと感じた事も何度もあった。勘違いにしてしまいたかったのだ。まさか、人様から預かって大事に育てている息子さんに性的な感情を持っていると両親が知ったら、真剣に勘当されてしまうだろう。それに、男に好かれて喜ぶ男なんてのも世の中には少ないと思う。シカマルとて、相手がナルトなら嬉しいがそれ以外の野郎に好意を向けられても迷惑なだけだ。

「ナルト…起きろって」

 肩に掛かる手の先が熱い。

「メシ。…腹減ってんだろ?」

 いつも自分よりも夕飯を心待ちにしているではないか。それとも、帰宅して母親から軽食でも用意されたのかもしれない。

「……ナルト」

 名前を呼んでも反応しないナルトに溜息をつく。無防備な表情で眠るナルトの唇にそっと触れてみた。柔らかくぷにっとした唇の感触。本当に触れたいのは指先ではない。自分の唇でだ。

 厄介な事に、恋心は健在でシカマルの中でスクスクと育っている。勘違いも間違いも許されない感情にシカマルは溜息をついた。もし、この気持ちをナルトが知ったら……彼はどんな風に思うだろう。

 それでも、目の前の甘い誘惑にシカマルは勝てそうにもない。頬をぎゅっと抓ってみるがナルトは夢の中から目覚める事はなかった。

「おめーが…悪いんだからな」

 卑怯な責任転換をしたシカマルは、そっと柔らかい唇に自分のそれを重ねる。触れるだけじゃなく、深く交わりたい気持ちをぐっと堪えた。

 

初めて触れた唇は、柔らかくしっとりとしていた。

 

不安と迷いの中で戦うシカマルは、自分を戒めてナルトから離れる。

「好きなんだぜ…ナル」

 呟いたシカマルは目覚めないナルトを見つめてから、よろよろと立ちあがった。

 

 

 

 静かにパタンと閉まったドアの音に、瞼が開いて青い瞳が見える。ナルトはそっと両手でシカマルの触れた唇に触れてみた。

「……マジ?」

 かあっと熱くなる身体と頬。シカマルの最後に呟いた科白が耳から離れない。好きだと、言った。その言葉は嘘ではないと思う。それに、キスされた記憶も鮮明に残っていた。

「シカマルが…オレん事、好き?」

 あんなに優しい声で名前を呼ばれて、優しい仕草で唇が重なって。

「……どうしよう。―――― 嬉しい」

 ナルトは初めてシカマルと会った日の事を思い出す。両親と離れて暮らす事になり、連れてこられた家には自分と同じ年の子供がいた。あまり愛想がなく、少しだけ自分より背の高い彼。自分と違って黒くてきれいな髪を一つにまとめていたのを覚えている。興味なさそうに、シカクやヨシノの話を聞いていたシカマルがナルトと目があった途端ににこっと笑ってくれた。それで、不安だった全てがナルトの中から吹き飛んだのだ。自分の事を知ってほしくて、シカマルの事が知りたくて一生懸命に話をしたことが忘れられない。最後まで自分の話を聞いてくれるし、蔑ろにもしない。シカマルが好きになったし、シカマルにも好きになってほしい気持ちがいっぱいだった。暮らし始めて何日かして、シカマルの友達に紹介された時に、彼らとシカマルの仲に嫉妬してしまった。自分よりシカマルを知っていて仲も良くて、冗談言ったりふざけ合う姿を見て胸の奥が苦しくなったのはつい最近の出来事のよう。

 それでも、遊んだ友達にバイバイして帰る家はいつも一緒。ご飯を食べるのも、お風呂に入るのも、寝るのも、いつも一緒。すごく自分が特別な気分になって嬉しかったのだ。

 中学を上がる前になって、シカマルと部屋が離れた事がとても寂しくてしょうがなかった事を覚えている。それなりの男の子の思春期事情を察しての事だと気が付くのは、もっと先の出来事だったのだけれど。部屋が分かれてからは一緒に寝ることも減っている。お互いの部屋で夜更かしして、知らずに朝だったという事は何度かあったのだが。一枚の壁が、自分とシカマルを隔てる分厚い壁に思えてしまっていた。

「シカマル……」

 胸のどきどきが治まらない。

「どうすんだってばよ」

 いきなり男の自分がシカマルに告白したら、ドン引きされるかもしれない。そんな思いから、独占欲の先にある感情にふたをしたというのに……

「キス…された。嘘じゃねえよな?」

 シカマルが自分に対して「好き」だと言ってくれた。一方通行だったはずの感情が、つながった感覚にナルトの心臓がバクバクしてくる。

「どうしよう……」

 

好きが溢れてきて、止まらない。

 

 

 

 

 

なんか勝手設定がむくむくとわいてきて(笑)

走り書きみたいになってしまいましたが(^^ゞ

ただ単に一緒に暮らすシカとナルが書きたかっただけなのかも…?

書けたら、続き書きたいなぁ…なんて☆

これからも、頑張りますのでよろしくお願いします(*^_^*)