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勘違い大作戦!! その2
目の前に置かれたどんぶりに、ナルトが満面の笑顔になる。 「やった!やっと食えるってばよ〜」 上機嫌なナルトを見てサスケも心なしか嬉しくなる。その笑顔を自分に向けてくれれば、パーフェクトだ。無理やり誘ったとは言え(脅迫に近いが、サスケはそれに気が付いて居ない…)それは礼儀だぞ、ウスラトンカチ。これから、少しずつ教えて行けばよい事だと発想を転換したサスケは、やはりにやりと笑う。折角のデートなのである。男の沽券としてナルトに1円たりとも出させるつもりは無いのだが、感謝はされて嬉しくない訳がない。 「おい、うまいか?」 蓮華からスープを飲んでいたナルトは、箸にメンマを挟みながらサスケを見つめた。 「一楽のラーメンだってばよ?上手いに決まってんじゃん」 「………(ここは俺に笑顔を向けるところだろ?)そうか。良かったな」 こめかみに一瞬青筋がたつのだが、そんな事はナルトにはお構いなしだ。搾り出したサスケの引きつった声にもナルトは動じない。 「早くサスケも食べないと、のびるってばよ!」 「ああ、そうだな」 ここは我慢だ、そう言い聞かせるとサスケは割り箸を割る。スープに絡まった麺はこしがあって上手い。 「うめぇな…」 思わず口にすると、隣から嬉しそうなナルトの声が聞こえた。 「だろ?だろ?一楽のラーメンはオレの超オススメなんだってばよ〜!」 きらきらの笑顔を向けられて、サスケはくらりと眩暈を感じた。サスケのハートクリーンヒットする笑顔を、真っ直ぐに向けられているのだ。そう思うだけで血圧が上昇する。もちろんその笑顔はサスケに対するものではなく一楽のラーメンに対するものなのだが、勘違いは始まってしまえば、どこまでも続いていくものである。サスケの中にある勘違いは積もりに積もって、しかも利息つきなのだ。万年ピンクフィルターがかかってナルトを見ているサスケにとって、その笑顔は凶器にしかなり得ない。しかし、付け加えておくならば、他人から見たらただのナルトである。サスケの湾曲した感情が見せる、ささやかな幻想の一つと言えよう。 「おっちゃん!水、おかわりちょーだい!」 ナルトが空になったグラスをカウンターの向こうにかかげる。その瞬間を見逃さないサスケは、素早くズボンのポケットから小さな小瓶を取り出すと、中の液体をナルトの丼の中に一滴垂らした。ラーメンのスープまで一滴残らず食すことはリサーチ済みだ。サスケにぬかりはない。さっと掌に小瓶を隠すと、じっとナルトを見つめる。もちろんサスケの不振な行動に気が付いて居ないナルトは、がつがつとラーメンを食べ始める。 「ふふふ…」 思わず笑いが零れた。サスケは舞い上がりたい気持ちを抑えながら、目の前のラーメンを平らげることに専念する事に決めた。ラーメンを食べてしまわなければ、二人きりになる事は出来ない。さっさと食事を済ませて、レッツゴーなのだ。任務の後で腹が減っている事は確かなので、二人は特に会話をしないまま食事を続ける。ナルトは目の前のラーメンに釘付けで、サスケの怪しい笑みには気が付いて居ない。そして、サスケの頭の中を駆け巡るめくるめく妄想にも、もちろん気が付かないのだ。
ナルトの食欲は相当なものだった。替え玉を頼んでお代わりをして(サスケの奢りだから、遠慮はない)たらふく幸せを満喫したのだ。この後に起こるだろう悲劇を知っていたならば、サスケの強引な誘いを断って一目散に逃げ帰っただろう。だがしかし、ナルトは性根が正直で素直である。隣でほくそ笑むサスケよりも至極子供らしく、純粋であった。 サスケは満ち足りたように歩くナルトの様子を伺う。今の所、彼に変わった所は見受けられない。 「…ちっ、おかしいじゃねえか。分量間違えたか?」 「サスケ」 思わず心の声を発していたサスケは自分を見るナルトに心底肝を冷やす。 「な、なんだ…?」 動揺から声が震えているがナルトは気にしないようだ。 「今日は奢ってもらってサンキューだってばよ」 「何言ってやがる。俺が誘ったんだから、別にいいだろ。気にするな」 「よくねーってば。やっぱり、サスケに借り作ったみてーでやだかんな」 「安心しろ。借りなら返してもらうから心配するな」 「は?」 ナルトは訳が分からないと言うように首を傾げる。つい本音が口を付いたのだが、ここはキレイにスルーして欲しい。サスケはにっこりと笑顔を作る。そこにサクラが居たならば、卒倒しそうな爽やかな笑みだ。取り付くようなそれを「作り笑い」と言うのだが、それが項を奏したのかナルトは、へへへと笑った。 「よく分かんねぇけど、今度はオレが奢るってばよ!」 ナルトの言葉はサスケにとって、意外なものだった。次のデートの誘いをナルトの方から受けるなど思ってもみなかったのだ。 「味噌もいいけど、醤油も塩もとんこつも滅茶苦茶上手いんだってば」 「………気が早いな、ウスラトンカチ」 デートの度に一楽のラーメンと言うのも考えものだが、サスケは自分のことを懐の深い男だと思っている。相手の嗜好に合わせるのも、惚れた弱みと言うやつかもしれない。それに、ナルトの喜ぶ顔を見るのは実に楽しい。その後に付いてくる、自分に対しての楽しい時間もオプションである事は前提だが。 「おい、こっち行こうぜ」 反対方向へ行こうとしていたナルトを止める。もちろん、それはナルトのアパートのある方角だった。サスケにしてみれば、お楽しみはこれからなのである。 「え…でも、オレのアパートこっちだし」 ナルトからしてみれば、ラーメンを奢ってもらったのだからサスケに用は無い。 「あっちもこっちもないんだよ、バカ」 選択肢は自分にある。…はずだ。ナルトはむうっと顔を顰める。決め付けたようなサスケの言い方が気に入らないのだが、尖った唇がまずいと思っているサスケの危ない鼻息には気が付いて居ない。一度だけ触れた事のある、ナルトの唇。ナルトにとっては最悪なアクシデントなのだが、サスケにとっては甘酸っぱい思い出の一つだ。 「どこ行くんだってばよ…オレってば早く帰りてえし」 「バカヤロー……デートっつったら、公園に決まってるだろうが」 「公園?」 「おい、ウスラトンカチ。俺の言葉ちゃんと聞いてんのか?」 「聞いてるってば、公園って言ったじゃん」 「その前だ、その前!」 「あ!サスケ、またオレの事バカ呼ばわりしたよな…。それって、オレに対してシツレーだっての。オレにはちゃんと名前があんのに、ばかとかあほとかウスラトンカチとか。サスケはオレの名前ちゃんと知ってんだろ?う・ず・ま・き・ナ・ル・ト!」 「いや、あほとは言ってない」 「……反応するとこ間違ってるってば」 ナルトはため息を着くと、じっとりとサスケを見た。真正面からナルトに見つめられたサスケは、一気に心拍数があがる。ナルトが言いたい事は分かっているが、喉が異様に乾いて言葉が出てこない。 「早く言えってば…」 催促されて、サスケはその思い違いに拍車がかかる。
『おい、ここ道端だろ?こんな所で、愛の告白かよ。一応、公衆の面前ってやつだぜ?俺の綿密な計画を台無しにしようとするお前は何者なんだ!万年ドベのウスラトンカチのくせに、こんな所は大胆不敵じゃねえか。お前は俺が知ってるナルトなのか。ナルトの皮を被った違う生き物か?もっと静かな場所で見つめあって、ついでに手も握りあったりなんかして囁くもんじゃねえのかよっ。告白ってのは。お前はどこまで逸脱したウスラトンカチなんだっ。いや…コレは文句じゃねぇぞ。そんなお前も十分に可愛いがな』
逸脱しているのはサスケの思考回路なのだが、本人は至って真面目だ。だが、心の中で叫んでちょっと気が治まったサスケはじっとナルトの目を見返す。 「ほら、言えってば。俺の名前」 熱い告白をしようとしていたサスケは、はっと正気を取り戻した。 「…名前?」 「そーだって、さっきから言ってるってばよ!」 「…名前、か」 サスケはふっと笑う。やはりナルトは万年ドベのウスラトンカチだ。名前を呼んで欲しいなんて、いつでも呼んでやるじゃねえかバカヤローという気分なのだ。 「行こうぜ、…ナ、ナ、ナルト」 すっと右手を差し出してみるのだが、それはあっさりと無視される。 「しょうがねえな。行ってやるってばよ、公園」 少しだけ照れたように笑ったナルトは、てくてくとサスケの前を素通りした。サスケは無視された右手を悲しく下ろしながらその背中をぎろりと睨む。 「無視するとはいい根性だな、ウスラトンカチ」
サスケの作戦第二段は、すでに仕込み済みなのである。 「グッジョブ、俺」 サスケは自分に酔いしれながら、ナルトの後を追いかけた。
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…また、続いてしまいました。ぎゃあって感じです(泣)
なんで終われないんだろう。
今更ながら、サスケの一人称で書くべきだったと反省。
えっと、サスケの心情は「ブルドック」とか「100%…soかもね」とかです。
ト○オバージョンで。(分かる人だけ分かってください)