霊園 sip

 

 

 

勘違い大作戦!! その3

 

 

 サスケは公園にあるベンチを指差すと、「座ろうぜ」とナルトを誘う。サスケはじいっとナルトを見つめた。素直に自分の言葉に従う彼に、やはり変わったところは見受けられない。

 サスケベンチの背もたれに身を預け、脚を組んで空を見上げた。とりあえず、今までの事とこれからの事をシュミレーションする事に決めたのだ。ナルトは急に黙ってしまったサスケに不信感を覚えながら、隣に腰を下ろした。

「…で、なんの話だってばよ、サスケ」

「あ?ああ…それは……――― 喉、乾かないか?」

「オレはなんもいらないってばよ。一楽でなんか喉が渇いて、水いっぱい飲んじまったから」

「ふうん、そっか…」

 先ほどの怪しい小瓶の中身を足して飲ませようとしていたサスケの作戦は失敗に終わる。

「サスケが喉渇いてんだったら、何か買ってこればいいってばよ。オレ、一口くらいならもらうし」

 ナルトの言葉にサスケは一瞬固まる。一つの缶から一緒に飲むと言うことは「間接キッス」ではないか。

「そ…それって事は…」

 サスケは余りの動揺からどもってしまう。ナルトはそれをどう受け取ったのか首を傾げた。

「もしかして、サスケって潔癖ってやつ?ほら、回し飲みとか汚くてやだって奴いるじゃん?」

「違う!断じて違う。むしろ、かかってきやがれって感じだ」

 力強くナルトの言葉を否定してから、とある単語に引っかかる。

「おい、お前…今、回し飲みっつったよな?」

「言ったけど…普通じゃねえの?」

 普通…なのだろうか。友達の少ない(いや、多分いない)サスケにはそんな経験が無い。鋭くなる視線をナルトに向けながら、問い詰めるように口を開いた。

「いつも回し飲みとかしてんのか?」

「いつもっつうか…キバとか平気で一緒に飲んでたってばよ?アカデミーの頃って、今みたく給料がある訳じゃねえし。シカマルやチョウジともしてたけど?」

「なんだとっ!」

 複数の男と間接キスを経験済みだと言う事なのか。現実を突きつけられたサスケは一瞬気が遠くなりかけて、必死に意識を保とうと唇をかみ締めた。こんな所で遅れを取るわけにはいかない。視線を彷徨わせて、自動販売機を見つけると立ち上がった。

「なんか、買ってくる!」

 つまらない意地を張るところではないが、他の男と自分が同一扱い……否、それ以下の扱いをされるのは御免だ。うちはサスケとしてのプライドが許さない。

「あ〜サスケ!オレってば、炭酸ジュースは苦手なんだってばよ」

 サスケの背中に声をかけたナルトは、お願いをするように片手をあげる。そんな仕草がどこか可愛く見えてしまうサスケは、完全にピンクオーラ垂れ流しだったりする。

「わかった…」

 これは、一つのジュースを二人で飲む事を前提としたナルトの「お願い」だ。そんなナルトが可愛くてしょうがない。自然と浮かんでくる笑みが、サスケの心情を現していた。

「思惑通りにデートっぽくなってきてるじゃねえか。俺の作戦、今の所オールクリアだな」

 ガコンと音を立てて落ちてきた缶ジュースを取ると、ふふふと笑う。ありきたりなスポーツドリンクを手にしたサスケがナルトの元に戻ると、彼はつまらなさそうに足をぶらぶらさせている。

「か…可愛いじゃねえか」

 思わず呟いて缶ジュースを握り締める。すると、ふっとナルトがサスケに気が付いたように視線を向けた。

「サスケ〜、何してんだってばよ?」

「いや…」

 お前を見ていた、とは素直に言えないサスケである。サスケは素知らぬふりをしながら、ナルトの隣に座った。最初に座っていたよりもナルトとの距離を詰める事には成功した。抜かりはないのである。そんなサスケに何の疑問も抱いて居ない(というか早く用件を済ませて帰りたい)ナルトは、ぶらんこで遊ぶ子供をじいっと見ている。

「なんか、公園とか久しぶりに来たってばよ…アカデミーの頃は、毎日遊んでたのに最近はそうもいかねぇもんな」

 サスケはどきどきしていた。ナルトとこんなまともな会話をするのは初めてかもしれない。そう思うと血圧は上がるし、脈拍も上がる。ついでに心拍数は人生マックスに達していた。

「休みの日とか、なにしてんだ?」

「え?オレ…?ん〜…洗濯したりとか、掃除はあんまマメにしねぇし〜…昼寝したりとか?」

「意外と普通だな」

 自分も似たようなものだ。一人で暮らしているのだから、身の回りの世話をしてくれる家族はいない。ナルトのように昼寝などはしないが、掃除をしたり洗濯をしたりするのはサスケも同じだった。

「サスケは、なにしてんだってば?」

 サスケは急に話を向けられて、ドキドキする。ナルトが自分の事を気にしてくれていると思うだけで何故だか嬉しい。

「似たようなもんだな。俺も一人暮らしだから」

 サスケは缶ジュースのプルトップを上げると、一口飲む。異様に喉が渇いてしまう。

「オレのイメージだと修行とかしてるのかと思ったってばよ」

「……修行も、する」

「ふうん」

 ナルトはごく自然にサスケの手から缶ジュースを取ると、普通に口にした。サスケの瞳は目一杯開かれる。自分が口を付けた飲み口からジュースを飲むナルトをじいっと観察してしまう。サスケの人生初の「間接キス」だったりするのだ。記念すべきこの瞬間に乾杯!サスケは沈む太陽に向って爽やかな笑みを向ける。ささやかな幸せを噛み絞めていると、ナルトが缶をサスケに返す。

「サンキュだって、ば……」

 そう言いながら笑おうとしたナルトの顔から、さーっと血の気が引いた。それは端から見てもすぐに分かるような変化である。

「おい、お前…なんか顔色悪いぞ?」

「あ…ちょっと、トイレ行ってくるっ!」

 ナルトは腹を抱えるような格好で、慌てて公衆トイレへと消えた。

「やっと効いてきやがったのか。即効性の下剤だって売り込みだったが、いまいち反応が悪かったな」

 この男、本当に思考回路のネジが一本どころか数本抜けている。ナルトに対しての異常な愛情表現に気が付いて居ない。とりあえず、ナルトの意識が自分に向く事だけを考えて生きているのだ。待つ事数分、青白い顔をしたナルトが戻ってくる。誰から見ても体調が悪いと見える顔色だった。

「大丈夫か?」

「…悪りぃ、オレ…帰る。腹の調子なんかヤバイ」

 覇気のない声でサスケにそう告げると、ナルトは再び公衆トイレに向おうとする。その腕をサスケは強引に取った。ナルトは驚きのあまり、大きな瞳が零れそうなくらい目を見開いている。勘弁してくれ、といった気分なのだ。

「ナルト、またトイレかよ?」

「だからヤバイってんじゃんっ!」

 泣きの入ったナルトは潤んだ瞳でサスケを見つめた。

「手…離せってばよっ!」

「行かせる訳にはいかねえ」

「はああ?」

 ナルトは驚愕した思いでサスケを睨みつけた。

「そんなにオレの事が嫌いなのかよ!オレってば、もう限界なんだってば!」

 ぐるぐるという腹の音が、ナルトの気分をより一層落ち込ませる。

「お前な、こんな公衆のトイレでくたばってるとこで襲われたらどうすんだ」

「誰も襲わねえっ!!!」

「お前はだからウスラトンカチなんだよ!どこぞの変態がお前の事を公衆便所にするかもしれねえだろうが!それでもいいのか。こんなところでバックバージン狙われても構わねえつうのかよ」

 ナルトは本当に泣きそうになる。ナルトは気づいていないが、どこぞの変態はサスケ自身だ。

「意味分からねぇってば……」

「分かんなくてもいいんだよ。俺の写輪眼には細菌も変態も見えんだよ。掃除も行き届かないこんな公園の便所で変な病気拾ったらどうする気だ?腹が痛くなる所の騒ぎじゃねえぞ」

 サスケの血走った眼差しを受け、ナルトはへたへたと座り込む。

「カンベンだってばよ〜。もう、帰りたいってばぁ〜」

「帰ってる途中でもよおしたらどうする?原っぱでケツ丸出しかよ?」

「離してくれってば〜」

「安心しろ、ナルト。幸いにもオレの家はここから近い。お前のアパートに帰るよりも、俺んちのトイレでゆっくりしていけよ」

 サスケは計画通りに、ナルトを我が家に攫う事が出来そうな事に鼻息が荒くなる。

「俺んちのトイレは頬擦りしても大丈夫なくらい、完璧な掃除がされている。どこぞのホストクラブにも真似できない抗菌仕様だ。お前が変な病気を拾う可能性はゼロ…いや、マイナスだ!」

 サスケはくったりとした身体を抱えると、素早い動きでナルトの意思を完全に無視した方向に向う。ナルトにしてみれば、ゆっくり家に帰って寛ぎたいのだ。そこには変態もいないし、細菌も湧いて居ない。なのに、強引にサスケに掻っ攫われている。

「う〜…っ。サスケェ…まじで辛いってばよ」

 ナルトは無意識にサスケの上着をぎゅうと握る。サスケにはナルトが自分にすがり付いてきているようにしか見えて居ない。どこまでも、ご都合主義者なのだ。

 ナルトを抱えたまま自分のアパートに到着したサスケは、奮える手で鍵穴を捜す。ナルトは心底疲れているようで、ぐったりとしていた。

「おい、ナルト。着いたぞ?お前の所望しているトイレは、ここを真っ直ぐ突き当たりだ。一人で行けるか?ズボンも下着も下ろせるか?できねぇなら、俺が…」

「ノーセンキュだってば……とりあえず、トイレ借りるっ!」

 ナルトは急いでサンダルを脱ぐと、一目散にトイレに駆け込む。玄関の壁に寄りかかったままのサスケは不適な笑みを口元に浮かべた。

「作戦成功…って、こんなに上手くいっていいのかよ?案外楽勝だったな。メシの後は、俺の家でしっぽり…ククク……ハハハ(妄想爆走中)」

 トイレの扉を睨みつけたサスケは、その中にいるナルトを想像してほくそ笑む。

 

「楽しい時間の始まりだぜ、ナルト。覚悟しとけよ?」

 それも、明日は非番だ。時間はたっぷりある。これからの事を考えて、サスケは綿密な計画を見直す事に決めた。この男、自分の欲望を叶える為には他人の意思などすっ飛ばす傾向にあるらしい。

 それにナルトが気が付くのは、近い未来かもしれなかった。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

なんで、サスケが爆走しながら話が進んでいってんでしょうか?

サス→ナルなんっすよ。これでも…

サスケが報われて無いですね。全く。

ちゅうか、ナルトがカワイソウ。

……そおして、また続いちゃったよ〜(ぎゃあ)