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Do Me More 4
蹲る様にして眠る、ナルト。 それを見たネジは、思わずくすりと笑ってしまう。広いベッドの端っこで丸くなって眠る姿は、まるで子供か猫の様だ。よくベッドから落ちないものだと反対に感心してしまう。 「…六代目!」 一応、少し離れて声を掛けてみた。それでも、丸まった身体はぴくりとも反応しなかった。 「火影様、朝です」 ネジはふうっと溜息を付くと、腰に手を当てて呆れた様にナルトを見つめた。これは本来自分の役ではないから、彼がどうやってナルトを起こしていたのか知らない。 「ナルト…ナルト!朝だ、起きろっ」 名前を呼んでやると、微塵とも動かなかったナルトがようやく反応する。「う〜ん」と唸りながら、ゆっくり身体を起こすと、ベッドの上にちょこんと座った。だが、すぐにその身体がふらふらして前に倒れて行く。 「おいっ…ナルト!?」 名前には反応する彼は、はっと顔を上げてネジに視線を向けた。 「ネ、ジ?」 「寝起きは最悪だな……」 呆れる様な口調にナルトも気まずい気持ちになる。 「あ〜…悪かったってばよ」 「それで?」 ナルトは首を傾げる。ネジの訊ねてくる質問の意味が分からない。 「なんだってば?」 「少しは、何か記憶に変化はあったかと聞いているのだが?」 「……変化ナシだってばよ」 寝起きから聞かれたくない事を尋ねられたナルトの機嫌が急降下していく。そんな気も知らないでベッドに腰かけたネジは、ふっと笑う。 「まぁ…焦る必要はないだろう。火影としてのお前の立場は俺がフォローしていく。順番にその仕事を覚えておけばいい。火影は、火影としての存在自体が大切なのだからな」 ネジの言葉に、ナルトの胸がツキンと痛む。確かに彼の言う通りなのかもしれない。十年分の記憶はまだ戻っていないが、だからと言って自分が火影である事実も変わらないのだから。 でも…――――――― 「オレとシカマルの事は、どうすんだってばよ…」 「お前はどうしたいんだ」 「納得いかねぇってば」 「ほう…昨日はそんな風に言って居なかったはずだが?確か、苦手だと友達ごっこは御免だと言っていたな、お前は」 ナルトは返事に詰まる。彼の言う事に間違いはない。そう自分の口で言ったのだ。だけれど、昨晩ほんの僅かな時間ではあったが、シカマルと話をする事によって自分が虚勢を張っている事に気が付かされたのだ。 「オレ、……思いだしたいんだってばよ。オレとシカマルの事」 真剣な表情でネジを見つめたナルトは、言葉に出来ない気持ちを彼を見つめる事で伝える。ネジは口元に笑みを乗せた。まるで、しょうがないと言われている様な笑みだった。ナルトにはそう見えたのだ。 「シカマルは教えてくれないのか?」 「分かんねえよ…ンなこと」 そこが一番引っ掛かるのだが、敢えて口にしない。口にしたら、寂しい気持ちに飲み込まれてしまうのではないか…そんな風に思えてならない。 「そうだな。確かにナルトとシカマルの思い出は二人のものだ…分かるか?」 「な〜んか、ネジっぽく難しい言い回しだってばよ」 眉間にしわを寄せたナルトは、むうっと口を歪ませる。 「二人で共有した時間は、二人のものになる。ナルトの記憶はシカマルのものであり、逆もまた然り…」 「…って事は、シカマルの中にあるオレとの記憶はオレのもんって事?」 「そう言う事になるな」 ナルトは単純に感心してしまった。面倒な思考は避けて通りたい性分だから、物事を深く探求すると言う事はない。本能、直感、それが六代目火影の魅力だとも言えるのだが。 「お前の記憶がシカマルの中にあるのだから、聞き出せばいいだろう?ナルト、お前にはその権利があるんだ」 「権利?」 ネジは頷くと、ナルトに横になる様に指示する。それに大人しく従ったナルトは不思議な気持ちでネジを見上げた。不思議顔のナルトの顔の横にネジが手を付く。 「…ネジ?あの、これって……」 ナルトを覗きこみながら、ネジは自分の唇に人差指を当てる。黙れと言われたのだから、ナルトは素直にそれに従った。 「…もうすぐだ、ナルト」 「え?なに…?」 バタンと部屋の扉が開いた。それでも、ネジはナルトに覆いかぶさる様な姿勢を崩さない。ナルトはどきどきしながら、近くにあるネジをじいっと見つめてしまった。 その視界が不意に広がる。 「なにしてんだよ…ネジ」 不機嫌そうな顔をしたシカマルがそこには居た。ネジの肩に手を掛けた彼は、きつい眼差しを彼に向けていた。 「あ…シカマル…これは」 ナルトが口を出そうとするのを、ネジの手で止められる。彼はすっと手を上げただけだが、ナルトには黙っている様に指示された気分になったのだ。 「ナルトを起こしにきたんだが、それが何か問題でもあるのか?」 「問題って、今…お前ナルトに――――」 ちらりとシカマルがナルトに視線を移す。ナルトはどうしたらいいのか分からずに、ぐっと押し黙った。 「言ったはずだがな?お前が手に余るようなら、俺が引き受けると」 シカマルがぎりっと唇を噛みしめる。 「てめぇ…マジで言ってんのか?」 「冗談でこんな事はしないだろう、常識で考えても見ろ」 くすりと笑ったネジは、肩にあるシカマルの手を払った。一発触発の雰囲気を感じたナルトはオロオロとネジとシカマルを交互に見る。 「勝手な事、言うんじゃねえよ。ナルトは俺の…!」 「…なんだと、言うんだ?」 挑戦的なネジの視線に、シカマルは言葉を飲み込む。 「迷いがあるのならば、お前にナルトを任せる訳にはいかない。俺が言いたい事はそれだけだ。反論があるなら聞かせてもらおうか」 「俺は…」 「やめてくれってばよっ!」 ナルトはネジを止めるつもりで、声を上げる。二人を見ては居られない。何がどうなってこの状況が生まれているのかも分からない。ネジがどうしたいのかも、ナルトには理解不能だ。ただ、苦しそうにしているシカマルを見ているのが辛かった。彼を見ているだけで苦しくなる。 「シカマル…」 名前を呼ばれたシカマルは、ナルトに視線を落とす。ナルトは俯いていた。ぎゅっと握りしめた手は震えていた。 「ネジ。オレ、シカマルと話したい事があるんだってば……だから、席を外してくれってばよ」 「全く……猿芝居も台無しだな」 「悪りぃ…ネジ」 退室を命じられたネジは、ナルトのその言葉に頷く。そして、シカマルの手に巻かれている包帯を目にしてふっと笑った。 「シカマル、少しはナルトを信じたらどうなんだ?それと自分自身の気持ちにもな。見ているこっちの方が馬鹿らしくなる」 それは初めて口にする、シカマルへの本心だ。シカマルに業と煽る様な事を言って、この状況を作り出した。切れ者だと言われるこの男も、ナルトの前では只の人に成り下がるらしい。それを利用して心の奥にあるものを吐露させる気でいたのだが、それは自分の役目ではないとナルトの声を聞いた時に悟った。ネジが部屋を出て行った事を確認したナルトは、すっと顔を上げる。 「シカマルはオレの事、信じられないから……何も教えてくれないのかよ」 「ナルト」 「オレはシカマルを信用して、近くに居て欲しいって思って、仲良かった友達なんだろ?」 「……そうだ」 シカマルの返事にナルトはくすくすと笑った。それから、手元にあった枕をシカマルに投げつける。 「嘘ついてんじゃねえってばよっ!」 「そんなことは…」 「ないって言うのかよ?じゃ、どうしてシカマルはオレとの関係、全然教えようとしてくんねえの?ネジだってそうだ。なんでだろって思った。だけど、さっきネジに言われて気が付いたんだってばよ……オレの記憶はシカマルの記憶だから、だからネジはオレに言わない。知ってる事しか言わない。それに、オレとシカマルの二人の事に関しては、何も教えてくれようとはしねえ……だって、そうじゃねえの?オレらの事は、ネジには分かんねえじゃん。だから、言えないんだってば」 ナルトは見えそうで見えなかった何かが分かりかけている様な気がしていた。シカマルは全てを思い出す事が、全て良い事ばかりではないと言った。けれど、ナルトはそれも含めて今の自分を形成するものだと胸を張って言える。 「俺にとってお前は、諸刃の剣だ。そんで、ネジから言わせるとナルトにとっても俺は諸刃の剣らしいな…」 「諸刃の…剣?」 「ああ、そうだ」 シカマルの顔は穏やかな表情になっていた。ナルトからすれば、それが不思議でならない。彼はベッドに腰を掛けると、ナルトの頬に手を当てる。 「俺は自分の事しか考えてねえ腰抜けだ。だけどな、…ナルト。お前の存在は俺にとって、自分よりも大切な存在でもある」 ナルトはじっとシカマルを見つめる。シカマルの言葉の意味を考えて黙ったままシカマルを見つめた。 「俺はお前を離せそうにねえよ」 ナルトが気付いた時には、シカマルの腕の中に居た。それがひどく当たり前のような気がして、心が震えるのが分かる。ざわざわと胸をざわつかせる感情は昨夜感じたものと同じだった。この腕の中に居ると、不思議と安心できた。不思議と温かな安堵感に包まれる。 「なんでだよ…なんでだってばよ」 ナルトはぎゅっと顔をシカマルの胸に押し付ける。曖昧な答えはいらない。目元が熱くなる。この涙はどこから溢れてくるのだろうか。無理をして笑うなんて事はできない。そんな必要はない。そうだ、シカマルの前では必要はないのだ。ナルトの頭の中にヒナタの言葉が思い出される。シカマルと居る時の自分はとても自然体だったと言っていた。彼の前では、ありのままの自分で居られたはずだ。泣いて、笑って、怒って、自分の心の声に素直な自分で居られたはずだ。自分が一番自分らしく居られる場所に、代わりなんてないはずなのだ。即ち、シカマルの存在は自分にとって代用のきかない大切な存在だと言える。 「すげえ大切な事なのに…なんでオレってば思い出せないんだってばよ。なんで忘れちまえるんだってばよ。なんで、オレはシカマルの事だけ…忘れちまったんだってばよ……シカマル……」 ぽろぽろと零れる涙がシカマルの胸を濡らしていく。苦しんで震えている身体を抱きしめても、ナルトは泣きやむ事はない。それどころか、自分を責めて悔いている。 「泣くな…ナルト。俺はずっとお前の傍に居る」 「シカマルには……オレの事、忘れて欲しくねえよ。オレとの事、忘れたふりなんてしてほしく…ない」 最初に彼を否定してしまったのは自分なのだけれど、我儘なのかもしれないけれど、シカマルに自分を否定されたくない。 「お願いだってば…」 掠れたナルトの声に、シカマルはぎりっと唇を噛みしめた。
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あの…ちょっとギャグを…とか思って書き出した話なのです。
だから、顛末はお粗末なものなのです(-“-)
こんなシリアスな感じになってますが。
どうしよう。…とちょっと焦ってみる。
ラストはとんでもなく、くだらない感じなのです(先に告白☆)