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悪戯 3

 

 

 腕の中でぼんやりしたナルトの顔が少し赤い。

「マジで湯あたりしたか?」

 心配そうなシカマルの言葉に、恨めしそうに視線を送るナルトは頷いた。

「…な〜んか、そうみてえな感じ……」

 シカマルの作戦勝ちみたいな感じで肌を重ねてしまい、それからも湯船の中でいちゃいちゃしてしまった所為か、頭がぼうっとするのだ。

「もう上がるってばよ〜」

 シカマルの腕をどけて急に立ち上がったら、くらりと天井が回った。

「あれ…?」

 と思った瞬間にシカマルに抱きとめられている。ゆっくりと浴槽の淵に座らされた。

「急に立つなって…」

 そう言いながらも、タオルを水に浸し首筋に当ててくれる。

「あ、気持ちいいってば…」

 ふいに言葉にして、既視感を感じた。シカマルによって、何度も言葉にした科白。それを思い出してナルトがかぁっと頬を染める。ここは自分の部屋でもシカマルの部屋でもない。浴室だ。浴室を「そうゆう場所」に使ってしまった事が、ひどく後ろめたくかつ恥ずかしい。

 シカマルは真っ赤になっているナルトの顔を覗きこむ。その表情は真剣にナルトを心配しているものだった。その顔がすごく真面目に見えて、不謹慎な事を考えている自分により一層羞恥してしまう。

「ちょっとは楽になったか?」

 湯気に隠れていた、シカマルの身体もしっかりと見える。その姿にナルトは視線を外した。

「うん…だいじょ…ぶだってばよ」

「まだ顔が赤いな」

「大丈夫!」

 両手でシカマルの胸を押し返すと、シカマルのもなんとなくナルトの考えて居る事が読めたらしい。にやりと笑って、わざとナルトと視線を合わせようとする。

「ナルト〜?」

「顔、近付けんなってばっ!」

 シカマルはくすくす笑いながら、逃げるナルトの身体を抱きしめる。

「照れんなって…さっきまでずっと、一緒だっただろ?」

 囁くような声が耳元に響いて、きゅと目を閉じると唇に温かいものが触れた。もちろんそれがシカマルの唇だと言う事が分かる。躊躇なく差し出された舌に自分のそれも重ねてしまう。ついさっきまで、恥ずかしくて堪らなかったのに、こうやって求められてしまうとだめなのだ。自分の方がもっとと言う気持ちで求めてしまう。こんな気持ちはシカマルから見れば、お見通しなんだろうか。それもちょっと悔しいが、キスするのは嫌いじゃない。

「ん…ん、は…っ」

 絡まる熱に、擦れる唇。抱いた腕はナルトの濡れた髪を弄ぶようにしている。腰に当てられた手が、ぐいっと身体を引き寄せる。

「あ…シカ…」

 一気に上昇するのは、羞恥心ではない。そんなものはとっくの昔に難なく払拭されており、胸の鼓動がどくどく鳴って、シカマルの与えてくれる熱に酔っている。

「まじで…倒れる…って」

 湯に浸かっていたからじゃない身体の熱さは、容易く高まって行く。ナルトだってシカマルを求めているのだ。もともと色事に対して無頓着で、シカマルを誘うなんてことはできないのだけれど、いつも一緒に居たい気持ちはナルトにもある。

「ナルト、上がるか?」

「ん…」

 離れたくはないけれど、このままここにいるのも可笑しいと思う。ナルトは素直に頷く。もちろん、まだふらつく身体はシカマルが支えてくれる。ナルトはふと視界に入ったシカマルの下半身に目を丸くした。それは見ただけでも彼が興奮状態にあった事を示して居て。

「あの…シカマル?」

 その視線を感じたシカマルは照れたように笑う。

「しゃーねぇ。お前とキスすんだけで、こうなんだよ」

「…なんか、嬉しいってば。オレの事、好き…なのかなぁとか…」

「今更、バカみてぇな事言ってんじゃねえよ」

 シカマルはナルトを座らせると、さっさと自分の着替えを済ませる。ヨシノが用意してくれたのは浴衣だった。シカマルは着なれているのか、腰帯もさらりと巻いてしまう。それからナルトを立たせて、袖を通した。

「俺のじゃ、ちょっと丈が長げえか…」

「これから伸びるんだってばよっ!」

「へいへい…」

「シカマル〜!」

 シカマルは器用な手つきで、浴衣の丈をナルトに誂える。その手際がよくてナルトは感心してしまった。

「上手いってば…」

「ん?男締のことか?腰帯は、要は慣れだよ慣れ。お前はあんまり浴衣とか着ねぇだろ?」

「うん。温泉行った時に着るくれえだけど、こんなにきっちりと着れねえなぁ…」

 適当に着て、適当に帯を結ぶくらいだ。寝相があまりいいと言えないので、朝になったら肌蹴て着ていても着ていなくても同じような状態になる。

「ナルトのことだから、合わせとかも適当そうだよな」

「……知ってるってばよ」

 一度、自来也に大笑いをされてそれから気をつけるようになったのだ。それはシカマルには秘密だが。

「ほい、完了」

 あっという間に終わってしまい、ナルトは感心した。育ってきた環境の違いもあるだろうが、さらりと浴衣を着こなすシカマルを見て格好いいなぁなんて思ってしまったのだ。

「湯あたりしたのは大丈夫か?水でも持ってきてやろうか?」

 心配されてくすぐったい気分になった。嬉しいけれど、気恥かしい。ナルトはくすりと笑うと、笑顔を浮かべる。

「ちょっと休んだから大丈夫だってばよ。シカマルは心配し過ぎだってば!」

「そりゃ俺にも原因はあるからな?」

 シカマルはにやりと笑う。その原因を思い出したナルトは一気に真っ赤になる。

「そ、それは…あの…なんてーか……」

 もごもごと言葉尻を濁すと、シカマルが笑った。なんだかそれにむっとしてしまうのだが、シカマルはちっとも恥ずかしいとか思っていないのだろうか。ナルトはそれが不思議だ。いつも自分だけが翻弄されてしまう事に不満を覚える。それを口にすると、シカマルは平然と言ってのける。

「全然、恥ずかしくねーけど?」

「ええ!それってば…鈍感だってばよ」

「失礼な奴だな…お前」

 じっとりと見つめられて、ナルトは顔を背ける。

「だって、オレは恥ずかしいんだってば…」

「人を鈍感呼ばわりすんなよ。目の前にお前が居たら、やること一つじゃねえの?ンなの当たり前だろうが。」

「あ…当たり前って、なんかそれってば横暴っぽくねえの?」

 別に身体を重ねる事に否定的ではないが、それだけだと言われるとカチンとくる。シカマルをぎろりと睨みつけたナルトは、納得いかないと言った様に頬を膨らませている。

「横暴?なんでだよ。ナルトを見たら抱きしめたくなるのは、勝手な事か?」

「やること一つって…言ったじゃんか!なんか傷ついたってばよ…」

「最初にやる事って意味だよ。めんどくせえなぁ…ンな事、説明させんじゃねぇよ」

 シカマルはぽりぽりと鼻の頭を掻く。彼が照れた時に見せる仕草を目にして、ナルトは自分が怒っていた理由も忘れる。

「好きだってばよ。シカマル」

 照れ笑いを乗せて告白すると、シカマルがじいっとナルトの顔を凝視する。それから、ふっと彼特有の笑みを見せた。ナルトの言葉は何時も上手に自分を喜ばせる。ツボを心得ているように。それが天然だから困るのだ。少しはあざとい部分も見たい。けれど、基本裏も表もないナルトの性格からして無理に近いだろう。心の内の全てを告白されているとは思わないが、嘘もない。

 このままナルトを抱いて眠ろうと思っていたのに、それは出来ない相談になりそうだ。自分の中のもう一人の自分と葛藤を繰り返すが、容易に説得させられる気がした。

 黙ってしまったシカマルに不思議そうにしたナルトは、クイクイと浴衣の袖を引っ張る。

「どうしたんだってば?シカマル〜?」

「ん?ま…いっか、明日は合同演習だしな」

「へ?合同演習だとなんかいい事あるってば?」

 バスタオルをナルトの頭に被せる。

「こっちの話。普通の任務よりも、楽だろ?気分的にさ」

「そっかなぁ?」

 ナルトは首を傾げる。シカマルはそんな仕草にくすりと笑いながら、脱衣所のドアを開いた。もちろんナルトはそんなシカマルの後ろをとことこ付いてくるのだ。

 廊下の途中でヨシノと会う。彼女はシカマルの友達が泊まる事を素直に喜んでいた。

「シカマル、ナルトくんの布団を部屋に運びなさいね。別に、和室でそのまま寝てもらってもいいけど…」

 和室とはあの和室である。皆で怪談話をした部屋になるのだが、ナルトはそれに気が付いていない。

「あ、シカマル。わざわざ布団運んでもらうのも悪りぃし…和室で寝よっか?」

「は?いいのか?」

「なにがだってばよ?」

「母ちゃんの言う和室ってのは、さっきまで皆でいた部屋だぞ?」

 ナルトはさーと血の引く音を聞いた気がする。その部屋で金縛りにあったのだ。シカマルが一緒に寝てくれるといっても、ご免被りたい。もの凄い勢いでぶんぶん首を振ったナルトは、青ざめた顔でシカマルを見上げた。

「おばちゃん!オレ、自分で布団運ぶし…シカマルの部屋で寝るってばよ」

「別に私はどっちでもいいんだけどね。明日の朝は早いんでしょう?夜更かしなんてしちゃだめよ」

「しないしない!ソッコー寝るってばよ。シカマル、早く一緒に寝ようってばっ」

 せっかく忘れていた怪談話の事を思い出して、ナルトは背筋が寒くなる。早く布団の中に入って、夢の中へ行った方がいいのだ。寝てしまえば、こんな気持ちも忘れてしまえるだろう。シカマルの部屋に戻る前に和室に寄り、用意してある布団を抱えながら部屋に戻った。

 だが、シカマルのベッドと並行するようにそれを敷いたナルトは、心の中で念仏を唱えながら布団の中に潜り込んでしまったのだ。その姿に、シカマルは力なく笑う。

「お〜い…ナルト。人の事誘っといて、一人で寝んなよ」

 ナルトが掛け布団からぴょっこりと顔を出す。

「何の事だってばよ?」

「一緒に寝よう…つったよな?」

 シカマルはにやりと笑った。それを見たナルトは自分の言動を思い返す。確かに、早く寝ようと彼に言った。それから考えるように口を開く。

「え…一緒にって、同じ部屋でってことで…」

「俺には同じ布団で…って聞こえたけど?」

「シカマル…同じ布団で寝てもいいんだってば?」

 ナルトはがばりと起き上がると、懇願するような瞳を向けてくる。

「鬱陶しいかなって思って、遠慮してたんだってばよ〜!シカマル、一緒に寝ようってばっ!」

 浴衣の裾をきゅっと掴んだナルトは、上目づかいでシカマルを見つめた。もちろん、そんな風に返されると思って居なかったシカマルはちょっと驚いて、自問自答に決着をつける。ナルトから一緒にと言って居るのだから、それに便乗してしまえばいいのだ。

 シカマルは跪くと、ナルトの襟元を引き寄せて彼の唇にキスを落とした。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

お膳立てされたシカマル(ナルトにはそんな気はないけど…)は

いっちまえ!って感じな心境です。

なんか、シカマルが中忍になってんのに合同演習があるのかどうか不明ですが。

ま、そんなことはおいときましょう!

また、続いちゃったなぁ。