ラグナロク

 

 

 

Innocent loveU-4

 

 

 あの最悪な夜から数日が経った。シカマルからの連絡はぷつりと経たれたまま。それは直接に、と言う事だ。キバやチョウジたちとナルトの部屋に遊びに来る事はある。大した話は一切しないが、ナルトにとってその時間は苦行の時間にも思えた。

 まだ、怒っているのだろう。ナルトからはシカマルに連絡してみようと言う気がなかった。おかしな話に思えてしまったのだ。生徒からの告白に戸惑っていたのは本当だし、このまま何事もなかったように彼らが卒業していくのもいい。

「先生〜お邪魔します!…あ、なんだ、シカマル居たの〜?」

 明るい髪の色と声。長い髪をポニーテールにした彼女は、数人の女子生徒も連れて来ている。

「なんだよ、いの。俺がいちゃまずいことでもあんのかよ」

「べっつに〜…」

 いのが連れてきた女生徒の中にはヒナタもいた。引っ込み思案な感じで、いのの後ろに隠れる様に俯いていた。それを目聡く見つけたのはシカマルである。

「ヒナタ…」

「あ、シカマルくん」

 一瞬、二人の間に入り込めない様な雰囲気が出来た気がしてナルトは視線をそらす。人数が増えた事で準備室は賑わしくなった。

「センセ―、飲み物買ってきたよ!」

「おう、いの…サンキュ」

「な〜に?先生元気ないじゃん」

「そんなこと、ねーってばよ」

 笑みを浮かべると、いのは肩をすくめてお気に入りのリンゴジュースのパックを空ける。

「元気ない時は、おいしいものだって!はい、先生」

「だから、元気だってばよ」

「いーの!はい」

 いのとのやり取りをじっと見つめている視線を感じる。気になってそこに顔を向けたナルトはヒナタと目線が合った。驚いたようなヒナタはぱっとナルトから顔を背けた。ナルトはそれを不思議な気持ちで見つめてしまう。そして、その景色にシカマルの姿が映った。ヒナタに向かって何かを話している彼。ヒナタが背中を向けてしまったので、彼女の表情は見えない。胸がきゅうっと苦しくなる様な感情が生まれた。ナルトはいののくれたジュースを一口飲んで、ぱんぱんと手を叩く。

「今日はこれで解散だってばよ〜!」

 驚いたような生徒たちは、口々に文句を言うがナルトは相手にしない。

「先生にだって、仕事あんだって!また、来てくれていいから」

 しょうがないと言うように腰を上げ始めた生徒の中で、座ったままナルトの事を見つめる瞳がある。ポケットに手を突っ込んで、机に凭れて座って背中が猫背になっていた。その肩を友人にポンと叩かれた彼は、曖昧に頷きながらも腰を上げる事はなかった。

「シカマル、行くぜ?」

 扉から出ようとしているキバが声をかけるが、シカマルは「すぐに行く」と答えただけで顎をしゃくった。そして、全ての生徒が出て行った部屋の中はナルトとシカマルの二人になる。

 息がつまりそうなくらいの空間に、ナルトは唇を噛んだ。

「シカマル、オレ…仕事あるから」

 ようやく勇気を振り絞っても、出てくるものは当たり障りのない言葉である。

「ああ、早く出てけって?」

「そんな事は……」

 真っ直ぐにシカマルの顔を見るのも辛いのだ。俯いているナルトの目には、もう包帯を巻いていない手が映った。

「…手の、怪我…」

「あれは自業自得だからな、それにすぐに直った」

 ナルトはそれ以上の言葉を発する事が出来ない。何を話せばいいのか…こんなに悩んだのは初めてかもしれない。

「あの夜の事は……先生も忘れてくんねーか?」

「…え……?」

 驚いて顔を上げると困った様なシカマルの顔がある。

「すげえ、自分でも情けなくってよ」

「だって…あれ、は……」

「俺が悪りぃんだよ。勝手にヤキモチ妬いて、先生にぶつけたんだからな」

 自嘲するような笑みを見たナルトはなんだか悲しい気持ちになった。そこまでシカマルを怒らせてしまったのは、自分の言動なのに。それを何もなかった事にしてしまってもいいのだろうか。それは見えかけている自分の気持ちにも蓋をしてしまうような気がする。

「先生、怒ってんだろーなって…メールも電話もできなかったしよ。もう、そういうのめんどくせえんだ」

「面倒…?」

 その単語がナルトの頭の中をぐるぐる回る。自分との関係が面倒だと言われている気持ちになった。忘れてくれと言う言葉も、シカマルの好意を全てなかった事にしてほしいと言うように聞こえる。それでは、自分のこの感情はどこへ行くのだろう。

「先生…?」

 驚いたようなシカマルの声で、ナルトは顔を上げる。

「なんで、泣いてんだよ?」

「泣いて……」

 なんかないと反論しようとした所で、頬を液体が伝う感触を感じる。シカマルは眉間にシワを寄せたままナルトに近づくと、手の平でナルトの頬を拭った。

「泣いてんじゃねえのかよ」

「泣いてんな…」

 くすっと自分の事を笑ったナルトはシカマルの手が自分の頬に当てられていることにホッとした。温かい。この温かさを与えられる事が当たり前になっていた。高飛車になっていたのだろうか。シカマルが自分に向けてくれる好意を厄介なものだと決めていたのに、それが他へ向いてしまった事で慌てていたのだろうか。同じ男だとか、年下だとか、生徒だとか…そんな枷がナルトの心の中で音を立てて外れて行く。認めてしまえば簡単な事だ。

 あの夜も、シカマルからの電話を待っていたのだ。それでも、彼からの連絡がない事に苛立った。そんな自分が苛立ちの原因だ。シカマルが…ではない。自分ではなくてヒナタを優先されている事に、勝手に怒っていた。その権利は自分にあるのだと思い込んでいた。だから、携帯電話の電源を切って外出したのかもしれない。もし、シカマルが自分に連絡してきた時を考えて、自分と同じ思いをすればいいと浅ましい気持ちで居た。

 彼の気持ちが見えなくなるくらい、近くにいた存在にやっと気が付いた。気が付いた時には遅かったのだと思う。自分からシカマルに歩みよろうなどと考えられなかったのだ。それは、簡単な答え。自分が傷つきたくないから。きっと、ナルトがあの晩シカマルにぶつけた言葉によって彼を傷つけたと言うのに……ナルト自身は自分が傷つく事が怖かった。

 現実を認めることに恐怖を覚える様に。曖昧なままの関係でいればいいと思っていたのだ。

「シカマル…お願いだから、出てってくれよ」

 ナルトは両手で顔を覆う。自分が情けない。こんな姿を誰にも見せたくない。

「もう…」

「俺は先生を好きだからな。絶対にそれだけは譲れねえからな!」

 静かな声は少しだけ震えているように聞こえた。

「先生はヒナタと俺が付き合えばラッキーくらいに思ってるのかもしんねえけど…――――」

「ちが…う」

 その反対だとは口に出来ない。シカマルがくれる言葉はこんなにも自分を満たしてくれるのに、ナルトはシカマルにそれを与える事ができない。

「ヒナタとお前が仲良くしてるとこ見ると……苦しくなんだよ」

「…先生?」

「オレのが、すげえヤキモチ妬いてんだよ。そんな資格ねえのに……」

 ふわりとした感触がナルトを包む。そっと両手を外すと、自分を抱きしめているシカマルの姿が目に入った。

「夜、先生のとこに行く。そこで話の続きしようぜ……だから、逃げんなよ。アスマとメシとか行ってたら許さねえから」

 温もりが離れて一人きりになった部屋の中でナルトはぺたんと座りこむ。いつの間にか涙が止まっていた。

「オレ…何を……」

 シカマルに言おうとしたのだろうか。混乱する頭の中にはシカマルの最後の言葉だけが残っていた。

 

 

 

 

「やっと、見つけた」

 シカマルの肩を叩いた人物を眉をひそめて見返す。

「なんすかね…日向先輩」

「迷惑そうな顔つきだな?」

 くすりと笑った日向ネジは腕を組んでシカマルに向き合った。シカマルは廊下の壁に凭れながら、正直ネジの言葉を肯定する意味で俯く。

「…それで、いついい返事を聞かせてもらえる?」

「その、結果が決まったような言い方…どうにかなんないんですかね?」

「おや、決まっているだろう?」

 シカマルは深い溜息をつく。前回の中間テストでトップを取ったのは、ナルトに近寄るための口実でネジから言い寄られる事は計算外だった。ヒナタの相談に乗っていた事もあり、何度かネジとも会話をした事がある。だが、それとこれは別だ。

「俺には生徒会なんて似合いませんから……お断りっす」

 この間も延々とこの男に拘束されたのである。その事が原因でナルトとの関係に亀裂が入ってしまったと言うのに。

「入学時の成績はヒナタを抜いてのトップ。入学してきたのを見れば、特になんの能力のない男かと思いきや、それは全く違った」

「あの…この間の中間はマグレっすよ?」

「マグレの人間が、オール満点はないだろう?何か裏があると思って良い。これまで爪を隠してきたつもりだろうが…」

「は〜…マジめんどくせ……」

 思わず本音が漏れる。ネジはそれに関して咎める事はしなかった。

「ヒナタは了承した。後は、お前の答えを聞くだけだ」

「え?あのヒナタが?」

 内向的な性格である彼女がイエスの返答を出した事に正直驚く。率先して人の上に立って何かをできるタイプではない。元来な真面目な性格から、今もクラス委員を押し付けられていると言ってもいい。ただ、ネジ同様千里眼は鋭い。シカマルと違って観察するのが得意なのではなく、それは日向の血だと言っていい才能の一つだ。

「お前の言いたい事は分かる。性格を簡単に変えろと言っても、持って生まれたものを変える事は容易ではないからな。ヒナタはひとつ条件を出した。奈良シカマル、お前も生徒会に入るならば引き受けると」

「お、俺?」

 ネジは切り札を持っているような余裕の笑みだ。シカマルは訝しげな視線を生徒会長に向ける。

「そうだ、最初はお前の事は持ちだしてなかったんだがな。少し実状が変わったんだよ。来季の生徒会の担当の教師を知っているか?」

 シカマルは嫌な予感がした。きっと的中してしまうだろう、インスピレーションのようなもの。

「そんな事、一介の生徒が知る訳もないじゃないっすか」

「そうだな。確かに」

 尤もだと言わんばかりなのに、含んだ様な言葉にシカマルは察しがついている。ただ、はっきりとネジの口から聞いている訳でないし、それを口にする事が自分の弱みになるのではないかと口を慎んだのだ。

「お前には、特別にリークしてやる」

「いや、いいっすよ。嫌でも、来年になりゃ分かるでしょ?それに俺は生徒会には興味ないんで」

「それは困るな…ヒナタにも手に余るだろう。さすがに、ようやく二年目の新任教師に任されても。これで聡いお前の事だ。全て分かるんじゃないか?」

 シカマルは心の中で息をついた。嫌な予感ほどよく当たるものだ。

「……それって、決定なんすか?」

「ん?」

「今年、学園に新任してきたのは渦巻先生だけっすよ。バカな俺でも分かりますって…」

「ああ、そうだったな。カカシ先生の口調から察して、ほぼ決定事項だろう。どうだ、少しはやる気がわいたか?」

 シカマルは額に手を当てると、今度は隠さないで溜息をついた。

「条件はありますよ、先輩?ほんと、あんたは食えねえ…」

「奈良。お前ほどではないよ」

 その後、シカマルが出した条件を飲んだネジは不満顔のシカマルを残して職員室の扉を開けたのだった。

 

 

 

 呼び鈴。

「あ…」

 ナルトはどきどきしながら、インターホンのパネルを確認する。

「今、開ける…」

 住人の許可なくては開くことない重厚なガラスの扉が開いたはずだ。エレベーターを使って上がってくる人物の事を考えて、ナルトは落ち着かない。話の続きをすると言っていたシカマル。

 その続きの後に、どんな答えが待っているのか。自分がどんな答えを出そうとしているのかナルトは怖かった。それでも、久々に来訪する彼に内心の喜びは隠せない。ドアチャイムが鳴って、またドキンとした。かちゃりとドアを開けると、シカマルが居る。

「お邪魔します…」

「うん…どうぞだってばよ」

 たった数日だ。今までだってあった二人の中のインターバル。毎日やって来ていた訳ではないし、学校では毎日のように顔を会わせているのに。シカマルがこの部屋に来るのが、ひどく久し振りに感じてしまうのは何故だろう。

「お茶でも、淹れる…」

 シカマルに背中を向けようとして、その腕を彼に掴まれる。

「別にいいっすよ…」

「でも、オレが喉カラカラなんだってばよ」

「ふ〜ん……そうっすか」

 ぱっと離れた手が名残惜しい様な感覚を味わいながら、電気ケトルのスイッチを押す。いつものようにシカマルにはコーヒーを淹れた方が良いのか。それとも自分と同じく紅茶でいいのか。少し迷って、変な緊張をしている自分が馬鹿らしくなる。

「シカマル、何飲む?」

「先生は?」

 リビングで寛いでいるシカマルの姿が視界に入ってナルトはまた気恥かしい気持ちに襲われた。

「オレ?…紅茶かな」

「日本茶ある?」

「…あるにはあるけど、お前んちみたいに高級な玉露はねえってばよ。それに、あってもオレはうまく淹れられねえし……」

「ただの緑茶でいいんだけど…」

 いつもコーヒーを飲んで居るイメージが定着していたのだが、日本茶とは珍しい。それとも、自宅ではよく口にするのだろうか。ナルトは滅多と口にしないので、そのパッケージは開いていない。新しい物の封を切ると、また困ってしまった。急須なども一通りあるのだが、それはここに住む時に勝手に誂えられたもので、手にしている緑茶も同じだ。飲む事には慣れて居ても、どうやって淹れればいいのかナルトには皆目見当が付かない。

「シカマル、悪りぃ…オレ、淹れ方分かんねえ」

 呼ばれたシカマルは悠々とした足取りでキッチンまでやってくると、少し首を傾げながら目の前の湯呑に湯を入れる。

「要は紅茶と同じだって。湯呑を温めて、後は急須に葉を入れるだろ?んで、湯呑に注ぐだけ」

「へえ…そうなんだ」

 ナルトは感心しながら、シカマルと一緒になって茶器を覗きこむ。

「ああ、いい銘柄の葉だな。玉露なんかは温度とかも面倒だけど、この手は簡単だよ」

 あらかじめ沸騰した湯を湯呑に入れると、それを急須に注ぎ入れる。

「なんでポットのお湯、使わねえんだ?」

「湯呑に入れて、在る程度温度が落ちてからその湯を急須に入れんだ。後は、そうだな…一分くらい待って湯呑に注げばオッケーって訳」

 ナルトは素直に感心した。

「おっと…先生。急須を揺するなよ?そのまま…」

 湯呑に注がれた新緑色の液体。香りも十分だし、その色が美しい。それを盆に乗せたシカマルはリビングへと移動する。

「あ、先生。紅茶だっけ?」

 二人分のお茶を淹れたシカマルは思い出したように振り返る。

「いいってばよ。シカマルが淹れてくれたお茶が飲みてえし」

 シカマルはソファに座り、ナルトはその前に腰を下ろす。ローボードの上に置かれた盆の上から湯呑を手にした。一口飲んで、美味しいと思う。

「…うまい」

「うまいのは、葉の銘柄がいいからだよ」

「シカマルの手際がいいからだろ?オレなら、ポットのお湯を直接急須に入れてたってばよ」

 シカマルも一口飲んで満足そうだ。そして、その湯呑をテーブルの上に戻した。余分な音がない空間にコトリという音が鮮明に響いた気がした。

「あの…シカマル」

「その前に、先生。この間の夜はホントに悪かった……先生の事、怖がらせたよな?」

 ナルトは首を横に振る。本当は怖かった。激しすぎるシカマルの恋情をぶつけられて腰が抜けてしまったのだから。

「あの日…先生は俺からの連絡、待っててくれたんだ」

 シカマルの言葉にナルトは答えられない。確かにそうだし、その事をシカマルにも言った覚えはある。

「ヒナタと俺が一緒に居て、先生はヒナタに嫉妬してくれたんだよな?それって、俺が自惚れてもいい内容?」

 ナルトはかあっと顔が赤くなるのが分かる。身体中の血液が一気に集まってくるのを感じた。

「ヒナタと一緒にいたから、先生に連絡できなかった訳じゃねえよ」

「え…でも……」

 ヒナタと一緒にいたと、はっきりとシカマルは口にしたではないか。

「できなかったから、…メールも電話も。ようやく解放された時には、先生の携帯はつながらねえし…」

「…ご、めん」

「ヒナタと俺がお似合いだっての、アレって当てつけだよな?」

 ナルトは押し黙る。否定できないけれど、素直に肯定もできない。一番のターニングポイントなのだ。

「キバが……最近、お前とヒナタが仲良くって……付き合ってんじゃねえのかって……」

「ちっ…キバの奴。余計な事吹き込みやがって…」

「違うの、か…?」

「当たり前だろ?俺は何度も言ってるよな?先生が好きだって、先生だけだって…」

 ナルトはこくりと頷く。

 あの晩もシカマルはそう言っていた。

「先生。ヤキモチ妬いてくれたって事は、俺……答え貰っていいよな?」

 俯いてしまったナルトは煮え切らない態度だ。もう、明確な答えは出ているのに。

「先生……ここは学校じゃねえんだから、俺は先生の教え子じゃなくて、ただの奈良シカマルだよな?」

 ナルトの前に膝をついて座ったシカマルは無言のままのナルトを抱き寄せた。ナルトはそれを拒まない。抱きしめているシカマルの肩口に顔を寄せる。その肩が震えているような気がした。

「モラルなんて、最初から関係ねー…俺は、先生が好きだ。――――抱きたい」

 ぴくっと反応したナルトの身体をもっと強く抱きしめた。離すつもりも逃がすつもりもないのだ。

「先生は…気持ちが繋がってない奴とはセックスできねえって言った。今は?俺とは?最後の砦、今日は乗り越えていいよな?」

 強引なようで静かな同意の言葉を発するシカマルに、ナルトはどうすればいいのか分からなくなる。最後までいってなくても、それに近い行為は何度もしている。それが、もう答えなのだ。ただ認めるのが怖かっただけ。

「オレは……怖い」

「なにが?」

「それは…お前のオレへの気持ちだと思う」

「どうして?」

「前に言ったじゃん。同年代の女の子に好意を抱くのは当たり前の事だとオレは思う」

 シカマルはふっと笑った。

「先生、ちゃんと俺の言葉聞いてくれよ。モラルなんて関係ねえんだ…俺が好きなのは渦巻ナルトって言う一人の人間だ。すげー無茶苦茶な事言ってんのは、俺も分かってる。混乱してる先生を利用するような小賢しい真似もできる。でも、この気持ちにフェイクはねえ……嘘もつけねえ。じゃないと、先生押し倒す様な事出来ねえだろ」

「シカマル…」

 呟いた唇は震えているけれど、その唇にシカマルは触れるだけの口付けを落とした。柔らかい感触は久し振りで、興奮しているのが手に取る様にわかった。今まで欲してやまなかった存在が腕の中にいる。

「一生も、絶対もこの世には存在しねえってばよ……」

 少し諦めの色が伺えるナルトの声にシカマルは自信ありげな笑みを見せた。

「俺が、一生も絶対も証明してやる。ヨボヨボのじじぃになってもな」

「…でも、」

「だから先生。俺の事、好きだって言ってくれよ。俺からの電話待って、苛々したって、すげえむかついてたんだって…もっとヤキモチ妬いて俺を慢心させてくれよ……」

「シカマル…」

 認めてしまえば、自分も彼と全く同じとまでの確信は持てなくても、彼を見ている事を口にすれば、この胸の苦しみから解放されるのだろうか。

 ナルトは初めて、自分からシカマルの唇に自分のそれを当てた。

「……多分、好き…かな?」

「多分は余計なんだって。先生、俺の事を束縛していいんだよ。俺は先生だけのモノなんだからな…」

 心は当にナルトのものだ。彼が居るから自分は存在しているくらいの、骨抜き状態なのだから。

「先生…」

「先生って、呼ぶな…」

 弱々しい反論をシカマルは唇で塞いだ。

「ん…っ」

「ナルト……もう、止まらねえよ」

 シカマルは床の上にナルトの身体を横たえた。

 

 

 

 

  

 

 

本来の進み具合からいって、赤文字指定まで行きたかったのですが。

途中、ネジとの会話とかちらほら入れたので…次回に回ります〜

認めたよね?ナルト先生。

ナルトが一筋縄ではいかないと言う事を、シカマルは気が付く事ができるのか!()

次回くらいで、Innocent〜Uもエンドマークかな?

ナルトがシカマルを受け入れるまでが、Uなので!!