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Innocent loveU-2
ノックもなしに扉が開く。 ぼうっとして窓の外を眺めていたナルトはびくっとしてしまった。 「ちぃ〜っす!」 「お邪魔しま〜す」 ナルトは元気な教え子の姿を見て、ふうっと息をついた。そして、空いている机の上に放り出される菓子類。 「センセ―、お茶くらいでるよな?」 当たり前のように言ってくるのは犬塚キバ。よいしょっと椅子に座って、もうぽりぽりと菓子を食い始めたのが秋道チョウジである。 「あんなぁ〜…別にオレんとこは、喫茶店でも休憩室でもねえってのっ!」 いつもならここにシカマルが加わるのだが、彼の姿がなかった。思わず扉を視線で追ってしまったナルトは、はっとしてキバとチョウジに向き直る。 「休憩できるとこは他にもあるだろ?」 ぶちぶち言いながらもお茶の用意を始めてしまうのは、学生時代の自分も彼らと同じだったからだ。気の合う仲間を連れだって、好きな教師の部屋に遊びに行っていた。ほぼ毎日と言ってもいいくらい。そして、ナルトを迎え入れてくれていた教師も同じようにぶつぶつ言いながらも、毎回もてなしてくれたのだ。だから、ナルトも同じようにしてしまう。 「そう言うなって!ナルト先生の好きなジャガリコ持ってきてやったんだから、ほらよっと…」 ぽんと投げられて思わず受け取ってしまう。ナイスキャッチと笑ったチョウジは、次々と新しい菓子の袋を開け出した。それを横目にしながら、ナルトはいそいそとポットの湯を沸かし直すのだ。 ナルトは基本的にティバックの紅茶を持参しているのだが、彼らは各自で自分が飲みたいモノをこの部屋に持ち込んだのである。もちろん来訪してくるのは彼らだけではないので、喫茶店並みに飲み物の種類は揃っていると言っても良い。 私立校と言う事もあって生徒たちのリスティングルームはあるし、学年ごとには小さなガーデンホールも用意されていると言うのに、キバたちはいつもナルトの準備室でだらだらして行くのだ。気兼ねがないと言われれば嬉しいが、教師と言うよりも友達に近いような気もしている。教師陣の中では一番彼らと年が近いのだし、友達感覚でも別段と構わないのだが。 「あ…ヒナタ」 キバがいちごポッキーを口でもごもごやりながら、窓を眺めて呟いた。ナルトの準備室から唯一見えるのは校舎の渡り廊下である。 「あいつ、やっぱドジだよなぁ」 「ん〜?ヒナタがどうしたって?」 「ほら、なんかの資料じゃねえのか?落として散らばってんの…」 日向ヒナタはナルトが副担任を受け持つクラスの学級委員長だ。生真面目で、大人しい女の子。それに加えて成績もいい。少し内向的な所があるが、同性からも異性からも受けが良いのだ。キバと一緒に窓を覗きこんでいたナルトの後ろからチョウジの手がにゅっと伸びてきた。 「ね、ヒナタの後ろに居るのシカマルじゃない?」 シカマルの名前が出てナルトは内心どきんっとする。影から現れた彼は、何かを彼女と会話して居る。そして、散らばった資料をヒナタと一緒に集め始めた。 「お。シカマル、男だねぇ。優しいじゃん」 「キバ、シカマルは男とか女とかじゃなく優しいって。分かりにくいけどさ」 「え〜?そうかよ、あいつ…いっつもめんどくせーって腰重てえじゃん…」 ヒナタの手にある資料も奪い取ったシカマルが、彼女と一緒に歩き始める。方向的に職員室だろう。ナルトはなぜか不思議な気持ちになって、視線を外した。再沸騰を知らせるポットの音が聞こえたと言い訳を考えながら、マグカップを用意する。 「最近さ、シカマルの奴…やけにヒナタと親しげなんだよな。チョウジ、なんか聞いてねえか?実は付き合ってるとか…」 キバの声に思わずナルトの手が止まる。 「さあね、知らないけど…?」 「お似合いつったら、お似合いだよな〜って今見て思ったんだけどよ、お前はどう思う?」 「ボクたちが決める事じゃないって、キバ…。多分、この前の中間でシカマル学年トップになったじゃない?それと関係ありそうな感じなんだけどね〜」 ナルトはじっとカップを見つめる。確かに親しげに話しているように見えたシカマルとヒナタは、キバが言うようにお似合いだった。 ナルトのここ数カ月でシカマルの暴君的な一面を知った。やんちゃ坊主だと思っていた彼にも大人っぽい面があったのだとも知った。面倒見が良くて、割とまめなところも…。ヒナタくらい控え目な女の子の方がシカマルには似合いである。それに、彼らが付き合う事になんの障害もないのだから。 そこまで考えて、バカな事を思った自分に笑ってしまった。別に自分とシカマルは付き合ってなどないのだ。好きだと告白されたけれど、別に付き合っている訳ではない。 「チョウジ、キバ。お前たち、なに飲むんだってばよ?」 同時に振り返ったキバとチョウジが別々の事を口にする。 「俺、カフェオレ〜」 「ボクは紅茶で〜。あ、ミルクイティがいい」 「はい、キバのは却下!今日は牛乳ねえの。飲みたきゃ買ってこい。チョウジもポーションのミルクしかねえぞ?」 キバは不満そうだ。反対にチョウジは別に依存はないらしい。 「なんだよ〜…自販行くのめんどくせーし…」 ぶつぶつ言いだしたキバは、携帯電話をポケットから取り出すと手慣れたようにボタンを押す。誰かに電話をかけだしたキバの姿をチョウジと一緒にナルトも見つめる。 「そういうことかぁ…」 「チョウジ、分かったんだってば?」 「うん、だって牛乳が売ってる自販機は西塔にしかないから」 大らかな性格の彼の口調はのんびりとしているが、頭の回転は早い。シカマルとは違う意味で機転がきくのだ。キバの行動もお見通しだというように笑ったチョウジがナルトに、いちごポッキーを渡した。 ナルトが首を傾げていると、キバはようやく繋がった電話に向かって大声で話し始める。 「あ、シカマル?…ん?ああ、今はナルトせんせんとこ…ああ、んでさ、なんでもいいんだけど、お前来るよな?自販で牛乳買ってきてくんねえ?…は?……ああ、ふ〜ん。わーった…」 ぱちんと二つ折りの携帯が仕舞われた。 「ざ〜んねん、今日はシカマル帰るらしいぜ?ナルト先生、俺もポーションのミルクでいいわ〜」 「あ、うん…」 ようやくチョウジの言いたい事が分かった。西塔には職員室がある。今、自分たちはシカマルがどこへ向かったのかこの目で見ていたと言うのに、それがすっかりと頭から抜けていたのである。 「やっぱ、ヒナタとシカマル決まりじゃね〜?」 にやにやとしたキバがシカマルとの会話をチョウジに話し始める。なぜか、それをナルトは聞きたくなかった。がちゃんっとスプーンを置くと、驚いた顔をしているキバににっこりと笑いかける。 「しゃーねえから、可愛い生徒に牛乳買ってきてやるってばよ!」 本当は、何も聞きたくなくて一人になりたかっただけなのだけれど。
真っ暗な部屋の中で、液晶の画面だけがほんわりとした光を放つ。じっと見つめていると、その画面も暗くなる。すると、部屋の中も真っ暗になった。携帯をしまって、それから思い出したようにまた開く。ぱかっと開いた画面が明るくなって、再び部屋を照らした。 「…バカみてー」 ナルトは呟くと携帯電話をソファに放り投げて、部屋の灯りを灯す。しゃっとカーテンを閉めて、いつもの様に浴槽に湯をためるためのスイッチを押した。そして漏れた溜息を飲み込む。珍しい事にお腹もすかない。いつもなら腹ペコで何かしらを口にしている時間だと言うのに、今日は何故か満腹な気分だった。ふと、夕方チョウジたちとお菓子を沢山食べた事を思い出す。 「…だからか」 キッチンのテーブルの上には、通勤用のカバンと一緒にキバのくれたジャガリコがあった。ぱりっとパッケージを空けてひとつをぽりぽり食べてみるが、それ以上の食欲がわかない。シンとした空間に明るい曲が流れ始めた。それは先程放りだした携帯電話からだ。ナルトは思わずそれを開いて、液晶に浮かんだ名前に肩を落とす。切れない着信音にしょうがなく通話ボタンを押した。 「…メシ?まだ、食ってねえけど。うん、じゃ行くってばよ」 ナルトは通話を終えると、携帯電話の電源を落とす。テーブルの上に置きっぱなしだったダッフルコートを着込むと、カードキーと財布だけをポケットにいれて外へ出たのである。 マンションのエントランスを抜ける。このマンションは元々ファミリー向けに造られているので、1階は大きなフロアになっている。そして、住居者が集まれる為の会議室のような部屋がいくつか点在して居て、来客者を待たせられるようなラウンジがあるのも売りだったような気がする。そして、小さな子供が遊べるような遊具室。昼間は母親たちの社交場になる。重厚なガラスの自動ドアを抜けて外へ出ると、クラクションが鳴らされた。ナルトは脇に寄せてある車に乗り込んだ。 「なんだ、元気が取り柄のお前が今日はしょぼくれてんなぁ?」 「べ、べつにしょぼくれてなんかねえし!それより、アスマ先生こそオレと一緒にメシなんて…いいのかよ?美人の奥さん待たせちまって…」 アスマは銜え煙草のまま、くくっと笑う。ステアリングさばきは慣れたもので、彼の走らせる車はスムーズに走行して行った。 「ナルト、教育方針書の提出して帰らなかったんだって?」 「あっ…やべえ!」 アスマに言われるまですっかり頭から抜けていた。生徒の教育スケジュールを学年担任に提出する期日は今日までであった。ナルトは真剣に頭を抱える。自分が担任しているクラスは一学年ではない。 「カカシ先生…怒ってた?」 伺うように聞くと、アスマは「さあな?」と返しただけだ。カカシはルーズだが、決められた事に対してはそうではない。 「出来てないから提出してないのか、提出するのを忘れてたのかどっちだ?」 煙草の火を消したアスマの視線が凹んだナルトに向けられる。 「提出し忘れ…ちゃんと、できてるってばよ。う〜…やべえなぁ」 「なんだ、出来てるなら大したもんだ。俺なんか、できてなくて居残りだからな!」 豪快に笑ったアスマをじっとりと見つめた。いつも定時で帰宅するアスマが残業している訳を知ったナルトはくすりと笑う。 「出来てるなら、メールで送る様にカカシが言ってたぞ?」 「なんだ、先生。伝言係?」 「うるせーよ。まぁ、俺はこんな事だと踏んでたがな〜って事で、次の飲み代はカカシ持ちってことだ」 「……つーか、マジでオレを賭けてた訳ってことかよっ!ひでーの…」 ぷんっと膨れたナルトにアスマが機嫌良さそうにまた笑う。 「まーまー…今日は俺が奢ってやるから、膨れるなよ」 ナルトは怒ったふりをしながら、窓の外を流れる景色を見つめた。光が流れてきれいだ。コツンと窓に額を当てる。アスマは元気がないナルトを横目で伺った。カカシとの賭けの為に電話をした時のナルトの様子が気になって思わず夕飯に誘ってみたのだが…誘って良かったのだろう。まだまだ教師としてはかけだし。だからこそ、ナルトは教師という仕事に毎日必死だ。いくら抜けている所があると言っても、カカシに厭味を言われるような事をするとは思えなかった。一番に慕っているのはイルカだが、それは兄弟のいないナルトが兄に慕うようなもので、カカシに対してはまた違った感情があると感じていたからだ。 「そーいやな、うちの美人のカミさんは今実家に帰ってるんだ。だから、気兼ねすることないぞ」 「なんだよ、早々に実家に帰られちまったのか?」 驚いたようなナルトの声に、アスマは舌を出した。 「バカ野郎!そんな訳あるか。腹がでかくなってきたからな」 「そっか、アスマ先生ってデキ婚」 「今は授かり婚って言うんだ、覚えとけ」 夏に結婚したばかりのアスマは早々に父親となる。照れたように結婚する事をナルトに話したのは暑い日だった。ナルトは首を傾げながら、指を折った。 「…でも、赤ちゃん生まれるの早くねえ?」 「ん?お前がそんな事知ってるとは意外だな?」 アスマは狭い駐車場にするりと車を止めた。そこは何度か連れてきて貰った事のある焼肉屋。倉庫を改造してある店は、全体的にモダンな造りになっておりおしゃれな雰囲気だ。アスマいわく、そうなったのはここ近年で以前はどこにでもある焼肉屋だったらしい。 「…男二人で焼肉屋って、色気ねえよな……」 「お前と色気なんか求めてないだろ。全く、減らず口」 おしぼりを受け取ったアスマは適当に肉を注文した。ドリンクはどうするのか聞かれ、なんとなく酎ハイを頼む。それをチビチビ飲んで居ると、皿にぽいぽいと焼かれた肉が放り込まれていった。 「お前が飲むなんて珍しいな。悩み事なら聞いてやるぞ?」 「そんなの…ねえし」 「じゃあ、食えよ」 「食ってるってばよ」 「カミさんな…妊娠中毒症ってので、調子悪くってな。だから実家帰ってんだ。なにかあっても困るだろ?」 「え?」 いきなり変わった話題にナルトが顔を上げる。 「それって、大丈夫なのか?」 アスマの愛妻はナルトも知らない人物ではない。アスマとの結婚が決まったので学校を辞めたまでで、春までは木の葉学園の教鞭に立っていた一人なのだ。早めに籍を入れたのは子供が出来たからだと聞いたのが、夏の話。 「ああ、大丈夫だ。もし、ひどくなれば入院するだけだし。気分は新婚から独身で俺も忙しいんだぞ?」 「ふ〜ん…紅先生、早く帰ってこれたらいいのにな。サクラちゃんにも電話してみようかな…その妊娠ナントカっての心配だし」 ナルトは箸先でカルビをつつきながら真剣に幼馴染の心配をする。初恋の人で、大好きな幼馴染は彼女の初恋の人と結ばれて今はお腹に赤ちゃんがいる。自分は派手に失恋してしまったのだけれど、好きな人が幸せになればいいと思えるようになってきたのだ。 「サクラか…元気にしてるのか?サスケも…」 「元気じゃねえの?別に今は学生ん時みたくつるんでねえもん」 いつも三人だった。特別だと言えると時間を共に過ごした幼馴染。今は就職したり結婚したりでバラバラになってはいるが、定期的に連絡はある。最近はナルト自身が忙しくてなかなか連絡もしていないのだ。 「たまには学校の方にも顔を出す様に、お前からも伝えてくれよ?」 「うん、アスマ先生が寂しがってたって言ってやるってば」 くすくす笑うとアスマもぷっと吹き出す。 「バカ言えよ、寂しがってるのは俺じゃなくてイルカやカカシだろ?」 「じゃあ、みんなって事にしといてやるってばよ〜」 食欲がないと思っていたが、食べ始めると腹に入るから不思議だ。それに、誰かと一緒に食事をするというのもいいのかもしれない。就職が決まって家を出て一番不満に思った事は、家事の大変さだ。それまでキッチンに立つ事すらなかったナルトだが、今は必要に迫らせてキッチンに立つようになった。ただ簡単な事は出来るが、あとは出来合いのものかインスタントに頼っている。 「先生、今度はオレが奢るから独身同士仲良くメシしようってばよ!」 「色気がねえんだろ?」 「色気がいらねえって言ったの、アスマ先生じゃん」 「ま、そうだな」 ドライバーのアスマはアルコールを口にしないがナルトはそれからもう一杯明けてから帰路につく事になった。行きと違うのは気持ちだけでなく、空模様もである。一人で家にいた時はもやもやした気分だったナルトは、今はそれがなんだったのか分からないくらいに復活して居た。だけれど、天気は曇天から雨に変わっている。車内はエアコンがかかって温かいが、外は冷たい雨なのだろう。それにアルコールも入っているので、ふわふわしていて気分がいいのかもしれない。 「ナルト、着いたぞ」 声を掛けられたナルトは自分が転寝して居た事に気が付く。 「あ…悪りぃ」 「いいからお前はメールだけ忘れるなよ?今の勢いじゃ、このまま寝ちまいそうだな」 唸ったアスマにナルトは、へへ〜っと笑う。 「大丈夫だって!」 「……お前、忘れてたな」 「今、思い出したから大丈夫だってこと!んじゃ、先生ごちそーさん!」 外に出てその外気温が低い事に肩をひそめる。クラクションを鳴らしたアスマに手を振ると、雨に濡れないように慌ててマンションの階段を上る。吐く息は白い。雨が雪にでもかわりそうだと、はあっと息を手に吹き掛けた。そして、自動ドアが開くのを待っている僅かな間にナルトは背後から抱きしめられる。 「わっ!」 自分の前に回った手に驚いて声を上げてしまったが、すぐにそれが誰だか分かって身体から緊張を解いた。 「シカマル…?」 自分の前で交差されている彼の手は酷く冷たい。それに、濡れているのか項に当てられたシカマルの額も冷たかった。 「ど、どうしたんだよ…」 「電話しても圏外だし……心配になって来てみりゃ、チャイム鳴らしても出ねーし……」 少し重たい声色。ナルトははっとする。公衆の面前で抱きしめられてじっとしているナルトではない。その腕を解こうとするが、シカマルは力を緩めるつもりはないらしい。 「携帯は…充電してる最中だってば」 ナルトは電源を切って放って来た携帯の事を初めて思い出す。 「アスマだよな…?あの車」 「メシ、誘われたから…」 どうしてシカマルに対してこんな説明をしているのか、ナルトは自分に苛立ちを感じた。それはシカマルの責める様な口調にもである。 「そんな事より、お前濡れてるじゃん。部屋に上がれってばよ……そうだ、風呂入れてあるから、入ってけばいいし……」 「飲んでんだ、酒」 今はすっかり酔いも冷めた。いきなりのシカマルの登場にびっくりしているだけである。 「酒くらい…飲むだろ?別にオレは未成年じゃねえもん」 ふうっとシカマルの溜息が聞こえた。ナルトはなんだか居たたまれない気持ちになってしまう。 「帰るわ…」 すっとシカマルの腕が解かれてほっとした内心、なぜか心配で振り帰る。ナルトが目にした彼はやはりぐっしょりと濡れていた。 「帰るって……シカマル、傘は?」 「家を出る時は降ってなかった」 「じゃ、持ってねえんだろ?待てよ、せめて傘持ってけって…!」 「携帯しねーと、携帯の意味ねえだろ?」 やっぱり、自分は責められている。機嫌の悪いシカマルを見て確信した。でも、責められる非がどうして自分にあるのか納得できない。 「お前だって、いつもならしつこいくらいメールとか電話とかしてくるくせに…なんの連絡もなかっただろ!なんでオレばっかそんな言われ方しなきゃいけねえの?」 「……できねー状況だからしてねえだけの話。したくねえからじゃねえよ」 ぴしゃりと言われてナルトはかちんと来た。シカマルは自分の事は棚上げで、まるでナルトが悪いと言う物言いだ。 「ヒナタと………、一緒だったからか?」 シカマルが少し驚いたような顔付きになる。それで、ナルトは自分の言っている事が間違っていないと確信した。 「確かに日向んち行ってたけど…なんで――― ああ、キバか。だから、牛乳な……先生は俺とヒナタが西塔行くの見てたって訳だな?」 全てがつながったと言うようにふっと笑ったシカマルが、髪から伝っていた雨を手で拭う。 「ヒナタと一緒ん時はオレに連絡してこねーのに…オレはなんでお前の事待ってなくちゃいけねえの?それっておかしいだろ」 「ヒナタは関係ねえ…」 「お似合いじゃねえの?ヒナタ、可愛いし…」 言葉を続けようとしたナルトの前に壁が出来た。両手がシカマルの手によって壁に固定される。威圧するように睨みつけられて、ナルトの怒りが頂点に達した。 「それ以上、言うなよ…先生。俺、めちゃくちゃ機嫌悪りぃんだわ」 幸い縫い付けられている壁は、ポストの裏側だ。エントランスからは完全に死角になるのが唯一の救いなのかもしれない。 「離せってば…」 「俺が好きだって言ってんのは先生だけだろ?」 「……お前は、ヒナタ見たいな女の子の方がお似合いだって……―――――」 勢いに任せて口を出た言葉はシカマルの唇によって奪われた。荒々しく口内を犯す舌には優しさの一つも感じられない。ナルトを屈服させるために力の差を見せつけられているようで……ナルトはシカマルの舌を噛んだ。 「…ッテ、やってくれんじゃん。先生」 唇に滲んだ血を舐めとったシカマルがふっと笑う。見た事もないシカマルの姿を目にしてナルトは初めてシカマルに対して恐怖を覚えた。確かに腕力はシカマルに負ける。だけれど、今までそれを誇示された事は一度もなかった。それに、こんな暴力的な扱いをされた事もなかった。 「お前には、関係、ない……」 思わず呟いた声が震えた。 「ハッ、確かにな。関係ねえよ、誰とメシ行こうが……関係ねえよな?俺が勝手に嫉妬してるだけだよ。こっちは何かあったのかって心配してりゃ、別の男の車からご機嫌に出て来て……手ぇ振ってる姿見て、嫉妬してんだよ。それも先生には、関係ねえよな?」 青ざめるナルトの顔を見ながら、シカマルは嘲笑を浮かべる。 「挙句の果てに、好きだって告白してる相手から他の女をあてがわれるような事言われて…我慢できるかよ」 ナルトを拘束していた腕が離れる。ほっとしたナルトの顔の横で、ドンっと言う音が響いた。視線をそちらへ向けると、壁には傷ついたシカマルの拳がある。たらりと垂れた赤にナルトはぞっとした。怒鳴られている訳ではない。ナルトは反対に怒鳴られた方がマシだった。静かに言葉を綴るシカマルの方が怖い。ずるりと壁に凭れて座り込むと、シカマルがナルトに背中を向ける。ナルトはその背中に声をかける事が出来ない。シカマルは傷ついた顔をしていた。そうさせたのは自分だと言うのだろうか。悪いのは全部自分だと言うのだろうか。 「あいつだって……電話、してこなかったじゃん……」 ヒナタと一緒に居たのだと悪びれた風もなく口にして。どうして、自分だけが責められなくてはいけないのか悔しくなる。ずっと携帯電話を見つめていた時には、ヒナタと一緒にいたくせに。自分の気持ちをかきまわすだけかき回して、それでいて好きなのはナルトだけだと言う。 「…ンなの……ずりいじゃん…」 ナルトの頬を無意識な涙が流れた。そして、どうして自分が携帯の電源を切ったのかを思い出す。そして苦々しさが口の中に広がった。携帯電話の着信が気になってしまうから、わざと家に置いて出かけた事も思い出す。 「シカマルの…バカ」 ナルトは冷たい石の上で膝を抱いたまま動けないでいた。
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今回、書くのがすんごい楽しかった!!
って、こんなすれ違いですが…少しずつってか、
丸わかりなナルトの気持ちにワクワクしちゃいました!
あと、他の出演メンバーの複線的なモノを少し書けたのも楽しいひとつです。
シカマルが嫉妬をぶつけるなんて、年下ならではなので、ワクワクなんだけど!