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始まりの朝 18
抱き締めた刹那、鼻につく石鹸の香り。シカマルはナルトの顔を覗き込む。頬を赤くしながら見つめてくる青い瞳が、動揺の色を濃くしている。色事に慣れていないと恥ずかしそうに告白され、ついさっきまで心の中を埋め尽くしていた嫉妬心がどこかへ消えてしまう。人間とはなんと単純な生き物なんだろうか。シカマルは頭に馬鹿な自分の一人相撲を思いだして、失笑した。 「わ…笑うなってばよ!」 ナルトはどう勘違いしたのか、自分の事を笑われていると思ったらしい。ギロリと睨み付けてくる顔が、照れ隠しなのだと分かってシカマルは嬉しくなる。 「バ〜カ、お前の考えてる反対。別にバカになんかしてねえよ。めんどくせーこと言うなよ」 「だって、笑ったし…!」 「別に俺だって、百戦錬磨って訳じゃねえぞ?」 手探りなのは同じだ。それに、気だけが焦っている事も確かである。ナルトを傷つけず、この思いを伝えたい。それが出来るのならば…の話だ。 「ナルト、一つ確認しとく」 「シカマルってば、さっきからそればっかだってばよ…」 ナルトは困ったように身を縮めた。本当は恥ずかしくて、穴でも掘って潜りたいくらいの心境なのだ。 「俺に抱かれても…いいのか?」 「どうゆう意味だってばよ」 ナルトの声は少し怒っているように聞こえた。 「まんまの意味だよ」 「意味…わかんないってば」 シカマルはじっと見つめてくる瞳に耐えられなくて、もう一度ナルトの身体を抱き締めた。ナルトは抵抗もせず、シカマルの腕に抱かれた。自分はきっと情けない顔をしている。シカマルはそれをナルトに見られたくなかった。それに返ってくる言葉も少し怖い。 「お前も俺も…男だからよ。嫌じゃないのか…?」 「なに、が…?」 「その、抱かれんの…」 なんとなくしか知識のないナルトを騙しているような気分になって、気が引ける。それと、逃げ道を塞ぎたいと言う狡い気持ちが心を交差する。 「嫌だって言っても止まんねぇとか言ってたくせに…」 白黒つけられないグレイゾーン。危うい場所にお互いが居る。 「オレは…よくわかんねーんだって言ってんじゃん。それ以外は言えねえもん…それに、オレはシカマルの事……ちゃんと好きなんだってばよ」 「もしかしたら、お前の事…傷つけるかも――― 」 「シカマルはそんなことしねえもん。それに、そんな事考えなくてもいいってばよ。オレがどう感じるかの問題なんだろ…?多分」 「ナルト…?」 「オレってば…シカマルから見たら、そんな弱く見えるってば?」 ナルトの声に迷いが感じられなかった。そんな些細な分析をしてしまう自分が嫌だが、その言葉が心底嬉しくも感じる。 「マジ…止まんねぇぞ」 「オレも男だから分かるっつうの!」 くすりと笑ったナルトの気配を耳元で感じた。シカマルは身体中の熱が下半身に集中して行くのを感じる。ナルトの一挙手一投足がシカマルを煽る。本人にその気がなくても、シカマルはそんな気分を拭えない。声も仕草も、見つめてくる瞳も、全てに誘われているような感覚。 シカマルはナルトの唇を奪った。 「う…んんっ!」 驚いたナルト一瞬だけ手足をばたつかせる。だがそれも深くなる口付けに、静かになっていった。ナルトがシカマルに用意した寝間着は浴衣で、その合わせをぎゅっと握った事により、すぐにシカマルの胸がはだける。 焦る気持ちとは裏腹に、ナルトの舌を丁寧に絡め取る。シカマルは彼の中から快感というものを引き出そうとしていた。怖気づいたように感じるナルトの動きは、分からないと言っていた事と関係しているのだろう。おずおずと差し出された舌に、ねっとりとそれを絡める。角度を変えながら唇を深く沈めて行った。歯列を割って舌を這わせると、ビクリとナルトの身体が反応した。シカマルの寝間着を持つ指がぎゅっと布地に食い込んでいる。シカマルは遠慮なく、ナルトの下衣に手をかけた。その中に空いている手を滑り込ませる。まだ反応していないナルトの下半身の中心を優しく握った。そして、ゆっくり数回扱いてやるだけで、その形がはっきりとしてくる。自分の掌の中で手応えを感じる事で、シカマルに自然と笑みが浮かんだ。 「んんっ…あっ」 唇が離れると、肩で大きく息を着くナルトの姿が目に入る。シカマルにどうされているか認識したナルトは、恐る恐ると行った風にシカマルを見上げてくる。その瞳が涙で滲んでいた。下衣の中で大きくなる陰茎はシカマルの手の温もりを感じながら、性欲という熱に誘う。シカマルはナルトの頬に唇を寄せた。それから口端から飲み込めなかった唾液が流れるのを確認して、舌先で掬う。 「シ、カマル…」 「どうした?ナルト…」 意地悪な質問をしていることは計算済みだ。答える事が出来ずに羞恥するナルトの姿が可愛い。 「さすがにこれじゃ無理があるわな。ズボン、脱がすぞ?いいか?」 「う…ん」 ナルトが真っ赤になりながら下衣に手を伸ばす。その間も、シカマルの指がナルトの下半身に触れたままだ。少し強く扱くと、ナルトの足がぎゅっと閉じられる。それから潤んだ瞳で睨み付けられた。強気な眼差しと反比例して、その態度は弱気なものだ。そのギャップが堪らなくいい。シカマルはナルトを弄ぶ手を抜くと、ぐいっと下衣を下ろした。 「腰、あげろって…」 ナルトが素直に従い腰を上げると、一気に下着ごとナルトから剥ぎ取った。ボタンが外されて両腕にだらしなく掛かっているだけの上衣が、いやらしく見える。ベッドを背にしているナルトには逃げ場所はない。だが、恥ずかしそうに両足を閉じられてしまい、上目遣いに見つめられた。ぎゅっと膝を抱えて座ったナルトは赤い顔を膝に埋めている。 「もう、止まらねぇかんな…」 耳元で囁くとナルトの身体がぴくんと反応する。 「だって…恥ずかしいんだってばよ〜」 くぐもった声に思わず苦笑する。恥ずかしがっている事は、ナルトの所作から手に取るように分かる。シカマルは柔らかい耳朶を口に含むとねっとりと舐めあげた。 「ん…っ」 片腕でナルトを抱き締めて、片手は下半身へと伸ばす。弱い抗いを見せるナルトだが、シカマルの手を振り払ったりはしない。膝をゆっくり割ると、そろそろとそれに従った。そんな可愛い仕草を見せるナルトにシカマルは欲情していた。初めて新雪を踏むような気分だ。誰も知らない、ナルトすら知らない領域に自分が居る事に優越感すら感じる。耳の付け根をきゅと吸うと、ナルトの細い腕がシカマルの首に絡み着いてきた。 「シカマル…!」 「ん、大丈夫だ」 シカマルの指が、悪戯にナルトの性器を摩る。少しの摩擦と、微妙な力加減にナルトは確実に反応を見せた。先の方から溢れた粘液を指の腹で円を描くように擦りつける。 「あ…ん…んん…っ」 「声も、我慢すんなって…」 ナルトはいやいやをするように首を振った。 「全く、変なとこで強情なんだからな。お前は」 単調な上下運動にナルトの息が上がった。その気配や息遣いがダイレクトにシカマルの耳元で感じられる。先の割れ目をぎゅっと押すと、ビクンとナルトの体が硬直した。 「はぁ…も…」 シカマルの首に腕を回したまま少し顔をずらしたナルトが、シカマルの唇に自分のそれをあてがう。目尻から透明な雫が零れた。潤む青い瞳を見るのもいいが、快感の涙を流すナルトも十分にそそる。 「シカ…マ…」 唇が触れあったままで囁かれる言葉は、甘い睦言でも喘ぎ声でもない。ただ自分の名前を呼ばれているだけなのに、強く求められているような錯覚を起こす。ナルトがぺろりとシカマルの唇を舐めた。赤い舌が唇の隙間から覗く姿はひどく扇情的だ。いつもの太陽の下にいる元気なナルトではないような。部屋の電気は消していないので、はっきりとその表情が見える。上気した頬に、漏れる吐息も熱い。 「あっ…」 がくがくと震える膝が腕が、ナルトの限界を示しているように感じる。 「ナルト…イッていいからよ」 「ん…」 こくりと頷いたナルトは、再びシカマルに絡めた腕に力を入れた。 「我慢…できないって…ばよ…」 「すんなよ、バカ」 シカマルの背中にナルトの爪が立てられる。その痛みすらがシカマルの快感につながっているような感覚に陥る。見つめた瞳に映る姿の一つ一つ、耳に届く声の一欠けらすら愛しい。 愛や恋なんて自分に関係ないと思ってきた。全てが面倒な事に思えていた。なのに、この手の中にある一人の人間が自分の中の「常識」を簡単に覆した。 絶対とか、永遠とか、この世の中に存在しないものだと、そんなものだと思っていた冷めた世界の中に、たった一人の大切なものが生まれた。シカマルはそんな自分が、とてもおかしい存在に思える。ある瞬間に、自分の全てを変えるものが現れるなんて、思っても見なかったのである。 ナルトの一挙一動に振り回されて、一時の感情に流されて、そんな自分も捨てたものではないと思えるくらいには。奇跡的な出合いなんだと、ちょっとは信じられる気がした。 今も、明日も、昨日も、全てが変わってしまうくらいの劇的な存在が自分の腕の中で震える。誰も止められない、自分ですら制御できない。 「あ…あ…シカマルっ…」 切なく呼ばれて、ナルトの身体を抱きしめる。 「ナルト…」 ナルトの全てで告白されているような錯覚に陥る。それが自分の思い違いでない事を祈りたい。仰け反った首筋に唇を当てると、ナルトはシカマルの手に熱い迸りを解放した。 ぐったりと疲れているナルトの身体を抱き寄せ、唇を辿る。 「ん…」 シカマルの唇に応えたナルトは、まだ濡れているシカマルの黒髪に指先を絡めた。
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恥ずかしい展開が……
書いてるRUIのがめちゃ恥ずかしいです(*^^)
シカマルの気持ちが少しは書けて良かったな…と。
はあ。溜息の連続の回でした!