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始まりの朝 17

 

 

 ナルトは慣れた手つきで鍵穴にキーを挿し込む。

 そんな後姿を見ているだけのシカマルは、これからどうしようか少し迷ってしまった。笑顔を見られるだけでも嬉しいと感じる気持ちが、このままナルトの部屋で二人きりになる事を躊躇ってしまう。

「シカマル…?」

 少し離れた所で壁に寄りかかっているシカマルを、不思議そうな顔をしたナルトが振り返る。

「どうしたってばよ?入らねえの?」

「あ?ああ…そうだな」

 濁すように笑うと、シカマルの手をナルトが取った。ナルトは俯いたまま一気に捲し立てるように言う。

「明日は任務入ってんのか?べ…べつに、それでも構わないけど……泊まってけばいいってばよ!」

「おい、ナルト」

「シカマルには話したい事もあるし…それに、このまま別れるのも、なんて言うか…やなんだってば」

「ナルト」

 シカマルはナルトの手をぎゅっと握り返す。

「それに、オレはシカマルに遠慮してほしくないって言ったはずだってばよ?オレだって…シカマルの事受け止める、覚悟できてるってば…」

 俯いたままのナルトの姿にくすりと笑ったシカマルは、大好きな金の髪をくしゃりと撫ぜた。

「無理すんなよ」

「その言葉、返してやるってばよ!シカマルこそ、無理すんなってばっ」

 そっとナルトの視線がシカマルに向けられる。少し不安そうに揺れる青い瞳。これのどこが「覚悟の出来ている顔」だろう。十分に無理しているように見える。

「俺は、別にお前の事…こんな事で嫌いになんかならねぇ」

 シカマルが言わんとする事が分かるのか、ナルトが傷ついたような表情でシカマルを睨み付けてきた。

「オレだって、こんな事でシカマルの事嫌いになんかならねぇってば…」

「後悔するかもしれねーぞ?」

「しない…」

 ナルトがぎゅっとシカマルの首に腕を回す。

「嫌いになれる方法があんなら…教えてほしいってばよ。オレは…シカマルと離れたくねえって思ってる」

 ナルトの言葉に心が揺れる。必死になって自分を見ようとしてくれている、大切な存在を傷つけてしまいそうで怖い。そんなシカマルの危惧を知ってか知らずか、ナルトの態度はいつもにも増して頑なだった。

「分かったから…とりあえず、中に入ろうぜ。玄関先で言い合う内容じゃねえよな」

「帰らねえってば?」

「……ああ」

 シカマルはナルトに試されているような気分になる。もちろん、ナルトに限ってそんな事は考えられない。裏のない性格をしているし、咄嗟に嘘を言えるような器用さも持ち合わせて居ない。それはいい意味でだけれど。ぎゅうぎゅうと引っ付いてくるナルトを引き剥がし、背中を押すように部屋の中に入る。決して広いとは言えない玄関の三和土で顔を付き合わせた二人は、どちらともなくぷっと吹き出す。

「オレ…風呂入れてくるから。なんか、一日掃除してたから、身体が埃まみれだし汗臭いってばよ」

 そそくさとシカマルの腕から逃げてしまうナルトの背中を見つめながら、シカマルは鼻の頭をぽりぽりかいた。ナルトを性急に求めた時とは違う気恥ずかしさが、なんだかくすぐったい。照れたようなナルトの姿も手伝ってか、シカマルは身の置き場所に困ってしまう。

「なんだかなぁ…」

 独り言を呟いてサンダルを脱ぐと、シカマルも気楽な振りをしてナルトの部屋に上がった。

 

 

 

 

 珍しくナルトの家で茶が振舞われる。シカマルは本当に驚いていた。この家で牛乳意外の飲み物が口に出来るとは思って居なかったのである。驚くシカマルとは対照的に、ナルトはおぼつかない手つきで湯呑みに茶を注いだ。

「どうぞだってばよ」

 もちろん風呂上りのナルトの前には牛乳の入ったグラスが置かれている。だけれど、シカマルの前には見た事もない湯呑みから、おいしそうなお茶が湯気を立てていた。

「珍しいこともあるもんだな?」

「おばちゃんに、茶葉を分けてもらったんだってば。シカマルってば、いつもメシ食った後はお茶飲んでるじゃん。オレもシカマルんちでいつも、おばちゃんが淹れてくれたの飲んでたし…前にシカマルが茶もないのかって言ったのも気になってたし……」

 シカマルはくすりと笑うと湯呑みに口を付ける。それが意外とおいしかったりするから不思議だ。

「へぇ…なかなか上手いじゃん」

 素直に言葉にすると、ナルトが嬉しそうな顔で笑った。シカマルの言葉に満足したナルトは、牛乳を一気に煽った。

「でも、風呂上りはやっぱり牛乳だってばよ〜」

 シカマルはゆっくりと茶を味わってから、湯呑みを置いた。

「ごちそうさん」

 声をかけると、ナルトがにこりと笑う。シカマルは頭の中でいろいろな事を考えながら、腰を上げた。

「シカマル?」

「風呂。…借りるわ」

「あ…うん。タオルとか置いてあっから、勝手に使ってくれればいいってばよ」

「ああ」

 ぎこちない会話を打ち切って、シカマルはベストを脱ぐと風呂場に通じるドアを開けた。中は湯気と一緒に石鹸のいい匂いがする。知らず知らずの内にため息をついたシカマルは、どうしたものかとまた迷う。このまま本当にナルトの家に泊まってしまってもいいのか。一緒に居るだけで満足などと言うのは、所詮は表向きで、一応は自分も男なのである。好きな奴を目の前にして正気で居られるのか、理性の箍が外れないか…実際の所自信がない。

 素早くシャワーを浴びて、湯船に浸かると、やはり漏れてくるのはため息ばかりで。シカマルは自分が必要以上に緊張している事に気が付く。

「受け止める覚悟って…あいつ、意味分かってんのかよ」

 それとも……シカマルは頭に浮かんだ男の名前を打ち消すように、湯で顔を洗う。ばしゃばしゃとそれを繰り返し、自分の心の中にある醜い嫉妬心を思い知らされた。ナルトの口ぶりから推測し、ナルトと恋人関係にあったサスケの顔が面付く。張り合うつもりは毛頭ないが、気に食わない事は確かだ。この厄介な感情は、ナルトの事が好きだと初めて知った時と似ていた。サスケの事を思って涙するナルトを見て、胸くそ悪くなった事を思い出す。ナルトは自分の事が好きだと言ってくれている。必要としてくれている。精一杯の気持ちを向けられているのに、一度湧き上がってしまった妬心が心を埋め尽くす。

 ナルトの笑顔が見たい。一緒にいたい。そんな時間を大切にしたい。本心なのだけれど、今という時にはそれが全て奇麗事に思えてしまう。

 自分は、ひどく醜い。こんな感情を覚えるのは初めてだ。自分の中にある狡さは自覚していたが、ここまで嫉妬深い人間なのだと思い知らされるのは初めてだ。

「最低じゃねえかよ」

 こんな醜い気持ちをナルトに向けてしまわないだろうか。それも不安なのだが、相対するように、そんな自分すら晒してしまいたい気分にもなっている。自虐的に追い詰め、精神的に破嘆しそうだ。

 シカマルは苛々する気持ちを押さえつけるように、さぶんと湯船に顔を付けた。

 最悪なまま風呂を出ると、ナルトの用意してくれた寝間着がある。それに腕を通すと丈が少し短かった。そんな些細な事で、ささくれ立った気持ちが少しだけ落ち着く。

「上がったぞ…」

 タオルでごしごし頭を拭きながらドアを開けるが、ナルトの返事がない。被ったタオルの隙間から、ようやくナルトの姿を目視した。ベッドに凭れかかる様にして寝息を立てている。その幼さの残る表情を見て、シカマルの口元にようやく笑みが戻る。待ちくたびれてしまったのだろうか。それとも、散々泣いた疲れが今となって襲ってきているのだろうか。シカマルの気配に気が付かないナルトは、穏やかな寝顔だった。シカマルはナルトの前に膝を折ると、ぺちぺちと頬を叩く。

「おい、ナルト。寝るならベッドに行けよ。風邪ひくぞ」

 シカマルの声に反応するように、ゆっくりと瞼があがる。虚ろな瞳でじっと見つめられて、シカマルの中の理性の壁が音を立てて崩れていくのを感じた。湯上がりの頬は少し上気して、寝ぼけた眼は少し虚ろだ。そんな表情が自分を誘っているように感じた。そして、先ほどまで感じていた嫉妬の感情がむくりと鎌首をもたげる。

「シカ…マル?」

「ナルト」

「オレってば…寝てた?」

 まだ夢の中にいるのか、舌足らずに聞いてくる口調さえ愛しく感じて。シカマルは無意識の内に、ナルトの唇を奪っていた。そんな行動に驚いたのか、青い瞳が大きく見開かれる。

「あ…シカマ…」

 角度を変えるたびに、深くなる口付け。絡まる舌の熱さに、蕩けてしまいそうな感覚に陥る。苦しいのか逃げようとするナルトの後頭部に手を添える。逃がすつもりはない。シカマルは追うようにして、ナルトの舌をきつく吸った。

「ん…っ」

 鼻から漏れる吐息が甘い。

「あ、…ん、シカ…」

「ナルト…」

 シカマルの指が、ナルトのパジャマのボタンを一つずつ器用に外す。滑る掌が、肩からゆっくりと上衣を脱がすと、ナルトの身体がびくりと震えた。

 唇を解放して、じっと見つめるとナルトが困ったように視線を泳がせた。

「止められないぜ?」

 掠れた声にナルトがゆっくりと顔を上げた。

「逃げねぇってば…でも」

 理解あるようにナルトの言葉に耳を傾けたい。そう思っているのに、シカマルは性急にナルトの首筋に顔をうずめた。柔らかい皮膚を啄ばんでから、きゅっと吸う。

「わっ…」

 驚いたようなナルトの声色。

「嫌だって言われても、止められそうにねえ」

 それはシカマルの本心だった。熱くなるのは身体なのか、気持ちなのか。それすらも区別できないままでナルトの身体を抱き締める。

「あの…シカマル!オレ…どうしたらいいのか分かんないんだってば…シカマル」

 不安そうなナルトの声に、シカマルが顔を上げる。

「すんげえ、困ってんだってばよ…」

 狼狽したように眉を寄せるナルトの言葉に嘘はなさそうだ。シカマルはふと疑問を口にした。

「お前……初めてか?」

「そんなん、当たり前だってばよっ!」

 一気に赤くなったナルトは、ぎゅうっとシカマルの頬を抓る。

「だって、お前…いっつもエロ忍術とかで」

「それとこれは関係なくね?オレってば…分かんねえもん」

「確認させてくれよ…マジで?」

 ナルトは恥ずかしそうにこくりと頷く。

「オレ…一般的にどうかとかもよく分かねぇけど…あんま、興味ないって言うか」

「自分でしたりとかは?」

 シカマルは年相応には自慰行為の経験はある。知識としては、性についても「一般常識」程度の情報は持ち合わせているはずだ。シカマルの真剣な問いに、どんどんとナルトの顔は赤く染まっていった。

「自分で…あんましねぇもん」

「そっか…」

 別に馬鹿にしているつもりはなく、少し驚いていた。

「嫌か?」

 ナルトは首を横に振った。

「嫌とかじゃないってば…だから、どうしたらいいのか……マジ分かんねえの!」

「お前、セックスって意味分かってるか?」

「なん…となく?」

 シカマルは微笑むと、ナルトの頬に唇を寄せる。

「俺がお前を抱きてぇって…意味分かってんのか?」

「これから…分かるんだってばよ」

 シカマルは馬鹿みたいに嫉妬していた気持ちを忘れていた。目の前のナルトがやはり可愛くてしょうがない。一生懸命に自分を受け入れてくれようとしてくれている姿に、眩暈をおこしそうなくらい陶酔している。

「ナルト、好きだ」

 ただそう伝える事しか出来ず、シカマルはぎゅっとナルトの身体を抱き寄せた。

 

 

 

 

  

 

 

 

恥ずかしい!めちゃ恥ずかしい内容ですよね〜

いや…ナルトは色事に疎いイメージしかないのですよ。

RUIの勝手な思い込みです。

ナルトは何時になったら、旅の話とかシカマルにできんでしょうか?

恥ずかしいまま、次回に突入して恥ずかしいんだよ、きっと…