結婚相談所 美容歯科

 

 

 

A story of the first love 6

 

 

 ナルトは不思議な少年だった。きっと、年は自分と同じくらいだと思うのに、妙にすれていないと言うか世間慣れしていないというか……シカマルからしてみれば、その行動がツボにはまる事が多い。本当に名のある大名のご子息なんだろうと言う事が伺えるくらいに、世間知らずなのである。

「こうやんだよ…」

 割り箸を手にしたナルトは真剣にそれを見つめて、迷った様にシカマルに手渡した。山の中では食糧に困る為に、近くの里まで降りてきたのだ。その途中にある麺処でうどんを頼んだのはいいのだが、ナルトは割り箸の使い方を知らないらしかった。目にするのも初めてなのだろう。

「ほら、割れ目が入ってんだろ?ここを割って、二つにすんだ」

 ぱきんと割ってやると、ナルトが感心したように頷いた。小さな子供のような仕草に、シカマルはぷっと吹き出す。さすがに自分が笑われていると気が付いたナルトは、むうっと唇を尖らせた。

「悪りぃ…」

 ちっともそう思ってないようなシカマルの口調に、ナルトはむっと顔をしかめたままだ。

「怒んなって…七味入れるか?」

 訊ねると、ナルトがまた首を傾げた。ナルトは分かりやすい。口をきけない変わりに、その表情や仕草で気持ちを読む事が出来る。小さな匙ですくった赤い粉薬味を、ナルトはじっと見つめた後ぺろりと舐めた。それにはシカマルも驚く。もちろん、七味を直に舌で舐めたナルトはもっと驚いているようだ。慌てて立ち上がると、口を押さえながらきょろきょろとする。目に入った湯呑を掴もうとする手をシカマルが止めた。

「ちょい待ち!……おばちゃん、水くんねえか」

 店の奥から、水を運んでくる人の良さそうな店員が新しい湯呑を差し出した。それを受け取ると、すぐにナルトに渡す。ごくごくと水を飲み干した後も、ナルトは渋い顔つきで湯呑を指差した。

「足んねえか…。って、七味舐めるバカがどこにいんだよ?」

 水差しも一緒に置いていってくれたので、空になった湯呑にまた水を注いでやる。ナルトはちびちびとそれを飲んでいる。

「それに熱い茶なんか一気飲みしたら、次は火傷すんぞ?」

 ナルトは涙で潤んだ瞳をシカマルに向けて、うんうんと頷く。ナルトは自分で自分が情けない。知らない事だらけで、毎日が驚きの連続だった。シカマルは面倒見がいい。性根が優しいのだろう。口が悪いと思う時もあるが、それもこれもナルトの事を思ってと言う事が多い。それに彼は物知りだ。ナルトが知らない植物や動物の名前を教えてくれる。からかわれる事はあっても、本気でバカにされた事は一度もなかった。彼と生活を共にするようになって、まだ数日。だが、その数日の間にナルトはどんどんシカマルの事が好きになって行く。彼と居るとどきどきする。それが、恋なのかどうかは分からないのだが毎日がとても楽しい。こんな思いをするのは生まれて初めてだ。

 ナルトはひりひりとする舌を気遣いながら、少し冷めてしまったうどんをすすった。

 

 

 

 

「どうして見つからない訳?」

 ミナトは苛々していた。彼には珍しく家臣達をぎろりと睨みつける。

「ナルト様が人間の里へ行かれた事は確かなのですが……その、匂いが消えていて、私たちも困惑してるんです」

 項垂れた家臣を見て、ミナトは溜息をついた。それは自分自身に対するものだ。本来ならば自分が先頭にたってナルトを探したい。だが、それが出来ない立場に居る事に疲れていたのである。ミナトはもう一度大きく息を吐く。

「悪い…あたったよ。君たちを責めるつもりはないんだ。もちろん、悪い事をしているのはナルトだしね」

「しかし…」

「それにしても……嗅覚の鋭い妖狐を、容易く騙せるもんじゃない。それに、ナルトが変化して人間の里へ行く事も考えづらいし……もう少し考えなくちゃいけないかなぁ」

 呟くようにして言ってから、草臥れた様子の家臣に休むようにすすめた。一人になると考えてしまうのは、急に姿を消した息子の事だ。居なくなる前の様子が可笑しかったのは確かである。だが、それもあまり気に留めていなかった。人を騙したり嘘をついたりする事が苦手なナルトが、訳もなくミナトやクシナに心配をかけるとは考えられないのだ。

「苦戦しとるようだの」

「先生……」

 柱に背を預けたまま突っ立っている自来也を仰ぎ見て、ミナトは溜息をつく。

「してますよ」

「誰もあの子を縛る事はできんだろう。ミナト…お前にもそれが分かっておるはずだがな」

「それとこれは話が全く違いますよ!」

 ミナトが声を荒げる事は滅多とない。憔悴したような横顔を見つめた自来也は、しょうがないと言うように息をついた。

「ナルトが決めて出て行ったのだとすれば、わしらにはどうする事もできんだろうのう」

「……そうじゃなかったら、どうするんですか?」

 暗いミナトの言葉を聞いた自来也は、慰めるように頭を撫ぜてやる。

「家臣達の話では、ナルトの匂いが消えてしまったと言う事です」

「もしナルトが死んでおれば、その屍も見つかるだろう。そうでないと言う事は、反対に生きておると言う事になる。あいつが姿を眩ませるだけの術が使えるとも思えん」

「そうですが……」

 最悪の事はさけられていると言えよう。それだけが救いだった。項垂れたミナトの前に、黒い影が舞い降りる。それを目視したミナトは、彼の名前を呼んだ。

「カカシ…ようやく戻ったんだね」

「…四代目、ナルトが消えたと言うのは……」

 ミナトはくすりと笑った。カカシにはその姿が、いつもの彼でない事がすぐに分かる。

「そうなんだよねぇ…捜索隊を出したんだけど、みつかりもしない。これって、どう思う?カカシ…」

 探索にかけてはプロと呼ばれる小隊を組んだと言うのに、その足取りは消えてしまって捉える事ができないのだ。カカシは眉をひそめる。それは可笑しい話だ。

「彼らの話によると、ナルトの気配がないらしい。その匂いも途絶えてしまって、足取りすら掴めない…というのが現状だよ」

「それなら、俺が行きますよ」

 もちろんミナトはカカシに一任するつもりで居た。適役とも言えるだろうし、ナルトを見つけた時の対処も彼に任せておけば間違いはないだろう。

「ミナト、カカシ。わしも参戦するかの…」

「自来也様」

 ずっと黙ったままの自来也が口を開く。彼は腕を組んでずっと何かを考え込んだようにしていたのだ。

「ナルトはただの妖狐ではない…その中に九尾の力を秘めておる。それが、他の妖の一族に狙われておらんという保証もないしな。それに……灯台下暗しという事も頭に入れておかねばならん」

 ミナトは考えたくない現実を突き付けられた気分になる。今は同盟を組んでいるはずの種族ですら、明日は敵同士になる事も不思議ではない。九尾の力は、同族の中ですら欲する輩が居ても可笑しくない力でもある。

「ミナト、少し休め。お前まで倒れたら、クシナはどうする」

「先生…」

 気丈な態度を崩さない妻は、ミナトに対して笑顔を向けてくれるが、失踪した我が子を誰よりも心配している。ナルトを信じているが、心配してしまうのは母親だからと言えよう。いくつになっても、二人にとってナルトはただの子供でしかないのだ。

「先生、後は俺に任せてくださいよ。ナルトを見つけたら、すぐに連絡します」

「カカシ。うん、頼むね……」

「おい、カカシ。わしの存在も忘れるでないの」

 カカシはくすりと笑った。

「忘れてなんかいませんよ。もちろん、自来也様にもお願いしたい事がたくさんありますしね」

 カカシは独自のパイプラインをいくつも持っている。それに、ナルトの行方不明を大っぴらに出来ないのだから、これは極秘の任務となるだろう。妖狐の里は含め、外の世界にも調査を入れなければならない。そんな時に、一族と言う檻に縛られていないカカシは得なのだ。ミナトのように、妖狐の里の里長と言う立場とは違い自由もきく。軽くミナトに一礼したカカシは、来た時と同様に闇の中に姿を消した。

 

 

 

 

 ナルトとシカマルはたくさんの食糧を手に、山への帰路を歩いていた。時々、物珍しそうに立ち止まるナルトが居るので、いつもに比べ倍の時間を要する事になるのだが、それはそれで楽しいので構わない。ナルトののんびりとした所、天真爛漫な所は、彼の長所でありシカマルの目から見ても好ましく感じるのだ。他人と一緒に居て、気を使わずに居られると言う事は少ない。ナルトはその少ない人の一人だと言える。シカマルにとってナルトは不思議な要素も多くあるが、自分の気持ちを和ませてくれる存在となりつつあった。

 ナルトがくいくいと着物の袖を引っ張ってきた。彼がシカマルに何かを訪ねたい時には、必ずと言っていいほどシカマルの袖を引っ張る。

「ん〜?次はなんだ?」

 ナルトは民家の垣根を指差す。緑の垣根には、白い花が一杯に咲いていた。

「ああ、ドウダンだな…」

 二センチに満たない小さな壺状の白い花が、下に垂れるように咲いているのだ。若葉の緑の中に小さな白い花がかわいらしい。

「こりゃ、ドウダンツツジって言うんだ。俺んちの垣根も同じだぜ?気が付かなかったか?」

 ナルトはこくりと頷く。

「山ん中だから、こっちに比べると開花が遅いかもしれねえな。それに、最近は剪定もしてねえし……割と、家の垣根にドウダンを植えるっつうのは多いんだ。秋には紅葉もする。なかなか風情があるし」

 ナルトは感心したように、小さな白い花を見つめた。それを指先でつつく。まるで、いまにも鈴の音がしそうなかわいらしい花だ。

『シカマルって、本当に物知りだってばよ!シカマルんちの垣根もドウダンなら、この小さい花がたくさん咲くんだなぁ〜…早く見てみたいってば』

 ナルトがにこりと笑いかけると、シカマルが照れたように苦笑した。

『あれ?シカマル……なんか、困ってるみたいだってばよ?』

 不思議そうにしたナルトに気が付いたのだろうか。シカマルが「なんでもねえ…」と言い訳するように答える。

「ナルト、ちょっと寄りてえ場所があんだけどよ。お前は一人で帰れるか?」

 何かシカマルの気分を害するような事をしてしまったのだろうか。急にナルトは不安になる。それが顔に現れていたのだろう。シカマルは優しい笑みを浮かべてくれる。それからナルトの頭を撫ぜた。

「今、変な事考えただろ…お前。別に、お前に何かあるとかじゃねえんだ。ちょっと、寄りたい場所つっただろ?ここよりも険しい場所でな。お前には荷物を持ってって貰いたかったって訳。頼めるか?」

 ナルトは満面の笑顔になる。シカマルに頼み事をされた事が単純に嬉しい。頷きながらシカマルの手にしていた荷物を受け取る。

「ナルト、山藤がきれいな場所があるから連れてってやるよ。見事だぜ。お前は花が好きみてえだからな」

 今二人が居る場所から、シカマルの家まではそんなに距離もない。道順も覚えているから大丈夫だ。シカマルは思い出したように、視界に入った赤い鳥居を指差した。

「あそこに赤い鳥居が見えるだろ?あの稲荷神社を抜けてくと、近道になるぜ。それに、あの社の近くにも野生の植物がある。良かったら、見てけよ」

 ナルトは顔が一瞬引きつった。稲荷神社とは、狐……即ち妖狐を祭った社になる。昔、父親から人間の里にある全ての稲荷神社は、妖狐の里へ繋がっていると聞いた事があったのだ。自分を探しに来た者の事を考えると、迂闊に近づいていい場所でないことくらいはナルトにも分かった。

「おい、ナルト。顔が真っ青だぜ?」

 シカマルが顔を覗きこんできた。ナルトは慌てて顔を左右に振る。彼を安心させる為に、笑顔を張り付けて手を振った。納得しない素振りを見せたシカマルの背中を押してやる。

「ほんとに、大丈夫か?」

 力強くナルトは頷く。そして、もう一度手を振る。シカマルは少しナルトの事が気になりながらも、彼の行為に従う事に決めた。

 シカマルの後ろ姿を見つめたナルトはごくりと唾を飲み込む。行きには気がつかなかった赤い鳥居。じっとそれを見つめると、その鳥居に凭れかかって自分を見つめる人物が居る事に気が付いた。ナルトは瞳を大きく見開く。彼はナルトの存在を確かめると、にっこりと笑いながら近づいてきた。

「やあ、元気そうだね?」

 最後に彼の姿を見たのは、大蛇丸の居た暗い洞窟。

「よかったよ。あんなに高熱を出してたのに、もう出歩けるようになったんだね」

『か…カブトの兄ちゃんだ………』

 大蛇丸の所から逃げる事を進めてくれた優しい笑顔を思い出す。彼の癖なのか、眼鏡を人差指で上げるようにしてからナルトへと笑顔を浮かべながら近づいて来る。ナルトは足が竦んで動く事が出来なかった。

 

 

 

 

 シカマルは鬱蒼とした獣道を掻きわけて進む。子供のころから散策した山だ。シカマルにとっては道のない所でも、良く知った道となる。そして、目指した場所がすぐに視界に入った。

 もう一週間以上にも前になるだろう。薬草を取りに来て、急な嵐に会い自分は目前の崖から下へ落ちたはずだった。ひゅうひゅうと鳴きながら谷底から吹く風が、昨日の事のようにそれを思い出させる。

 あんな夜中に、臣下も連れていない少女が一人で居た事も可笑しい。本当に妖に化かされたのかもしれない。

「…なあ、なんで俺を助けたんだよ」

 シカマルは答えのない疑問を谷底に呟いた。強い風に煽られて、谷底へ消えた一人の少女。慌てて覗きこんだ視線の先には、真っ暗な空間があるだけで人の姿はなかった。そこで力尽きて眠ってしまったシカマルが目を覚ましたのは、翌朝の出来事だったのである。それでも、薄っすらと自分が誰かに助けられた記憶はしっかりと残っていた。シカマルは一度見聞きしたものを忘れない性分だ。それが現であったとしても、自分を助けてくれたあの少女の面影は嘘や幻だったと思いたくない。それに、自分の着物に乾いた血の跡がしっかりと残っていた。身体の外傷は殆どなくても、自分が怪我をした事は確かなのである。

「くそ…思い出せねえ」

 ぼんやりとした記憶の中に残る影は、日に日に薄れて行く。金色の長い髪と緋色の内掛け。それに、彼女と一瞬だが、視線があった。その時、彼女は笑ってくれたのだ。まるで、大丈夫だと言っている様な笑顔だった。穏やかに笑みを湛えたその眼差しを思い出そうとして、急に自分の記憶がナルトの笑顔と重なる。自分を助けてくれた少女の事を思い出そうとすると、ナルトが時々見せる笑顔と重なるのだ。確かに髪の色は同じ金色だが、元気一杯な天真爛漫なナルトと彼女の面影は似ているようで、違っているような気もする。だから最初にナルトに姉妹が居るのではないかと思ったくらいだ。

 理由なんてなかった。もう一度、彼女に会いたい。こんな風に他人に興味を持つのは初めての事で、シカマル自身も困惑している。呆れる親を尻目に、こんな山奥こもってしまうくらいには。この山にいれば、もう一度彼女に会えるのではないか…そんな一縷の望みがあった。

 がさりという音を立てて、後ろの茂みが揺れる。その気配にシカマルが目を細めた。ここに来る人間は限られている。もしくは野生の動物だけだ。

「…誰だ」

 警戒心を露わにして声を出すと、茂みの中から一頭の鹿が姿を見せる。自分の家の守り神を目にしたシカマルは心底ほっとする。だが、その視線が一気に胡乱なものに変化した。その鹿に寄り添うように、長身の男が姿を見せたからだ。牡鹿が警戒していないと言う事は、危険な人物ではないのだろう。だけれど、初めて目にする風貌にシカマルは険しい表情を作った。

「あんた……一体、何者だ」

「ああ、やっと見つけた。少年」

 片目を黒い布で覆った銀髪の男がにっこりと笑う。

「見つけたって、俺はあんたなんか知らねえよ」

「君は知らなくても、俺は知ってるんだよねぇ。やっぱ、ここに来て大正解って感じだったな」

「なんだ、それ……」

 シカマルはぎろりと男を睨みつけた。男はくすりと笑うと、降参のポーズをとる。両手を上げて、シカマルに危害を加えないと言う事を示したのだ。

「少年がここに来た理由と、俺がここに来た理由は一緒だと思うんだよねぇ」

 シカマルは眉をひそめる。シカマルがここに居る訳は、自分を助けてくれた少女を探す為だ。彼も彼女を探していると言うのだろうか。

「好奇心が旺盛で怖いもの知らず。世間がどんなものなのかもちっとも分かっちゃいない。あの子はそうゆう子だ。そうやって育てられたんだから、しょうがないんだけどね」

「おっさん、俺の事知ってるって事は……あの嵐の夜の事を知ってるって事だよな?」

「あはは…おっさんかぁ。俺の名前はカカシって言うんだ。そのおっさんってのは止めてほしいね」

「……知ってるなら、教えてくれよ。俺は、あの夜…確かに助けられた」

「うん、確かにあの子は君を助けた。俺はそれを止めなかった……それを今ではとても後悔している。あの子がきっと変わってしまったのは、あの夜の出来事がきっかけだっただろうしね。正直に言うと、少年が死のうが生きようが俺にとっちゃ大した事じゃない」

「少年じゃねえよ、奈良…シカマル」

 にこにこと温和な笑顔を湛えながら、カカシはシカマルに興味を抱いて居ない事をさらりと口にする。気分がいい話でない事は確かだが、あの夜の事を知る事ができるなら我慢する事も出来る。

「奈良、シカマル…ね。あの夜の事を知りたいなら教えてやってもいい………でも」

「でも…?」

 カカシから笑顔が消える。その冷たい視線に、シカマルはぞっとしたものが背中を伝ったのを感じた。

「ナルトの事を知ってるだろう?それを教えてもらおうか、シカマル?」

「…ナルト?」

 シカマルはカカシの口からナルトの名前が出た事に驚いた。やはり、あの少女とナルトは何らかの関係があるのは確かだったのだ。シカマルは自分の見解が間違いでない事に確証を抱いた。

 

 

 

 

  

 

 

随分と更新が遅くなってしまいました。

スミマセン。

人魚姫ベースですが、ちょっと話は違います。

ハッピーエンドを目指して!

早くシカとナルがラブラブできたらいいのに…