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A story of the first love 4

 

 

 ナルトはそっと襖を開ける。部屋の奥には、母親が一人で居た。それを確認すると、静かに部屋の中に入る。

「ナルト?」

 母親の鈴のような声。ナルトはその声に落ち着く。昼間会った大蛇丸の事が忘れられない。その事は誰にも話してはいけないと言うのが、彼との約束だ。もちろん、ナルトには約束を破る気はなかった。でも、どうしてもそわそわして気持ちが落ち着かずに母親の部屋を訪ねたのだった。

「母ちゃん…ちょっと、いいってば?」

「あなたが遠慮するなんて珍しい事もあるのね」

 クシナが優しい笑みを浮かべる。ナルトはその前にちょこんと座った。その元気のない様子にクシナが首を傾げる。

「今日は、カカシさんと遊びに行ったんでしょう?どうだった?」

 ナルトはどきんと心臓の鼓動が跳ねるのを感じる。意味もなくクシナと視線を合わせられない。

「うん、すっげー楽しかったってばよ。森の奥にある原っぱに連れてってくれたんだってば。いっぱい花も咲いてて、きれいで…」

「そう。楽しかった割には、元気がないのね?」

「そんなことないってば…!」

 思わず大きな声を出してしまったナルトは、口元を押さえる。

「人間の世界が楽しかったとか言ったら、また父ちゃんが怒るかなって思って…」

 つい言い訳が口をつく。そんな様子を見ていたクシナはくすりと笑った。そして、ナルトの頭を優しく撫ぜる。

「良かった。ナルトが楽しい気持ちになったんですものね。お父さんも喜んでくれるわよ」

「どうして…だってば?」

「それは、お父さんがナルトの事をとても大切に思っているから。大好きな子供が楽しい気持ちになって喜ばない親がどこにいるの?お父さんはちょっぴり心配性なのね。だから、ナルトには必要以上に口うるさくしてしまうんだと思うわ」

 それはナルト自身にもよく分かっている。ミナトもクシナも、とても自分を大切にしてくれている。ナルトもそんな両親が大好きだった。

「あの…母ちゃん。母ちゃんは、どうして父ちゃんと結婚したんだってばよ?」

 クシナは驚いたように瞳を大きくした。そんな事をナルトから聞かれるのは初めてだ。それに、訊ねてくるナルトの顔も真剣である。どう答えればいいのか迷い、正直に真実を口にする。

「お母さんはお父さんを大好きになったの。もちろん、お父さんもお母さんの事を好きになってくれた。不思議ね…自然と惹かれあってしまうものなの。ナルトにはまだ分からないかもしれないけど」

「母ちゃんは…恋をしたんだってば?でも、母ちゃんは人間で父ちゃんは妖狐だってばよ」

 クシナはふふふと笑った。まるで少女のような笑い声である。実際、クシナは若く見られる事が多い。ナルトの様な子供が居る事すら不思議に思えるくらい若々しい。

「別に、ミナトが妖狐だから好きになったんじゃないもの。きっとミナトも同じ気持ちなんじゃないかしら?私が人間だから好きになったんじゃない。さっきも言ったけど、とても自然に惹かれてしまったのよ?誰かを好きになることに理由なんて後付けなんじゃないのかって思うわ。ミナトはミナトだから」

 クシナの言葉にナルトは、初めて会った人間の青年の事を思い出していた。

「そうだよ」

 急に後ろからした声にナルトは驚いて振り返る。そこにはミナトが腕を組んで立っていた。彼はにっこりと笑っている。すっと跪くと、ナルトを背中から抱きしめた。もちろんその腕はクシナも引き寄せている。

「大好きなクシナから生まれたオレの子供は、クシナと同様宝物なんだ」

 ナルトの耳元で囁くようなミナトの声。ナルトもぎゅっとクシナに抱きつく。

「オレだって…母ちゃんも父ちゃんも大好きだってばよっ!」

 ナルトの言葉に、クシナとミナトの視線が合う。そして自然と笑みを浮かべていた。広い部屋でくっついている事が可笑しくて、クシナが声を上げて笑う。それにつられるようにしてミナトも笑った。

 響く両親の幸せそうな声を聞いて、ナルトもとても幸福な気持ちになったのだった。

 

 

 

 

 生まれ育った妖狐の里。両親に仲間に友達に……全てに別れを告げるつもりで、ナルトは屋敷を抜け出す。もちろん、大蛇丸が居るといった洞窟に向かう為である。

 大蛇丸が言っていた「代償」と言うものが、何であるのかも分からない。それに。まだ曖昧な気持ちもある。しかし、ナルトは気が付いてしまったのだ。自分が人間の青年に恋をしていると言う事を。クシナが言うように、自然と惹かれる。自然と彼の事を考える。そうすると、不思議と一度しか会った事のないあの青年に無性に会いたくなるのだ。動機が激しくなって、居てもたっても居られなくなる。会えないことに瞳が潤んでしまう。苦しいくらいの感情を抑えきれなくなってしまう。もちろんナルトにとって、初めての感情である。まさか自分が両親を悲しませてまで、その青年を求めるとは思っても居なかった。最初は彼と話したいと思った。それから、一瞬だけ視線の合ったあの瞳が笑う姿を見たいと思った。もう一度、その声を聞きたいと思った。

 森は夜の姿を纏う。

 数日前には満月だった月が、欠け始めている。ナルトは息をのみこみながら、大蛇丸が居るといった洞窟へと歩みを進める。自分が屋敷を抜け出した事がいつばれるのか、そんな思いにひやひやしながら暗い洞窟の中に入って行く。洞窟の中に入ると、脇にあった蝋燭がひとりでに炎を灯す。ナルトが歩みを進める度に、その蝋燭の数は増えて行った。

「大蛇丸…?」

 そっと呼んでみる。だけれど返事はない。暗く狭い石壁に共鳴して、ナルトの声が空しく返ってくるだけであった。

「大蛇丸?…いないんだってば?」

 ナルトは不安になった。思わず歩みを止めて俯くと、奥の方から大蛇丸でない声が聞こえる。

「君は誰だい?」

 思わず顔を上げたナルトは、声のする方向をじっと見つめる。

「妖風情が大蛇丸様に何の用なんだい?」

「オレ…大蛇丸と…」

 くすりと笑った気配が空気を揺らす。じっとりと湿気を含んだ生暖かい風がナルトの頬を撫ぜた。

「君のようなひよっこが来る場所じゃないんだよ。場違いな妖さん…」

 ナルトの頬を何かが掠める。それを認識しない内に、ナルトは温かいものが皮膚を伝う感触を指先で拭った。そっと指に付いたものを見る。それはナルトの頬から流れた真っ赤な血。振り返ると壁にはクナイが突き刺さっていた。

「お止めなさい、カブト」

 新しいクナイの光がナルトの視界に入った。カブトと呼ばれた青年は軽く会釈するように頭を下げる。ナルトはずるずると壁に凭れながら、座り込んでしまった。これ程の殺意を感じたのは生まれて初めてだった。ぶわっと音を立てて洞窟の中が明るくなる。そこは広い部屋になっており、真ん中には一人の男が座っていた。その両脇に燃える松明。

 白い顔に琥珀色の瞳。髪は濡れたような漆黒で、椅子のアームに肘掛けながらナルトを見つめている。その琥珀色の瞳には覚えがあった。

「…あの、大蛇丸なの…か?」

「いらっしゃい、ナルトくん。昼間は楽しかったわ……それにあなたがこんなにも早く私を訪ねてくるなんて」

 早く来ないと、自分の気が変わってしまうと言ったのは大蛇丸だ。彼は気まぐれで、ナルトにはその言葉が嘘でない事を本能で感じていたのである。

「本当に、人間になれるんだってば?」

 大蛇丸の瞳がきらりと炎に反射して光る。

「私が…嘘や出まかせを言うと?」

「違うってば……そんな事は」

「でも、信じられないんでしょう?」

 ナルトは黙ってしまう。大蛇丸はそっと立ち上がると、ナルトの前までやって来た。覗きこむように顔を寄せて、ナルトの頬の傷に舌を寄せる。びくんと緊張したナルトはじっと大蛇丸を見つめた。視線が外せなかったというのが本当の事である。大蛇丸はナルトの長い髪を手に取った。

「あなたの方こそ、覚悟は決まったのかしら?」

「だから…来たってばよ」

「そう………まずは、この髪を頂きましょう」

 大蛇丸の白い着物の袖から、短剣が現れた。それを不思議な顔で見ていると、耳元でさくりという音が聞こえた。大蛇丸の手には、長い金糸の髪が束になってある。ナルトはそろそろと両手を項の辺りに持って行った。今まで一度も切った事ない髪が短くなっている。ナルトは大蛇丸の手を見てから、彼の顔に視線を移した。

「ここで少し待っていなさい」

 大蛇丸はそう言うと、音もなく闇の中に消えて行く。ぼうっとしていると、目の前に手が差し出された。カブトと呼ばれた青年の手である。

「大丈夫かい?」

 ナルトはこくりと頷いた。彼の手を取ると、カブトは椅子をナルトに進める。

「大蛇丸様も…強引な方だな。じっとしておいで。今、髪を整えてあげよう」

 最初の印象とは随分違うカブトの笑顔が、ナルトを安堵させた。彼は器用にクナイを使いながらナルトの髪を削いでいく。ナルトはこみ上げてくる、訳の分からない感情に唇を噛みしめた。

「ナルトくん…と言ったね。大蛇丸様から逃げるなら、今の内だよ。今ならば、君も気の迷いだったと済ませる事もできる」

「…それは、やだってばよ。オレ……人間になってやりたい事があるんだってば…」

「強情な子だ。こんなに震えて…本当はとても怖いんだろう?」

 しゃくしゃくと音を立てながら、ナルトの髪が床に落ちて行く。それをナルトは不思議な気持ちで見つめた。

「何も答えない…いや、答えられないんだね。君の反応はとても自然だ。悪い事は言わない。もう帰るんだね」

 ナルトの肩についた髪を払ったカブトは、ぽんとナルトの二の腕辺りを叩く。

「さあ、終わった。随分とすっきりしたな」

「ありがと…だってばよ」

「どういたしまして。君は育ちがいいんだね。ちゃんとお礼が言えるって事は好ましいよ」

 ナルトはじっと俯く。カブトの言うように帰ってしまえば、きっと二度と大蛇丸は自分を人間にしてくれるとは言わないだろう。それどころか、彼を怒らせてしまう。ナルトはどうしても人間になりたかった。そして、もう一度彼に会いたい。怖くないのかと聞かれれば、正直怖い。

「大蛇丸様は、退屈なんだ。きっと、君がその退屈を払拭してくれると感じたんだね……でも、本当にそれで君はいいのかい?…ナルトくん。全てを失うんだよ?」

「カブト……あなたの言い方では私は極悪人のようねぇ」

 闇の中から大蛇丸の声が聞こえる。カブトはすっとナルトから離れると、床に片膝をつく。

「そんなつもりは毛頭ありませんよ」

 笑みを浮かべたカブトを横目に見ながら、大蛇丸はナルトに近づく。

「ナルトくん…私の言った事を覚えているかしら?」

「なんだってばよ?」

「事を起こすにはそれなりの代償が必要だって事」

 ナルトはごくりと生唾を飲み込むと、こくりと頷いた。

「それは頼もしいわね。……代償は、あなたの妖狐の力」

「力?」

 大蛇丸は楽しそうに笑うと、小さな小瓶をナルトの前に差し出す。ナルトはそれを受け取った。

「あなたがその青年の愛を得る事が出来るのなら、あなたは完全な人間になれる。だけれど、その愛を得られなかった時は……あなたの中に眠っている妖狐の力を頂くわ」

 大蛇丸はナルトの中に眠る九尾の力に興味を抱いたのだ。もちろん、ナルトは自分の中に大蛇丸の言うような大層な力が眠っている事は知らない。

「賭けをしましょう……その人間があなたを選ぶのなら、私は二度とあなたに近づくことはしない。だけれど、あなたが彼の愛を得られなかった時は、その身体は朽ちてあなたの中に眠る力は私のもの……とても単純で簡単なゲームよ」

 大蛇丸の後ろでカブトがくすりと笑った。

「さあ、それを飲みほしなさい。あなたの髪を元に作った秘薬よ。それを飲めば、あなたは人間になれる。だけれど、ゲームにはタイムリミットがないと楽しくないでしょう?時間は次の新月まで……あなたは人間になる事ができるのかしら?」

 ナルトは小瓶の蓋を開ける。そして、一気にそれを煽った。その瞬間に喉が焼けるような痛みを感じる。

「か…っ…はっ……」

 げほげほと咳込んで倒れるナルトを大蛇丸は冷たい瞳で見つめた。すっと右手をナルトの前に掲げる。親指から順に怪しい炎がその指に灯った。

「ああ…一つ忘れていたわ。まずは、あなたの声を頂くわね」

 ナルトは大きな青い瞳を見開いて大蛇丸を見つめた。

「あ…あ…」

 大蛇丸の掌がナルトの腹に当てられる。一瞬その指が触れただけだと言うのに、まるで殴られたような鈍痛がナルトを襲った。体中に広がる激痛と喉が焼ける感覚にナルトの意識が遠のく。

 くったりと人形のように動かなくなったナルトをカブトが抱えた。

「それにしても、カブト。あなた…ナルトくんを焚きつけるのが上手ね」

 大蛇丸の声は嬉しそうである。

「いえ、大蛇丸様があまりに楽しそうなので……僕は本当の事しか言っていませんよ。それより、こんな子供にあの九尾の力が眠っているなんて驚きですね」

「それももうすぐ私のもの……」

「大蛇丸様も残酷なお方だ。端からこの子が人間になれるとは信じていない。無理難題を押し付けて、この子の声まで奪ってしまうとは」

「最初から負ける勝負を私はしないわ。ナルトくんのように愚かな性格ではないの。それは、あなたが一番よく知っているでしょう?」

 カブトはナルトを見て嘲笑を浮かべる。

「そうですね……」

 屈託のない笑みを浮かべたカブトは、ナルトを抱えたまま闇の中に消える。広い部屋には大蛇丸の含み笑いが静かに響いた。

 

 

 

 

  

 

 

ミナトとクシナとナルトは仲の良い家族です。

とうとう大蛇丸の話に乗ってしまったナルトですが…

やっとこさ、次回はシカマル登場ですね〜

つうか、ここまで長かった(>_<)

シカナルなんですよ!

カブトは大蛇丸様とセットなイメージ。