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A story of the first love 14
「俺は、俺を助けてくれた少女と会いたいって……ただ、そう思ってたんすよ」 自来也はカカシから全ての話を聞いており、シカマルとナルトの出会いを知っている。出会いと言っても、それはほんのきっかけに過ぎない。シカマルとナルトは、互いに相手の事は何も知らないで別れたらしい。 「…でも、ナルトと一緒に生活するようになって、あいつ自身に惹かれてる自分が居る事に気が付いた時に、カカシから自分を助けてくれた少女がナルトだって聞かされた。俺の中で、全部が繋がった様な気がして……ナルトに惹かれる俺は、すげえ当たり前なんだって。俺を助けたのがナルトじゃなくっても、俺はあいつに惹かれてた。その気持ちを、否定する事はできないんすよね」 「そこまで己の気持ちがはっきりしとるなら、お前は何に対して迷っとるんだ?」 自来也はじっとシカマルを見つめた。 「……え?」 シカマルは視線を自来也に向ける。真剣な顔をした自来也は、シカマルの顔を覗きこむとにやりと笑った。 「ナルトが妖狐だからか?」 「関係ねえ」 「男同士だからか?」 「…関係ねえよ」 自来也はかかかっと大声を出して笑った。シカマルは笑われた事にむっと口を噤む。 「そこまで腹がすわっとるなら、何を悩む必要があるんだ?ん?可笑しくて思わず大声で笑ってしまったわ」 シカマルがナルトを真剣に思っている事は、少し言葉を交わしただけで感じる事が出来る。そして、ナルト自身もこの人間の青年を思っているのだ。 「俺はナルトに酷い事をしました。あいつをボロボロに傷つけた……心も身体も」 シカマルの声は暗い。彼の言う酷い事が何に当たるのか、自来也はなんとなく想像がつく。大蛇丸の封印を解いた時に見たナルトの身体。それは凌辱の痕がいくつも残されていた。 「お前の事を…ナルトは許しておる」 「許されていいことじゃねえんだっ!」 思わず立ち上がったシカマルは、ぎゅっと両の手を握り締める。唇を噛みしめて震えているシカマルを見て、自来也は溜息を付いた。 「それがお前の背負って行くものの…大きさよ。それを、お前は知る必要がある。なぁ?奈良の坊主」 「自来也様……」 自来也の言う事は奥が深い。何を求められているのか、考えあぐねる。 「お前の気持ちで、ナルトは命を救われた…それが一つの事実だ」 シカマルはすとんと腰を下ろすと、俯く。力なく首を振ると、両腿に付いていた手で頭を抱える。 「怖いんすよ………ナルトの幸せはここにあるんじゃないかって思うと…怖いんすよ」 「それはナルト自身に問うてみればいい。わしに言わずに、ナルトにぶつけてみるも手かもしれんな」 ナルトの幸せがなんなのか、決めるのは彼自身だ。少しずつ自立し始めているナルトならば、きっと答えもすぐに見つかるのではないか…自来也はそう感じた。まだ若すぎる二人にはいくつもの選択肢が用意されている。それを見つけ出し選ぶのは、きっと彼ら自身でしかない。 俯いたまま震えるシカマルの頭を自来也は乱暴に撫ぜた。
ミナトの元を飛び出したナルトは、潤む眼をごしごし擦りながら長い廊下を歩く。折角口がきけるようになったと言うのに、シカマルと話す時間は全くなかった。むしろ、同じ時間を過ごす事が減っている。 「ナルト、居るの?」 じいっと廊下を見つめて突っ立っていると、からりと襖が開いた。 「母ちゃん…」 自分でも意識がない内にクシナの部屋の前に来てしまっていたのだ。クシナはにっこりと笑うと、純血した目で自分を見つめてくる息子の肩を抱いた。 「そんな所にいないで、入ってくればいいじゃないの」 「うん…」 「また、お父様にお叱りを受けたのかしら?ナルトは小さな頃からいつもそう…ミナトにお小言を言われると決まって泣きながら私の所へ来たもんだわ」 クシナは嬉しそうに笑みを見せる。今までと今回とでは違うと言いたい。きゅっと唇を噛みしめると、新しい涙がぽろりと零れる。 「いつまでたっても、ナルトは泣き虫なんだから」 そっとナルトを抱き寄せると、クシナの胸にナルトは顔を寄せる。震える我が子を腕に抱いて、その背中をぽんぽんとあやす様に叩いた。 「オレってば…シカマルが好きなんだってばよ」 「見ていれば分かるわ」 「離れたくねえんだもん」 「それも、分かっちゃうのよね」 ナルトはじっとクシナの顔を見つめる。涙でくしゃくしゃになった顔をみて、クシナが微笑む。 「私はナルトの母親なのよ?分かって当然でしょ」 「だって!父ちゃんは、分かってくれないってばよ」 クシナはナルトの言葉を否定するように首を振る。 「分かってるわよ。分かってて、分からないふりをしているの。どうしてだか、分かる?」 ナルトは顔を左右に振る。 「ぜってー違うってばっ!」 クシナは頑ななナルトの頬をぱちんと叩いた。頬を叩かれたナルトはぽかんと口を開けて、クシナを見つめる。驚きすぎて涙も止まっていた。 「ちょっと、座りなさい」 クシナの眼差しがいつになく厳しい。ナルトは素直にそれに従った。ナルトの前にクシナも座った。背筋をぴんと伸ばしてナルトを見つめる。 「お父様は、何とおっしゃったの?」 ナルトは俯いて、瞳を伏せた。 「シカマルを…諦めろって」 「それで、ナルトは何と答えたの?」 「嫌だって……言った。オレとシカマルは、父ちゃんや母ちゃんとは違うから父ちゃんはだめだって。オレが言う事聞かないなら、シカマルの記憶を消すって…シカマルの中からもオレの記憶を消すって……」 ぽつりぽつりと話すナルトの話にクシナはふうっと息を吐いた。 「ミナトはそんな事しないわよ」 クシナの言葉にもナルトは顔を上げない。 「分からない?じゃあ、質問をするわ。ナルトはシカマルさんとミナト、どちらが好き?」 「…え?」 やっと顔を上げたナルトは目を大きく見開いている。そして、困ったように眉をひそめた。 「選べないってばよ……父ちゃんを好きなのとシカマルを好きな気持ちは全然違うんだってば」 「どちらかを選ばなくてはいけないと言われたら?」 「選べない」 「どうして?選んでいるじゃない。ナルトは、シカマルさんが好きで自分の命を掛けようとまでしたのでしょう」 ナルトはぎゅっと手を握り締める。クシナの言う事は正しい。ミナトやクシナ、里の者の事も顧みず大蛇丸の所へ行った。 「すごい我儘なのは分かってるけど……父ちゃんもシカマルも好きなんだってば」 「お父様もね…ナルトの事が、大好きなのよ」 ナルトはじいっとクシナを見つめた。 「それに私も、ナルトの事が大好きなのよ。私もミナトもナルトの親だから、子供を大切に思って大好きなのはしょうがない事なのね。ナルトが言うように、父親であるミナトとシカマルさんを好きな気持ちは全くの別物だわ。もちろん、同じ秤に乗せて比べられるような感情ではないし」 クシナはそっとナルトの手を取る。そして、優しい笑みを浮かべた。 「ミナトはね、ナルトの事が大好きなの。ナルトが居なくなってしまって、どれだけ心配をかけたか分かる?いつものお仕事をしながら、一生懸命にナルトの事を探してた。だから、その気持ちだけは忘れないで欲しいし、分かってほしい。ナルトもお父様の事、好きなんでしょう?」 こくりと頷いたナルトは無性にミナトとシカマルに会いたくなる。クシナの話してくれた事は、とても簡単だが難しい事だった。 「分かってくれたならいいの。ミナトはナルトが好きだから、ナルトの悲しむ様なことは出来ないのよ」 「母ちゃん…また、ちゃんと考えて母ちゃんのとこに来る」 「そうね。もう、勝手に居なくなるってのは止めて欲しいわ」 ナルトはバツが悪そうな顔をしてぺろりと舌を出す。クシナは息子の姿を見てくすりと笑ったのだった。 クシナの部屋を退室して、ナルトはまた長い廊下を歩く。それは目的があっての事だった。先程別れたシカマルに会いたい。会って、色々と話をしたい。ミナトの事もクシナの事も、自分を取り囲む優しい人たちの話をしたかった。そして、自分がどれだけシカマルの事が好きなのかを伝えたい。まだはっきりと自分の気持ちをシカマルに告げていないのだ。なんだか、その事をシカマルに伝えたくてしょうがない。 ナルトはシカマルの使っている部屋に向かって歩きながら、その歩みがどんどん早くなる事に気がつかない。気だけが焦ってしまい、ナルトは走り出していた。
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親って、ありがたいけど難関であることは確か。
今回のお話はワンクッションって感じでしょうか?
ナルトとシカマルに会話をさせてないので…
次回はそんな感じになります。