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A story of the first love 13
暗い洞窟に松明が灯る。大蛇丸は、興味なさそうに自分を見る二対の瞳を見つめた。 「あら、お久しぶり…」 「できれば、会いたくなかったですけれどね」 ミナトの言葉に大蛇丸はくすりと笑う。 「四代目は歯に衣を着せると言う事が、今でも苦手なようねぇ…」 「ええ。きっとこの性格は一生変えられそうにもないですよ?」 ミナトは柔和だと言われる笑顔を浮かべた。 「作り笑いもお上手だこと……」 「おいおい、大蛇丸。四代目を煽るのはいい加減にせんか!」 ミナトと大蛇丸の間に入る様に自来也が声を出す。 「…それで?お二人が揃いに揃って、私に何の御用かしら?まさか、昔話をしようと思っている訳でもないでしょうに」 ミナトの顔から笑みが消える。自来也はミナトを制するように片手を上げた。 「大蛇丸、ちと遊びが過ぎたのではないのかのう…ナルトをミナトの息子だと知っての所業だと、わしは思うが?」 大蛇丸はふうっと息を吐く。 「何か、二人とも勘違いをしてるんじゃないのかしら?」 ミナトはくっと唇を噛みしめた。 「ナルトくんは望んで私の所へ来たのよ?人間になりたいと言って……私はそれを叶えてあげようとしただけの事。私は善人や偽善者ではないから、それ相応の代償を彼と取引しただけ…何か悪いかしら?」 「よく言うわ。ナルトの中の九尾を狙っての事だろう。お前の退屈しのぎに付き合わされた子供たちは可愛そうなもんだのう」 カカシの手によって、サスケは保護された事は連絡が来ている。重体である事は確かだが、一命は取り留めていた。 「ああ、本当につまらない。ナルトくんは、人間の愛を手に入れたと言う事になるのねぇ…楽しみにしていたのに。彼と、彼を思うサスケくんが私のものになると……」 くすくすと笑う大蛇丸に、ミナトの怒りが頂点に達する。震えた拳から、閃光が放たれた。大蛇丸はそれをまんじりとせずに見つめている。もちろん、彼は逃げも隠れもしない。 「彼が人間の愛を得る事が出来るなら、二度と彼に近づかない……そう約束したわ。それを違えるつもりはこれっぽっちもないのだけれどね。四代目はそれだけでは、ご不満とでも?」 「当たり前だ!」 「怒りっぽい所も、昔のまま。それに比べてナルトくんはクシナ姫そっくりに、天真爛漫に育って良かったわね」 「厭味な男だのう」 自来也は同じく仙人と呼ばれる地位にいる大蛇丸を見つめる。旧知の仲であると今でも信じているが、彼には悪い癖がある。この世界に退屈しているのだ。たまに、面白そうな事があるとその触手が動くだけだ。それなりの徳も力も手に入れていると言うのに、彼は気ままで掴みどころがない。 「大蛇丸、これ以上ナルトに関わる事はやめるんだな…四代目が笑っている内に…」 「これは、笑止。ナルトくんには近づかないと、言っているでしょう?もちろん、彼が勝手に来る事は私にも止められはしないわ。四代目、心配ならナルトくんに首輪でもつけて置くのね」 大蛇丸はこれ以上の話はないと、立ち上がって二人に背を向ける。彼は一度も振り返る事はなかった。そして、暗い闇の中に消えて行ったのである。 「先生……」 「ミナト。よく我慢したな」 「あの男は、何もかも分かっていてナルトやサスケくんを……それははっきりしているでしょう?これ以上、大蛇丸を野放しにしておく事を……俺は許せない」 自来也は溜息を付く。確かに、ナルトやサスケを手に入れようとしていた大蛇丸の真意は確かである。それに、自分の元へやってくるように手を拱いたことも。だが、ナルトやサスケは己の意志で彼と契約を交わしたのだ。言葉巧みに幼い子供たちの心理を弄んだだけなのだろうと言う事も想像がつく。 「妖狐に八岐大蛇……あいつも色んなものを敵に回したもんだ。それなりの代償を大蛇丸が払う時がやってくるだろうよ」 「そのツケには何倍にも膨れ上がった利子付きですよ、先生」 ミナトは苦笑を浮かべる。自来也共々、昔から大蛇丸を知っている。だからこそ、自来也と同じで彼の命を奪おうとまでは思わない。だけれど、それが息子や妻にまで及ぶ最悪ならば自分は鬼でもなれるのだ。 「サスケの容態が安定してくれるといいが……ミナト。これからが大変だ。ナルトの事にしても、な」 ミナトは息子の姿を思い浮かべる。人間を好きになったのはいいが、それが男だというのだからどうしたものかと考えた。ナルトは自分とクシナの子供だ。純粋でかつ頑固な所は、妻の姿に重なる。 「悩みはつきませんね……」 ナルトの顔を思い出した。幸せそうな顔をして人間の青年の腕の中にいたナルト。それも、奈良一族の人間だと言うのだから、困りものだ。大蛇丸の誘惑に乗り、人間になりたいとまで思ったナルト。彼の望みは親として認められるものではなく。 「さて、戻るか。大蛇丸については、わしも気に留めて置くからのう。お前は、これからの事だけ考える事だ」 「はい…先生」 親の顔になったミナトを見ながら、自来也は幼い日のミナトを思い出す。子供だと思っていた者が親になる。順番なのだと自来也は感じた。子供だと思っていたナルトも少しずつ大人になろうとしているのだ。今のミナトに何を言っても無駄だろう。自来也の苦笑にミナトは気がつかないで、暗い空を見つめていた。
ミナトは応急処置されたシカマルの手の甲に、掌を当てる。 「毒抜きは終わったから、後は腫れが引くのを待つだけでいいからね」 ミナトの声にシカマルは頷く。そして、にこやかな笑みを称えるミナトをそっと見た。彼は一見人間に見える。その彼は妖狐の里長と言うのだから驚きだ。金色の髪と青い瞳はナルトと同じであった。 「あの……」 「ん?ああ、俺の事をどう呼ぼうか悩んでるって顔だね」 シカマルは驚いたようにミナトを仰いだ。ミナトはくすりと笑う。 「別に君の心の中を覗いた訳ではないさ。そうだね…大抵の者は、俺の事を四代目と呼ぶ。この里の四代目だから」 それはシカマルも知っていた。ただ、自分がそう呼んでいいのかどうか悩んでいただけだ。襖をこつこつと叩く音が聞こえた。返事も待たずに、その襖はからりと開けられた。 「終わった?父ちゃん…」 ミナトを四代目と呼ばない一人が、ひょっこりと顔を出す。ミナトは笑みを浮かべて頷いた。ナルトはぱあっと笑顔になり、シカマルに抱きつく。 「シカマル!行くってばよ!!」 シカマルは恐る恐るミナトを盗み見る。彼のこめかみで青筋がぴくぴくしているのを見て、やばいなぁと思うのだ。誰に聞いても、ミナトはナルトを溺愛している事が伺えた。 即ち、シカマルは父親と息子の間に湧いて出てきたムシみたいなものだ。 「待ちなさい」 ナルトはシカマルの腕を取りながら、首を傾げた。 「まだなんかあるんだってば?」 「用があるのは、ナルト…お前にだ」 ミナトの言葉にシカマルが腰を上げる。軽く会釈をして退室するシカマルの背中を不満そうな顔つきでナルトの視線が追う。むうっとしながらも、ミナトの前にちょこんと座ったナルトは父親が話出すのをじっと待った。 「ナルトがシカマルくんの事を好きなのは、十分に分かった。後先考えずに里を飛び出し、自分の命と引き換えに大蛇丸と勝手に契約を結んだ。その結果、サスケくんは重傷を負う事になり、暫くは動く事もできないだろうね。ナルト、自分のした事の重大さに気が付いているかい?」 「それは……」 ミナトはじっと困ったように俯くナルトを見つめる。 「シカマルくんの事は諦めなさい」 「え…?」 「彼は人間だ」 「だって、父ちゃんと母ちゃんだって……!」 「俺とクシナの時とは、状況があまりにも違い過ぎる」 「そんなん、絶対にやだってばよっ!」 ナルトは思わず立ち上がる。ぎろりとミナトを睨みつけて、潤んだ瞳を向けた。 「父ちゃんのバカ!」 「ナルト!」 ミナトの声は厳しいものだった。ナルトはミナトに背中を向けると、肩を震わす。ミナトにはすぐに分かる。涙もろい息子が泣いているのだと言う事を。たった半月程会わなかっただけなのに、ナルトは声を殺して泣く事を覚えた。癇癪を起こすでもなく、喚き散らすでもなく、それは親からしてみれば子供の成長を感じる嬉しい出来事でもあるが、少し寂しくも感じる。 「強情を張るのなら、ナルトの中からシカマルくんの記憶を消してもいいんだよ。もちろん、シカマルくんからもナルトの記憶を消す」 「それでも……」 ナルトは手の甲で目をごしごし擦った。すんと鼻をすすって、呟くように、だけれどはっきりとミナトに告げる。 「オレは何度でもシカマルを好きになるってばよ」 頑ななナルトの姿を見て、ミナトも心が苦しくなる。息子が初めての恋をした。それは自分の命を掛けるほどの恋だ。そして、その感情が愛に変わりつつあることも感じる。 部屋をそっと出て行くナルトに、ミナトはかける言葉を見つける事が出来なかった。
「つまらんそうな顔をしとるのう、奈良の坊主」 縁側に腰掛けて空を見つめていたシカマルの隣に大柄の男が現れる。じっと彼を見つめたシカマルは、迷った様に口を開いた。 「…失礼かとは思うですけどね、ナルトからエロ仙人としか聞いてないもんで」 「……あいつは、正確な情報を伝えるという方法を知らんのか!この徳の高い仙人を捕まえて言う事ではないわ」 「はあ…」 シカマルは困ったように笑う。 「自来也だ、自来也!」 どかりとシカマルの隣に腰を下ろした自来也は、人の良さそうな笑みを浮かべた。 「自来也様…俺はつまらなくなんてないっすよ。なんか、今でも自分が信じられないだけで……」 「妖狐の里に居る事がか?」 シカマルの顔から笑みが消えた。じっと彼は空を見つめている。自来也も同じように青い空を見つめた。 「この里から見える空は特別か?」 「…かもしれないっすね。ナルトが今まで見てきたのは、この空なんだって思います」 「馬鹿者、この里の空もお前の住んでおる世界も一つである事に変わりはないわい」 「そう、なんでしょうかね……」 シカマルは思うのだ。ナルトが自分と出会わなければ、ナルトが辛い思いをする事はなかったのである。優しい両親に育てられ、何不自由ない生活を続けていたであろう。 シカマルは自分の気持ちを吐露するように、ぽつりぽつりと話し始める。自来也は横槍をいれるでもなくじっとシカマルの言葉に耳を傾けたのであった。
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妖狐に戻ったナルトとシカマルの間には
問題がてんこ盛り!
…って、当たり前なんですが。
大蛇丸は書いててすごく楽しいキャラクターです。