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注意 ナルトさん女装してます。好きでない方はブラウザの「×」で閉じてください。

   女体化でないので、ナルコさんに非ず(笑)

 

 

 

 

Candy Girl 5

 

 

「こっ婚約っ??ちょ、本気なの?」

「まだ高校一年生なのに?」

 ナルトのまわりにいた仲の良い友人は目を丸くして、一瞬動きを止めた。

「……お見合いしただけで、別にけ…っ結婚とかじゃなくって、勝手に親が婚約しろみたいな感じで……ちょっと固まるのやめてってば!」

 むうっとしたナルトはきゅっと唇を噛みしめる。だから、誰にも言いたくなかった。だけれど、このなんちゃって婚約はお互いの両親が牽制を込めた「偽造工作」。周知の事実を得ないと意味がないときつく言われている。

 動きを止めていたのはほんのわずかな間。くすくすと漏れる声に、喧騒が戻る。

「ま〜、ナルトはねぇ」

「そうだよ。なんか男嫌いだし、お膳立てされてさっさと結婚までしちゃった方がいいのかも?」

「それに、今の話だと……ナルトに悪い虫がつかないようにって事なんでしょ〜?」

 ナルトはうっと言葉を飲み込む。全てが級友の言う通りな気がしてくる。同年代の同性がいる場所にはあまり行きたくない。避けている節があるから、男嫌いだと思われてもしょうがないだろう。それに、悪い虫がつかないように云々はズバリであった。

 ナルトはふうっと溜息を付く。

 お見合いと言っても、体よい言い訳で顔合わせ程度にしか考えていなかった。元々、向こう方も乗り気でないという話らしかったのだし。だから、とりあえず婚約したという形を取って特別に付き合ったりする必要はないというのがミナトやシカクの意向である。

 まさか、無理矢理親の進めた偽証縁談にシカマルが乗り気になるなど……どちらの両親も思わない。わたわた慌てるナルトに、シカマルは小さく唇に人差し指を立てただけ。何も口にするなというジェスチャーに慌てている内に話はどんどん進んで行ってしまったのだ。

 二人きりにされたホテルの庭で俯くナルトに、ミナトの前で被っていたいい子ちゃんの仮面を取っ払ったシカマルが見せた笑顔が忘れられない。

 手の中で震えた携帯。ふとディスプレイに視線を落として緊張してしまう。

「ふ〜ん……ナルって、正直だよね」

「へっ? は? な…なにが?」

「メール、誰から?もしかして、彼から?」

「……そっ、それはっ…」

 真っ赤になって俯いたナルトは彼女たちの言葉を肯定したことになる。

シカマルの事が嫌いでない。一人の人間として。付き合うとか付き合わないとか、結婚だとか婚約だとかは根本的にどうにもならない話なのだ。

「それで?」

 人の恋路も噂話もスイーツと一緒で大好物。

「一緒に、帰ろうとか…そうゆうの……」

「へーっ! けっこ相手もナルの事気にってんじゃないの?いいじゃん」

「違うってば!」

 必死になって否定すればするほど、微笑ましいくらいに真っ赤になってしまうナルトが可愛い。反応が楽しいからついついからかってしまうのだけれど、ナルトという不器用な人間がみんな好きなのだ。

 

 

 

 

「よう!」

 三日ぶりに会う姿にドキリとする。同じ学校だとは思えないくらいテイストの違う制服。まだ夏模様なために薄着なように見える。

「……いきなりメールしてくるから、びっくりした」

「なんか、今日は髪がすげー事になってんな?」

 ちょんとおだんごを突かれてナルトの顔が真っ赤になる。

「これは友達が勝手に……だから、べつにシカマルと会うからとかじゃなくってっ!」

 せっかくだからオシャレしましょう、といつもの如く髪を触られた。ナルトは女の子の器用さに感心してしまう。細い指先から丁寧に髪をまとめていく作業(にしか見えない)が、放課後あっという間に完成してしまったのである。いつかシカマルの事を紹介するようにと言われ、とんでもないと首を振ったのだけれど、後ろからついてくるなんて野暮なマネもしない。

 左右の高さをアンバランスにしたお団子にルーズな髪先がくるくると巻かれている。きっちりとまとめるのではなくフロントもサイドもふんわりと緩い雰囲気に纏められていた。

「あー…、こうゆうの可愛い髪型っつうの?」

「可愛くなんか……」

「なんか食いにいく?」

 どうしてもシカマルのペースにはまってしまうナルトはこくりと頷いた。シカマルが向かったのは、初めて彼と話をしたハンバーガーショップ。トレーの上にどっさりと盛られたハンバーガーとバニラシェイク。包みをがさりとやるシカマルが、ふとナルトを見た。

「食わねえの?」

「……食べる。い、いただきます……」

 無言のままハンバーガーを口にすると、ケチャップの味が口内に広がった。手持ちぶたさに会話もできず、黙々と食すことに没頭する。きっと彼の口から、見合いの件についての話があるだろう。両親たちは初めて二人が顔を会わせたと思っているが本当は違う。

「フラれた数時間後に、その相手と見合いとか笑えるよな」

 ぽつりと呟いた声に、ナルトが思わず咳き込んだ。

「大丈夫かよ?」

 そしてシカマルに渡された飲み物に口をつけて、また咳き込む。

「に、苦っ…」

「あ、悪りぃ。ブラック飲めねえの?シェイクよりましかと思ったんだけど」

「コーヒー飲めないっ!」

 ナルトは口の中の苦みを追い出すようにシェイクをすすった。ストレートなシカマルの言葉に何も返せない。きっと返してはいけない。

「ごちそうさま」

 シェイクを全部飲み込んで、くしゃっと丸めたハンバーガーの包み。彼に伝えなくてはいけない事がある。ゲームセンターで別れ際にシカマルが告白してくれた。あまりの展開に驚いてしまったけれど、自分の気持ちは伝えたつもりでいたのに、ちっとも伝わっていない。ミナトのお節介のお陰でこじれている様にも感じた。

「あの…、前しっかりと話せなかったけど」

「ん?」

「婚約は親が決めた事で、アタシはそれでいいと思ってるし」

「ンで?」

「だ…だから、付き合う必要はないって言われてるし、そう……思うから」

 じっと自分を見つめてくるシカマルの視線を外せないでいる。真っ直ぐに、こんな風にお互いの視線を合わせたのは初めてかもしれない。

「俺は自分の一生分の幸運をあの日に使った気でいるけど?」

「……幸運?」

「そ、ラッキーだった。親父のすすめる縁談なんて興味ねえし、俺には気になってる奴が居て。むしゃくしゃしてるとこで、目の前にやって来たのが俺が興味のある人間だった」

 どうしてだろうか。きっと、シカマルは一人の女の子に対して自分の気持ちを伝えているはずだ。それなのに、一人の人間として伝えられているような気持ちになる。それは、きっと自分の都合のいい解釈だと分かっているのに、視線が惹きつけられて離せない。

「出るか」

 立ち上がったシカマルにナルトも無言でそれに倣う。トレーの上からごみ箱の中に吸い込まれていく残骸。ナルトはなんだか寂しい気持ちに襲われる。

 もっと違う出会いが彼との間に存在していたのなら、もっと違う関係が築けていたのだろうか。

「あのさ……」

 人並みの中を駅へ向かう。少し前を歩いていたシカマルが俯くナルトに呟く。それは独白にも聞こえるような声の響き。ナルトはそこでようやく顔を上げた。

「ナルトは、無理って言ったよな?それって、見合いがあるからとかってのは俺の勝手な絵空事?」

「お見合いの事は、あの時いきなりホテルに連れてかれて……その時に初めて知ったってばよ」

「すげー機嫌悪そうでむすっとしてたな」

 ミナトからの突然の呼出しに、勝手な都合を押し付けられてかなり立腹していたのは確かである。

「じゃあ、俺が付き合いたいって言った時に無理って答えたのには、どんな意味があったんだ?」

「無理、だから。誰かと付き合うとか……別に、シカマルだからとかじゃない」

 男である自分が男と付き合うという選択肢は人生の中に存在してない。きっと、シカマルだってナルトと同じ意見だと思う。

「俺は傲慢だと思われても、お前に好きになってもらってなくても嫌われてもいねーとか思ってる」

 胸に突き刺さるのは言の葉の欠片。シカマルとの会話が苦しい。

「お互いに“婚約者”って存在があれば、それ以外の付き合いは必要ないって――――!」

「俺は嫌だ。いきなり降ってきたチャンスを無駄になんかできねえよ」

 茶化すでもないシカマルの声色に、ナルトは自分でも知らない気持ちに胸を占領される。何も知らない彼は、自分よりも気楽なんだと思っている。そうでも思わなければやってられない。

「シカマルは、知らないから……何も知らないから、そうゆうこと簡単に言えるんだってばっ!アタシは…シカマルは、アタシのこと好きになれないと思うよ」

「それはナルトが俺の事を好きになっても、俺がお前の事を好きになれないって事?」

 立ち止まって歩道の脇に移動した二人へ遠慮のない興味本位な視線が注がれる。

「そう」

「俺の気持ちを誰にも決められなくねえよ」

「でも、それが現実ってやつだと思う」

「俺を嫌いじゃないだろ?」

 ナルトは少しだけ意地悪な感情がわいてくるのを感じた。

「好きでもないけど」

 だからシカマルの言葉を借りて返事をする。にっこりと笑うと、目を丸くしたシカマルがふっと笑った。

「ナルトは、俺とこれからも会いたくないって考えてるって事でいいのか?」

「……――――――― そう、だってばね」

 返事をするのが一瞬送れた。ナルトはきゅっと唇を噛む。

 まつ毛が伏せた瞳に掛かる。その隠れた青い瞳が揺れているような気がして、シカマルは不思議な気持ちになる。ナルトが言うように、何かが分かっていなくて核心に近づけない。

 嫌われていないと思う。恋愛の好きと言う感情に至っていなくとも、それに近い仄かなものを共感していると思っていたのに。

 喉に引っかかるみたいな言葉のパズル。肝心なピースは与えてもらえないので、描く図画のモチーフも見えない状態だ。

「わかったよ、でも」

「え?」

 諦めたように言うと、ナルトが顔を上げた。少し焦燥が見える瞳に、シカマルはやっぱり自惚れてしまう。

「もう一度だけ、会ってくれねえか?」

「一度、だけ?」

「ああ」

 なんだろう。傷ついたような顔を見せるナルトの本心が分からない。ツンとした態度を取っていたと思えば、こんな心細いみたいな表情を見せるなんて。

「わかったってば」

「じゃ、またメールしてもいいよな?それも嫌だとか…――」

「そんな事言ってないってばよ」

 はっと自分の口を押えたナルトは頬を赤らめてそっぽを向いてしまう。お互いに意地の張り合いをしている子供のようである。まだまだ子供なのだけれど、ガキにだってそれなりのプライドも存在するのだ。

 最初に見極める必要があるのはなんだろうか?

 シカマルが無意識にナルトの髪に触れると、大きな青い瞳がもっと大きくなってシカマルを見上げた。

 

 

 

 

  

 

 

 

シカは気持ちははっきり意思表示(笑)

ナルはしたくてもできなくて。それはそれでじょうがない、みたいな?

次回の話からサイトへ下します。ってことで、エンドマークは近し