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WILL
暁に捕らわれていた我愛羅の奪還に成功した。その犠牲は大きなものであったが、風影が砂隠れの里に戻ってきたのである。今は里の者から、信頼と希望を託されている里の長。 彼はベッドの上に拘束されたような形になっているが、本人の要望どおり簡単な職務は毎日のように続けている。そのベッドの傍らでは、我愛羅の兄であるカンクロウが心配そうに弟を見つめていた。 「休むときは、休んだほうが身のためじゃん。そんなに頑張ることないって」 「休んでいる。こうやって書類を見るのは、カンクロウやテマリが決めた数時間だけだ」 「ん〜、兄ちゃん的にはもっと休んで欲しいと…」 「カンクロウも、毒抜きされたとは言え本調子じゃないんじゃないのか」 反対に心配されてしまい、カンクロウは困ってしまった。頑固なところは姉のテマリそっくりだ。深いため息をカンクロウがついたところで、部屋の扉が開く。 「お茶の時間だってばよ〜」 おき楽な口調はかわらないが、その背丈は出会った頃に比べると随分と伸びた。 「ナルト!」 カンクロウが嬉々とした声を上げる。我愛羅の手から素早く紙の束を奪い取ると、振り返って手招きする。 「もうそんな時間なのか?」 「テマリの姉ちゃんに頼まれたってばよ?我愛羅、なにしてんの?」 覗きこんだナルトに我愛羅が視線をさ迷わせる。小さな声で、「仕事だ」と答える。 「え〜!ダメだってばよ。今くらいはちゃんと休まないと、これからもたないってば」 「……それは、分かっている」 「オレにも我愛羅の気持ち分かるけどさ」 我愛羅は驚いたように顔をあげた。 「分かるのか?」 「オレってば、無茶とかしちまって…よく病院に縛り付けられたってばよ。なんにもできないのって、滅茶苦茶タイクツでつまんねぇし…病室抜け出してよく怒られたっけな?」 ナルトは照れたように、へへへと笑う。カンクロウは盆に乗った二つの湯飲みを見つめた。一つは我愛羅、一つはナルトの為のものだろう。テマリは我愛羅の元からさっさと退散するように言っているのだ。 「そうゆうことだ。我愛羅」 カンクロウはひらひらと手を振ると、我愛羅の部屋から出て行ってしまう。ナルトはそそくさと退散するカンクロウの背中を見つめた 「いったいどうしたんだってばよ?」 その背中を睨みつけていた我愛羅に話しかける。少し不機嫌そうに。 「カンクロウの奴、今日中に見たかった書類を全部持って行った」 「明日に回せばいいってばよ。カンクロウもテマリの姉ちゃんも、我愛羅を心配してるんだってば」 「過保護すぎる…」 「オレも我愛羅のこと、心配してるってばよ」 ナルトは盆から我愛羅の湯飲みを取って、渡す。我愛羅はまた驚いたような表情を貼り付けて、ナルトを見つめた。 「ナルトが…?」 「なんか、おかしいってば?」 ナルトはベッドの近くの椅子を引き寄せると、サイドボードに盆を置く。その上には、我愛羅が好まない菓子も添えられているのが、きっとそれはナルト用だろう。 「オレが心配するのって、我愛羅にしてみれば意外とか?」 「違う………嬉しいと、思ったから」 照れたようにナルトから視線を外した我愛羅の姿にナルトはくすりと笑った。 「里のみんなも、我愛羅のこと心配してるってば。オレも、その一人だってばよ。我愛羅はオレにとって、すっげえ大事な友達だから」 「友達…」 「里とか関係なく…オレにとって、我愛羅は大切な仲間だから」 我愛羅は湯飲みを握り締めると、中の液体を見つめる。共に、望んでいないのに身体の中に尾獣を入れられ、その所為で他人から疎まれてきた。嫌われ、蔑まされ。恐れられ。自分の居場所を見つけられず、生きていた毎日。 「俺は…お前と戦って、変わった」 我愛羅は木の葉崩しの時の事を思い出す。破壊衝動と殺戮衝動と、どこに向ければいいのか分からない憤り。それを真正面から受け止めたのは、うずまきナルトだ。姉兄すら自分の存在を畏怖の眼差しで見ていたと言うのに。 「今回も、そうだ。自分が何者であるかも忘れていた所に、お前は笑顔を向けてくれた」 「我愛羅?」 「お前は好きな奴はいるのか?」 我愛羅は真っ直ぐに視線をナルトに向ける。ナルトは一瞬驚いたように、青い瞳を丸くさせた。 「いるってばよ。たくさん友達も仲間もできたってば。みんな、大好きだってばよ」 「違う…その、なんて言えばいいのか…愛している者はいるのか」 我愛羅の指す「好きな人」が、恋人に当たると気が付いたナルトは顔を真っ赤にする。我愛羅はすぐに、ナルトにたった一人の大切な人が居る事に気が付いた。 「うん…まぁ、いるかな?」 「…うちはサスケ?」 我愛羅は思いついた名前を口にした。ナルトは驚いたように否定の意味で首を振る。 「違うってば」 少し寂しく聞こえる声色。我愛羅は眉を顰める。 「サスケは大事だけど…そーゆうのとは違うってば」 「春野サクラか?」 「サクラちゃんは永遠のオレの憧れだってばよ」 ナルトは恥ずかしそうに笑みを作る。 「そいつは、お前を大切にしてくれてるのか」 「え?あ、…うん」 「そうか」 ナルトが我愛羅の心を溶かしたように、知らない誰かがナルトの心を受け止めたのだろう。 「俺はお前が好きなんだと思う…お前が、俺のことを仲間としか見ていなくても」 「…我愛、羅?」 「ナルトは初めて俺を一人の人間だと見てくれた。俺のために涙を流してくれた……それだけで、俺にとっては十分だ」 「それは違うってば。オレだけじゃない…我愛羅はみんなから慕われてる風影になってんじゃん」 「きっと人間は、欲が深い生き物なんだ。千の愛情を向けられても、一の愛を求める」 我愛羅の言っている事の意味がナルトには分かってしまう。大切にしたい人が出来たから。その人に愛情を向けられていると幸せだから。 「俺はお前が幸せならばそれで満足だ。それ以上は求めない。これからも、友でいて欲しい」 にっこりと微笑み掛けられて、ナルトは頷く。 「オレも…これからも仲良くしてほしいってば…」 「でも、お前が幸せでない時は…」 「何だってば?」 ナルトは首を傾げた。我愛羅は言葉の続きを飲み込む。 「いや…なんでもない。今度は俺にも会わせてくれるか?」 「えっ!!……なんか、そーゆうの恥ずかしいってば」 ナルトは思い出したように、湯飲みを掴むとぬるくなってしまったお茶を飲み込む。そして、派手にむせってしまう。焦るナルトの姿を見て、我愛羅はくすくすと笑った。 「近いうちに火影にも礼が言いたい」 「オレが言っとく!綱手のばあちゃんは、形式とかそーゆうのあんま気にしないから大丈夫だってばよ!」 「久々に木の葉にも行って見たいんだ」 我愛羅は本気でそう言っているのだろう。多忙を極める風影が木の葉を訪れるのは、時間の問題かもしれない。そして、嘘をつくのが上手でないナルトは彼に自分の恋人を紹介しなければいけないのだろう。 ナルトは頭の中では「勘弁だってばよ〜」という言葉がぐるぐると回っている。
我愛羅が木の葉を訪れる話は、また次の機会に……
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我愛羅大好きです。
コスチュームは変わった後が好きですね。
首元見えないほうがストイックに見えません?
これ続くの…?って感じですが続きます。
シカナルは前提。