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TOP SECRET 2
「いい湯だった〜」 部屋に入るなりのナルトの一言だ。部屋でのんびりしていたシカマルは、思ったよりも早いナルトの帰りに目を丸くしている。 「早えーじゃん」 「ん?…そっかぁ?」 「お前の温泉好きは筋がね入りだからな。ミツバやトンボが根を上げて先に戻ってくると思ってたぜ」 ナルトは眉間にしわを寄せると、寛ぐシカマルの隣に腰を落ちつけた。その難しい顔にシカマルが身体を起こす。 「どうした?」 「……なんかさ〜、ミツバが悩みがあるっぽいんだってばよ。そんで、オレがいるよりトンボと二人の方がゆっくり話できるかなとか思ってよ〜」 「悩み?」 ナルトの言葉を復唱して、シカマルはくすりと笑う。ミツバには悩みなんてものはないだろう。それよりも気になる事があるのだ。目の前のナルトの事。それは昼間の彼の態度からも伺える事で、シカマルはぷっと吹き出した。 「気にする事ねえよ。あいつは、答えが見えねえと嫌なタイプって奴だ」 「あ〜そう言う事か!トンボが言ってたってばよ。ミツバは神経質なんだって」 加えるならば探究心も人一倍なのだろう。一度気になってしまったから知りたくなってしまうのだ。世の中には知らなくていい事なんて履いて捨てる程あると言うのに。 「ミツバが難しい顔してっと、トンボまで調子おかしくてさ」 「んで、なんとなく居辛くなったお前が先に風呂から上がった…と」 ナルトはぱちくりと瞬きをした。なんで自分の考えている事が分かるのか、不思議なのだ。シカマルからすれば、推測にもならない「起きうるだろう範疇」の中の出来事でしかないのだが。 「別にいいんじゃねえの?」 シカマルはしれっと答えると、ナルトを抱き寄せる。 「ちょ…シカマル?」 二人きりの部屋ならまだしも、ここはミツバやトンボともシェアしている部屋だ。彼からが帰ってくる事を考えるとシカマルの行動が不思議でならない。吹聴しないが隠そうともしないのがシカマルだ。その考え方にはナルトも同調する所があるのだが、たまに理解を超えてしまう事がある。 「二人が戻ってく…… ―――――」 言葉の続きはシカマルの唇によって奪われる。ゆたっりと髪を撫ぜる指が心地よい。くすぐる様に耳の輪郭をなぞる指先に、緊張した身体から力が抜ける。そのままナルトの上半身はシカマルに預けられた。 「ん…っ」 息を継ぐ合間に漏れるナルトの声に艶が交じる。抵抗していた筈のナルトの腕がシカマルの首に掛けられた。 「シカマ…ンンっ…」 絡め取られる舌の熱さと甘さに、ナルトの頭がぼうっとしてくる。こうやって触れ合う事自体は嫌いでないのだ。優しく扱われる度に心が溶けてしまいそうな安堵感を味わう。ゆっくりとシカマルによって畳の上に上体を縫い付けられた。 「は…っ…シカマルってば…」 いつもの元気な声とは違う甘えるような声色にシカマルの目尻も下がってしまう。 「どうした?」 覗きこんでくるシカマルの表情が柔らかくて、ナルトはくすりと笑う。 「ミツバとトンボが……戻ってくるってばよ?」 「だなぁ…どうする?」 どうするもこうするも、この先を続けられるのは困る。現実問題として。もし、行為に突入してしまったら、きっと二人の可愛い後輩の事なんて頭から抜け落ちてしまうのだ。正しくはそれを考える暇を与えてもらえないのだ。シカマルの事を思うのに精一杯になって、周りが見えなくなってしまう。 「ん〜…困るってば」 「そっか」 「シカマルの事は好きだし、ほんとは……」 「やりてえ?」 ナルトが真っ赤になって口を閉ざす。それから、ぎろっとシカマルを睨みつけた。 「風呂上がりは牛乳だってばよっ!」 「俺に買ってこいってか?」 くすくす笑ったシカマルはナルトを組み敷いた腕を離す。それに従ってナルトも身体を起こした。シカマルはベストを脱ぎ捨てると、タオルと浴衣を持ちナルトに向かって手を上げる。 「ついでに風呂済ませてくるわ」 「お、おう!」 乱れた浴衣を直しつつ真っ赤になって俯いたナルトは、シカマルの方を見ないでコクコクと頷いた。そんな強情な所も可愛いと思わせる一面なのだが、きっと本人は気が付いていないのだろう。 「さて、と……」 扉を閉めたシカマルはにやりと笑う。面倒な事は嫌いだが、面白い事は意外と好きなのだ。これは幼少期の刷り込みだろうか?悪戯っ子だった自分を懐かしんでしまう。肩にタオルを引っかけたシカマルは悠々と温泉に向かって歩き始めた。
ガラリと開けた引き戸の向こうでは、ユデダコになっている部下の姿がある。湯気の向こうには岩風呂の中に肩まで浸かったトンボが俯いていた。 「よう…随分と、長風呂なんだな?お前たち」 シカマルの声を聞いたトンボがぎょっとした顔で目を丸くした。 「た、隊長!?」 にんまりと笑ったシカマルから顔を背けるようにミツバの姿がある。掛け湯をしたシカマルは、胸の辺りまで湯船に浸かった。 「ふ〜…任務の後の風呂は最高だけどよ」 トンボとミツバの頬が赤いのは湯あたりのせいだけではないだろう。ナルトにキスを仕掛けている時に部屋の外でした物音の主は彼らだ。 「入り直すくらい…気に入ったのか?ほんとにお前ら茹で上がっちまうぞ?」 トンボが慌ててミツバの手を取る。その慌てぶりが可笑しくてくすりと笑ってしまった。 「隊長は…その、俺たちが戻ったの……」 「そりゃ、あんだけ派手な物音立てられりゃ気が付くわな」 「か…隠さないんですか!」 俯いていたミツバの言葉にシカマルは首を傾げる。 「…ンでだ?」 「え…?」 意外な返事に戸惑ったのはミツバの方だ。ぽかんと口を開けているミツバにシカマルは余裕の笑みを見せる。 「ンな必要ねえだろ?世間体だとか、男同士とか関係ねえし。別にそれを任務に持ち込むほど俺は馬鹿じゃねえしな。それにな…隠すから人は知りたがんだよ。隠さなけりゃいいだろ」 根本的に何かが違う様な気がするのだが、自信満々に言われてしまうとシカマルの科白を肯定してしまう。 「普通にしてりゃ、他人なんてそれが当たり前に見えてくるから不思議なもんだぜ?」 「そ…んなもんすか?」 「ああ、それくらいちっぽけな事」 彼らが拘る事をいちいち気にして居たら、ナルトとは付き合えない。彼とずっと一緒に居たいなどと言えない。考えなくても答えは決まっていて、その結果に素直に従う事にしたのだ。寧ろ、世間体だとかを気にしているのはナルトの方で、たまには可愛い我儘なんてのも聞きたいと思っているくらいである。 「別に気になるなら、観察でもなんでもしろよ、ミツバ。ストレスは身体に悪いぜ?」 ミツバは、う〜んと唸るとこくりと頷いた。その隣では未だに慌てふためいているトンボの姿がある。 「俺はナルトに牛乳頼まれたから先に上がるけど、お前らも夕食の時間までに戻ってこいよ?」 ミツバとトンボは、颯爽と去って行くシカマルの背中を見つめる。潔い姿に反対に圧倒されてしまったのである。 「ミツバ……シカマル隊長、怒ってるのかな?」 「それは、ないと思う」 それならば、わざわざここへは来ないと思うからだ。シカマルとナルトが部屋の中で何をしているかを察してしまったミツバは回れ右をして部屋を去った。だが、どこへ行けばいいか分からずに、風呂場に逆戻りしてしまったのだ。それまでシカマルに見透かされているとは思わなくて、彼の登場に驚いてしまったのだけれど。 「怒ってんなら、わざわざ…あんな事言いに来ないだろ?」 「え…?僕たちに言いに来たの?」 「シカマル隊長には…何もかもお見通しだったって事じゃねえのかな…」 「そうなんだ…でも、なんか凄いカッコイイよな。あんな風に言えちゃうなんてさ」 トンボはへへっと笑う。 「うん、カッコイイよな」 二人は顔を見合わせて笑った。それから、本当に湯あたりしてしまいそうになり、早々に温泉から上がったのだ。 だが、すぐにこの時の言葉を撤回したい気分になる事となる。部屋に戻った二人の前には、パックの牛乳を美味しそうに飲んでいるナルトが出迎えてくれた。そこまではいい。 隠す必要がないと言ったシカマルは有言実行だった。夕飯では、ぎゃーぎゃーと騒ぐナルトの皿にどんどんと彼の嫌いな物を取り分け、しゅんとしているナルトを手八丁口八丁で解き伏せ、子供っぽいナルトを慈しむ様な視線を惜しみなく与えていた。箸を止めて呆然とその様子を伺っていたミツバとトンボは、思わず苦笑してしまったのだ。 「シカマルと風呂に行くけど、二人はどうする?」 食休めをした後にナルトに訊ねられたミツバたちは、力なく首を横に振った。 「これ以上のぼせたくないんで……」 ミツバの言葉を素直に受け取ったナルトは、二人が随分長風呂だった事を思い出す。 「ミツバ、先に寝てても構わねえぞ?」 シカマルのニヤリと笑った口元を見たミツバは、はぁっと息を吐いて肩を落とした。これで、一緒に温泉に乱入したら、先が目に見えているような気がしたのだ。それに、ナルトの誘いをシカマルは良しとしていないだろう。「先に寝ておけ」と牽制されたと言う事は、きっと二人はとある事情で長風呂になるだろうからだ。 「おやすみなさい…ナルトさん!」 トンボはふかふかの布団の上に寝転びながら、にこにこと笑っている。この雰囲気から解放されるなら、なんでもいいのだ。ひらひらと手を振りながらシカマルとナルトを見送った二人は、どっと疲れて布団に突っ伏したのだった。 任務より疲れる……… 心底そう思いながら。
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キリリク内容は「下忍ちゃんにシカとナルの仲がばれるけど、反対にあてられちゃう」
ってものだったんだけど、密かにクリアしてない感じが……(/_;)
ご、ごめんなさい。糸葉さま!
そうそう、甘い雰囲気にあてられちゃう…なんですよね。甘くないなぁ(笑)
シカとナルのシーンだけ微糖です。
毎回、派手にリクエストを裏切る自分に凹む〜