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shooting star
「あ!今、見た見た?」 隣ではしゃぐ姿をシカマルは横目で伺う。 「見てねー」 「ウソ!マジで?めっちゃキレイだったってばよ。すっげえ、キレイな流れ星だったんだってば!」 ぐいぐいとシカマルの袖を引っ張るナルトは興奮状態にあると言える。 ナルトに「なんとか流星群」が見られると教えてくれた誰だか知らない奴を、少しだけ恨みたい気分だ。寝ているところを無理やり起こされ、原っぱまで付き合わせられた。 「帰ろうぜ、ナルト。ちょい寒みぃ…」 「シカマルもちゃんと見るってば。流れ星が消える前に願い事言うと、叶うんだってばよ!」 その言葉を聞いた途端、ナルトの情報源が女だと分かる。こんなロマンティクな発想は男には無い。もしくは子供だろう。シカマルは呆れたようにため息をついた。 「…なにメンドクセー事聞いてきてんだよ。そんなんでポンポン願い事が叶ってみろ。世の中滅茶苦茶になんだろうが。そんなに甘くできてねーの」 シカマルが言うと、ナルトが黙ってしまう。反論はしてこないが、じっとりと不満そうな眼差しを向けられた。 「……シカマルにはロマンとかねぇのかよ」 「流れ星にロマンは感じねえけどな」 正直に答えると、ナルトはぷうっと頬を膨らませてゴロリと横になった。 「つまんねーの!」 大きな声での独り言だ。もちろん、シカマルに対しての最大限の嫌味なのだが、当の本人は堪えた感じは無い。シカマルからすれば、いっそこのまま諦めてアパートに帰ろうとか言ってくれたほうが楽だ。 「なぁ、風邪ひくぞ」 「別にいいってばよ〜」 やけくそ気味に返されて、さすがにシカマルもカチンとくる。面倒臭い事が嫌いだから、人との争いも好まない。平々凡々に暮らして行けばいいと思っていた口だ。それに、どちらかと言えば、ナルトに対しては甘いと自負している。 「じゃあ、俺は帰って寝るから、ナルトは好きなだけ星でも何でも見てろよ」 シカマルは冷たく言い放って立ち上がる。それには流石のナルトも驚いたようだ。慌てて起き上がったのが気配で分かった。 シカマルは、ズボンの裾を引っ張るナルトをじっと見下ろす。 「なんだよ」 「あの…なんてーか、その…ほんとに帰るんだってば?」 ナルトは実にストレートだ。分かりやすい性格をしているから、シカマルは自分の手の上でコントロールすることにも慣れてきている。彼の事が好きだから分かる。ナルトが言われて嫌な事、されて嫌な事。喜ぶ事、悲しむ事。そんな些細な感情の変化を小さな頃から見てきた。 「帰る」 「シカマル……怒って」 「そりゃ怒るだろ」 シカマルはナルトの言葉を途中で遮る。それでもナルトの指はシカマルのズボンを離そうとしなかった。一瞬、傷ついたように瞳を大きくしたナルトは、ぎゅっと唇を噛み締めた。 だから、ナルトがどうしたら傷つくのかもシカマルには容易に分かってしまうのだ。分かっていて、彼の傷つく言葉を選んだ。そんな自分が心底器の小さな男だとは思ったが、自分の言動にいちいち反応するナルトの姿を見ていると、なんだか気持ちも落ち着いてくる 全ての意識が自分に向けられているという事が、歪んだ愛情のようにも思えた。 「俺がお前を心配しても、お前はどうでもいいんだろ?」 「そんな、違うってば…」 「別に良いって言ったじゃねえかよ」 「オレは一人で流れ星見たいんじゃなくて、シカマルと一緒に見たいんだってばっ!」 「十分に見ただろ」 ナルトは黙って俯いてしまう。 「一緒に帰らねぇなら、俺はほんとに帰る」 「…まだ、願い事言ってないってばよ」 「散々見てただろうが」 「だから!まだ言えてないんだってば。流れ星が消える前に、三回願い事を言わねぇと叶わないんだってばよ」 ナルトの言葉を聞いて、シカマルは何に対して怒っていたのかも忘れてしまう。そして、深い深いため息をついた。すると、ナルトが顔を膝小僧の辺りに擦りつけてくる。伝わってくる温かい感触に、シカマルは自分の負けを認めた。 「お前の願い事っつったら、火影だろ…今度流れ星見えたら、でっけえ声で叫べよ。それまでは、しゃーねえから………待っててやる」 「え?」 結局、ナルトには敵わない。シカマルは自分から白旗を揚げてしまうのだ。少し苛めてしまったから、免罪符を込めた言葉でもあった。 「違うってばよ?」 ナルトはきょとんとした顔つきで、シカマルを見上げる。暗がりでもその瞳が潤んでいる事が分かって、シカマルは自分の作戦が失敗したのだと確信した。泣かせるつもりまではなかったのだ。少々きつい物言いをすれば、ナルトも諦めると思ったのである。 「火影はオレの夢だけど、願い事じゃないってば」 「は?」 ナルトの言葉にシカマルは反対に驚いてしまった。ナルトの言葉が想定外すぎて、先が読めない。シカマルは思わず唸った。 「言ってみろよ。お前の願い事、っての…?」 ナルトの指がシカマルのズボンからぱっと離れる。何に慌てているのか、両手をぶんぶん振ってシカマルの質問をはぐらかそうとしている。シカマルは座っているナルトの視線まで降りると、じっと顔を見つめた。 「なんだよ。俺には言えねえのか?」 「ダメなんだってば…」 「なにが?」 「願い事は…人に言ったら、叶わなくなるんだってばよ。だから、ぜってー言わねえし!」 ナルトは両手で自分の口を塞ぐ。子供っぽい仕草にシカマルは思わず笑みが零れる。 「ナルト。そりゃ、迷信ってやつ」 ナルトは横に首を振る。何かを言い返せばボロが出ると踏んでいるのか、絶対に口を割る気はなさそうだ。シカマルはナルトの両手をはがすと、意固地な唇に触れるだけのキスを落とす。 「実を言うとな、ナルト。俺はきっちり流れ星に願い事をかけた。聞きてぇだろ?」 ナルトの大きな瞳が、もっと大きく見開かれた。 「きっ聞く訳ないってばっ!それじゃ、シカマルの願い事は叶わなくなるんだってばよ?」 「試してみようぜ?ほんとに叶わねぇかどうか…」 「ダメダメダメ、絶対にダメだってばよっ!!」 ナルトは慌てた様子でシカマルの口を塞ぐ。シカマルはその行為がツボにはまって、思わず笑ってしまった。 「シカマル!オレは本気で心配してんだってば」 くすくすと笑い続けたシカマルは、ナルトの耳たぶに唇を寄せる。 「俺の願い事は…」 「聞かなねーってばっ!」 シカマルは強引にナルトを地面に押し付ける。耳の付け根をきゅっと吸うと、ナルトの身体がぴくりと強張った。 「ナルトとやりてぇ…っつったんだよ。青姦は男のロマンだろ?」 シカマルの言葉を聞いたナルトは、諦めたように全身から力を抜いた。そのままシカマルの首に抱き付いてくる。 「オレってば、シカマルの願い事聞いちまったけど……意味分かんねぇし。これって聞いてない事と同じだよな?」 ぎゅうぎゅうと抱き着いて離れないナルトは必死になって、「大丈夫ってば!」と繰り返した。 「おい、マジかよ?」 シカマルは呆れてしまって二の句が告げない。 「大丈夫。きっと、これってば聞いてない事と同じだって」 必死に訴えてくるナルトの瞳は真剣そのもので、シカマルは拍子抜けしてしまう。一気に身体の気力が無くなっていくような気がした。 「男のロマンなんだろ?大丈夫だってば、シカマル」 力強く言われてしまって、否定する気も失せてしまったのである。
シカマルはナルトを背中から抱き締めて座っている。シカマルの膝の間で、ナルトは真剣に星空を眺めていた。 「言えたか?」 時々シカマルがナルトに尋ねる。 「まだだってばよ…ってか、流れ星見えなくなったような気がするってば」 それはそうだろう。空もだんだん白けてきた。流れ星のピークも過ぎたようで、空に流れる星の数も少なくなっている。 「はぁ…今回は諦めるしかねぇのかな〜」 流れ星のピーク時には、あまりにはしゃぎ過ぎて願い事を唱える暇などなかったのである。今になって後悔しても遅いのだが、ナルトはちょっと気落ちしていた。 それに睡魔も襲ってきているのか、くったりとシカマルに身体を預けている。 「なぁなぁ、シカマル。さっき言ってた男のロマンって、オレも男だから知っとく必要とかあるよなぁ」 「別にいいんじゃねえの、知らなくても」 シカマルは半ば諦めている。あれは出任せを言ったまでだ。散々ナルトを馬鹿にしたのだし、本気で願い事を言ったと思われるのも癪に障る。 「そう言われると気になるってばよ…」 「自来也様にでも聞いてみろよ。嬉々として教えてくれるぜ?」 「え〜っ…エロ仙人の言う事なんて当てにならないってばよ〜」 「……じゃ、聞くな」 「そう言われると、余計気になるってば」 「なら、聞けよ」 「ん〜……」 ナルトは不満そうにそう答えると、自然に落ちてくる瞼の引力に逆らえなくなる。それに、シカマルに抱き締められているので温かくて心地よいのだ。 「…ったく、だから帰るって言ったんだろうが」 夢の中に行ってしまったナルトにはシカマルの声は届いて居ない。眠った身体は子供でもずっしりと重たいのである。もう、子供ではない体躯のナルトを担いで帰るのかと思うとげんなりする。 「マジで犯るぞ…」 本音を口にすると、シカマルはナルトの身体を抱えなおした。本当にこのままでは風邪をひいてしまうかもしれない。ため息をついたシカマルは、ふと空を眺める。 そこには、ナルトが待っていたキレイな流れ星がひとつ流れ……シカマルは思わず苦笑してしまったのであった。
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結局、仲良しな二人が書きたかったんですよね…
ナルトの願い事がなんなのか、ワタシも不明(笑)
シカマルが、シカマルでなくなっていくようで怖いです(-_-;)
おかしいなぁ…
愛はあるんですけどね。シカナルに。