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 一番がいい。

 特別がいい。

 知り合い、ダチの一人……そして親友?

 ソコ止まりじゃねえのは自分の気持ちだけなんだけど。

 今日も心の奥底に歯痒いような痛いような気持ちを仕舞い込んで笑い合って一緒にいる。

 いつまで我慢できるんだろう。

 もしかしたら、1分後にはこの気持ちが爆発するかもしれないのに。

 

 

 

 

「へ…?わ、別れた?」

 行きつけのファーストフード店。放課後は夕飯まで待てない仲間で集まって、その店の一番奥の席を陣取る。約束している訳でないから、その日に何人集まるとかそんな決まりもどこにも存在していない。用事があるものは来ないし、ふらりと立ち寄って先に居る友達と一日の終わりを迎えることもあった。

「なんだよ、ナルト知らねえのか?」

 先に席に座っていたのは、同じクラスの犬塚キバ。自分と同じくらいのハンバーガーがトレイに乗っている。違うのは飲み物くらいだ。キバは大の炭酸ジュース好きなのだけれど、ナルトはあまりそれが好きではない。だからミルクにしたり、オレンジジュースにすることが多かった。

「聞いてねえし。…てか、なんでキバは知ってんだってばよ!」

「いや、本人から聞いたし」

 キバがポテトをつまんで口の中に入れる。それは一本ではなくつまめるだけつまんで口の中へ入れているというように見えた。

「シカマルがキバに言ったって事?」

「悪りぃかよ」

「悪くないけど……」

 シカマルの事だから彼自身の口から聞きたかっただけの事。これは些細な嫉妬というやつだ。できるなら、一番先に知りたかったのに……今日も誰かに先を越されてしまった。ナルトは不機嫌になるのを隠しもしないでチーズバーガーにかぶりつく。

「オレはなんも聞いてねえもん…」

「はあ?ンな下らねえ事でぷんぷんすんじゃねよ」

「してねえし!」

「してんだろうが、不機嫌だっつう顔しやがって。せっかくシカマルの事リークしてやってんのに、お前は感謝の一言もねえんだな」

「……別に、感謝したくねえもん」

 知りたいけれど知りたくない。天邪鬼になっている心にナルト自身も嫌気がさす。どんな小さな事であろうとも、シカマルの事が知りたい。でも、他の誰かから先にシカマルの事を聞くのはあまり好きではない。

 キバがナルトの前で、これ見よがしな溜息をつく。

「ほんっと、お前って分かりやすすぎて見てるこっちが泣きたくなる」

「うるせーってばよ」

 隣のクラスの奈良シカマルの事が好きだ。小学校の頃からの付き合いで、幸か不幸か仲のいい部類に入る友達。キバも付き合いは同じくらいで、ナルトの気持ちを知っている数少ない仲間の一人である。

「キバ。好きって気持ちって難しいよな」

「お前がバカのくせに難しくしてんだろ?バカには付き合いきれねえ、マジ」

「……なんで男は女で、女は男なんだろーなぁ」

「哲学すんじゃねえよ!せっかくのバーガーがマズくなるだろうが、バカナルト!!」

「不思議じゃねえの、キバは」

 真剣に問うと、目の前でキバが困ったように眉を顰める。

「個人の自由じゃねえのかよ」

 そして、意外と真面目に返答してくれた。

「自由かもしんねえけど、普通は異性に惹かれるもんだろ?オレって普通じゃねえのかな…」

「ちょっとバカなだけだろ?ズレてんだよ、人と」

 今日のキバは少し鋭い。答えが出ているなら、ナルトが男であるシカマルに片思いをする理由がなくなる。理屈がなく好きな気持ちには、ずっと答えが出ないのだ。間違っていると批判された方がいっそ楽かもしれない。受け入れられてはいないだろうが、キバはナルトを責めたり嫌ったり軽蔑するような態度は取らなかった。最初はさすがに引いていたようにも思えるけれど。

「オレが女だったら関係ねえのかな…そうゆうの」

「どんだけマイナスなんだよ、お前の思考回路はよ!男が女とか、女が男だとか思ってんなら好きな気持ちなんて諦めちまえよ。最近、うぜーよ」

 冷たいように聞こえるキバの言葉にも優しさが含まれている。ナルトはそれが分かるから、キバを嫌いになんてなれない。それに、彼の言う事は至極もっともな話なのだ。

「悪りぃ…ほんと、ごめん」

「分かればいいんだよ、バカ野郎」

「最近、元気ねえんだってばよ。オレ」

「凹むのと後ろ向きなのはうぜえからやめろっての。それが出来ねえなら、好きな奴変えろ」

 うざいと言われて言葉を飲み込む。確かにうざいし、同じ男として女々しくて嫌かもしれない。

「キバ、サンキュな。こんなオレのダチでいてくれて…」

「はっ?」

 しんみりと言われたキバは眉間にシワを寄せながら肩を落とす。ストローからは飲み物が底をついた音が聞こえた。

「……頼むから、マジ凹むのなしな。俺は、そーゆうお前は好きじゃねえよ」

 キバだって、ナルトに問うてみたい。なぜ、シカマルなのか。なぜ、男なのか。しかも、友達の一人なのか。同じ男に惚れるにしても、シカマルでなくてもいいと思うのだ。嫌でもシカマルの動向が耳に入ってくる。もちろん、最近できたばかりの彼女と別れた話を自分もナルトにしたのだが……良くも悪くも意中の相手の事を知りすぎてしまう。

「シカマルの中で、オレの存在はキバより上だと思う?やっぱ下かなぁ?……一番になりてーとか、ワガママ?」

「ワガママじゃねえかもしんねけど……」

 好きな相手に対する気持ちなのだし。

「俺としちゃ、今の質問……やっぱうぜーって」

 同じ舞台にあげられるのは正直勘弁だ。

「ごめん」

 しゅんとしてしまったナルトには、いつものような覇気がない。バカみたいに明るくて、前向きなはずなのに顔は「落ち込んでいます」と書いてあるような表情である。

「ナルト〜…いい加減、シカマルは諦めたらどうだ?」

 ナルトは無言のままキバを睨みつけた。

「出来るならやってるってばよ。ダチにうぜーとか真剣に言われても、嫌いになれねえんだからしょうがねえじゃん!」

「嫌いにはならなくてもいいって…。男でも女でもいいから他の奴を好きになったらいいだろ」

「出来たら…やってる」

「俺、飲み物買ってくるわ」

 このままナルトの愚痴に付き合わされるとしても、現状はひどく手持ちぶたさだ。

「お前は?」

「まだある」

 キバは肩をすくめて、カウンターの注文口に向かった。自分たちが座っている場所からは観葉植物があって死角となっていたが、それを通り過ぎると支払いを済ませている友人の背中を見つけた。商品を手にして振り返った彼がキバを見つけて軽くトレーを上げる。

「最悪のタイミング……みてーな?」

 キバは少しだけ口角を上げる事で答えた。それからキバ特融の笑みを浮かべて歩き始める。

「久しぶりじゃん、シカマル。やっぱ女がいねーと駄弁りに来るって感じ?」

 シカマルはくすっと笑う。キバの嫌味に取れる言葉にも動じない。

「…ンなじゃねえよ。俺は優しいからな。一応、付き合ってる間は相手を尊重してんだろ」

「その彼女とサヨナラしたから、なんの遠慮もいらねえって感じ?」

「珍しいな。お前が突っかかって来るなんてよ。俺が誰と付き合って別れようがココに来ようがこまいが関係ねえって思ってるくせに」

「まあな」

 約束もしないし、拘束もしない。だけれど気楽にダチとして付き合って行ける。意気投合して連れ立って遊びに行く事もあるが、だからってお互いの関係をガチガチに縛るものはなにもないのだ。気の知れた幼馴染の腐れ縁だと言えばいいのだろうか。肩肘つかずに遠慮なく付き合える「親友」。

「誰か居るのか?」

「さっきまでは何人かいたぜ。今は俺とナルトだけ。俺はジュース欲しいから追加注文」

「先行ってるぜ?」

「ああ」

 シカマルの背中を見送り、彼の登場に驚くだろうナルトの事を思い浮かべ思わず苦笑してしまう。驚くだろうが、きっと喜ぶのだろう。今の今まで自分の前で晒していた悪態がどこかへ吹っ飛ぶくらいには歓喜しているバカなナルトの顔が思い浮かぶ。

「あいつって、単純だからなぁ」

 キバは自分の度量の広さを自画自賛しながら、コーラのLサイズを注文した。

 

 

 

 

 

 

 

 

現代版シカナル…

シカナルなのか。多分、シカナルです。

キバとナルがうじうじ女々しいこと言ってるだけですが。

これは拍手のお礼SS用に書いてた話が長くなってしまったので…

サイトにアップしてみました。

ずっと前に日記で内容をチラリと書いた事あるかな。

チャラいシカマルと乙女なナル(笑)の話です。

この先、どうなるんだろう。…って、結局はシカナルです。