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夏の話 ―天気雨― 3

 

 

 血走ったように見えるシカマルの瞳にナルトは眉を顰める。

 お互いの表情を読み取るにはこの場所は暗すぎた。

「……シカマル?」

 確かめるように名前を呼ぶと、シカマルの腕がナルトを引き寄せた。抵抗する理由のないナルトは、その長い腕の中にすっぽりとおさまる。ぎゅっとシカマルの胸に顔を押し付けたナルトは、安堵の息を吐いた。先程まで感じていた恐怖と空虚感が一気に埋まっていくような安堵に、涙が零れそうになる。

「よかったってばよ。なんでか分かんねえけど……あいつに、シカマルが……」

「随分と色っぽい恰好してんな」

「え…?」

 地を這うような低い声色にナルトは声を上げた。目の前に居るのは、自分を抱き締めているのはシカマルだと言うのに、つっと背筋に冷たい汗が伝った。

「……ちょ、聞きたいんだけど……シカマルがどうして、あの面に……」

 心臓の鼓動がどくどくと言う。何も考えずシカマルの腕の中に居たい気持ちはあるのに、確かめなければいけないような気がする。

「お前、感じたか? 犯されそうになってて……」

 シカマルの言葉の内容にナルトが首を振った。

「シカマル! 話がつながってねえってばよっ!オレの質問に答えてねえってば」

 ぐいっと身体を引きはがされて、顔を覗き込まれる。至近距離なので、暗闇でもシカマルと視線が合った。見上げる形でシカマルを見つめると、彼がふっと皮肉っぽく笑ったような気がする。

「お前は…」

 シカマルの唇が耳朶を噛んだ。

「いた…っ、シカ…?」

 柔らかい肉に歯が食い込む感触をリアルに感じる。

「こんな時も、きれいな目で見てくるんだな?」

「……ぅ、くっ…」

 歯先が肉を割る感覚。生暖かい物が肌に溢れる。痛みを感じているという事は、これは夢でも幻でもない。柔らかく温かな舌が、傷ついた耳朶をねっとりと包み込む。

「あ…っ」

 耳の輪郭をたどる様な舌先と、すっぽりと耳を包む唇の感覚に身体から沸きあがったのは快感だ。

「や…っ、シカマっ…も、悪ふざけは……やめろってばよ」

 両手はシカマルに拘束されている。逃げ出すつもりはないが、動きを制御されているという現実だけで、よく分からない不安が満ちてきた。狐面も、ナルトに何回も「きれいな瞳だ」と言ってきた事を思い出す。

耳朶から口唇が離れると耳の付け根をきゅっと吸われ、そのまま唇は首筋に移動する。ナルトの中から快楽を引き出そうとしているシカマルの所作に、ナルトは勘繰りを入れたくなってしまう。彼はナルトの質問には一切答えてくれないのだ。

 なぜ、狐の面をつけていたのがシカマルだったのか。それとも、シカマルも面に付きまとわれている者の一人だったのだろうか。それならば、ナルトの話を聞いた時点でシカマルが狐面の事を言わないはずはない。

「話……しよって……シカマル! やめろってばよっ……やだっ……っ」

 悲痛なナルトの声をどう感じたのか、シカマルの動きがぴたりと止まる。自分の声がシカマルに届いたのかと顔を上げると、無表情なシカマルと視線が合った。

 こんな彼は知らない。知りたくなんかない。

「本当に…シカマル?」

 聞きたくないのに、口からでた科白は本心。

 疑いたくなんかないのに……疑う様な言葉が漏れる。

「ああ…」

 シカマルの手がナルトの下半身に触れた。脚を割って入ってくるシカマルの身体も熱を帯びている。

「…んっ…」

「感じてるんだな。アイツにいろいろされて」

「ちが…っ、これはシカマルが今―――― !」

 化け物に触られても感じることなんてない。身体が反応したのはシカマルに触られた所為だ。

「俺だからか?」

「……ん、当たり前なこと聞くなってばよ」

 誰に何をされようとも、感じる事なんてない。シカマルだから身体の中に燻る熱を引き出されるのだ。今のような状況でも、確かに反応している熱い身体はシカマルからの愛撫を受けたから。唇が触れる細胞のひとつひとつが、ざわざわと騒ぎ出して彼の全てを欲してしまう。

 そんナルトの変化を知っているのか、ふっと笑ったシカマルが唇を寄せてきた。拒否する理由なんてどこにもないから、ナルトは薄らと唇を開いた。彼の唇を受け止めて、熱い舌を絡め合う。

「す、…好きだって……」

 口づけを交わす合間に囁く。

「ん…はっ……シカ……」

 好きで好きで堪らなくて、交わる舌の感覚に頭がぼうっとしてきた。ナルトの中心で頭を擡げたモノをシカマルの手のひらが包み込む。

「ン…ン…っ……っ」

 つながったままの口唇。吐息も喘ぎ声も全てを飲み込まれている。カクンと腰が落ちた。シカマルはナルトを逃がすつもりはないといったように、その身体を地面に横たえる。

 はぁはぁと胸で息をつくナルトは間近にあるシカマルの顔をそっと見つめた。我慢していた涙がほろりと目尻を伝い、そのまま地面に吸い込まれていく。

「シカマル……」

 名前を呼んでいるのに、答えてくれる人がいない。目の前に居るはずなのに、そこに存在していないような空疎さを感じる。

「オレを見てくれってばよ………」

 懇願に近い呟きをどう感じたのか、シカマルの額がナルトのそれにこつりと当てられた。

「ナルト」

「うん」

「悪りぃ…ナルト」

 狂気に似た瞳の色は失せているように見えた。

「シカマル!」

 ナルトはぎゅっとシカマルの首に抱きつく。どうしてだとか、何故だとか、そんな事はどうでもいい。目の前にいるシカマルが自分を見てくれて、自分を認識してくれればいいのだ。今と言う一瞬が存在すれば構わない。

「ナル……」

 シカマルの手がナルトの手首を取る。そして、彼の中心で息づいているものに導かれた。

「……あ」

 指先で感じた猛るもの。ナルトは躊躇いながらも、その熱い楔に指を絡めた。手のひらで包み込んだ陰茎をゆっくりと上下に擦る。稚拙だと思われる行為かもしれないが、少しでもシカマルに感じてほしい。そしてシカマルの手も、ナルトの中心で熱を帯びているものに触れる。強弱をつけながら摩擦を加えられて思わず腰が引けた。先の柔らかく敏感な部分を露わにされて、先走りの滴る割れ目に指先が食い込んでくる。

「あ…っ…ンン…っ…」

 円を描くように先を擦られるとくちゅくちゅという淫猥な音が響く。

「ナルト、右手がお留守になってんぜ?」

 からかうように耳元に息を吹きかけられたナルトはビクンと肩をすくませた。こんな些細な事でも過剰に反応してしまう。ナルトはきゅっと瞼を閉じて、右手の動きを再開する。手のひらの中を滑るものがしっとりと熱を持つ。シカマルも感じてくれているのだろうか。ナルトの手の中のものが、ぬるりとした感触に変わった。

「……シカ、マル」

「ナルト」

 名前を呼ばれて新しい涙が溢れてくる。歓喜に似た感情が湧き上がる。シカマルに名前を呼ばれると嬉しい。自分を見てくれていると感じるだけで、身体も過剰に反応する。

「ンン…あ…あ…っ、あっ……」

 すぐに達してしまいそうな予感にぶるりと震える。それをどう感じたのか、シカマルの手がナルトの陰茎から離れた。ドクドクと熱を持って暴れだしそうなそれがぴくんぴくんと揺れる。出口は近くて、そのまま走り出したい気分なのだがシカマルは新しい刺激を与えてくれることはない。懇願するようにシカマルを見ると、濡れたまつ毛にキスされる。

「ナル……」

 するりと双丘を割るぬるりとした指先。シカマルの指を濡らしたのは、先程まで彼が弄んでいた先走りの名残である。それに羞恥しながら開いた膝を思わず閉じそうになると、シカマルの身体がそれを許さないというように割り込んでくる。

「や…っ……」

 何をされるのか分かっているナルトは、いやいやをしながら首を振る。

「やだっ…あっ……」

 それを無視するようにナルトの後腔に指が埋め込まれていった。

先走りが潤滑となってシカマルを助ける。容易く埋め込まれる馴染みのある指。

「んっ…あぁ…や…っ」

 否定するような科白が口をつくのに反比例して肉襞はシカマルの指に絡みついた。弄るようにして奥に進められていく感覚に、ナルトは仰け反る。すぐに二本目の指も挿入される。二本がばらばらに後腔を犯した。引っ掻くように擦るように内壁を愛撫され、慣れたナルトは快感に震えるしかない。身体の中から沸きあがる特有の熱が、中心から身体全体に広がる。足の先から、手の先まで。髪の毛の一本一本にまでその快楽が植え付けられ、次に与えられる新しい甘美を待ち望んでいる。

 緩い抽出が始まり耳には湿った音が聞こえた。羞恥すら快感の種になる。恥じらいながらも、彼に全てを開いて許している。拒んでいるようで受け入れている。そして、もっともっとと貪欲になる感情が身体の中を駆け巡るのだ。

「ん…っ」

 ナルトの痴態を視姦しながら、シカマルも熱くなる中心を感じた。ナルトに触れられただけでも十分に感じたが、浅ましいものは彼の中に入りたがっている。彼しか与えてくれない熱を待ちわびている。ナルトの中に楔を打ち込む事を考えるだけで達してしまいそうだ。

 シカマルはナルトの目尻の涙を舌で掬い、瞼と頬に唇を落とした。

「ナルト、悪りぃ……我慢、できねえよ」

 切羽詰まったようなシカマルの声の揺らぎに、ナルトははっと目を見開く。

「だ…っ……あっんっ……」

 ダメだと言いかけて膝を抱えられた。熱を帯びたシカマルの欲望の象徴が孔に当てられる。それだけで狂いだしそうになる皮膚の熱さが愉悦に変わる。訳もなく涙が込み上げてきたのは、遠慮しないシカマルのものが中に入り込んできたからだ。

 歓喜なのか、拒絶によるものなのか涙の理由なんて説明出来ない。別にシカマルとの行為が嫌なのではない。いま抱き合っている場所が、外であるという事が理由なのだ。

 ぐいっと少しだけ乱暴にシカマルの全てがナルトの中に挿入した。ズンっとくる身体の重みが快感と重なって快楽を紡ぐ。絡まってしまえば、ナルトにはここが外である事とか少し行けば参道で夏祭りが行われている事も頭の中から消えてしまう。全てを支配するのはシカマルと、彼の与えてくれる狂いそうな熱だけ。揺すられて浮遊しているような感覚に陥る。

「やぁ…んっ……あん…あ…っあ…っ、ンン…っ」

 ナルトの嬌声に重なるようにシカマルの吐く息が重なっていた。額から零れた汗がナルトの肌にぽたぽたと落ちる。

 ナルトはぎゅっと手を握りしめる。その時に地面の土も一緒に引っ掻いてしまった。その手にシカマルの手が優しく重ねられて、ゆっくりと瞳を開ける。

「……シカ、ゆか、た……汚れ……」

 揺さぶられて背中が地面と擦れている。折角ヨシノがナルトの為にと誂えてくれた大切な浴衣を汚してしまう。自分との行為に溺れる前に、浴衣の汚れを気にするナルトを呆れてかシカマルがくすりと笑った。どこまでナルトの中に浸透しているのか分からないが、ヨシノやシカクは彼の大切な人間の一人になっている。贅沢と願望を言えば、自分以外の人間はナルトの中から排除したい。せめて、抱き合っている時くらいは許されるような気がした。

 シカマルはナルトの背中に腕を入れると、彼を抱き起した。深くなる交わりにナルトの眉を顰める。

「汚れんの嫌なんだろ?」

「…うん」

 こくりと頷いたナルトがシカマルの首に両手を回す。繋がったままでナルトは身体ががくんと揺れるのを感じる。

「え……?」

 腰を抱えられて立ち上がる。立ち上がると言っては語弊があるかもしれない。殆どシカマルの力を借りているのだ。背中にごつりとした感触。大きな木の幹に身体を預けている形になる。片方の足を抱えられて、大きく脚を開いていた。片方の足だけでは自分の体重を支えられそうにもない。シカマルにもそれは分かっているのか、耳元で「掴まれ」と囁かれた。

 確かに地面で背中は汚れる事はないのだが……

「シカマル……む、り…って……」

「だからお前はつかまってりゃいい」

 浮遊感が強くなる。言葉が終わらない内に、下から突き入れられる感覚にかくかくと身体が揺れた。もちろん足に力が入る訳もなく、シカマルにしがみ付く腕に力を入れるのが精一杯だった。自重があるためにいつもよりも深く感じる抽出に、内股が引きつる。

「あ…あ、あ、あ…っんっ……あ…」

 揺すられるリズムに合わせて声が漏れるのが恥ずかしい。それは緩められたり早急であったりと不定期に刻まれる。ずるりと後腔を出るシカマルの陰茎の動きを引き留めるような内壁の動き。欲は尽きる事はなく、どんどんと強欲になっていくような気がした。

 強請るように腰が揺れてしまう。もっともっとと、声にはならない願意が素直に反応となって現れる。

「シカ……イキた…っ…」

 涙声に近い声は淡い振動を帯びている。熱っぽくて甘ったるく聞こえるナルトの声が鼓膜に響いて、毒のように浸透してくる。

「俺も、もっと……お前が欲しい」

 乾いている心の隅っこを癒してほしい。それが出来るのはナルトしかいないのだ。欲して、穢して、彼の領域に侵入する。それを許されているのは自分だけだと慢心したい。

 ナルトの両足を抱えると、彼からのお叱りを受ける事は覚悟でその身体を地に倒した。ぐいぐいと腰を押し込むと、ナルトの白い足が視界の中で踊る。窮屈になりながらナルトを抱きしめた。すぐそばにある唇を求めて貪る。腰の動きは責め立てるようにナルトを追い詰める。

「ン、ン、ンン……」

 飲み込めない唾液がお互いを濡らして、唇の間に透明な糸で繋いだ。全ての音が二人の中から消え、一つになっていく感覚。溶けていく意識の中で、ナルトだけがお囃子の笛の音を聞いていた。

 

 

 

 

 冷たい感触に瞼を上げる。

「……シカマル」

 ナルトは見慣れた部屋にほっとしてしまう。達して意識を飛ばしてしまったのだが、覚醒するのが外でなくて良かった。汚れた身体を清めてくれているのか、肌が少しさっぱりしている。

「シャワー浴びるか?」

「ううん、今は無理っぽいってばよ」

 いつも以上に緊張していた所為か、ひどく怠いと感じる身体。それでもそろりと腕を上げて、シカマルの頬に触れた。馴染む指先に瞼の奥が熱くなる。

「シカマルが……シカマルじゃねえみてえで、怖くて……」

「悪りぃ」

「許さねえってばよ」

「許せよ」

「やだ」

 子供のように尖らせた唇にキスを落とす。ふっとナルトが微笑んだような気がした。

「浴衣、汚れた?」

「ちゃんと明日にはクリーニングだしてくっから」

「どうすんだよ、綺麗になんなかったら!」

「来年は俺がお前の為に誂えてやる」

「そうゆう問題じゃねえのっ!」

 シカマルはくすりと笑う。

「分かってる。そうゆう問題じゃなく俺がそうしてーんだよ」

 親から贈られた浴衣を大切にしてくれるのは嬉しい。その反面、そんな些細な事に小さな嫉妬を覚えてしまうのだ。

「シカマル、あれ……なんだったんだってばよ」

 一番聞きたかった事を口にした。シカマルは苦虫を噛んだような表情を見せる。バツが悪そうに鼻の頭をかいた。

「ありゃ、俺の任務」

「任務?!」

 とうとう木の葉は化け物退治まで請け負うようになったのだろうか。素っ頓狂な声を上げたナルトにシカマルは苦笑した。

「あの面な、火の国の国宝級」

「国宝ってすげえもんなんじゃねえの?」

 ナルトはそれを割ってしまった事を思い出して、さーっと顔を青くする。ナルトの頭をぽんぽんと叩いたシカマルは柔らかい髪を撫ぜた。

「気にするなって」

「するってばよ〜…オレの給料じゃ弁償もできねえって。どうしよう……」

 真剣に悩むナルトを安心させるかのようにシカマルが唇を落とす。啄むみたいにキスを繰り返して、真っ赤になったナルトに微笑を零した。

「もともといわくつきなんだから、気にしなくてもいいぜ」

「ホントかよ……」

「とある大名家の家宝だったらしいんだけどな、お前も知っての通り何かかが憑いてただろ?それを木の葉の神社にお祓いにだすって事になってたんだけど、それじゃ手におえなくて結局は封じる事になるみてえだ。俺はそれを預かって木の葉に奉納しにきたんだがな……」

 反対に取り憑かれてしまったという所だろう。ナルトは困ったような顔で溜息を付く。

「なんで、シカマルが、……そうゆう事になったんだってばよ」

 本当はあの狐面がどうこうなんて信じたくないのだ。毎日暑すぎて脳みそが沸騰して悪い夢を見たのだと思いたい。

「シンクロしたんだろうな」

「シンクロ…?」

 大名の娘があの面に魅入られてしまったらしい。恋人のように大切に胸に抱いて心身を衰弱させたらしいのだ。生死を彷徨った娘を心配した父親が、祓いを木の葉に依頼したのだと言う。

「俺がお前を思う気持ちと、あの面の化け物が誰かを思う気持ちがそりゃもうぴったりとシンクロ」

 ナルトは口を噤む。どうして、そんなに切ない思いがシカマルと重なったと言うのだろうか。素直に口を突いた疑問にシカマルが苦笑する。

「誰かを思うってのは、綺麗な感情だけじゃねえよ。すげー醜い感情が渦巻いてる時もある。きらきらしてるだけのもんじゃねえし、荒々しいだけのもんじゃねえ……色んな気持ちが交錯して、醜くなる時だってある。完全に俺がつけ入れらえたのかもしれねえな」

 面を通してずっとナルトを見てきたのだという。それがシカマルの意思なのか、その化け物なのかは今となっては分けられないなにか。

「俺の意識がちゃんとある時もあったんだ。だけど、あの面が外れると取り憑かれてるときの記憶は全くなくってな」

 だからナルトが狐面の話をした時もシカマルは何も反応しなかったのだ。ナルトは合点がいったというように納得した。身体が動かなくなったのは、シカマルの影の術のせいだったのかもしれない。それに、いつも自分の瞳がきれいだと言ってくれたのも、シカマルの気持ちだったのではないだろうか?

「でもな、アイツに拘束されてお前が諦めたような顔した時に、プツンってきたんだよな」

「諦めてなんかねえよ」

「したんだよ。憐れみっつうか、慈愛みてーな目で見つめてきやがってよ。嫉妬で狂いそうだった。否、狂ったのかもしれねえな……お前をめちゃくちゃにしたくて、でも傷つけたくなくて。それでも、俺のものだと思いたくて」

 シカマルの言った綺麗なだけの感情じゃないとい言うのが理解できたような気がした。誰かを好きになったり愛したりする感情は、美しいだけの感情じゃない。口に広がるほろ苦いような切ない感情も伴うのだ。優しくなれたり温かくなれたり……それでも、同じように醜くも汚くもなれる。好きだから、その思いの丈の分だけ妬心は生まれる。欲も生まれる。

「お化けでも幽霊でもないって言ってたけど……アイツなんだったんだろ。神様とか、ねえよな?」

「さあな、なにがなんだか分からねえよ」

「一人じゃつまらないって、……寂しかったのかな」

「ばーか」

 シカマルの人差し指がナルトの額をつつく。

「だから、俺の前で……同情とかするな」

「違うって! シカが言っただろ?大名の娘さんのこと……本当は、」

 ナルトは言葉の続きを口に出来ない。あの、なにかしらと娘は心を通わせて居たのではないだろうか。それでも一緒に居られない事に、寂しさを覚えていたのではないだろうか。憶測に過ぎなくて、人間のちっぽけな感情では計り知れない気まぐれの一つなのかもしれないが、ナルトは少しだけでも化け物の事を信じてみたい気持ちになった。そんな事はお見通しなシカマルは、しょうがないというように溜息を付いて、ナルトの指に自分のそれを絡めるのだ。

「ああ、天気雨だな」

 窓を見たシカマルが呟く。つられるようにして外を見たナルトは、雨の雫が太陽に反射して綺麗だと思う。

「天気雨は狐の嫁入りってな。そういや、あの面も狐だったな……」

「嫁入り?」

「そうゆう言い伝えだよ。天気雨が降ってる時は、狐の嫁入りがあるってな」

 ナルトは感心してもう一度空を仰ぐ。僅かな間、視線を逸らしただけなのにもう雨は止んでしまっていた。どこかの狐は無事に嫁入りすることができたのだろうか。

「オレにはシカマルが居てよかったってばよ」

「嫁入りするか?」

「ば…バカっ! てか、外ではしねえって言ったのに、したの許してねえからな!」

「その割には感じてたじゃねえか」

 結果的にナルトの嫌な事をしてしまった事は悪いと思うが、最初は無理矢理でも最後は合意があった。ナルトも否定できないから強くは言えない。

「……シカマルのバカ野郎だってばよ」

「悪りぃって…」

 何度も謝られた理由は、ナルトの嫌がる事をする事についてだったことにようやく気が付く。真っ赤になって枕に顔を押し付けると、後頭部を優しく撫ぜてくれる手を感じた。

 幸せに支配される瞬間、涙が溢れそうになってしまう。

「諦めて、嫁に来いって」

「ぜってーに行かねえ!」

 もごもごと言い返すナルトの声に、シカマルの笑い声が重なる。

 

 

 数日後、ナルトが寄ったはずの神社が存在しない事をシカマルから告げられる。

 信じられない現実にナルトは食事も喉を通らなくなってしまった事は言うまでもない。

 

 

とある夏の日の出来事。

二人を襲った不思議なお話。

 

 

 

 

   

 

 

 

すんません。何回でも謝りたい…

ホントに、意味なくてごめんなさい。

結局はシカナルはバカップルですな。ああ、ほんとにバカだ。

二人ともカッコいいのに、バカにしか書けなくて…すんません。

結局さ、嫁にこないか〜♪って話になってる(笑)