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LOST WORLD 11

 

 

「俺を忘れるなんて許さねえ。俺から離れることも、許さねえ」

 じっとナルトを見つめると、真剣な青い瞳がシカマルを見つめている。

それから少し赤くなる頬。

「……シカマル?」

「強気な、俺が、好きなんだろ?」

 にんまりとシカマルが笑うと、ナルトは頬に当てられた手をバチンと払った。

「……その、強気で居てくんねえと……困るから」

 でも、シカマルの科白を否定なんてできない。心が目の前の彼に向いている。

 体を合わせたからではない。恋人だったからという事実があるからではない。自然と、とても自然に彼へと感情が流れるのだ。

 全てを否定していたいと思っていたはずなのに、不思議とシカマルへと向かう感情。あんなに怖かったはずの存在が、今近くに在る事を嬉しく感じる。シカマルが自分に向けていてくれる気持ちを知ったからだろうか。ナルトは無意識にシカマルの手に自分のそれを重ねた。先程、ふいに訪れた不安を払拭してくれたのは、この手の温もりだからかもしれない。

「まだ、…不安か?」

 尋ねられて、ナルトは顔を上げた。

「不安?」

「そーゆう顔してる」

「ん。ま…不安っちゃ、不安かもしんねえ。まだ、オレは自分が何者なのかちっともわかってねえし…」

 ナルトの言葉を聞いたシカマルは、そっとナルトの体を抱きしめた。

「俺が居る。お前が俺の世界からなくなる事が考えられねえように………お前も、俺を求めてくれたら……それだけで満足できる」

 トクリトクリと鳴る鼓動。早鐘のようだったそれが、シカマルに抱きしめられて彼の温もりを感じることで安堵を感じる。ナルトは、こつんとシカマルの胸に額を当てた。

 この気持ちは、シカマルに届いているのだろうか。

 どんな自分であっても、自分を必要としてくれる存在が確かに存在する。その事を幸福だとも思えた。

自分が、うずまきナルトであり、木の葉隠れの忍であり、そしてその前に、シカマルの恋人である事に気持ちがすうっと落ち着いた。きっと、彼の存在が自分にとって大切なものであるから。それを無くすことを本能的に感じた感情が、全てを否定したのだと思えた。

 シカマルが言うように、ナルトもシカマルという人間を欲している。温かい気持ちを、言葉を、与えられる度に、彼の存在が大切でしょうがなく思えた。

 ナルトにとっても、シカマルが「なくなっては生きていけない存在」なのだと、確信に近いものを得ている。生きていけないというのは、過言ではなく本心であるのかもしれない。

「忘れたい事があったとしても、忘れたら……生きていけねえのかな。……なんてさ」

 シカマルは腕の中に居るナルトの言葉に眉をひそめた。忘れてしまえれば、楽になれるなんて事は一つもない。今の自分と言うものを形成する一つの欠片であるのだ。

「辛いことも、苦しい事も……それを全部受け止めたお前が、うずまきナルトだろ?上手い事は言えねえけど……辛い事でも苦しい事でも悲しい事でも、そんなもんでも…何かを無くして、全部なかった事にして平然と生きていけるなんて考えちゃいねえ。そうゆう事、受け入れて自分の中で消化して生きてきてんだ。お前も俺も」

「シカマル…」

「生きてりゃ、綺麗事だけじゃ済まねえ事は掃いて捨てる程ある。下らねえことも沢山な。それでも、お前はそれに負けなかった。負けずにまっすぐに前を向いて歩いていくお前を、心底愛しいと思う」

 現実から逃げずに、歩いているナルトを尊敬できる。理想とかそんなものの前に、言い訳もしないでその時々を必死に生きているナルトをすごいと思うのだ。誇りに思える事が出来る。そんなナルトだから、共に在りたいと願うのかもしれない。

 ナルトを離したシカマルは、ぺったりと座り込んで俯いているナルトの顔をそっと覗き込む。予想通りに真っ赤になっている顔と少し潤んだ瞳が見えた。

「お前にはでっけー夢があって、俺はそれに乗ってんだ。早々にリタイアなんて許さねえって事」

 ナルトなら…と、彼ならば、何かを変えてくれるんじゃないか。そんな力があるような気がして、不思議と彼に惹かれる。覗き込んだ瞳と視線が合った。

 何の合図なのだかわからないが、まるで引き合うようにお互いの唇が重なった。触れるだけの、だけど神聖にすら思えてしまう行為。

「シカマル。オレ……シカマルが好きだから、シカマルに嫌われるの怖かったのかもしんねえ」

「俺が、お前を? …ンな訳ねえだろ?」

 嫌いになれるはずもなく、忘れてしまえるような存在でもない。

「……いや、怖い顔してたし」

 自分の嘘を見透かすような視線と、心の中で本能的に感じた恐怖。逃げ出したのは、彼に自分を認めてもらえない事からかもしれない。自分の中に残っている野生の部分が、危険信号を発したのではないだろうか。シカマルに奥深くに入られる恐怖心。それは、彼を無くしてしまうかもしれないという懸念からだったと今では理解することができた。だから、全てなかった事になればいいと逃げだしたのだ。逃げ出した先には何もなく、結局は途方に暮れる事になってしまったのだけれど。

 もう、関わりたくないと言う気持ちと裏腹にどこかで、現状から救い出してほしい気持ちもあったのかもしれない。それに、心の中の風穴がシカマルの荒治療のお陰なのか、埋まっているような気がした。あんなにシカマルと対峙することに恐怖を抱いていたはずなのに……そして、逃げ出してしまったはずなのに。その彼に与えられる温もりと愛情に心が満たされている。もう、何も聞かないと塞いでいた耳をそっと澄ますと、痛いくらいの彼の気持ちが聞こえるような気がした。

 なくしては生きていけないもの。

 それは感情かも物かも、人かも、……それとも記憶かも、しれない。

「オレは…本当の自分じゃないから、そんな自分がシカマルに否定されんのが、怖かったんだってばよ」

「そんな事ねえって分かっただろ?俺にとっちゃお前って存在が大切で、どんなナルトでも俺の好きなナルトであるって事に変わりはねえんだ」

「オレの…記憶が戻らなくても?」

 呟いた声が小さくなって空気に溶ける。聞きたくないけれど、気になってしょうがない事だ。何度も何度もシカマルの気持ちを伝えられているのに、それでもまた不安になってしまう。そんなナルトの顔を見たシカマルがくすりと笑った。

「ナルト、お前まだわかんねえのか?本当に“バカ”は健在だな」

「ば、バカっ?」

「そうだろーが、さっきから言葉は違えど同じ事の繰り返しを口にしてんだぜ?そんなに熱烈に告白されて、俺はどうしたらいいんかね?」

 ナルトは眉をひそめる。

「告白…?」

「それに逐一答えてる手前にも呆れるがよ。ま、何度でも言ってやる。お前が納得できるまで、出来なくても、ずっと…もう聞きたくねえってくらい言ってやるよ。 お前が必要なんだ、俺には」

 好きな相手から心底愛しいと思っている、たった一人の人間から嫌いにならないでほしいと懇願されて嬉しくない訳がない。無意識でもなんでもいい。ナルトに必要とされているなら。これからも、彼の近くに居ることができるなら。同じ空気を吸い、同じ景色を見る事が許されるならば。

「………お前は俺の世界を形成してる一番大事な部分で、お前を……ナルト、愛してるんだぜ?」

 彼が自分の世界からいなくなる事は、自分の世界の崩壊。その言葉に嘘偽りはない。生きていても死んでいても、なんの意味もなくなってしまう稀有な存在なのだ。無くして初めて気が付く当たり前の気持ちに、再確認させられた感情。

「だから、俺を忘れるな。思い出せなくてもいいから、忘れるなよ」

 もっと慢心すればいいのだ。自惚れてもいいくらいに、のぼせあがっているのは、きっと自分の方なのだろうから。弱さも迷いも容易く見せる事なんてしない。それで、愛しい人が不安に陥ると言うならば、それくらいの事は歯牙にもかけない。どこまでも高慢に振る舞えるし、強気な態度も見せられる。

「疲れたんなら、寝るか?」

 真っ赤になっているナルトの頭をそっと撫ぜると、ふるふるとナルトが首を振った。頬を赤らめて上目使いで見つめられて、シカマルは誘惑されているような気分になる。

「風呂……露天風呂、入りてえもん」

「…ったく、風呂好きは変わんねえな」

 拗ねたように顔を背けるナルトの頬に思わず唇を寄せると、その身体が緊張しているように強張ったのが分かる。期待されているのか、ただの緊張なのか?一気に軟化したナルトの態度にほっとして、口元に笑みが浮かぶ。

「そうだな、せっかくだし」

 ヤマトの話からナルトがこの宿の温泉に入った事がない事が伺える。少しでも休息して欲しい気持ちで、シカマルはナルトの背を押してやる。少し驚いたような表情を浮かべたナルトは、照れたような笑みを口元に浮かべながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 翌日を迎え、木の葉へ帰還したナルトは渋い顔をした綱手の前に緊張して直立していた。

「…それで?カカシ、報告!」

「ああ、迷子のナルトは捕獲完了しましたよ。ご覧の通りです、五代目」

 ひょうひょうとした話し方をするカカシの隣では、明後日の方向をむいたシカマルとげんなりとした顔つきのヤマトが居る。

「ほう、迷子……か。ところで、当のナルトはどうなんだ?」

「それは病院での検査結果を五代目もご覧になったと思いますが、健康そのもの!元気ですよ〜」

「そうゆう事ではない! 記憶の混乱という報告の事だ」

 はぐらかしたい一番の部分を指摘されたカカシは肩をすくめる。

「いやぁ…なんて言ったらいいんですかねぇ。どう思う?テンゾー」

「先輩、ボクにふるのやめてもらえませんか?」

「おいおい、二人とも……」

 腕を組んだ綱手の隣ではシズネが苦笑している。緊張しているナルトを横目で伺いながら、シカマルがふうっと息を吐いた。

「すんません」

 小さく手を挙げたシカマルに視線が集中する。少し驚いたような顔をしたシカマルは息を吸い込むと淡々と現状の説明をし始めた。

「先の報告にある通り、ナルトは前に失踪した時のショックで記憶が戻っていませんよ。曖昧のレベルでないと、俺は思います。今回の事は、九尾や人柱力に対する不確かな知識による本人の混乱からによるものと考えられますが……」

「おー!さっすが、シカマル」

 にこにことしているカカシの野次にシカマルが眉を顰める。最初からこのつもりだったのだと想像できる所が嫌だ。

「……カカシ、お前の見解では?」

「俺もシカマルと同意見ですよ。今のナルトには自分の記憶がありませんから、任務に就く以前の問題ですねぇ。どう考えられますか、五代目?」

 反対に質問を返された綱手は、頬杖をついた手腕の上に顎を乗せる。

「全く……人手不足だって言うのに」

「綱手さま、ですが…今のナルトくんに任務に就かせると言うのは無理な話では?」

「分かっている! とにかく、時間の問題とも思えない。それまでナルトは里外への外出を禁ずる。もう解散だ。とにかく、ご苦労だった」

 外出を禁じられた事に驚いたのか、ナルトが寂しそうに瞼を震わした。ナルトの安否の為だと説明する必要もあるだろう。今の“彼“では自分自身を守る事も侭ならないのだから。しゅんとしたナルトの肩をシカマルは無意識にぽんと叩いていた。不安になる必要なんてない。どんな強敵が現れても、自分と言う存在があるのだから堂々としていればいいのだ。

「では、火影様」

 一礼して背を向けるカカシに習ったナルトは綱手に呼び止められる。

「ナルト、お前には少し話がある」

「…オレ、だけ?」

「ああ、問題があるか?」

 ナルトは力なく首を振った。

 カカシやヤマト、シカマルが退室してしまった部屋でナルトは居心地の悪さを感じた。くどいくらいに説明されたが、目の前に居るのが木の葉隠れの里の忍の頂点に立つ火影。

「どうぞ、ナルトくん」

 目の前に湯呑が置かれる。シズネと呼ばれた彼女にも覚えがない。おどおどしているのを悟られたのかシズネがくすりと笑った。

「元気がないと、ナルトくんらしくねいわね?」

「……そうかな」

「そうだな、ナルト」

 美味そうに湯呑に口をつけた綱手は柔和な表情を浮かべていた。火影の顔とは違う、彼女の本質が伺えるような笑みである。

「それで、お前はどうしたい?」

 ナルトは俯いて湯呑を握りしめた。答えなんて最初からないのだ。

「わかねえってばよ」

「殊勝なもんだな。火影になると憚らないお前の忍道は、諦めないド根性だろ?」

「そんな事言われても……」

 それすらも覚えていないと言うのに、なんと答えればいいのだろうか。

「でも、オレは……もう逃げねえって決めた。よく分かんねえのは同じなんだけど……やっぱ、忘れたままなのも嫌だし。オレは――――― 」

 話の途中で頭に浮かんだのは、どうしてかシカマルの姿だった。彼と対等でありたいと思うのはどうしてだろうか。仲間だと言われた面々の顔も思い出せる。きっと、楽しい事も苦しい事も分かち合ってきただろう友たちと一緒に居たいと心底思う。

「オレ、……想像しかつかねえけど」

「なんだ?」

「オレの忘れた事は、楽しい事ばっかじゃねえのかもしれねえ。辛い事とか悲しい事とかもあったかもしんねえ。でも、オレはそれを含めて生きていきたいって思うんだってばよ」

「辛い事ばかりかもしれないんだぞ?忘れてしまう事で人は楽になれる事もある。忘却とは生きていくための人間の知恵でもあるのだからな…」

 綱手の言いたい事もなんとなく理解できた。

「それでも、オレはもう大丈夫だって。なんとなく思うんだってばよ」

 にかっと笑ったナルトの顔を見て、綱手が吹き出す。

「ナルトはナルトだな」

 記憶の欠片をなくしていても、本質は変わる事がない。

「時間はかかるかもしれないが、お前に記憶を取り戻したいという意思があるなら、それなりの治療法も試してみる価値はあるかもしれないな」

「治療方法?」

 盆を胸に抱いたまま突っ立っていたシズネが眉間にシワを寄せた。

「そうですねぇ。 例えば催眠療法とか……脳への損傷は確認されませんでしたから、人と接したり体験したりする事で不意に思い出せるかもしれないし……。高圧電流で脳内へショックを与えるという方法も最近では臨床報告があがっていますよ、綱手さま」

 シズネの言う事はちっとも分からないのだが、綱手もシズネも自分の事を懸命に考えてくれている事は分かる。

「オレ、思い出したいから…よろしく頼むってばよ」

 少し晴れ晴れとしたように見えるナルトの笑みを見たシズネと綱手は顔を見合わせて笑う。どれくらいの時間がかかるか分からないが、色々と試してみる価値はあるかもしれない。

 少しだけ和んだ雰囲気の中に、ノックの音が響く。

「師匠、この間の件なんですけど……」

 扉を開けて入ってきたサクラは、座っているナルトの姿を見て手元の書類を落としてしまう。

「ナ…ルト? 本当に、アンタ……」

「あ、サク…―――― 」

 心配してくれたサクラの事を思い出したナルトは、黙って里を後にしたことに後悔しながら立ち上がろうとする。だが、最後までサクラの名前を呼ぶことはできなかった。

 つかつかとナルトの前までやって来た彼女は真剣な顔をしながら、ナルトをじっと見つめる。瞳が少し潤んでいるように見えるのは勘違いだろうか。きゅっと唇を噛んだサクラは、ぐっと拳を握りしめる。

「しゃ―――― …んなろ―――――――っ!! バカナルトっ!!!」

 十分にチャクラの練られたパンチがナルトにヒットする。もちろん、ナルトの身体はふっとんで壁にぶつかり止まった。

「…アンタは、どこまで人に心配かければ気が済むのよ…」

「う…いてぇ……って」

 真っ赤になった頬をさすりながらナルトがよろよろと立ちあがる。

「ひ、ひどいってばよ……サクラちゃん〜っ、アイテテ…」

「ひどいのはアンタでしょ!」

 サクラの頬に光る涙がある。

「ごめんって…」

 サクラをこんな風に泣かせたり絶対にしたくなかったのに、ナルトは心底後悔した。

「サクラちゃん」

「ナルト、……後先考えないで動いちゃうトコがあんたの長所でもあるけど、今回の事は本当に…どれだけの人に心配かけたら気が済むのよ?!」

「うん、だから……ごめんって、サクラちゃん」

 申し訳なさそうにぶつけた後頭部を撫ぜているナルトに視線を移したサクラが言葉を無くす。

「………ナルト?」

「サクラちゃんのパンチはいつでも強烈だってばよ」

「記憶、戻った……の?」

「すげえキツイ一発みてーだから、ある意味ショック療法?」

「え? まさか、本当に?ナルトくん、本当に思い出したの?!」

 綱手が豪快に笑った。シズネはかなり驚いたのか、あんぐりと口を開いたままだ。

「サクラちゃん、今度一楽のラーメン奢るから許して欲しいってばよ」

 顔の前で手を合わせたナルトを見て、サクラがくすりと笑う。

「嫌よ」

「え? サクラちゃん、マジで許してくんないの?」

「ラーメンの後に、あんみつも奢りなさいよね」

 ナルトは「了解!」と笑顔になる。そして、思い出したように窓の桟にぴょんっと飛び乗った。

「ばあちゃん、シズネの姉ちゃん悪りぃ!オレってば、すげー大事な用事思い出したからまた来るってばよ!」

「「えっ?」」

 シズネとサクラの声が重なる。颯爽と姿を消したナルトの背中を見送って、綱手はふっと笑った。

「本当に騒々しい奴だな」

 見上げた空は、いつもと同じ澄んだ青である。綱手は凝った肩を揉みながら溜息も一緒に吐いたのだった。

 

 

 

 

「シカマル〜〜〜〜っ!!」

 呼ばれて振り返ると、慌てながら走ってくるナルトの姿がある。

「ナルト?」

「ちょ…ちょっと、待ってくれってばよっ」

「お前、五代目との話は……」

 真っ赤に腫れた頬を見たシカマルは思わず眉を顰める。その視線に気が付いたのか、ナルトはへへっと笑った。

「サクラちゃんに、キッツイ一発もらっちまったってばよ」

「……ナルト………?」

 ナルトの顔から笑みが消える。それから、ナルトはシカマルに抱きついた。ぎゅっと腕の中にある温もりを抱きしめる。

「……お前、もしかして――――― 」

 いつものナルトならこんな風に、人前で抱きついてきたりはしない。だから反対にからかって反応を見るのがシカマルの楽しみのひとつでもあった。

「オレがシカマルの一部なら、シカマルもオレの大事な一部だってばよ」

 シカマルが深い息を吐いた。それから、自然とナルトの背に回る腕。

「オレもシカマルがいなくなった世界なんて考えらんねえ」

「人騒がせな奴」

「でも、こんなオレだけど好きでいてくれる?」

 頼まれなくても、離すつもりなどないと何回言わせれば気が済むのだろうか?

「バカは健在ってな……」

「それでも、オレが呆れるくらい好きって言ってくれんだろ?」

「ったりめーだよ、バカナルト」

 いつからこんなに、お互いに惹かれていたのか。そんな事は気にしていなかった。気が付かない間にお互いに惹かれて、共に在る事を選んだのだ。こんな気持ちの流れが人を愛するという事なのかもしれない。愛しいから許し、愛しいから許せない。それでも、最後の最後には相手の全てを受け入れて、何もかもを愛しく感じてしまう感情。

「オレにもシカマルが必要だってばよ」

 シカマルがくれるのは、心の底から温かくなれるぬくもり。中途半端な感情なんて一縷もない。だから、心の底から信頼できるし、自分をさらけ出す事も出来る。

「何ができるか分かんねえけど……こんなオレに、何ができるか分かんねえけど。ずっとシカマルに一緒に居てほしい」

「ツケがたまるぜ?それも利子付」

 シカマルの耳元でくすりと笑ったナルトの気配。くすぐったいような懐かしい感覚に胸に走る甘い痛み。

「サクラちゃんには、ラーメンとあんみつ奢る約束してきたんだってばよ」

「それで、俺は?」

 ナルトの顔を覗き込むと、腫れた頬とは違う赤みが顔を染めた。

「ちくしょ、可愛い顔してんじゃねえぞ」

「し…してねえってばよっ!」

「めちゃくちゃキスしてえ」

「シカマルを忘れないし、離れねえ……離れることなんてできねーんだって、オレ」

 甘い口説き文句はシカマルも常に考えている事で。お互いにそう思える気持ちを心から嬉しいと感じる。

「だから、シカマルはオレの世界の一部であってほしい」

 時々見せる純粋すぎるまっすぐな思いに、シカマルは目が眩みそうになる。自分が同じ言葉を口にしてもこんな重みがないようにも感じた。それでも、シカマルの中にはひとつの覚悟が固まっている。

「……離れろっつっても、離れねえよ」

 悲しみも喜びも、怒りも、……全てを受け止める準備はナルトと生きていくと決めた時に出来ているのだ。突拍子もない事で驚かせられる毎日も、慣れる事はできないけれど楽しむ事ができるだろう。

「お前と、一緒ならな…」

「え? なに?……?」

 顔を上げたナルトの唇を掠め取る。目一杯に開かれた瞳は、大好きな空色。

 

 キラリと光った太陽に反射するのは、見つけた唯一のリアルワールド。

 見失った大切な欠片が、一つになってまばゆく煌めいた。

 

 

 

 

  

 

 

やっとラストです…

ナルトの記憶が戻るパターンは2つ考えてたんですが。

サクラパターンにしました(笑)

こんなに長々と書いているのに、内容が微妙にわかりにくくてすみません…

タイトルは直訳ですよね〜

お互いにとって、なくしては生きていけない存在ってのと。

見解的には「見失う」って事で(^^

最終的にはお互いに、とても求めあっているという事が伝わればいいな〜って思います。

沙希さま、完結が遅くなってごめんなさい。

リクエストがまたちょっとクリアされてない感ありますが…

こんなに好きすぎてどうしようか?というシカナルでした!!