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Love of lonely 5

 

 

 きっと抱き合って居たのは僅かな時間だったのだとナルトは思う。だけれど、シカマルという存在を失くして数日…それは永遠とも思えるような長い時間だった。シカマルに背中を向けられた気分だったのだ。終わりのこない拒絶に思えて、光が見えなかった。

その事を思えば些細な触れ合いも、凍えた何かを溶かす様な温もりがあるかけがえのない時間になる。

「シカマル…」

 シカマルの背中に手を回してぎゅっと彼の匂いを吸い込む。懐かしいと感じてしまうのはどうしてだろうか。目元が熱くなるのは、シカマルの体温を感じているからだ。世界中で一人ぼっちな気で居た昨日の自分が、かけがえのない存在を腕に抱いている。

「……シカマル?」

「悪りぃ…苦しいか?」

「全然!」

 くすりと笑うナルトの気配を感じた。くすぐったいような感覚は忘れかけていたものを思い出させてくれる様な甘い疼きを含む。シカマルがそっとナルトから離れるとナルトの身体がぴくりと反応する。

「ここに、居る」

「うん…」

 こくりと頷いたナルトの仕草。口元にはかすかに笑みが浮かんでいる。その頬に掌を当てる。そっと愛しそうにナルトの頬を撫ぜたシカマルの指が白い包帯の上で止まった。ネジは「心身疾患が原因」だとシカマルを睨みつけたのだ。その瞳はシカマルが原因でナルトを追い詰めたのだと言っていた。シカマルは思わず溜息をつく。

 やっぱり、自分はナルトの邪魔にしかならないのではないだろうか?この現状がそれを証明している。思い知らされた気分なのだが、ナルトの温かさを感じて彼の居ない自分の情けなさというものが身にしみた。彼に自分が必要なのでなく、シカマルは自分にナルトが必要なのだと思い知ったのだ。ナルトに先程のような告白をされるような立場ではない。

「……あのさ、シカマル。帰るってばよ。オレのアパートでいい?」

「ナルト、…いいのか?」

「なにが?」

「いや、なんでもねえ」

 当たり前のようにシカマルを受け入れてくれる事に、甘えてしまってもいいのだろうか。サクラの言った“独りよがり”の意味がようやく分かった様な気がした。

 ぎゅっとシカマルの手を探って握ったナルトの指が少し冷たくて、シカマルは全てを包み込みたい気持ちで指を絡めた。

 

 

 

 

 両眼を包帯で覆われているナルトは、色々な物に躓きながらもようやくアパートに到着する。本人曰く、こんなに不自由するとは思っていなかったようだ。

「大丈夫か?」

「大丈夫だってばよ。えっと、なんだけな…瞳孔が開いてる時間は数時間だから、その後は包帯をとってもいいんだってば」

 シカマルはそっとナルトをベッドの上に座らせると、ガスに薬缶を掛けに行く。シカマルはカップ麺の封を切った。栄養的に余りすすめられたものではないが、何も食べないよりはいいだろう。そう思っての事だ。盆の上にカップ麺と箸を置いて、ナルトの座るベッドの前に胡坐をかいて座る。

「シカマル、腹減ったの?」

「ちげーよ」

「珍しいってばよ。シカマルがカップラーメンなんて…」

「しょうがねえだろ。まともに食えるもんつったら、これくらいしかねえんだからよ」

「………それって、オレの為?」

 訊ねる様に言ったナルトは嬉しそうに笑顔になる。

「食ってねえだろ、お前」

 シカマルは不思議な気持ちでその顔を仰いだ。この笑顔を離そうとした。この笑顔を曇らせた。

「そ…そんなこと、ない」

「ばれる嘘つくなって、バカ」

 シカマルはきゅっと唇を噛む。どんな罰でも受けるつもりでいたはずなのに、どんな懺悔をしても許されない様な気持ちになる。自分が大切にして守りたいと思った物をひどく傷つけたのは、紛れもない自分自身なのだから。

 必死になって強がりを見せるその裏に隠された彼の本当の心。あの夜の涙が本当の気持ち。

「なぁ…ナルト。どうして、俺なんか…」

 どうして真っ直ぐに、好きで居てくれるのだろう。

「どうしてなんて…答えは一つしかないってばよ。オレがシカマルを必要だから、大好きだから。それ以外………なんもねえと思う」

 ナルトは言葉を切ると、すうっと息を吸い込んだ。

「シカマルに、別れようって言われるまで…ンなこと考えた事なくて、シカマルがオレの傍から居なくなるとか考えられなくて………簡単にサヨナラできんなら、オレ、シカマルの事好きになってねえよ」

「ナ…」

「こんなに、好きになれねえよ…誰かの事、こんなに大切だって必要だって…一人の人間としてこんなにシカマルの事… ――――――― 」

 シカマルはぎゅっと手を握ると、ナルトの前に膝をつく。そして、震えるナルトの手に自分の掌を重ねる。それから、ゆっくりとナルトにキスをした。別れを告げた晩にナルトが自分にしてくれたように、ありったけの気持ちを込めて唇に触れた。

 離れた唇が、ナルトの身体が震えている。その身体を抱き寄せた。ナルトは嗚咽を漏らして泣き始める。

「ナルト…俺は勝手な事、考えてたのかな。何年か先…それが一年後でも十年後でも、俺がナルトに対する気持ちは変わらねえと分かった。この数日、そればっかり考えていた。だけど、それがいつか邪魔な感情になるんじゃねえかと、怖かったんだ。一番自分を信じられねえのは俺なんだよな」

 ナルトの手がシカマルを抱き寄せる。

「だって、シカマル……オレのがシカマルに相応しくねえって、そう思う。すげえちっぽけで、空っぽで…シカマルに与えてもらえる事に当たり前になってて……でも、シカマルが、好きなんだもん」

 涙声にシカマルの胸が苦しくなる。答えなんて、最初からなかったのだ。未来のことなんて誰にも分からない。そして、それを作っていくのは自分でしかない。否、ナルトとシカマルと二人で作る未来になるのだ。誰かに敷かれた道を歩いているのではない。手探りで探すのは、二人でしか築けない未来。

 それを先回りして勝手に答えを決めてしまったシカマルは、自分の傲慢さが恥ずかしくもある。そんな自分の事をナルトは必要だと、諦めないと、シカマルの大好きな笑顔で言ってくれたのだ。

 正直、迷いが全てなくなった訳ではない。ただ、それを一人で抱え込むのを止めようと言う気になった。

「オレさ…自分の事、すげえ嫌いだった。情けなくって、いつも感情に任せて突っ込んでくばっかで…そんなオレの事、シカマルは認めてくれてたし、理解してくれてた。それが嬉しくて、そんなシカマルを好きな自分が好きになったんだってばよ?」

 照れ臭そうに、ヘヘっと笑ったナルトが眩しい。

「俺で、いいのか?」

 聞いていて、少しだけ狡い自分に気が付く。

「シカマルが…いいんだってばよ。何回言ったら、シカマルはオレのこと信じてくれるってばよ?」

 いつの間にか二人の間には目に見えない絆が出来ていた。お互いの存在を認め合いながら、求めあいながら、たまには寄り添って抱きあって、お互いの存在を確かめる。

「俺はお前を傷つけた」

「それは、シカマルがオレの事考えてくれたから…… ―――― !!」

「違う。保身してたのは、俺自身だ。勝手に解釈して勝手に決めて、お前の気持ちを聞こうともせず、聞いても聞かないふりをした。それが……最善だと考えた。そう思えた」

「シカマル……」

 両手を広げたナルトを、シカマルは抱き締めた。

「ナルト、すげえ情けないけどな……俺はヤキモチ妬いてたのかもしれねえ。火影になって、誰の物でもない存在になるお前に……俺は…」

「シカマル…違うってばよ。答えが欲しかったのは、オレなんだってば。オレの方こそ自分の感情、シカマルにぶつけてるだけで、シカマルの考えてる事…ちっとも理解しようとしてなかったんだもんな」

 愛しいと心の底から思える。ナルトを離す事は出来ない。一時的にも永遠と言える別離を選んだ自分が、ただ現実から逃げだしていた事を思い知らされる。

「シカマルがオレの事、真剣に考えてくれてる。それがすごく嬉しいって…感じる」

 ナルトの一言一言が心に沁み込んでくる。多くを求める必要はない。今と言う時間にお互いの温もりを感じ合えるだけで心がひどく満たされる。シカマルは鼻孔をくすぐるナルトの匂いを吸い込みながら、ネジのきつい眼差しを思いだす。呆れられて、彼特有の皮肉な笑みを向けられるのだろう。彼にどれだけ卑下されても構わない。行きつく先は、ナルトという人間を離せないという結果だけだ。

「シカマルを……オレにください」

「ナル…ト?」

「オはシカマルのもんだから……火影は里を担う大切な存在だけど。オレはシカの前では、うずまきナルトでいてえんだってばよ。シカマルをすげえ好きな自分で居てえ…」

 シカマルはふっと笑うと、ナルトの頬に唇を滑らせる。

「火影様がこんなんじゃ、先が思いやられるな?」

「ネジみてえな事言うなってばっ!!」

「俺は、火影としてのお前の支えになりてえ。欲を言えば…ナルトの一番の理解者でもありてえ。お前を離せねえ…狡い男なんだよな?」

 ナルトは頬をシカマルの肩に摺り寄せる。

「狡いのはお互い様って事で、イーブンっての…どう?」

 たとえ、一年先…十年先、もっと先に二人の関係が変わる事が合っても。こんなに恋しくて、こんなに求める事はできないだろう。今も尚、形を変える二人の関係。それは誰かに定められたものではなく、己で掴み取り己で切り開く未来の一端。

 お決まりの言葉しか浮かばない。シカマルはボギャブラリの少ない自分に失笑した。

「愛してる…ナルト」

 いつか、ナルトという存在が自分の中の中に浸透している。リセットなんて出来ない。上書きも無理だ。奥深くに沁み込んだこの思いは、愛しさの裏返しで……彼を心の底から求めているという、たった一つの真実。ぶつかる事も、他愛のない喧嘩をする事もあるだろう。だが、その根底にあるのは「愛情と信頼」である。サクラに言われた様に、独りよがりな感情は捨ててしまおう。下らない自尊心は捨ててしまおう。

 ナルトという存在が、シカマルの全てを満たす。溢れそうになった感情が行き場を失って、真っ直ぐにナルトに向かうのだ。最初からこの感情に蓋をする事なんて無理な話だったのだ。

「シカマルが狡い奴でも、シカマルが好き。好きでたまんなくって…それ以外、なんも要らねえ。火影になって里の皆に認められたいってだけの気持ちから、今は色んな経験をして、それだけじゃねえって気が付けたんだってば」

 シカマルはそっとナルトの包帯を取る。ぎゅっと目を瞑ったままのナルトが必死になって薄っすらと瞼を上げようとしている。

「眩し…」

 その瞼に、長い睫毛にキスを落としたシカマルは、この愛しさの奥に眠る限りのない感情をナルトに向けた。

「ナルト…こんな俺だけど、俺を信じてくれるか?」

 ナルトの目尻から透明な液体がぽろりと落ちる。それを舌ですくったシカマルは、触れるだけの口付けをナルトに贈る。ナルトは触れるシカマルの唇から、ありったけの愛情を伝えられている気分になった。きっと、それは思い違いではないはずだ。

「オレの方こそ、よろしくだってばよ!」

 必死になって返してくるナルトが可愛くて、シカマルはこの先の彼の傍で生きて行く事を決める事が出来た。迷いが完全に払拭された訳ではないが、きっとこの答えは二人で導きだして得るものだと言う事が分かった。

「あっ!!」

 ナルトが思いだしたように声を上げる。

「シカマル……ラーメン、伸びちまったってばよ〜」

 シカマルはククっと笑うと、「しょうがねえなぁ…」ともう一度ナルトにキスを落とした。

 

 

 

 

 その日は晴天である。

 ナルトの火影就任の挨拶にはもってこいの日和だと言えるだろう。火影の正装に身を包んだナルトは、部屋の中を右往左往しながら、落ち付きのない態度である。それを座ったまま観察しているネジとシカマルは、彼らしい態度に口を挟む事はない。シカマルは横目でネジを伺った。頭が切れる彼の敏速な考察力はシカマルも感心する所なのである。事、ナルトに関しては意見の食い違いも正じるかもしれない。だが、この上なく頼もしい上忍が火影の補佐に就いた事は喜ばしいことだ。

 ネジはシカマルに聞こえるだけの小さな声でぽつりと呟いた。

「俺は公私混同を許すつもりない」

 それはシカマルとナルトの仲について述べているのだとすぐ分かった。

「努力は……する」

「努力ね」

 彼らしい皮肉めいた口調で返されながら、シカマルは肩を竦めた。

「あいつの夢が、叶って良かった……」

 それはネジの本心なのだろう。彼もナルトと言う存在に救われた一人なのだ。うろうろするナルトにシカマルは思わず声をかける。

「落ちつけよ、ナルト」

「お…お落ち付いてられねえってば!」

 くすりと笑ったシカマルはナルトを真正面から見つめながら、言えなかった一言を口にする。

「火影就任、おめでとうな…ナルト。お前は、立派…とまでは行かなくても、歴代の火影に劣らねえから安心しろって」

 シカマルの科白を聞いたナルトは、顔を真っ赤にしてコクリと頷く。その二人を傍観していたネジは深い溜息をつきながら、ナルトを挨拶の場に急かした。

「行きましょうか、八代目火影様?」

 うっと言葉に詰まったナルトは、コクコクと頷きながら緊張した足取りで部屋を出て行く。ネジの視線に促されたシカマルも立ち上がって、新しい木の葉を担う火影の後ろを付いて歩く。その背中を見つめながら、心に誓った。彼の姿をもう二度と見失わないと。

 

「八代目火影、うずまきナルトだってばよ!」

 

 ナルトの声に集まった人々の感嘆の声が重なる。

 一人ぼっちだったナルトは、里の者に認められる存在となった。シカマルは眩しい太陽を仰ぎながら、瞳を細める。

 

 孤独と隣り合わせの愛情は深く濃く、そして光に反射しながら降り注ぐ……

 Love of lonely … is truth ――――

 

 

 

 

  

 

 

何度書いても納得できなかったです。

んで、書き直しとかしてたら予定以上に時間かかってしまいまいした(^^

なるべく、無理やり感のないように書いてみたつもりなんですが。

Love of lonely とは「孤独なものに対する愛」という意味で。

最後は、それは真実と締めくくったはず。自信なし。

英語なんてわかんないもん。なんとなく意味が伝われば満足です!!

すれ違いの愛情は、孤独に近いと感じたので…また適当なタイトルやわ〜

シカは一応、アレでも悩んでたはずなんですよ。うまく伝えられなくて…凹む。

ナルトも悩んでたんですよ?一応()

何年か先、二人の愛の形が変わったとしても、それは退化して色あせる訳でなく

二人の新しいスタンスへの変化だと思ってます。

あ、なんか言い訳長い。

tastyさま、続きまくりで年越しでごめんなさいです。