国際電話 ビジネスホン

 

 

 

Love of lonely

 

 

 ナルトは驚いて、目の前の男を凝視する。

「あ…悪りぃ…今、なんて言ったってばよ?」

 聞こえてない訳ではない。確認したかったのだ。ナルトは胸が高揚するのを感じていた。そして、目の前の男、七代目火影はにっこりと(多分)笑ったのだ。

「ん〜…だからぁ。俺もそろそろ引退しよっかなってさ」

「でも、カカシ先生…引退って、その…早くねえ?」

 カカシは手元の筆を指先でくるくるやりながら、のんびりと答える。

「なんて〜の…?所謂、世代交代ってやつ?」

 間延びした話し方は、ナルトが初めて彼と会った時から変わらないもので。

「俺としては若い者が里を支えてくべきだと思うんだよねぇ…そうじゃない?ナルト」

「そ、それで…火影は」

 一番聞きたいのはソコである。

「もちろん、ナルト。俺はお前を推すつもりってか…ほぼ意見は一致してるってのが正しいかな。そのつもりで居て欲しいんだよね。お前が自分の補佐に置きたい忍も選んでおくべきだしさ。善は急げデショ?後は、就任の時期をいつにするかが問題だけどその辺りはコッチで詰めておくからさ」

 ナルトはぼうっとしながら、歩き慣れた道を歩いている。心ここにあらずである。習慣とは恐ろしいもので、意識がはっきりしなくてもアパートまでの道のりを勝手に身体が覚えているという方が正しい。七代目火影からのいきなりの呼び出し。どんな厄介事を言われるのかとうんざりした気持ちで、火影の執務室に向かったのだ。だが実際は、ナルトの考えていない事を言われた。

「オレが…火影?」

 忍として生きて行くと決めた時からの夢。空にある遠い星のように、手の届きそうで届かないモノだと思ってきた。それが、今…目の前に差し出された。嬉しくて堪らない。顔が自然と緩むが分かる。

 ナルトはわくわくした気持ちのまま、アパートのドアを開けたのだ。

 

 

 

 朝方に木の葉に帰還したシカマルは、ナルトのベッドの上で眠っている。すうすうと気持ち良さそうな寝息を立てながら。その寝顔を見つめながら、ナルトはにんまりとしていた。本当は今すぐにでも彼を起こして、ビッグニュースを伝えたい。きっと、シカマルは自分の事のように喜んでくれるはずだ。

 太陽はほぼ真上に来ていて、ナルトの腹の虫も鳴り始めた。そろそろシカマルも目を覚ます頃だろう。ナルトはそれを待ちきれない気持ちで、そっと声に出して名前を呼んでしまった。

「シ〜カマル?」

 少し小さな声。呟くように口にしたのに、切れ長の眼差しがゆっくりと開く。ふうっと息を吐いて、ナルトを確認するように顔をずらした。

「おはよ〜さんっ!」

「すげえ寝た気がする」

 そう言ったシカマルの唇に触れるだけのキス。

「ンな事ねえってばよ。ちょうど、昼くらいだってば。四時間くれえしか寝てねえんじゃねえのかな?」

「熟睡したからな」

「そっか…良かった」

 シカマルが眠りについた頃を見計らって家を出て、カカシの所へ行った。誰にも邪魔されない睡眠は思ったより深いものだったのかもしれない。

「腹時計か?」

 含み笑いをされてナルトはむうっと膨れる。

「否定しねえけど…なんか、腹立つ!」

「図星ってやつだからな〜」

 シカマルの長い腕が伸びて来て、ナルトを引き寄せる。先程は触れるだけの口付けだったが、今は深いソレに変わりつつある。身体ごと抱き寄せられて、角度を変えながら交わる唇。背中に回ったシカマルの両手がナルトをしっかりと抱きしめる。

「ん…ふ…っ」

 思わず、キスの合間に声が漏れてしまう。シカマルに解放されるころには身体からはぐったりと力が抜けていた。そのくったりした身体を抱き寄せたシカマルは、もう一度深い息を吐く。

「シカマル?」

「なんか意味はねえけど…こうしてっと安心すんな」

「…そう?」

「ああ」

 ナルトは一緒に居て安心できると言われた事に喜びを覚える。自分も同じだ。シカマルと一緒に居るというだけで、こんなに穏やかな気持ちになれる。

「オレも同じだってばよ?」

 くすりと笑ったシカマルは、ナルトを抱いたまま起き上がると小さな欠伸をした。

「そりゃ、光栄だな。…んで、昼はどうする?食いにでるか?」

 ナルトは「一楽のラーメン」と言いかけて、口を噤む。

「ナルト?」

「あ…うん。どこに行くってば?」

 ナルトの額をツンと指で弾いたシカマルはぺろりと舌を出す。

「イッテ…」

「一楽のラーメンが食いてえんだろ?」

 ナルトの考えなんてお見通しだと言うシカマルの視線に、額を押さえたナルトは唇を尖らせた。

「べ、別に…食いたいけど、すっげえ拘ってるってのはないし…」

「でも、食いてえんだろうが。素直じゃねえなぁ…お前」

「し、シカマル〜」

 困ったように唸ったナルトを見て、シカマルは口元に笑みを乗せる。ばさりと掛け布団を捲ると、ナルトの頭をポンポンと撫ぜる。指先に絡む金色の髪は柔らかい。

「シャワー浴びてくっから、考えとけよ?」

 ナルトがラフな格好をしている事から、今日の彼は非番のはずだと取れる。シカマルは欠伸を噛み殺しながら、風呂場へ続く扉を開けた。

 

 

 

 一楽のラーメンは夕飯でいいと言い張ったナルトと共に、個室のある料理屋にやってきた。夜は懐石料理を出す老舗の旅館なのだが、昼間は少しお手頃な価格で食事をする事が出来るのだ。それに、個室と言う所がいい。人目を気にせずにゆっくりできるし、のんびりと食事をする事が出来る。

 部屋の障子を開けると、庭にある小さな池が見えた。ナルトは池の鯉に麩をぽいぽいと投げている。ほとんど食事は終わって、後はデザートを待つのみになっているのだが。

「ナルト、俺になんか言いてえんじゃねえの?」

「えっ?」

 驚いたように見開かれた大きな青い瞳がシカマルを見つめる。

「はい、図星!」

「なんで分かるんだってばよ?」

 不思議顔のまま首を傾げたナルトに「お前は分かりやすい」と付け加える。ナルトはふふっと笑うと、手元にある麩を全部池の中に投げ入れた。バシャバシャと音を立てて、鯉が集まってくる。それを楽しそうに眺めたナルトが、障子を閉めた。

「あのさ…」

 そして、口を開きかけた所で声が掛かり、襖がからりと開く。着物姿の若い女将が現れて、深々とシカマルに頭を下げた。

「本日はありがとうございます」

「かしこまったんじゃねえから、わざわざ挨拶に来なくても…」

 女将に苦笑したシカマルは、座卓に置かれる菓子を見つめる。

「奈良様には毎度ご贔屓にして頂いて…」

「贔屓にしてんのは、俺じゃなくて親父だって」

 ナルトはシカマルと女将のやり取りを見つめながら、柚子のシャーベットを口に入れる。他愛もない会話が済まされると「ごゆっくり…」と笑った美人は襖を閉めた。

「悪りぃ…話の腰折っちまったな?」

 水を向けられたナルトは首を横に振る。

「ンな事ねえってばよ!」

 ナルトは顔の前で手を合わせる。

「ごちそーさまっ!」

「…話の続きな?お前は俺に何を話したいんだ?」

 ナルトは数回瞬きをした後、俯く。

「うん。あのさ…」

「ん?」

「今日、カカシ先生に呼ばれたんだって」

 それはシカマルも知っている。シカマルがベッドに潜り込む間際に、ナルトが火影に呼ばれたとぶうぶう言っていたからだ。

「なんか良い話だったって事か?」

「うん…」

 ナルトはカカシから言われた事をシカマルに話す。七代目の意向を全てシカマルに話すと、真剣な顔つきになった彼の視線がそっとナルトから外される。

「シカマル…?」

「お前の夢、叶って良かったじゃねえか」

「うん…って言っても、いつになるかとか分かんねえし…」

「七代目のその話しぶりからすると、遠い話じゃねえって事だと思うぜ?」

 ナルトは違和感を感じる。一緒に喜んでくれると思っていたシカマルの表情が暗く見えた。

「シカマル…一緒に喜んでくれねえの?」

 思わず口にした言葉をナルトは後悔した。一瞬目を丸くしたシカマルは優しい笑みを見せる。

「なんで俺が喜ばないんだよ。お前の夢が叶ったんだぜ?嬉しいに決まってんだろうが」

「あ、ありがと…だってばよ」

 それにしてはシカマルの様子が可笑しいと本能で感じてしまう。彼の言葉に嘘や偽りは感じないと言うのに、何かが“違う”ような感じがするのだ。

「お祝い、考えないとな」

 シカマルの言葉にナルトは首を横に振る。

「そんなん…いらねえ」

 一番欲しいのは、シカマルの本当の祝福だけ。

「…あれ?」

 シカマルの言葉に嘘や偽りを感じないのに、本当に祝福されているように感じないのはどうしてだろうか。先程、一瞬見たシカマルの冴えない顔付きでナルトは言葉にできない何かを感じてしまった。

「どうした、ナルト?」

 ナルトは引きつった笑みを浮かべた。頭の中がぐちゃぐちゃだ。何がどうなのか整理がつかない。

「カカシ先生には補佐に置きたい忍の選考もするように言われてて、オレはそれをシカマルに頼みたいって思ってるんだってばよ」

 取り繕うように話したが、気持ちは本物だ。カカシから補佐の忍だと言われて、すぐに頭に浮かんだのはシカマルだったのである。

「おいおい…そりゃ、贔屓目だろ?」

「違う!そんなんで決めねえよ…オレはオレなりに考えて、シカマルが適任だったから頼みてえって思ったんだし。シカマルとオレが…その、付き合ってなくってもオレは…シカマルに頼んだ」

 最後までナルトの言葉を聞いたシカマルは口を噤んだままだ。手元の湯呑の茶を飲み干すと、すっとシカマルが立ち上がる。

「ナルト、食ったか?出ようぜ」

「…シカマル?」

 支払いをすませて旅館の外に出たシカマルは渋い顔つきで、じっとナルトを見つめた。ナルトの胸の中に先程から感じていた嫌な違和感が湧き上がる。それは今まさに形になろうとしている。

 くるりと振り返ったシカマルが口を開く。

「悪りぃ…」

「それって、何に対して謝ってんの?」

 ナルトはじっとシカマルを見つめる。やっぱり、その視線をシカマルは態とらしくない素振りで外す。ツキンと胸を突き刺すような痛みがナルトを襲う。

「俺は、火影の補佐なんて器じゃねえ。…だから、さっきの話は断る」

 強い風とともに訪れたシカマルの言葉が、自分を裏切っているように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイトのキリ番22474をゲットしたtastyさまのリクエストです。

リク内容は「ナルトが火影になる辺りのシカナル」と頂きました\(^o^)

その他色々な要素もいただいたのですが、激しくネタばれになってしまうので。

ナイショです。

そして、また続いてしまったのですよ(+_+) いつもじゃん…って?

きりの良い所で切ったら、2部構成になってしまました。早く続きアップするぞ!