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Lesson 3
シカマルは簡単な朝食を用意する。ナルトの年齢が少し上がっても、自分のやる事はあまり変わらないと気がついた。パンを焼くのと、ナルトの好きな牛乳と嫌いな生野菜も少し。あとは目玉焼きを作るくらいだ。料理なんてものは余り知らないと言うか、しないが正しい。それを自分以上にナルトに求めるのが無理なので、仕方なくというのが本心である。 「ほらよ」 座る前に牛乳の入ったコップを置くと、ナルトはぱちんと手を合わせた。 「いっただきま〜す!」 ラーメンに拘っていたナルトだが、嬉しそうにトーストを口にしている。それにしても、だ。シカマルは目を細めてナルトの成りを見た。 「おい、ナルト…それしかなかったのかよ…」 「ん?」 ナルトは自分が来ている浴衣を指差した。シカマルは渋々と言った様に頷く。 「だってばよ〜…流石に、三年前のもんはサイズが合わねえってばよ」 「いや。それも十分に合ってねえぜ」 丈がひざ下であるのだが、やっぱり足りていないと言った感じだ。身幅に問題はないだろうが、感覚が少し外れているような気もした。 「ま、裸じゃなかったらシカマルも目のやり場に困らねえだろ?」 「おいっ!」 「トーストお代りだってばよ〜」 人の話を聞く気がないのか、ナルトはにこにこしながら空になった皿をシカマルに向かって掲げた。シカマルはがっくりと肩から力を落とす。 「二枚目は野菜食ってからな」 「……二度と二枚目はないってばよ」 眉間に皺をよせて、ちぎっただけのレタスを見たナルトはべーっと舌を出す。最初から口にするつもりがないのか、器をシカマルの方へ寄せた。 「子供みてえな事言ってんなよ。でかくなったのは図体だけか!」 「苦手なもんは苦手なんだってば」 「それが子供みてえだってんだ」 ナルトは仕方ないと言った風に、シカマルの方へ寄せた器を自分の方へ引き寄せる。だが、決心が決まらないのか、じいっと小さな白い器と睨めっこしている。シカマルはそんなナルトを観察するように見つめて、トーストをかじった。「う〜」とか「あ〜」とか声を上げながら、箸先でレタスと遊んでいる。ナルトの前にドレッシングをどんと置いてやると、青色の瞳がぎろりとシカマルを睨みつけた。 「ンな顔しても無駄な」 「分かってるってば…」 小さなレタスを選んで口に恐る恐る入れている姿を見てくすりと笑ってしまう。そんなシカマルに気がついたナルトは、むすっとしながらぱりぱりと野菜を咀嚼する。 「トースト…お代り」 「はいはい」 「なんかシカマルの話し方が、オレをバカにしてるってば」 「はあ?」 シカマルが思わず声を上げると、ナルトは脹れっ面をしながらそっぽを向いている。バカにはしていないが、余りにも子供っぽい仕草に笑ってしまっただけだ。 「ったく…めんどくせえなぁ」 「出た!シカマルの口癖〜」 「しょうがねえだろ?お前のやる事なす事、全部かわいく見えんだからよ」 シカマルは本当の事を口にする。いくら今のナルトが年上だと分かっていても、ナルトの事が可愛く見えてしまうのだからそれ以上でも以下でもない。それを聞いたナルトはぽかんと口をあけてシカマルを見つめる。にんまりと笑ったシカマルを見て、顔を真っ赤に染めた。 「か、かっ…か、可愛いとか言うなってばっ!オレからしたら、シカマルのがずっと子供でかわいいってばよっ!」 「どもってるぜ?」 「むかつく―――――!!子供のくせにっ!生意気だってばよっ」 顔を真っ赤にして立ち上がったナルトは、呑気に座っているシカマルを思いっきり睨みつけた。それから人差指をびしっとシカマルの鼻先に突きつける。 「シカマル!成長したオレを教えてやるってばよ」 「いや、してねえし…」 「してんだってばよ」 すとんと椅子の上に座ったナルトはシカマルの皿から食べかけのトーストを奪い取ると、もぐもぐと食べ始める。 「腹が減っちゃ戦はできねえからな!」 「………戦ぁ?」 ナルトの言う事はいつも支離滅裂だ。大抵の事ならば理解できるが、稀にその範疇を飛び越えてしまうのでシカマルにもお手上げだったりする。そんな所が意外性ナンバーワンだと言わしめる所なのかもしれない。 だが、暫くするとうるさかったナルトが急に静かになる。 「お〜い…ナルト?」 ナルトはトーストをかじりながら、船をこぎ始めた。いきなりの事にシカマルは驚いてしまう。たった今騒いでいたのは何なんだろう。シカマルの声に反応した彼ははっと顔を上げて、ぱちぱちと瞬きする。 「悪りぃ…あんま寝てなくって」 寝てない理由はあまり聞きたくない。シカマルは乾いた笑みを浮かべた。ふと、ナルトの向こうにとあるシチュエーチョンが浮かぶ。身体中に付けられたキスマーク。なんだか、執拗に攻め立てられているナルトの姿が頭の中に浮かんだ。それを打ち消す様に手元にあった湯呑をぐいっと煽る。慌てていたせいかゲホゲホとむせ込んでしまった。その音に反応して、ナルトが目を開ける。本当に眠たいのか、虚ろになった表情でシカマルを見つめてくる。そんな顔にセクシャルなものを感じてしまったシカマルは、ついっと視線を外してしまう。 「眠てえなら…ベッド行けよ」 「あ、うん。でも、……これからの事、考えなくてもいいのかってばよ?」 「……考えとく」 ナルトは大きな欠伸をすると、よろよろとベッドに向かって歩き出す。その背中をほっとした気持ちで見つめたシカマルは、すぐに寝息を立て始めるナルトを見ない様に朝食を再開した。
ナルトの寝相はよろしくない。それはよく知っている。だが、ほとんど浴衣が肌蹴た状態で眠る彼の姿を見て、なんだか複雑な気分になった。ナルトの話によると、自分と彼は三年後も関係があるらしい。恋人としてだとナルトの口調からも読み取る事が出来た。なのに、この心のもやもやはなんだろう。 ナルトの肌に刻みつけられた刻印は、未来の自分がつけたもの。胸元にも背中にも、内腿にも…それは目視するだけでも生々しくリアルな物を感じさせられる。
『シカマルは、オレがシカマル以外の奴と付き合っても平気なんだってば?シカマルじゃない誰かとエッチなことしても、全然平気なのかよっ!』
ナルトの科白が頭の中でくるくる回った。平気な訳はない。ナルトの事が好きだし、たまに意地悪な事をするのも計算の上でだ。ナルトの性格を把握しているからこそ出来る事だと言える。 この気持ちは、ちっぽけな嫉妬心だ。 しかも、未来の自分に対するものだから、女々しくてしょうがなくなる。自分でない誰かと肌を重ねるなんて考えたくもない。ナルトの相手は未来の自分。言い聞かせる度になんだか空しい気持ちに襲われた。 じっとベッドに凭れかかりながら、後ろで寝息を立てるナルトの気配を伺ってしまう。 「なにやってんだよ…俺は」 発情する機会を伺っているような気分になるのだ。呟いてまた溜息をついてしまった。その首にするりと温かい腕が絡まり、シカマルの身体がびくりと反応する。 「…ナルト?」 「ぶつぶつ言ってんだもん。眠れねえってば」 「嘘つけ。よだれたらしながら寝てやがる癖に…」 ふっと笑う気配が耳元で聞こえた。 「よく見てんじゃん。シカマル〜」 ちゅっと音を立てて、耳の付け根を吸われる感覚。ねっとりと熱い舌が首筋を撫でる。 「おいっ!ナル…」 「やっぱおもしれえの〜!シカマルってば緊張してるってばよ〜」 あははと笑われて、シカマルもむっとしてしまう。 「あんなぁ…」 「シカマルに色々、教えてあげよっか?」 囁くように誘われて、シカマルは一瞬返事に詰まる。まるで、心の内を見透かされているような変な気持ちになった。 「オレとエッチなことしても、浮気にはならねえってばよ?」 誘惑するように甘く囁かれて、心臓がどくどく鳴った。そんなつもりはないと、声を大にして言えないのが辛い。これは試されているのだろうか。それとも、からかわれているのか。答えないままのシカマルの上衣にナルトの指がかかる。裾を捲る様にして、肌を這う掌。シカマルは咄嗟にそれを掴んで止めた。 「人の事からかうのはやめろって」 「え〜…からかってなんかないってばよ〜?」 十分にからかっている口調だ。ぐるりと振り返ってナルトに視線を移したシカマルは、身体が固まるの感じた。ナルトの浴衣は引っかけているだけで、殆ど肌蹴ている。にっこりと笑みを浮かべた彼は手を広げて、潤んだ瞳をシカマルに向けている。 「来ねえの?」 「……こんなん、おかしいだろ?」 「そっかなぁ…?」 「当たり前だ」 真剣な顔で返した所で、ナルトが噴出した。何が可笑しいのか枕に顔を付けて、ひぃひぃ笑い始める。 「めちゃ真剣だってば〜!シカマルのそーゆう顔、初めて見たかも…」 「お前、…からかったのか?」 「だって、だって……シカマル、すげえ緊張してガッチガチだし……」 くすくす笑いが止まらないナルトは、目尻に溜まった涙を指ですくう。 「あ〜、シカマルのがやっぱ可愛いってば。朝、オレの事可愛いって言ったお返しだってばよ〜」 べーっと舌を出されて、シカマルの眉間にしわが寄る。じっとナルトを見つめてから、にやりと笑った。 「色々、教えてくれんだよな?ナルト」 「へ…?」 シカマルはゆっくりとした動作で、ベッドの上に座る。ぎしりと鳴るスプリングの音が卑猥に聞こえた。 「ちょ…ちょい待ちっ!冗談だってばよ?」 「期待してるぜ?――――――― 先生?」 ナルトがぎょっと目を丸くした瞬間、シカマルによって唇が奪われていた。
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あ〜…更新に時間がかかってしまいました。
しかも!!あんまり進んでないっすよね。
あはは(笑って誤魔化すぜぃ)
ってか、次回展開が読者様にはバレバレっすよね(^^ゞ
いいのです。そうゆう話なのです(ヲイ!)