絵本 全巻

 

 

 

 

 

Do Me More 6

 

 

 ナルトがにっこりと笑う。その笑顔につられて、シカマルも口元に笑みを浮かべた。だが、シカマルにはナルトのその笑みの根本にあるものがすぐに読み取れる。

「おい、…誤魔化す気だろ?」

「あ、分かった?」

「ったりめーだ…」

 ナルトの身体を抱き寄せたシカマルは、ぎゅっと抱きしめる。ナルトは最初驚いたようだったが、身体の力を抜いてシカマルに身を寄せた。ふうっと息を吐くシカマルにナルトは不思議になる。

「シカマル、どうしたんだってばよ?」

「理由はどうあれ…お前の記憶が戻って良かったってな…」

 ナルトはシカマルの匂いを吸い込むとくすりと笑った。

「でも、何回でもオレ…シカマルを好きになる」

「ナルト?」

「だから、シカマルも。いつでもオレの事好きでいてくれってばよ。無視されんのは嫌だし、今回みたいのはぜってーお断りだってば」

 シカマルの顔を見上げたナルトは、優しい笑みを浮かべた恋人をじっと見つめる。

「オレは何度でもシカマルの事好きになる自信あるから、だから…シカマルは強引にオレの事繋ぎ止めてくれなくちゃ嫌なんだってば。いつでも、オレはシカマルの事必要だから。一日損したの、許してねえんだってばよ?」

 シカマルは少しでも迷ってしまった自分に後悔する。だけれど、僅かに離れていた時間に彼の必要性を再確認したのだ。それに、どれだけナルトという人間を大切に思って愛しているのかを思い知った。危うい場所に立っている事に気が付かされた。

「覚悟しろよ、ナルト。俺はお前を離さねえぞ?」

「その言葉、全部返してやるってばよ!」

 ふふっと笑ったナルトの唇を塞ぐ。温もりを求めあうように口付けを深くしていく。こんなに愛しくこんなに心奪われる存在にこれからも出会う事はないだろう。捕らわれているのだ。うずまきナルトという人間に。熱い舌を絡め取ると、ナルトの身体がぴくんと反応する。

「ん…んんっ」

 抗議するような声にも答えるつもりはない。それほどにシカマルはナルトに飢えていた。角度を変えながら貪る様に舌を絡める。

「迷わねえ…」

「はっ…ぁんっ」

 唇が触れたまま呟く。大きく肩で息をしたナルトが潤んだ瞳で見つめてくる。

「オレも…だって」

 ナルトの腕がシカマルの首に掛けられて抱き締められた。頭を抱える様にしたナルトは、お返しとばかりにシカマルの唇をぺろりと舐めた。ちゅっと音を立てながらキスをして、その唇は頬に瞼に、顔中にキスを降らせる。

「くすぐってえよ」

 ナルトのくれるキスがこの部屋の雰囲気を甘くする。ナルトを押し倒したい気持ちをぐっと我慢した。

「襲うぞ?」

 言葉にするほど本気でない。…はずだった。

「なんでこのベッド、無駄に広いんだろって思ったけど…二人で寝るには丁度いいってば」

 首を傾げて見上げてくるナルトを見た瞬間、シカマルは白旗を上げる。

「おいおい、火影様が朝から何言ってんだよ?」

「シカマルの前では、ただのうずまきナルトでいいんだってば」

「よく言うぜ…」

「ネジにはちょっとの間、記憶がない事にしよっかな。そしたらさ〜シカマルとずっと一緒に居られるじゃん?」

 シカマルはくすっと笑うと、ゆっくりとナルトの身体をベッドに沈める。ナルトがネジを騙すなんて事が出来る筈がない。それにネジの事だ。すぐにナルトの変化に気が付くだろう。山ほどの仕事を執務室に積み上げるくらいの嫌がらせをしてくれるかもしれない。ナルトはちっとももう一人の補佐役の性格を分かっていないようだ。

「ん…」

 首筋に舌を這わせると、ナルトから甘い声が上がる。シカマルの気持ちを煽る様な声に興奮してしまう。離れていた時間は僅かなものだったのに、ひどくナルトに喝えているような気分になった。身体がではなく存在に飢えているのだ。セックスが何のタシになるのかは分からないが、お互いの気持ちを伝える方法の一つだとも言えるだろう。

「シカマ……」

 ナルトが名前を呼んだ瞬間、シカマルの身体がばっと離れる。ナルトは心底驚いて、ぱちっと目を開けた。何がどうなったのか分からない。シカマルはさっと自分の身なりを整えて、ナルトから少し距離をとったのだ。

「あの…シカマル、どうしたって ―――――― 」

 そして、ナルトの声を遮る様にノックがしたと思ったら、勢いよく扉が開く。ナルトは思わず脱力してしまった。いいとも悪いとも言わないのに扉を開ける癖のある補佐役をじっと見つめる。恨み事の一つも言いたいが、反対にやり込められる事が分かっているのでしない。この数年で学習できた事のひとつだ。

「…えっと、ネジ。どうしたんだってばよ。そんなに慌てて」

 ネジは珍しく慌てていた。それが必死な形相から見て取れるのだ。

「ナルト!ヒナタが…」

「ヒナタ?」

 ネジはふうっと息を吐く。それを見たナルトの顔に笑顔が浮かんだ。

「ネジ!生まれたってこと?」

「ああ…」

「そっか!おめでとだってばよ、ネジ」

 ナルトは思いだしたように洋服を着替え始める。シカマルはネジ同様慌て始めたナルトを見て首を傾げた。

「おい、ナルト…お前もしかして」

「ヒナタの赤ちゃん生まれたら見に行く約束になってんだってばよ。って事で、行ってくる!」

 走り出そうとしたナルトの肩に手がかかる。後ろからシカマルに左肩を、前からネジに右肩を掴まれた。

「ちょっと待て」

 ネジはふっと笑う。

「待てねえってばよ!」

「ナルト、火影の仕事を放り出す気か?お前には、風影との会談があんだよ」

 シカマルの声にナルトは思いだしたように頷く。

「じゃ、シカマル。どうにかしといてくれってばよ。オレはヒナタんとこに…」

「出来る訳ないだろ?」

 ネジにぴしゃりと言い放たれたナルトは脹れっ面になる。

「お前、記憶が戻ったな?」

 ネジの科白にナルトの表情が変わる。シカマルはやっぱり…と思うのだ。分かりやす過ぎるナルトがネジの目を誤魔化せる訳がない。肩から力が抜けたナルトは俯いて数秒考えた。そして顔を上げると、ネジをぎろっと睨みつける。

「我愛羅との会談終わらせたら、オフだってば?」

 ナルトの真剣な顔つきにネジは一瞬迷う。

「…シカマル、どうする?」

「どうするっても、…こいつそうゆう気ぃ満々だぜ?」

 ふむ、と唸ったネジは頭痛が起きそうな気分を押さえながら頭の中でスケジュールを組み直す。思わずナルトにヒナタの事を知らせてしまったが、知らせないなら知らせないで後から煩そうだ。

「しょうがない…」

 ネジが言うと、ナルトは二人の手を払って扉に向かって行く。その後ろ姿を見つめたシカマルとネジは思わず顔を見合わせる。それからふっと笑った。

「今日も忙しい日になりそうだぜ」

「よく言うな。お前の所為でロスったんだ。責任を感じろ」

「悪かったな」

 シカマルの言葉が昨夜の事だと察したネジは皮肉っぽい笑みを口元に浮かべる。

「別に悪いなどと思っていない。せっかくのチャンスが台無しだった」

「チャンス?」

 ネジはにやりと笑う。

「お前…本気でナルトの事… ―――― 信じらんねえよ。人の親になった奴が言う台詞だとは思えねえな」

 皮肉を込めて返したつもりだが、ネジにはしらっと返される。

「ヒナタの出産祝いに最適だと思ったんだがな」

 食えない奴だと心の中で思いながら、余裕のある笑みを反対に浮かべる。ここで変に焦った姿を見せてもしょうがない。ネジ相手なのだから。

「ンな事出来る訳ねえだろ?」

 ネジはくすりと笑うとシカマルの胸にドンと拳を当てる。

「次はないと思えよ、奈良シカマル」

「だから、次なんて…ねえよ」

 シカマルもネジの胸に拳をぶつけた。お互いに顔を見合わせてくすりと笑う。

「ところで、シカマル。火影様はどこへ行かれたと思う」

「聞くか?普通…どう考えても、風影様の所に違いないな」

「頭痛の種を作る天才だな、六代目火影様は…」

「しゃあねぇ…それ覚悟でついてってるんだからよ。我らが大将に」

「……違いない」

 ネジは肩をすくめると、くるりと背中を向ける。シカマルはその背中を見て、口にはしないが感謝の念を送る。一番に心配させてしまったのはきっとこの男なのだ。憎まれ役を自分から買って出るような不器用で、優しい男。

「でも、あながち…冗談でもなさそうだな」

 ネジとヒナタは本当にナルトの事が好きなのだ。いつでも攫っていかれそうな雰囲気だ。少し離れたネジが振り返ると顎をしゃくられる。シカマルは仕事モードに心を切りえて、昨日までの情けない己の姿を封印する。

 二人揃って歩いていると、向こうから慌てて走ってくる影が見えた。

「ありゃあ、…テマリ?」

 彼女は憤慨したような顔つきでシカマルを睨みつけた。

「おい!我愛羅とナルトの姿がないぞ。どう言う事だ!!」

 ネジはシカマルにちらりと視線を移す。もちろんシカマルも同様にネジを伺っていた。

「一つしかねえな…」

「そうだな。それしか考えられない」

「何を悠長に……」

 シカマルは深い溜息をつきながら、目の前の気の強い男勝りな美人をどう宥めるか頭の中で画策を巡らせた。

 

 

 

 

 そこは、日向家の本家である。産気づいたヒナタは、夫によって本家に運ばれたのだ。もちろん、火影がいきなり風影を連れて訊ねてくるのだから、日向家が一時的なパニックに陥ったのは言うまでもない。

 広い和室に引かれた布団の上で、ヒナタと産声を上げたばかりの赤子が眠っている。

「あの…こんな姿で、ごめんなさい……」

「気にする事ねえってばよ。いきなり訊ねたのはこっちなんだし。な、我愛羅」

「そうだな。何の祝いの品も持たずに、こちらこそ失礼だ」

 ナルトも我愛羅も影の礼服を身につけている。寝ていたヒナタもゆっくりと身体を起こす。

「ヒナタ、無理すんじゃねえってばよ」

 慌てるナルトにヒナタは目を丸くさせてからクスクス笑った。

「ナルトくん、病気じゃないから大丈夫だよ。それより、戻ったんだね。良かった」

 ヒナタの言葉にナルトは軽く頷く。ネジ同様、ヒナタも観察眼に優れているのだ。彼女の隣で真っ白い産着を着せられて眠っている小さな顔をまじまじと見つめる。目を開けて居ないので分からないが、ヒナタのように優しい面影がある。

「あのさあのさ、ヒナタ…女の子?男の子?」

「男の子」

「そっか、日向の跡取り息子だってばよ」

「抱いてくれる?ナルトくん」

「え!…いいんだってば?」

 ヒナタは笑みを浮かべると、寝ている赤ん坊をそっとナルトの腕に渡す。ナルトは小さいけれど温かいその感触に鼓動が高鳴る。まるで羽のように軽い。抱いている感覚がないのが不思議だった。だが、紛れもない命が息づいている。

「すげえ!理由もなく可愛い」

 ナルトの顔が緩む。無条件に可愛い存在を腕に抱いている気持ちだ。いつかシカマルが話してくれた、木の葉隠れの「玉」の話。未来を担う子供たち。腕に抱いている赤ん坊はこんなに軽いのに、彼らが与えてくれるものは大きく、その命は尊い。

「我愛羅も抱かせてもらうってばよ!」

「…俺なんかが……」

「そんな言い方をしないでください。我愛…風影様」

 ナルトとヒナタは顔を見合わせて笑う。そして、ナルトは我愛羅にそっと赤ん坊を渡す。彼はくすぐったそうな顔をしながらその小さな命に笑みを向ける。

「驚いた。生まれたばかりの赤ん坊はこんなに…軽いのか」

「軽いけど、オレたちが守ってくもんはすげえ重たいってばよ」

「そうだな…」

 そっと静かに赤ん坊が目を開けた。日向家が受け継ぐ瞳の色を見たナルトは破顔する。大きな瞳は両親から受け継いでいるのだろう。ぱちっと目を開けた勇士は、ぱちぱちと瞬きを繰り返した後火が付いたように泣き始める。

「な…ナルト!」

「泣くのは赤ちゃんの仕事だってば」

「呑気な事を言うな。どうすればいいのか、分からないんだ」

 ヒナタはくすりと笑って我愛羅の腕からそっと赤ん坊をもらうと、あやす様に背を叩く。その姿を見て我愛羅は感心したように頷いた。

「凄いものだな、母親とは」

「ほんとだってばよ」

 我愛羅もナルト同様、母親と言うものを知らない人間の一人だ。ナルトは我愛羅に向かって笑みを向ける。

「オレたちが守ってくんだってばよ。里も、仲間も、大切な人も」

「そうだな」

 暗い雰囲気を払拭するようなナルトの笑みに我愛羅も癒された者である。そんな和やかな談笑をしている中に、どたどたという足音がいくつも聞こえた。磨かれた廊下を走ってくる者たちの数を耳で確認したナルトは、やっと大切な事を思い出す。

「やべっ…ネジやシカマルに言ってくんの忘れた」

 ナルトはぺろりと舌を出す。からりと襖が開いて、そこには怒りを露わにしたネジが腕を組んで立っていた。そして、シカマルやテマリの姿も確認して、ナルトと我愛羅は顔を見合わせる。

「ナルト…どう言う事だ!」

「会談してたんだってばよ、我愛羅と」

「勝手に風影様を連れ出すな!」

 ネジの大声に、ヒナタの腕でまどろんで居た赤ん坊がひっくひっくと泣き始める。はっとしてそれを見たネジは動きを止めてヒナタを凝視した。

「ヒナタ…」

「ネジ兄さんが大きな声をだすから、びっくりしちゃったんだね」

「す、すまん…」

 ヒナタの脇に膝をついたネジは、愛しそうに赤子を見つめる。そっとヒナタの腕から息子を抱かされた彼は優しい父親の顔つきになっていた。

「めちゃ可愛いってばよ、ネジ。悪りぃけど、父ちゃんより先にオレと我愛羅が抱いちまった。赤ちゃん」

「火影様と風影様に抱かれるとは、幸せ者だな」

「うん、私もそう思う」

 ナルトの耳にそっとシカマルが耳打ちする。その声で、そっとナルトはテマリを見上げた。彼女は眉間にシワを寄せてぎろりと、ナルトと弟を睨みつけている。

「あ〜〜…テマリの姉ちゃん。無事に我愛羅との会談は終わったから安心してくれってばよ、じゃ…許してくんねえかな?」

「当たり前だ!二人とも里を担う影だという事を十分に分かっていない」

「ほんっと、悪りぃってばよ」

「テマリ、俺が先に行こうと言ったんだ。だから…」

「だから、何だと言うんだ?」

 テマリの前では火影も風影も威厳がなくなってしまうようだ。

「……テマリの姉ちゃんも、赤ちゃん生んだらいいってばよ。きっと、姉ちゃんの子供ならめちゃ可愛いって…我愛羅もそう思わねえ?きっと、気の短いのも直るってば」

「いや、ナルト。テマリは赤子をどうとかの前に相手を…」

「我愛羅!」

 一瞬の沈黙の後、温かい笑みが溢れる。ナルトは不思議だと思った。消えて行く命もあれば、こうやって生まれてくる命もある。その為に人は生きている。大切な人を守るために。そして、その小さな命が与えてくれるものはこんなにあたたかい感情なのだ。ナルトは雑談が始まってしまった日向邸の一室で、端っこに座るシカマルに擦り寄る。

「シカマル、何か…オレ分かった様な気がするってば」

「何をだよ?」

「今はまだ戦いの完全にない世界じゃねえけど、いつかそんな世界を託す事がすげえ大切だってこと」

「へぇ。たまには分かった様な事言うじゃん。ま、今はいいけど後で覚悟しとけよ?…お前にはまだ聞かなくちゃいけねえ事もあるしな」

「忘れてねえんだ」

「ま〜な」

 シカマルの冷たい指にナルトは指先を絡める。ナルトはシカマルとの間にある数々の思い出の全てが、二人で作りだした愛しい記憶なのだと子供のようだと感じていた。

「ゆっくり聞いてもらうから、大丈夫だってばよ」

 ナルトはにっこりとシカマルに笑顔を向けた。

 

 

 

 

 狭くない部屋に、狭くないベッド。夜着に着替えたナルトは目を擦りながら、欠伸を噛み殺す。

「シカマル〜…まだ、終わらねえ?」

「ん。あと、ちょいかな…」

 ナルトの寝室で仕事を片付けているシカマルの前に座りながら、記憶を失った顛末を話した。夢の中で出会ったやんちゃなガマの事。二人で散歩をして、ついつい自分の記憶を食べてしまった事を。記憶を具現化するガマの能力には驚いたが、まさか自分が口にしたお菓子たちが自分の記憶の一端だと思わなかった事。自分の記憶が何故十六から止まっていたのかはナルトにも分からない。シカマルには、たまたま十六からの記憶とシカマルの記憶を食べてしまったのだろうと安直に結論付けられてしまったのだが。

 さらさらと筆の動く紙面を見ていたナルトは、つまらないと言うように背中からシカマルに抱きつく。

「邪魔すんなって、あと少しだって言ってんだろ?」

「してねーもん。抱きついただけだし」

 猫の様にシカマルにじゃれつきながら、彼の匂いを吸い込み彼の温もりを感じる。急に胸に溢れて来た感情に名前は付けられない。ただ、腕の中にあるシカマルの存在が愛しくて、恋しくて名前を呼ぶ。

「シカマル…」

「ん〜?」

 一応、片手間でもナルトの声に応えてくれるシカマルが好きだ。

「もう、絶対に忘れたりなんかしねえよ」

「忘れられてもへこたれねえよ、俺も」

「へ?シカマル…へこたれたんだってば?」

 肩口から覗きこむようにして見たシカマルの頬が少しだけ赤い。

「うるせーよ。今度は俺がお前の事忘れてやる」

「あ、それ勘弁だって!」

 筆を仕舞うと巻物をくるりと巻いて留める。シカマルは首を回しながら、ぽんぽんとナルトの頭を撫ぜた。ナルトの腕をとって、自分の膝に乗せると顔を上げた彼の唇にキスを落とす。

「ん…」

 絡みついて来るナルトの熱を感じながら、シカマルも味わうように角度を変えながら口付けを深くする。ひとしきりお互いの存在を感じ合って、唇が離れた。

「ヒナタの赤ちゃん…すげえ可愛かった。めちゃ軽くてびっくりしたんだってばよ」

「その感覚分かるな。アスマの子供抱かせて貰った時に思ったからな。俺も」

「シカマルも欲しい?赤ちゃん……」

 俯いてしまった金色の旋毛を見つめたシカマルがふっと笑った。

「こんな大きな子供がいるんだぜ?これ以上俺の手には負えねえよ」

「はっ?!子供って、オレ?」

 抗議する様な眼差しに肩を竦めた。青い瞳が少しだけ潤んで居る。勝手に妄想して落ちこまれるというのも困りものだ。

「俺たちも子作りするか…」

「うえ〜…親父っぽいってばよ。それ」

「親父ねぇ…悪かったなっ!」

 ひょいっとナルトを抱き上げて、冷たいシーツの上に運ぶ。口元に笑みを乗せたナルトは、シカマルの頬にちゅっとキスした。

「子供なら居るって。オレとシカマルの思い出は、大切な記憶は、オレたちだけの子供だってばよ。それくらい、大事なんだってば」

「そう思うんなら食うなって…」

「ん……」

 シカマルの顔が首筋に埋まる。彼の手は器用にナルトの夜着の釦を外していく。ひんやりとした空気に熱い肌がさらされて、ナルトはぶるっと震えた。

「寒いか?」

「あ…っ、だいじょ…ぶ」

「すぐに熱くなる…」

「シカマルの言い方、エロいって…」

 二つの影が一つに絡まる。お互いの熱を分け合うように、深く深く闇の中に沈んでいく。見えているのはお互いの事だけで、感じるものは二人の熱だけで。

「あっ……シカマル…」

「愛してる」

 たまにしか口にしない言葉を聞いたナルトは泣きたいくらいの気持ちになった。昨夜感じていた絶望的な感情はシカマルという存在で埋め尽くされる事で消えている。シカマルの事を忘れていた自分は、無意識の中で彼を求めて、本当の彼を知っている自分にさえ嫉妬してしまったくらいだ。

「オレも…すげえ、好き」

 言葉だけでは足りないから、一つになる。溶けてしまいたくなる。シカマルの中で溶けてしまいたい。

「ん…っ」

 満たされるという表現がぴったりな行為に溺れて行く。シカマルの前では、自然体で居られるのだ。一人の人間に戻れる。自分自身で選んだ火影という夢を手にして、それを助けてくれる仲間たちに囲まれて、それも幸せだと思うのだが……ナルトは思う。きっと、自分は本当に我儘なのだ。シカマルが欲しくて、自分だけの者にしたくてしょうがない。シカマルには反対に「それは俺のセリフ…」と返されたけれど、そうは思わない。

「シカマル…あっんっ…」

「力…抜けって」

「うん…っ、は…あっ…」

 やっぱり、シカマルの中でただ一人の存在で居たいから。そう願ってしまうから。

 

 今と言う瞬間も、すぐに過去になってしまう。人生は一度きり。やり直しはきかないのだから、明日へと続く道を見失いたくない。そして、その隣にはいつもシカマルが居てくれるのがいい。

 楽しい事ばかりの毎日ではないけれど。

 

 幸せを探求する気持ちは忘れたくないから、笑い合えるような毎日にしたいから。

 いつも、もっと、求めて居たい。がむしゃらに。

 

「シカ…も、限界っ…ンン…あっ」

 ぐいっと中を犯すシカマルの熱に侵されながら、ナルトは自分の中に放たれた熱に身を預けた。ぎゅっと抱きしめられて、汗が交り合う。熱い肌を冷やすその汗にナルトはふっと目を閉じた。

「やっぱり、シカマルの事、今も明日もずっと好きだってばよ」

 掠れた声にシカマルはふっと笑う。

「いつも迷惑かけて、ゴメンだってばよ。でも、これからもよろしくだってば…」

 可愛い事を言う恋人を抱きしめたシカマルは、ナルトの中でむくりと熱を取り戻したモノでナルトの言葉に返事をする。

「足りねえな、ナルト」

「……シカマル、えっち…」

「お前も、同罪」

「ん…」

 素直に頷いたナルトにキスをしながら、更けて行く夜に二人で解ける事に決めた。

 これからも続いて行くこの道を共に歩ける存在になりたいと心から願いながら。

 

 声にならない思いを穿つ。

 お互いに感じている事はたった一つ。互いに支え合える関係でいたいと言う事。

 一人きりで得られない相乗効果が二人の関係を深めて行くと分かったから。

 全てのことが、未来への布石となる、だから、求めることは止めない。

「シカマル…好き……」

 切ない告白を耳にしたシカマルは、ナルトに密着しながら彼の悦い場所を刺激する。油断したら持って行かれそうな意識の中で、シカマルもナルトに心からの告白を送った。

 

 ―――――― 心から愛して居ると。

 

 

 

 

  

 

 

 

色々書きたい事があり…

とか言いつつ、すごい放置してしまっていた話です(反省!)

ナルトとシカマルの事も書きたくて、我愛羅とナルトも書きたくて、

ヒナタの赤ちゃん(玉の話?)も書きたくて。

もう、詰め込みすぎ〜ってくらい詰め込みました。

最後は、ラブバカシカナルで!(^^

すごく迷ったんですが、あえて赤文字指定はしません。

続きを待って居てくれた優しい皆様に心からの感謝を!