語学留学 英会話 名古屋

 

 

 

Innocent love

 

 

「俺、先生のこと好きなんすよね」

 とても自然に言われて、ナルトは手にしていたカップを落としそうになる。そして、じっと自分の事を好きだと言った生徒を見つめた。

「あ、センセー…顔、赤いっすよ?」

 ふっと鼻で笑われて、ナルトはぐぐっと唇を噛む。

「ば…っ!お前、大人をからかうなっつうの〜!」

「別に、生徒が先生の事が好きで問題あるんですか〜ぁ?」

 間延びした声で返されて、ナルトははっと我に返る。確かにその通りだ。生徒に好かれる教師!なんて理想だろう。妙に照れてしまったのは、そんな事をいきなり口にされたからだと頭の中で整理する。生徒との年齢が近い所為もあるのか、生徒には嫌われていないとは思っている。…と言うか、いつもからかわれたりして恰好の遊び道具になっているような気もするだが……それは置いておいても、ナルト自身なんとか教師の仕事を上手くやっているとまで思っているのだ。

「問題ない!ないない!!へへ〜…オレってばいい先生してるってことだよな!な?」

 新任教師として木の葉学園に就任して早七ヶ月…。多大に凹む事の多い毎日のようだった気がするが、それなりに生徒とのコミュニケーションが取れている事に顔が緩んだ。渦巻ナルトは上機嫌になりながら、コーヒーの入ったマグカップを窓際で座っている生徒・奈良シカマルに渡した。

「サンキュ!なんか、教師やってて良かったって思う瞬間だってばよ」

 シカマルは屈託なく笑う六つ年上の教師の笑顔を見つめて口元に笑みを乗せた。親からの遺伝であるという金色の髪と青い瞳。高校生である自分よりも少し背が低くて、言わせてもらえば童顔であると思う。女子からはいつもからかわれて、教師と生徒という関係よりまるで友達に近い様な関係。そんな事に対してコンプレックスを持っていた事は十分に知っている。もちろん新任のペーペーに担任クラスなんて持たせてもらえるはずもない。だが、運がいいのか悪いのかこの教師はシカマルのクラスの副担任として自分の前に姿を現したのだ。

「先生はドジだし、なんか抜けてるし、今時珍しいくれえの熱血だし…すげえ笑えるけど」

「褒めてんのかけなしてんのか、どっちだってばよ!」

 ナルトはぷうっと頬を膨らませた。

「ほら、こーゆうとことかめちゃ子供っぽくって、俺より年上とか思えねし」

 シカマルはクククッと笑う。それにナルトの顔がしかめっ面に変わった事は言うまでもない。

「でも、そうゆうとこが可愛いってか。好きなんすよね、俺は」

 窓から差し込む西日。逆光でもシカマルがにやりと笑っている様が良く分かる。

「かかかか…可愛いっとかっ…年上を馬鹿にすんなって…ば」

 男臭い笑みを浮かべるシカマルに胸の鼓動が一瞬だけトクリと鳴った。からかわれているのだ。いつみたいに。少し狼狽したナルトの手首をシカマルに掴まれる。

「あ、センセ。紅茶、零れそうっすよ?」

「え?」

 それはマグカップを持っている方の手をシカマルに掴まれたからだ。

「ああ、そうだな…」

 ナルトのカップを奪い取ったシカマルは自分のカップの隣に置く。そして、にっこりと笑った。

「先生は良い先生だぜ?けど、俺が先生を好きって言った意味は、めちゃくちゃ邪なんすけどね?」

 ナルトは眉を潜める。ヨコシマ…横縞…いや、違う。邪…?反芻させる言葉の意味。頭の中の国語辞典を開いてみた。単に意味を考えると、正しくない事、不正、心がねじ曲がって正しくない様。

「あれ、意味分かんねえや…」

 と言うか、考えたくない。現国の教師と言うのに、何と言う体たらくだ。会話がかみ合わないのは、頭に浮かんだ何かをナルトが否定したいからに違いない。

「分かんないふりしてもいいですけどね〜…でも」

 ナルトはドキリとして顔を上げる。どうしてこんなに近くにシカマルの顔があるのだろう。どうしてこんなに近くから声が聞こえてくるのだろう。ぼうっとシカマルを見つめてしまって、それは自分の手を引かれたからだと気が付いた。いつもなら少し見上げる筈のシカマルの顔が真正面にあり、それはとても間近で。それは、彼が窓際に腰かけているからだという事に頷いてしまう。

「俺は謝りませんけどね。ヨコシマなこと」

「は?シカマ…」

 名前を呼ぼうとした唇に触れる温かいもの。それがシカマルの唇だと気が付くまでに数秒を要した。ナルトはぎゅと手の平を握り締める。拳が震えるのは、素直に怒りを感じたからだ。

「ふざけん…っ、んんっ?」

 そして、唇が重なったまま口を開けたナルトの咥内に容易くシカマルの舌が侵入する。

「んんん〜〜〜〜〜っ!!!」

 離れたいのにそれが出来ないのは、後頭部を固定されてしまっているから。抵抗もしたいのに、がっちりと掴まれた手首と固定された後頭部の力だけで完全に動きを封じられていた。

「ン…っ」

 息をつかせる暇も与えないシカマルの慣れた動作に、初心者マーク丸出しのナルトはひどく動揺するしかなかった。

 

 

 ナルトは呆然として、只一人暗くなった部屋の中に居た。

 視界に入ったのは窓際に置かれた二つのマグカップ。いつものように、準備室(一応、自分にあてがわれた部屋)にやって来たシカマルは、言いたい事を言い、やりたい事をやった後…満足そうに帰ってしまった。思わず座り込んでしまったナルトを一人残して。

 ぐわんぐわんと頭の中に鳴り響く音。

 自分は、高校教師…聖職者と言う立場で自分の生徒に手を出してしまった事になるのだろうか。じいっと床のタイルを見つめながら、それは違うと首を振る。

「…手ぇ出してきたのは、めちゃくちゃアッチだってばよ?」

 いきなり告白されて、いきなりキスされて。それも触れるだけなんて可愛いものではないベロチューだ。濃厚に絡められた熱い感触が蘇って背筋にうすら寒いモノが走る。

「いや、待てよ…」

 世間ではどうだろう。“いたいけな高校生”を誑かした“変態教師”だと後指を差されてもしょうがないのではないだろうか?自分は成人していてそれも社会人で。シカマルは未成年で、高校生で。

「オレの人生は二十二年で終わりなのか…?」

 一生懸命、本当に血のにじむ様な思いをして折角「教師」になれたと言うのに、その職も奪われ社会的地位も失ってしまう事になるなんて。

「ふ、ふざけんなよ。バカヤロー!」

 人がどんな思いで大学を卒業し、教員免許まで取ったと思っているのだ。いくら可愛い生徒だとしても、それを奪う権利は彼にはないはずだ。悔しくて、その悔しさが胸にこみ上げる。胸に込み上げているはずの悔しさが、ぽろりと頬に零れた。ごしごしとそれを拭う。何度拭っても拭っても、止まらない涙。袖がぐっしょりと濡れた頃に、暗くなった部屋にパチリと電気が灯る。

 はっと顔を上げると、そこには首を傾げた海野イルカが首を傾げていた。

「お〜い、ナルト。経費節減はいいけど、暗くなったら電気つけてもいいんだぞ?」

 敬愛する教師で、今は同僚となったイルカの優しい笑顔を見たナルトはぱっと顔を背ける。

「ナルト…?」

 様子の可笑しいナルトにイルカが思わず躊躇ったような声を出す。

「お前、なんかあったのか?…もしかして、泣いて―――― 」

「転んで、弁慶の泣き所ぶつけたんだってばよ。もう、情けないとこ見られて最低だってば」

 むすりと応えるナルトにイルカはほっとしたような笑みを見せた。

「そそっかしい奴だなぁ、お前は。そうゆう所は、高校生の時とちっとも変らない」

「オレはもう先生の生徒じゃなくって、同じ教師だって言ってんのに…なんで子供扱いするんだよ」

 突っかかって来る様子は初めて出会った頃を思い出させる。彼が満面の笑顔で合格通知を見せに来た事をふっと思い出してしまった。

「全く…口だけは一人前なんだから。…それより、今日は一楽にでも行かないか?」

 ナルトはすんっと鼻をすする。

「先生もイイ年なんだから、教え子とラーメン食いに行くより早く嫁さん貰った方がいいってばよ〜」

「痛いとこついて来るなぁ……」

 イルカがはははっと笑う。芯が強くて情も厚い彼は、男女問わずに生徒から好かれている。それは、ナルトが在学中からずっと同じことだった。柔和そうな笑みの向こうには曲がらない信念を持ち、その中に温かさが溢れている。そんなイルカに出会って、ナルトも同じく教師になりたいと思ったのだ。イルカが誰からも必要とされる模範的な教師だからではない。その存在に自分が救われたからだ。だから、ナルトも誰かの為になる仕事がしたかった。仕事などと割り切ってしまえるような職種でない事は十分に承知の上でだ。

「悪りぃ…先生。オレ、ちょっとまだ仕事残っててさ」

「なんだ?明日の授業か?」

「うん、マ…そんなとこだってばよ。だから、一楽はまたにしようってばよ」

 珍しく落ち込んでいるナルトの様子を心配して思わず一楽に誘ってしまった…というだけの理由しかないイルカは、それ以上ナルトに何も言えない。

「そっか、残念だけど一人一楽を楽しんでくるさ」

 イルカはにかっと笑うナルトにホッと息をついて、静かに扉を閉めた。遠ざかる足音を耳にしたナルトは人知れず溜息をつく。

「ゴメン、…先生」

 自分を心配してくれた恩師に心の中で頭を下げる。だけれど、心の中に渦巻く灰色かかった感情を落ち付かせるには時間が必要なのだ。

 苦々しく窓際に並んだマグカップを睨みつけたナルトは眉を潜める。シカマルは新任教師として右往左往するナルトを密かにフォローしてくれるような生徒だった。恩着せがましくないさり気ない行動は高校生と言うには少し大人びていた。イルカからもの凄くIQが高く将来も有望な生徒だと知らされた時、なんとなく頷いてしまったほどだ。決してクラスの中心になって動く派手なタイプではないが、どこかで人をまとめたり率いる能力に優れている。

 だからだろうか。いきなり告白され唇を奪われた行為が、ひどく裏切りに感じてしまう。信じていたものが足元からガラガラ崩れて行く様な感覚。

「いや、先生のオレがシカマルを信じなくてどうすんだ!あいつは迷ってんだ…」

 思春期特有のなにかだろうと勝手に決め付けた。それとも、彼なりのブラックジョーク?

「違う違う!」

 所詮は男同士ではないか。ナルトにとってはファーストキスなのだが、それはカウントするのを止めにする事に決めた。

「からかわれたんだ!あいつ、冗談とか悪戯とかまだやめられねえコドモなんだし!」

 高校二年生を子供と言っていいのかどうかわからないが、とりあえず自分の中で勝手に結論付ける。

「オレはぜってーに教師をやめねえぞっ!」

 学校側にこんな不祥事がばれたら首を切られるのはきっと自分だ。理由は簡単。自分は大人で、彼が子供だから。

「オレ、ファイト!」

 ナルトはぎゅっと拳を握りしめると、忌々しいマグカップを小さな流しに置いた。中身が少しも減っていないマグカップ。それを見て少しだけ悲しくなってしまった事は、胸に仕舞う事に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

前に、SSで現代版シカナル(高校生同士)を書いたのが運のつき?

すっごい、書きたくなったのですよ!

生徒×教師() ちょっと昔を思い出して…

RUIの中では教師が生徒に手を出す事は考えられないので、もちろんシカマルが年下っすよ。

ぴちぴちの高校生ですよ。思春期真っ盛りですよ!ってか、年下攻め万歳体質なので(^^

 

で、調子こいてたら続いてしまった!!!!ヤバイ…

こんな話しを誰か楽しみにしてくれるかは蚊帳の外で。自分の楽しみ(趣味?)を優先してしまった。