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A story of the first love 18

 

 

 空気が痛い…とシカマルは感じた。恐ろしい者を見るかのように震えたナルトが腕の中で縮こまっているのを感じる。放電しているかのようなミナトの怒りを肌で感じる事が出来るのだ。

やはり例えるならば、ぴりぴりと痛い。今まで彼に畏怖の念を感じた事はなかった。だが、目の前の彼はシカマルの知っているミナトとは明らかに違うと言い切れる。

柔和な笑みを称えたミナトが頭の中に過った。

そんな彼をここまで怒らせた理由が現状にあるのだろう。

 ミナトの手がすっと上がる。するりとどこからともなく現れた稲妻を纏う剣。空気までも切り裂く様なその姿にシカマルの視線が釘付けになる。

「…四代、目?」

 口を開いてミナトを呼ぶが、答えてくれる気配もない。冷たい青い瞳がシカマルとナルトに向けられている。シカマルは咄嗟に腕の中にいるナルトを背中に庇った。振り下ろされた刃先がガチンと鈍い音をたてて、顔の前で止まる。直接剣に切り裂かれなかったと言うだけで、それから滲み出ている炎の様なものがシカマルの頬に無数の傷を作った。

「馬鹿者、やめんかっ!」

 耳に届いた罵声が知った人物である事にシカマルはほっとする。背中で感じた気配でナルトが腰を抜かしてしまった事が分かった。実の息子であるナルトですら、いつもと違う父親を肌で感じ取っているのだろう。

「自来也…さま?」

 シカマルとミナトの間に入った自来也はミナトの剣をぐっと杖の様なもので押し返した。それでミナトの怒りが解ける訳もない。

「邪魔しないでください…先生」

 振り絞ったような声は悔しさに震えていた。

「やめろと言う声が聞こえん訳ではないな?ミナト…」

 自来也の声はミナトの行動を諫めているように聞こえる。

「俺にだって譲れない事はあります、事…息子に関しては」

「だから、止めろと言っておるんだがな。―――― シカマル、下がれ」

 自来也の大きな背中を見たシカマルはごくりと唾を飲み込んだ。自来也の声は聞こえているのだが、動く事ができない。

「シカマル、聞こえておるなら…早く下がれ」

「…は、い…」

 数分の間に自分の喉が渇いている事に初めて気が付く。それほどにミナトの気迫は凄まじいものであるのだ。

「剣を下ろす気がないなら、わしと戦うと言う事になるが…?ミナト、依存はないか」

「そうなっても……俺は……」

「ミナト、怒りを鎮めろ。ナルトは何も知らんのだ。もちろん、知らずとシカマルと契約を交わしてしまった。それの重要さをナルトに解いていなかったお前にも落ち度はあるだろう?」

 静かな自来也の声に、ミナトの溜息が重なった。

「ミナト…」

 問いかける様な自来也の声にミナトの腕の力がふっと抜かれる。そして、剣から稲妻の炎が消えた。自来也は溜息をつくと、ミナトの肩に手をぽんと置く。

「お前は妖狐の里を預かる長だと言う事を忘れてはならん。それは先代との固い約束を破る事にもなるんだぞ?お前はその怒りで我が子の命を奪うと言うのか?違うであろう……今は、シカマルとナルトの契約は蜜に深まりつつある。シカマルを殺める事は、即ち……ナルトの命を奪う事になるということが分からぬお前ではあるまい」

 諭す自来也にミナトはくっと唇を噛みしめる。

「先生……」

「シカマルとの契約を無理矢理に破ろうとすれば、その反動はナルトに全て返る。お前にはそのナルトを救う力があるだろう……だが、こんな風にシカマルを失ったナルトはもう死んだも同じ事になるんだぞ?誰かを愛するという事は、お前が一番分かっている感情であろう?妻を愛し、子を愛し、里を愛し、一族を守るお前には全てが分かるはずだがのう」

 項垂れたミナトを背に、自来也が振り返った。蒼白した二人の顔を見て苦笑する。

「話が…ある。重要な話だ」

「それは…今、ナルトがここに来た事と関係が?その…契約が、どうとか……」

 シカマルの科白に自来也は頷くのみだった。ミナトの肩にぽんと手を置いた自来也は、シカマルの家に上がる。

 シンとした部屋。シカマルが淹れたお茶が湯気を立てている。襖が開いているので、さあっと爽やかな風が部屋の中に入ってくるだけで、誰もじっと黙っているだけである。

 ミナトの隣には自来也。座卓を挟み、ナルトとシカマルが隣り合って座っている。

「さて…」

 その沈黙を破ったのは自来也だ。だが、重たい空気は変わることがない。

「まずは茶でも飲むか…」

「あ、オレも!」

 自来也に従い湯呑を取ったナルトは、ちらりとミナトを伺った。彼は、心ここにあらずと言ったような表情で、ぼうっとしている。先程とは打って変わった父親の姿にナルトが溜息をつく。口をつけようとした湯呑を座卓に戻すと、もう一度溜息をついた。

「父ちゃん……オレ、すげえ悪いことした?」

 ナルトの声に、ミナトの視線がすっとナルトに移る。その視線を逃げないつもりで真正面から受け止めたナルトは真剣な瞳をミナトに向けた。

「……ナルト」

 ミナトの声は呟く様な小さな言葉。

「オレは、悪いこと……した?」

「おい、ナルト!」

 直球ストレートなナルトの問いにシカマルが横槍を入れる。まずは、相手の話を聞く事が重要だ。その話があると、自来也に言われたのだから。

「いいも悪いも…先程、先生が言われた通りだ。ナルトは何も知らない。知らない事が罪になるのかどうか、悪い事になるのか…俺は判断できない」

 冷静に自分を解析したようなミナトの言葉に、シカマルは膝の上で両手を握りしめた。

「契約とは……」

 自来也が静かに口を開く。

「お前が大蛇丸としたように、自身の判断で行われる。お前は、無知であろうとも奈良シカマルとある契約を交わした」

「意味、わかんねえ…」

「意味はこれから説明するんじゃ!最後まで話を聞け、ナルト」

「…うん」

「名は、何を意味するか分かるか?」

 単純な質問でも、説明しろと言われればよく分からない。ナルトは首を振った。

「名前は、その個人の個をあらわす。お前が、生まれ名を貰う。その時に、この世に波風ナルトと言う存在が初めて認識され生まれた事となるんだ。花、風、光、雨……全てには名が付いて初めて理を得ると言う事だな?」

 難しい話にナルトは眉を潜める。ちっとも自来也の言っている事が分からない。必死になって頭の中で理解しようとしているのだが、それは無駄な努力に終わってしまった。

「ま、難しい話をしてもナルトには分からんか?」

 むっとしたナルトは本当の事に言い返す事も出来ない。

「とりあえずだな…名は自身を道理として説くに当たり……これも難しいか。ひっくるめると、とても大切なものと言う事だ!それは人間でも妖でも変わりなく。だから、容易く自分の名を口にしてはならぬと言われていたはずだが?」

「……それは……」

 ナルトは自分のした事を初めて責められている気分になった。確かに、シカマルには自分の大切な名前にこの気持ちをかけて教えたのだ。

「言霊…という意味は分かるか?」

「言葉には霊的な力がある、と言う事ですよね?」

 シカマルの言葉に頷いた自来也は視線をナルトに移すが、やはり彼は何も理解できていないように見える。難しい顔をしているが、話している内容を承服できていないという表情だ。

「そう。言葉は簡単な呪力となる…一番シンプルな、それでいて厄介な。そして、尤も完結な言霊の呪力とは名に当たる」

「自来也様、名前は…普通に挨拶程度に名乗るものではないのですか?」

 人間であるシカマルにすれば、それは至極当たり前の疑問だ。シカマルは、カカシやサスケの姓を知らない。それだけ、妖の種族にとっては姓名と言うものが重要で在る事は理解できる。だが、名前など誰かの口から知れてしまうものなのではないのだろうか。ナルトの父親だと言う事を考えても、ミナトが波風ミナトである事は容易く想像できた。

「…まぁ、そうかもしれんな。ミナトは四代目と言う名も持つ。彼は、四代目という名に縛られていることにもなる。皆が、ミナトを四代目と呼ぶ事でミナトは四代目なのだからな……この意味が分かるか、シカマルよ」

「あ…」

「え!シカマル、分かるんだってば?」

 簡単だからこそ、厄介な言葉の力。自来也の言いたい事がシカマルには理解出来た。

「それほどに、重要なものだ。個を示す筈の名には、それに縛られ生を繋ぐものがおると言う事を理解せねばならん。それは、奈良の名を預かるシカマル……お前が忘れてはいけない事でもあるのう」

 神に仕える一族だからこそ、忘れてはいけない事。人々の中で薄れゆく信仰心は、あるものを「神」だと認識された言霊によって紡がれた時間の流れなのだから。

「言葉は多種多様の力を秘めておるのだ。名には言霊の呪力が一番込められやすい」

「俺が、ナルトの名前を知った事は……」

「名を知るだけでは、契約を交わした事にはならん。もっと大雑把にいえば、簡単な口約束にすら契約は生じるのだからな」

 だけれど、ナルトの名前を呼んだだけで彼を妖狐の里から人間の里へ呼び寄せてしまったのは確かである。

「シカマル、お前はナルトの名を知る事により……ナルトの生と契約をしたのだ」

「名前を知るだけでは、この契約は効力を発生しない」

 暗いミナトの声が自来也の言葉に続いた。

「ミナト、簡単な事であろう?」

「そうですね」

 ミナトの鋭い視線がシカマルを射抜く。その瞬間、シカマルは息をするのも忘れた。

「君は、ナルトと……交情した。性を交わした。そして、名を知る事によりナルトの生の時間を君と契約した事になる」

 シカマルはさあっと青ざめた。暴力に近い行為でナルトを抱いた。確かに、ミナトの言うようにナルトとの間に性的な関係を持った。それが、合意でもそうでなくても、その事実は変わらないのだろう。

「生の時間の…契約…?」

「わかんねえってばよ!」

 じっと我慢していたナルトが痺れを切らして声を上げる。話が難しくて付いていけない。自分を除いた三人は話が通じているのに、蚊帳の外にいるような感覚は居心地が悪く耐えられなかった。

「ナルトはシカマルと心身共に結ばれたラブラブっつーことだの」

「えー!!すごいってばよっ〜」

「シカマルくん、今君を殺せば…ナルトも死ぬ。もちろん君が死ぬ事で、ナルトとの契約は不履行になるんだけれどもね」

「……四代目」

 それでも、シカマルに向けて刃を向けたミナトの気持ちはどんなものなのだろう。シカマルは申し訳が立たない気持ちで俯く。詳しい契約の内容は分からないが、ミナトの逆鱗に触れた事は間違いないのだ。

「妖と人間では、時間の進み方が違う。君はナルトの影響を受け、人としての時間は長いものとなる……もちろん、不老不死になる訳ではない。妖も不死ではないからね。先生が言われたように、今は契約が施行されて日が浅い。その時が一番、契約の力は強くもあり脆くもある」

 ミナトはふっと笑うと、冷めてしまった茶で喉を潤した。

「それは…」

「シカマルが死ねば、ナルトも死ぬと言うことだ」

 自来也の心身共に近くある、という言葉の意味がようやくシカマルにも理解する事が出来る。

「加えるならば、ナルトの存在をシカマルくん……君が縛っていると言う事にある。だから、名を呼ぶ事で、ナルトを呼ぶ事もできたんだ」

 シカマルが、言葉に呪力を無意識に込めた事でナルトを妖狐の里から呼び寄せてしまったのだと言う事に初めて気がついた。それほどまでに、ナルトの人生を左右する存在に自分があると言う事実にシカマルは緊張が走るのを感じる。

「四代目…」

「君は、どう考える?」

「それは…」

「一過性かもしれない感情でナルトの全てを縛った。君にナルトの人生を背負う責任というものが分かるかい?ナルトにもきっと分かっていない。シカマルくん、君の生を背負った責務と言うものをね」

 シカマルは重い息を吐いた。それから顔を上げて、じっとミナトを見つめる。

「俺は、人を好きになる事を…責務だとは思いません」

 シカマルの言葉に、自来也がくすりと笑った。

「変わらないと?君の気持ちは、ずっと…ナルトに在ると?若い君がなぜ、そう言い切れる?」

「説明できる気持ちでなければ、分かっては貰えないんですか?確かに……四代目や自来也様から見たら、俺もナルトも子供で、一時の感情に流されたように見えるかもしれない。でも、違います。俺はナルトに命を掛けられると言った。それは違える気は毛頭ありません」

「シカマル?」

 不安そうなナルトがそっとシカマルの手を握る。シカマルはそれを握り返して、口元に笑みを乗せた。

「…ナルト」

 ナルトはこくりと頷くと、ミナトににっこりと笑いかける。

「父ちゃん…オレ、恋とかそーゆうの分かんなかったってばよ。でも、シカマルと会って、色々あって…色んな人に迷惑も心配もかけて、人を好きな気持ちがどんなものか…ちょっとだけ分かった気がする。母ちゃんが父ちゃんと居て、すげえ幸せってのもすげえ父ちゃんの事好きって事も分かるってばよ?母ちゃんは同じ秤には乗らねえ気持ちだって言ってたけど……でも、やっぱり、オレはシカマルが好きで……父ちゃんも母ちゃんもエロ仙人も、みんなみんな大好きなんだってば。それを教えてくれたのは、シカマルだと思うから。オレはシカマルをずっと好きでいる」

 一回りも二回りも大きくなったように見える息子にミナトは目を細める。ふと、クシナと出会った頃の自分を思い出し、目の前の若い二人にそれを重ねた。

「俺は帰ります」

「父ちゃん?!」

 立ち上がったミナトにナルトも慌てて腰を上げる。

「詳しくは先生に聞きなさい。これからの事は、二人で決めればいい…もちろん、報告にはちゃんと来るんだよ」

 背中を向けたミナトの優しい声に、ナルトは目頭が熱くなった。まだ、認めてくれたのとは違うのだと思う。父と母を裏切りたくないと思っていた。もしかしたら、結果そうなっているのかもしれない。ナルトは駄々をこねて両親を心配させる段階を踏み越えてしまった事にようやく気が付いた。

「父ちゃん、大好きだってばよ」

 いつもそう言ってミナトに抱きついていたのを思い出す。何事もミナトの了承を得なければ許されることがなかったのに、彼はナルトを認めようとしてくれている。これからの事も、ミナトの意見ではなく二人で決める様にと言ってくれた。

 風と共に消えてしまったミナトを見つめながら、ナルトの頬に涙が零れる。

「父ちゃん…」

 俯いて震えている肩をそっとシカマルは抱き寄せた。まだ思慮の浅い自分たちは、きっとお互いの人生を背負って生きていくのだと…そうしていいのだと、ミナトが言ってくれたような気がしてならない。シカマルはどうするのが、ナルトにとって一番なのかを考えつつ、そっとナルトの金糸に頬を寄せた。

 

 

 

 

  

 

 

 

すごく久し振りの更新!

えっと、言い訳するとですね(^^

おとぎ話で「王子様とお姫様は結ばれました」のその後にあたる話になるのです…

うわ〜すごい長い言い訳!()

難関であるミナパパの許しを無理矢理得たような二人は…きっと幸せに暮らすのです!!

こんなんで…スミマセン。まだ終わってないしorz