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A story of the first love

 

 

 水晶玉の中に映る、「外」の世界。わくわくしながらそれを覗きこむ。

そんな自分を周りの者は、皆が口を揃えて変わり者だと言う。

 「外」にはなにもいい事がない。

 今のこの世界が、史上の幸福なのだと…耳にタコが出来るくらい小さな頃から言われてきた。

 

 でも、少年は思うのだ。自分の知らない道の世界にこそ、楽しい事がたくさんあるのではないかと。

 

 父親は困ったように笑って、母親は驚いたように目を丸くし、それから優しく笑ってくれる。

 

「だって、父ちゃんだって母ちゃんを外の世界で見つけたんだってばよ?」

 誰もが反対するのを押し切って、母親と結婚した父親。そんな父親の事を偉大だと思っている。それを口にすると、いつも父親は困った顔をするのだ。

「オレは男なんだから、いっぱい冒険したいんだって……!」

 だけれど、同じ青い瞳を悲しみの色に染めて父親は言うのだ。

「勝手な事は許さないよ? ――――― ナルト…」

 いつも自分を慈しむ目を向けてくれる優しい両親。小さな頃からこの世界に住んでいるのだから、ここがどんなに素晴らしくいいところなのかも知っている。

 でも、ナルトはいつも疑問を抱えていた。どうして自分はダメで、父親はいいのだろう。それに、この里にすむ者の中には「外」の世界に旅立つ者も居るのだ。(稀にだけれど…)

 知らない世界だから、焦がれるのだろうか?

 知ってしまったら、興味が失せてしまうのだろうか?

 唯一ナルトが出来る事は、水晶玉を通して「外」の世界を見る事だけ。それと、たまにやってくる自来也という仙人(自称)の話を聞く事だけだ。

 そして今日が、自来也がこの里へやってくる日なのである。

 里の結界の近くで、焦る気持ちを抑えきれないナルトがうろうろしながら彼を待った。どんな面白い話を聞かせてくれるのか。どんな珍しい土産を持ってくるのだろう。そんな事を考えていると、楽しい気持ちになれる。それでも待ちくたびれて大きな木の幹に腰かけていると、自分の前に影が出来た。

 ナルトは大きな青い瞳を輝かせて影の主を仰ぎ見る。

「エロ仙人!やっと、来たってばよ〜っ」

 ぴょんぴょん飛び跳ねてから、大きな体躯に抱きついた。ナルトの金色の髪を撫ぜた自来也は、大声で笑った。

「エロ仙人とは…全く、お前は相変わらずだのう。徳の高い仙人を捕まえて言う事ではないぞ?」

「だって、エロいじゃん…間違ってないってばよ」

「お前にはかなわんなぁ。それよりナルト、ようやく人型に変化できるようになったのか」

 ナルトは照れ臭そうに、えへへと笑った。

「まだ完璧じゃないってば。ホラ…」

 ナルトは自分の腰もとにあるふさふさの尻尾を自来也に見せた。

「それと、気ぃ抜くと…」

 ナルトの金髪の間からぴょこんと三角の耳が現れる。ナルトは妖狐である。人間の世界では崇められたり、怖れられたりする類の種族であった。父親は伝統ある妖狐の長の四代目である。その一人息子は自来也から見ても、過保護過ぎる扱いで育てられてきた。愛しい妻から生まれた目に入れても痛くない息子を四代目は溺愛している。

「うむ…成人の儀式はもう済んだのか?」

 ナルトはむっと頬を膨らませる。

「まだだってばよ。父ちゃんは、ちゃんと変化できるまで里から出ちゃいけねぇって言うんだってば…」

「確かに、四代目の言う事も一理ある。そんな姿でこの里を出れば、人外のお前は人間から酷い扱いをうけるだろう。命に関わる一大事だからのう…四代目はただお前の事を心配なんだ」

 里の中心には立派な社が建てられていた。そこはナルトが生まれ育った場所であり、慣れ親しんだ集居だ。深紅色で統一された立派な屋敷にはいつくのも部屋があり、毎日の様に多くの来客があった。同じ妖狐の種族や、違う妖異であったり様々だった。ナルトはよく分からないのだが、父親は地位の高い妖狐であるらしい。

「でも、エロ仙人からもらったこれで、いっつも里の様子を見てるんだってばよ!」

 着物の袖から水晶玉を取り出し、ナルトは太陽と同じような笑顔を自来也に向ける。

「ナルト…外の世界に憧れるのもいいが。妖のお前には住みにくい世界であることは確かだ。迂闊に里に出る事は―――――」

「わかってるってば!父ちゃんにも口を酸っぱくして言われてる。だから、早く完璧に変化できるようになって、絶〜対に外へ遊びにいくんだってばよ〜」

 自来也は子供っぽいナルトを見てくすりと笑った。人間の母親から生まれたナルトは、妖の力が強い方ではなかった。彼の父親がいくら歴代の長の中での優れた力を持つ妖狐であろうとも、半分は人間の血が流れている。それに、ナルトが生まれた姿が人型だった事も、父親の庇護欲をかきたてた原因かもしれない。その事実は、将来妖狐の里を継ぐ跡取りとしては、親族の期待を大きく裏切るものだったと言えた。元々、一族の者は妖狐の形でこの世に生まれ、その力を使い人型に変化するのだ。それが、ナルトは最初から人間の姿で生まれて来てしまったのである。里長である父親は、悩んだ挙句に先祖から伝わる九尾の妖狐の力をナルトの中に封印した。その力により、ナルトは妖の大きな力を手に入れる事になるが、もちろんそんな事は当の本人も知らない。今では九尾の力により人型に成る事も抑制されてしまっているのだろう。より、妖狐に近い形を象ろうと、妖の力が働いているのだろうと自来也は考えていた。ナルトの年と能力から考えても、変化の術くらいは簡単に操れてもいいはずなのだ。

「本来、成人の儀式を済ませなければ、好きに外の世界と行き来する事を許されん。じゃが、もうお前も十六だ。わしから四代目に意見してやってもよいがのう…」

「え?意見って?何してくれるんだってばよ?」

 期待を含んだ青い瞳を向けられて、自来也は苦笑する。

「そうだのう。どうするか…」

「ハッキリしないってば!」

「まずは四代目に挨拶だのう…」

 その答えにナルトの眉が下がる。その表情は子供の頃から変わらないものだった。確かに幼く見える子を、害するものから守りたい親の気持ちも分からないではない。だが、それでは納得しないのがこのナルトなのだ。出て行くなと言うから、余計に人間の世界に憧れを抱いているのだ。人間の世界はいい事だけではない。それを分からせる為にも、一度は冒険させた方がいいというのが自来也の意見だった。

 

 

 

 

「まだナルトには早すぎます」

 にこやかな笑みを湛えたナルトの父、そして里長のミナトは断固として自来也の考えを否定した。

「お前…ちと考えると言う時間はないのか…」

「先生!いいですか?ナルくんはまだ変化もまともに出来ないんですよ?もし、狐の姿を人間に見られたらどうします?ただの狐ではない。妖狐の姿を見た人間は、必ずナルトを殺します」

 殺す、という単語にナルトがビクリと身体を震わせる。

「父ちゃん…ほんとに殺されちゃうんだってば?」

 怖々としたナルトの声にもミナトの笑顔は崩れない。

「そうだよ〜。人間はすっごく怖いんだ。ナルくんなんて、このクナイでぐっさり。それで、食べられちゃうよ?ナルくんみたいにきれいな金色の毛は皮ごと剥がれちゃう。きっとその青い目玉はくりぬかれて……」

 血なまぐさいことをけろりと言ってのけるミナトの言葉に自来也が咳払いをした。ミナトはきらりと光るクナイの切先をしまうと、ふうと息を吐く。

「……確かに、ナルトも十六になった事だし成人の儀式を済ませることは俺も考えてますよ。一族の習わしでもありますからね」

 ミナトの言葉にナルトの瞳がきらきらと光る。

「父ちゃん!ホントだってば?」

「ん?……ああ、まあね」

「やったー!父ちゃんサンキュだってばよ〜!!」

 思わずミナトに抱きついたナルトの姿に、厳しい父親の顔が笑みを浮かべる。とことん息子を溺愛しているミナトは、ただ単にナルトを自分の手元に置いておきたいだけなのだ。ナルトのお願いには基本的には笑顔で頷いてしまう節がある。だが、人間の里へ降りる事だけは許さなかっただけの事。

 ナルトが喜んで部屋を出て行くと、ミナトは人知れず溜息をついた。

「ナルトが外に世界に興味を抱くのは、先生の“お土産”が原因なんですからね…」

 じっとりと自来也を睨みつける。土産とは、好きな場所が覗ける水晶玉の事だ。

「何を言っておる。あれはチャクラの練れんものには使いこなせない代物だ。ナルトは上手にチャクラを使っておる。ミナト、お前とて人間だったクシナを見染めたのはナルトと同じくらいの年ではなかったか?」

「………まぁ、いいですよ。あの子も人間の本当の姿を知ったら、二度と人間の里へ出て行きたいとは言わなくなるでしょうからね。人間は善人ばかりではありません」

 どこまでも親馬鹿を貫くミナトに自来也も溜息をつくしかない。

「悪人ばかりでもなかろうが。頑固者め…先代そっくりだ。それに比べ、ナルトはクシナに似て天真爛漫に育って良かったのう…」

 もちろん自来也の厭味なのだが、ミナトは涼しい顔でそれを受け止める。なんと言われようが、可愛い息子を手放す気なんて毛頭ない。

「先生…いくら先生でもナルトを誑かしたら、許しませんからね」

「わしは本当の事しかナルトに教えておらんからのう…。それに、ナルトの人好きはお前譲りではないのか?ミナト」

「俺はクシナ以外の人間に興味なんてありませんからね……ん?」

 そう言ったミナトは一つの疑問が頭の中に浮かび上がる。ナルトが水晶玉で人間の世界を見ているのは知っている。毎日、飽きもせずに。反対に言えば、飽きない理由があるからではないだろうか。今まで別段と気にした事がなかったが、ナルトの願いは執着に近いものがあるように感じられてならない。

「ナルくんを誑かしてる存在があるのかもしれないなぁ…」

 ミナトの考えが曲解でなかったと気が付いた時には、ナルトは大きな決断をした後だったのだが、それをミナトが知るのは先の話になる。

 厳しい目つきになり考え込むミナトを尻目に、自来也は早々と腰を上げた。

 

 

 

 ナルトの成人の儀式には、いくつかの制約が設けられた。儀式を済ませた後は、好きに人間の世界とこの妖の世界を行き来する事を許されるが、それは必ずお供を付けなければいけないと言う事。そして、儀式として人間の里へ降りる時間も決められていた。

「なんか〜…納得いかねぇってば!」

 ナルトの長い金色の髪を母親のクシナが櫛でとく。

「文句言わないの。せっかく、お父さんの計らいなんだから…」

 髪を伸ばしているのは、思いっきりミナトの趣味だ。クシナの長く美しい髪の毛をとても気に入っているからか、ナルトにも半ば強制でそれを強いていた。もちろん、ナルトは髪が長かろうが短かろうが何の拘りもない。

「だって…だって〜!ぜってえ、可笑しいってばよ?母ちゃんもそう思ってるくせに……」

 ナルトはむうっと膨れた。ナルトが着せられているのは女物の着物である。もともと長い髪と相成り、ちょっと見た所…というか多分に少女のように見える。

「きっと、ナルトが無茶しないようにそんな恰好にしたんじゃないの?」

「無茶?」

「そう。はしゃぎ回ってついつい尻尾がってこともあるじゃない。女物の着物じゃ、少しは淑やかに歩くもんでしょ」

「……ってか、オレが儀式に行く時間知ってるってば?夜中だってばよ!そんな時間に人間が出歩いてるはずもねえってばよ」

「そうねぇ…確かに」

 くすりと笑ったクシナは、ナルトの髪をきれいに結う。それから、大事にしまってある内掛けをナルトに着せた。歩きやすいように丈を短くして帯で留めると満足そうにぽんと息子の背を叩く。

「さ、出来たわよ。ナルト!頑張って儀式をすませて、ちゃんと帰ってくるのよ?」

 襦袢は雪のように白く、内掛けはそれに反して緋色であった。それには、いくつかの渦巻模様が金糸で織り込まれている。

「母ちゃん…これって……」

「そうよ。初めてミナトと会った時、これを着てたの。ここへ嫁いでくる時も、…ね?」

「そんな大事なもん…いい、の?」

「ミナトと気持ちは一緒。こっそり、後ろを付けて行きたい気分。でも、そんな事は出来ないでしょう?」

 複雑な思いで笑みを浮かべるクシナは、ぎゅっとナルトを抱き寄せた。

「しょうがないじゃない。私にとって、ナルトはずっと子供のままなんだもの」

 けれど、子供は日々成長していくものだ。冒険心が多大な所はきっと母親譲り。外の世界を見てみたいと言う気持ちも分からない訳ではない。それに、ミナトが抱いている危惧は親としては当然な気持ちなのだ。

 後ろ髪をひかれる思いで、手を振るナルトを見つめる。そんなクシナの肩をミナトが抱き寄せた。

「大丈夫だよ、クシナ」

「う〜ん…でもやっぱり心配」

「あはは。俺が何にもしないで、手を拱いていたとでも思ってる?」

 悪戯を告げるような声にクシナが首を傾げる。そんな仕草はナルトを思わせた。やはり、自分は愛しい妻と息子を手放せそうにはない。一族の習わしである成人の儀には、一族の者は付いていく事は出来ないと決まっている。

「きっと、ナルトが知ったら怒るわね」

 勘のいい彼女はすぐにミナトの企みに気が付く。

「ん?別に構わないさ、それくらい」

 そっと、共の者をナルトに付けた。もちろん、一族以外の者を。これで、習わしを破った事にもならないし、何かナルトに危険が及ぼうとも回避する事が出来る。それに、きっと「何か」が起こったとしたら、あのナルトも二度と人間の世界に行きたいとは言いださないだろう。

「クシナ、もう寝る?」

「そうねぇ…ナルトが帰って来るまでそわそわしてるミナトと一緒に居てあげてもいいわよ?」

 二人は顔を見合わせて笑う。

 もちろん、この時には大事な二人の愛息に「何か」が起こる事は分かるはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ず〜っと、書いてたシカナルで、パロで、パラレルな話です。

RUIも悩みに悩んで書いているので、途中で設定が変わるとか……

平気であるかもです(><)

簡単なネタばれは「人魚姫」のパロってこと…

シカマル出てませんが(まだ)シカナルなのですよ〜

続きものになっちゃいますが、最後までお付き合いください。

ミナトとクシナがラブラブなのは、お決まりです。