キャッシング

 

 

 

END ROLL 8

 

 

「お前、シカマルと真剣に付き合ってんの?」

 覗き込んできたキバの瞳が至極真面目である。だからナルトも、誤魔化す事もできずこくりと頷いてしまう。何度もこくこくと頷くナルトに、キバは盛大な溜息をついて座り込んだ。

「マジかよっ〜〜〜っ!」

 大袈裟に……いや、当たり前の反応かもしれないが……落ち込まれて、ナルトはしゅんとしてしまう。

「キバ。オレ、めちゃ真剣だってばよ」

 眉間にシワを寄せて顔を上げたキバは、ふうっと息をついた。

「……タチ悪りぃよな〜。その“真剣”っての」

「へ?それって、その…真剣じゃない方がいいって事なのかよ」

「まあな〜」

 へへっと笑ったキバがナルトの隣に腰を下ろす。空を見上げる横顔をナルトがちらりと盗み見た。その瞬間にキバも自分の方に視線を向けて、嫌なタイミングで目が合ってしまう。

「興味本位とか、はずみとか、遊びとか……そうゆうのの方が楽じゃねえ?」

 ナルトはムッと口をへの字に歪める。そんなつもりは毛頭ない。

「それって…気持ち悪いとか、そんな感じ?」

「いや。正直、よく分かんねえ。実際問題さ、実感がないのかもしれねえしな。お前が男と付き合ってるってよりシカマルと付き合ってるって言うのが現実で。ま、シカマルは男だから……悪りぃ、上手く言えねえわ」

「うん」

 混乱させているのだろうか。二人の付き合いを隠すつもりのないシカマル。ナルトは半分だけはそれに同意しているけれど、必要以上にひけらかす事ではないと思って居る。

「なんか、ごめんってばよ。でもさ……好きになっちまったし」

「ばーか……頼むから、力入れて本気だとか言うな。心ん中に仕舞っといてくれよ。俺は知らねえふりして目瞑っときたい感じ」

 むっと唇を尖らせたキバにナルトがくすりと笑った。

「な、キバ」

「なんだよ?」

「オレ達って、まだ…友達?」

「はああっ?」

 不満そうに声を上げたキバが、キツイ視線をナルトに向ける。顔だけをナルトの方へ向けて。そして、自分を見ているナルトの視線も真剣な事に気が付いた。

「お前はどうなんだよ。俺とはダチやめてえの?」

「……そんな事、言ってないけど…」

「同じような事言われた気分だわ。すげー気分悪い」

 別にナルトが男と付き合ったからといってキバに何か迷惑がかかる事もないし、所詮ナルト自身の問題なのだ。外野が口を出す事でもないし、干渉したからといって何も変わらないだろう。ナルトが好きだと言っているのはシカマルに対してだ。もちろん、今までの付き合いで彼に迫られた事もない。キバ自身がナルトに告られでもして気まずくなっている訳でもないのだ。

「お前が俺とは付き合いたくねえとか言うなら――――――」

「そんなんじゃないっ!」

 いきなり立ち上がったナルトに驚いてキバは何を言おうとしていたのか忘れてしまう。

「キバとはずっと友達でいたいって、思ってて………でも、シカマルとのことで嫌な気持ちにさせたんなら、それも無理なのかなとか……」

「…………んだよ」

 俯いて何かを振り絞るみたいに言葉を紡ぐナルトをじっと見つめる。俯いていても、座っているキバからはナルトの顔がよく見える。辛そうに眉を顰めて地面を睨みつけて、瞬きもしないで話す彼の唇が震えているように感じた。実際、その声は少し震えていたのかもしれない。

「あのさ、ナルト」

 キバはふうっと息を吐いた。

「友達になろうとかやめようとか、期間決めてやるもんじゃねえだろ?それに、お前がいきなりホモになったからってダチ止める程、俺小さい奴じゃねえつもり。お前の事はダチとして気に入ってるし好きだぜ?いつもみたいに、軽口叩いてバカみたいに笑って……そんでいいじゃん」

 ナルトがシカマルと付き合った事が友達をやめる理由にはならない。キバからすれば、それくらいの事でといった気持ちだ。

「ま、俺の言い方も意地悪かったよな……」

 少しからかうつもりでいたのに、こんなシリアスな展開になってキバの方が驚いている。

 そして、なんとなくだけれど気が付いてしまった。

「って言うか、俺よりお前のが気にしてるんじゃねえの?」

 シカマルとは真剣に付き合っていると口にしたけれど、それは彼にとって覚悟のいる告白だったのかもしれない。さらりと言ってのけたように見えたのだが、それはキバの早とちりに過ぎなかったのだとナルトと話をして確信した。

「……オレ?」

 学校の近くにある公園のベンチの上。キバは踏ん反り帰って空を仰ぐ。

「なんだよ……無意識ってやつ?」

「え…?」

 揺れた瞳が弱々しい光を放つ。顔を上げたナルトの目尻からきらりと雫が零れた…ように見えた。それは一瞬の出来事でキバもしっかりと見た訳でもない。ナルトが俯いていたのは、涙が零れないようにするためなのだろうか?

「お前のが、シカマルと自分が男だってのに拘ってんじゃねーのってコト」

 ナルトは驚いたように目を見開いている。

「わ、わかんねえ……」

 ナルトは、眉を顰めたまま腰を下ろした。

「そうなのかな」

「俺が知るかよ。なんとなく思っただけ」

「そう…見えたって事だよな」

「だから、知らねえって!俺としては気が付いたら、ダチがくっついてたって事にしとくから……お前も拘んなよ」

 ナルトは何か考え込んでいるようで、その言葉に返事はしなかった。ただ、ぼうっと青い空を眺めていた。

 

 

■■

 

 

 本人からすれば慌てているつもりはないが、傍目からは十分にそう見えた。

 ブリーダー業をしている傍ら、トリミングの店も何件が所有している。最近は新しいペットホテルも開店した。その店を後にしつつ、駐車場へ向かう足取りが早くなっている。ちらりと手首の時計で時間を確認して、約束に間に合いそうな事にホッとする。

 駐車場について愛車の鍵を開けようとした所で、自分の車に寄り掛かっている人物を確認した。できれば今日は会いたくなかった友人である。

 彼はキバの姿を確認すると、手にしていた煙草の火を消した。

「よう」

 人の良さそうな笑みを浮かべる長身に無意識に溜息をつく。

「おいおい。いつから俺のスケジュールまで頭に入れるようになったんだ?」

 面倒なフリをするより驚いて見せた方がいいだろう、という本能的直観。自分よりも忙しくしているはずなのに、わざわざ時間を割いてまで会いに来るなんて特別な用件があるとしか思えない。

「なあ、シカマル」

「久しぶりの再会だってのに、迷惑そうだな」

「ンなんじゃねえし」

 くすっと笑うとキバは車の鍵を開ける。

「どこまで?乗せてくぜ」

 シカマルはにやりと笑うと、サンキュと短く返事をした。そして、軽快に助手席へ乗り込んでいく。エンジンをかけたキバはハンドルに両手を乗せながら、ちらりとシカマルを伺った。

「…ンで?本当のとこ、わざわざ俺んとこ来るってことはそれなりの用件があるって事なんだろ?」

「まあな」

 シートをガクンと倒して背を預けた彼は視線だけ器用にキバに向ける。

「お前、俺に上手に隠してるつもりか?」

「何をだよ」

「時間は取ってある。俺も、お前がこれから行こうとしてるとこに連れてってくれよ」

「……は?」

 キバは焦ってないふりをしながら大袈裟に答えた。キバが向かおうとしている場所……一緒に遅めの昼食をとろうとナルトと約束をしているのだ。それを……知っているという事だろうか。

「隠してなんかねえよ。俺は、お喋りじゃねえだけ」

「ふうん」

 シカマルがナルトを探している事はチョウジから話を聞いている。探すのは自由だ。ナルトを見つけてシカマルがコンタクトを取るのも自由。だけれど、今回の事に関して、キバはナルトの味方であろうと決めた。ナルトがもうシカマルと会いたくないというのなら、シカマルの手助けをする必要もない。敢えて、ナルトの情報をキバから伝える義務はないのだ。

「俺は……お前とナルトが付き合うなんて、反対だ」

「それは俺とナルトの問題であって、例えキバでも関係ない」

 関係は、自分とナルトの間に存在しているのであって外野からの口出しは無用だ。求めてもいない。それは彼らが付き合い始めた時から一貫として揺るがないシカマルの姿勢である。

「そうだな、関係はない。……かもしれねえが、俺はナルトのダチだ。シカマルとあいつが出会う前からずっとな。親友として、俺はナルトの気持ちを尊重する。今までは、お前とナルトの問題だから余分な事言おうと思った事ねえよ。でもな、今回に関しちゃ違う。ナルトはお前と別れたいって思ってんだよ」

 キバの言葉を最後まで聞いたシカマルが、ふうっと長い息をついた。

「どうだかな」

「シカマル……」

「確かに俺と付き合って居られないと、ナルトは言った。だが一言も“別れたい”なんて言っちゃいねえし……あいつに選択肢なんてねえんだよ」

 キバはあんぐりと口を開けたまま、自信満々の笑みを見せる友人を凝視する。

「どんだけ自分に都合のいい解釈してんだ?!」

「悪いか?だけど、それが真実。お前があいつに振り回されてんの自覚ねえのか?」

「……――――― ふざけんなよ……振り回してるのは、お前だろ?ずっと、アイツの気持ちも考えねえで、いっつもナルトの事っ――――――― !」

 キバははっと息を飲むように言葉を飲み込む。貫くような鋭い視線がキバに向けられていた。刹那、殺意にも近いようなものを感じて背筋に冷たいものが流れる。

「お前、もうちょっと利口になれよ。今は自分が一番ナルの事理解してるつもりだろうけど……」

 シカマルはにこりと笑う。

「ただの勘違いだったって事に、早く気が付け。あいつを理解できるのは俺しかいない」

 駐車場に降りたシカマルは思いだしたように閉めかけたドアを掴んだ。

「そういや、出産祝い届いた。いつかガキの顔も見に来いよ」

 バタンと閉められたドア。シカマルはさっさと背中を向けて歩いていく。キバは身体中から力が一気に抜けるのを感じた。

 

 

 

 

  

 

 

 

久々にシカマルを書いた!

ENDROLLでの話ですが(^^

これの冒頭を書いてた時、何を書いてたのか覚えてないんだけど。

ちょうどキバとナルトのシーンで。

デジャブな感じで、おんなじような内容なコト書いてんな〜とか

我ながらシュチュエージョンのバリエに欠ける事に凹みました。

 

なんとなく、キバとナル・シカとチョウジでセットにしちゃうから

同じようなシーンが……(という言い訳させてくれ!)

シカさんのかっこよさを追求したいんですが上手くいかない。