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Station 5
「…いいってばよ。別に、聞かなくて も……いいのに」 ナルトはシカマルの肩口に頬を寄せる。 「シカマルの事好きだ…」 初めてキスしたあの日から、なんとなくじゃれ合っていて“そうゆう雰囲気”になった事が何度もある。きっと緊張してしまうナルトを気遣ってシカマルが何もなかったように、その雰囲気を払拭してくれていた。こんなにはっきりと言葉にされたのは初めてだし、口にされた事が嬉しくないはずもない。恥ずかしい気持ちはいっぱいあるけれど、シカマルならいいのだ。 「無理すんなよ…」 「してない」 今は即答。シカマルはくすりと笑う。抱きたいなどと本心をぶつけた時は、たっぷり間を取って返事をしたくせに……なんて卑屈になってしまう。 「強がりってやつ?」 「違うってばよ…」 ナルトはうまく言葉にできないから、シカマルを抱きしめ返す。 「そんなんじゃ…ねえってばよ」 「お前って、嘘つくの下手だよな?」 そっと腕をとくと、無防備なナルトの顔を覗き込んだ。頬が赤いのは名残なのか違うのか。その表情は少しだけ困惑したようなそれだった。自分を受け入れようとしてくれているナルトの気持ちは嬉しいけれど、どこかで無理強いして嫌われたくないという自己防衛的な気持ちもある。 「お前、淡泊だからよ」 「……タンパク?」 「なんか、自分でもシテなさそうだしな」 「………なにが?」 きょとんとしているナルトからは性的なものは感じられない。このやり取りでさえ、何をシカマルが言いたいのかも分かっていない。 「お前が、エロい気持ちになってんのとか想像できねえって事」 「はあ…っ?!」 見開かれた青い瞳。くすりとシカマルが笑う。態とあけすけに言葉にしてみたのだが、ナルトは真っ赤になりながらその瞳は困惑しているように見える。 「…違っ!な…っそんな事……ふつうに、ある……と思う」 どんどんと小さくなる声。 「そっかぁ?」 顎の下をくすぐるように指を滑らせると、ナルトの肩がぴくりと反応した。潤む瞳がとてもきれいだ。 「俺はお前に酷い事しようとしてんのかもな」 「……するの? ひどい、こと」 「するつもりはないけど、結果的にお前がそう感じればそうなるんだろうし」 行為の途中でナルトがやめてくれと言っても、それを尊重してやれる理性が自分の中に残っているとは思えない。 「そんな事思わない」 呟いたその声は小さいけれど、はっきりとした意思を伝えてくれる。 「オレは、シカマルがくれたものを酷いなんて思わない」 ぎゅうっとシカマルに抱きつくと、彼の匂いを吸い込んだ。シカマルといると新しい発見があって、新しい世界を見る事ができて、それでいて幸せだ。 「本当に、後悔しないか?」 何度も聞いてくるシカマルにナルトはくすりと笑みを零す。まるで彼が自分自身に言い聞かせているように聞こえてしまうのだ。随分と大人っぽいシカマルでも、こんな風に焦燥するのだと不思議な気持ちで見つめる。 「シカマルこそ、後悔するかもしれないってばよ?」 ぎゅっとナルトを抱く腕に力がこもる。そんな心配は必要ない。後悔をする理由が一つもないのだ。バカな事を言っていると口にしたいのに、言葉にしてしまうと大切なものが壊れてしまう様な気がして、愛しく感じる自分より細い体躯を抱きしめるしかない。 ナルトが言いにくそうに口を開く。 「ン?」 その声が少し強張っているように感じた。ナルトの顔を見たくて抱きしめた腕を弱める。彼は真っ赤な顔をして、それでいてちょっとだけ困ったような表情をしていた。 「春に…ガッコあがったくらいに」 「どうした?」 何か月も前の話を口にする事が素直に疑問に思える。言い出しにくく今まで口にできなかったのか。それとも今から二人で抱き合うと言う事に関係があることなのだろうか。もじもじしているナルトは躊躇いがちに再び口を開く。 「クラスの何人かで集まってて、その…エッチなビデオ見ようみたいな感じになって。オレは最初からそんなつもりなかったしすげーびっくりしたんだけど、その場の雰囲気で見ない訳にもいかなくなって……」 年頃の男が集まるのだ。そうゆう流れでアダルトビデオを見ることだってあるだろう。シカマルはそんな事は気にしない。自分だって見たことがないと言えば嘘になる。 「そこでさ……やっぱ男だったら反応するじゃん」 「別にお前が女見て勃てたって浮気とか思わねえぜ?」 しれっと答えるシカマルにナルトは焦ったように手を振った。 「違うって!!オレは……なんかああゆうの苦手みたいで、そんな風にならなかったってばよ。反対にちょっと苦しそうでオレのが苦痛になったってか」 シカマルはどう反応していいのか迷ってしまう。ふざけるつもりにもなれなくて曖昧に頷いてみた。それよりも何よりも、やはりナルトは性的な事に関して稚拙なのではないだろうか。 「お前、やっぱ無理してんな」 くしゃりとナルトの前髪を撫ぜる。大きく開かれた青い瞳が驚愕の色に染まっている。シカマルの言いたい事を理解したのかぶんぶんと首を横に振った。 「変な誤解とかしてほしくないんだけど、そん時に……、ぬ、抜き合いしようとか言われて…」 一気に捲し立てるような口調にシカマルは固まってしまう。口調より何よりその内容にだ。 「したのかよ」 そんなはずはないと分かっているのにひどく冷たい声音になってしまった。ナルトはびくりと肩を震わせる。 「お前の触らせたのか?それとも、触ってやったのかよ」 「ちが…ンな事ぜってーしねえもんっ」 伏し目がちになった瞳が濡れている。責めたい訳ではないのに、嫉妬に焼き切れて感情が上手くコントロールできない。 「ふざけた奴を止めてくれたのが、サイなんだってばよ」 シカマルは夕方顔を見たナルトの友人を思い出す。実を言うといけ好かない奴なのだ。にっこりと作り笑いを顔に張り付けて、何を考えているのか分からない。わかりたくもないからいいのだけれど、それがナルトの友人というポジションを陣取っている事が気に食わなかった。その彼との仲良くなったキッカケと言うのが、今ナルトが話してくれた事なのだろう。 「シカマルってサイの事あんま好きじゃねえだろ?」 「今の話聞いてもっと嫌いになった」 「えっ?」 ナルトの柔らかい頬を指の背で撫ぜる。ゆっくりと自分を見たナルトの瞳は少しだけ潤んでいた。 「一番大切な奴が襲われかけてるってのに、それを助けたのが俺じゃなくアイツなんて納得いかねえよ」 「襲われ、って…そんなんじゃなくて」 「俺にしちゃそうゆう事だってことだよ」 拗ねたような口調のシカマルにナルトはふっと笑う。たまにしか見せてくれない年相応の姿が可愛く見えてしまった。きっと言葉にしたら猛反撃にあうだろう。シカマルはいつも自分の事を守りたいと思ってくれている、のを感じるのだ。自分を子供だとか同じ男だとか思ってない訳ではないと思う。ただ、本当にその優しさをさり気無く自分に与えてくれるのだ。ナルトもシカマル相手だと自然と弱いトコや情けない所をさらけ出してしまう。抱きしめられるのが好きだ。全てを抱こうとしてくれる腕が大好きでたまらない。そうされるのが自分の特権であるように、体も心も全てをシカマルに預ける瞬間愛しさが溢れてくる。ナルトはちゅっとシカマルの頬にキスをする。 「ナルト…」 「そんな事あったからさ。サイとの仲を散々からかわれて……だから、オレだって一応知ってるってばよ。シカマルがオレの事抱きたいって意味もちゃんとわかってる」 シカマルの肩に両腕を絡めてそっと瞼を閉じる。すぐに自分でない呼吸を唇に感じる。触れた唇が少しだけ震えたような気がした。どちらからか差し出した舌を絡めた。いつものキスとは少しだけ違う情欲を引き出すみたいにお互いの舌を絡める。
着飾るものは何もひとつもいらない。
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やっと更新できました(笑)
シカとナルが結ばれて(一応/笑)嬉しい限りです。
次回はちょっと時間が飛んでしまうけど冬のお話に戻るかな。
冬から始まって、春夏秋と来たのでもっかい冬に戻ってラスト近しです。
2周年記念ってめちゃ長い記念話でしたな。まだ終わってないし…
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