|
約束の…
『オレは火影になるまで、ぜってー死なねえからよ!』
「あいつ、バカだから…よくそう言ってなぁとか…」 サクラが零れた涙を指で掬う。そして、眠ったような顔にしか見えない幼馴染をじっと見つめた。その肩をいのが抱き寄せる。 「ほんとに馬鹿よね…やっと火影になれたと思ったら…」 「これからって時に……ナルトくん」 部屋に集まった仲間の雰囲気が重たい。それもそのはずだ。意外性ナンバーワン忍者と言われた六代目火影は、風邪をこじらせてあっさりと死んでしまった。 「バカは風邪ひかないんじゃなかったの?」 「ナルトは意外性だけはあったから、関係なかったのかもね」 シカマルは、ナルトの周りに集まる人だかりから少し離れて、冷たくなった恋人を見つめていた。その瞳はまっすぐにナルトの亡骸に向けられている。だが、瞳に映るのは切り取られた写真みたいな映像でしかない。人の命はいつか終りがある。それも、忍という危険職業に就いているのだから、どこに終わりがあるのかなんて保証もないのだ。 口元に笑みを浮かべたシカマルは、溜息をつくとその部屋から早々に退散した。
■■■
ふわりとした感触の後に、身体にかかる重み。背中から懐いて来るナルトに視線を移したシカマルは苦笑しながらすり寄った頬に唇を寄せる。 「なにニヤニヤしてんだよ?」 「生まれた時から、この顔だってばよ〜」 「そっか?なんか今日はニヤけてんぞ?」 「シカマルと二人だから、嬉しいんだってばよ、きっと」 お互い任務があるから、こうやって過ごす時間も少なくなってきている。だけれど、その分一緒に居られる時間は蜜になっているとも言えるだろう。ふふっと笑って、シカマルに抱きつく腕に力を入れたナルトは、シカマルの袂に手を忍び込ませた。指先に当たる布の感覚。 「シカマル、傷の具合…まだよくならねえの?」 前の任務で傷ついた箇所を指先で撫ぜたナルトは心配そうな声を出した。 「いや、結構よくなってんだけどよ。いのが大袈裟ちゅうか…感染炎の事考えて包帯は外すなってうるさいもんでよ」 シカマルとしてはさっさと包帯や消毒液から解放されたいのだが、口うるさい幼馴染の顔を思い浮かべて苦笑する。 「うん、でもいのの言う事も一理あるってばよ?ちっこい傷口からでも黴菌入ったらやべえもん!」 「はいはい。俺のまわりにゃうるさいのばっかだな」 ナルトの腕を取ると、ぐいっとその身体を引き寄せる。 「うるさいのじゃなくて、心配してんだってばっ!オレもいのも!!油断して変な病気になったらどうすんだってばよ。人間なんて、簡単に死んじまうんだってば…」 シカマルは語尾の小さくなるナルトの顔を覗きこむ。そして、首を捻った。 「おい…泣くとこか?」 「シカマルが死ぬかも…とか考えた」 見上げてくる青い瞳が潤んでいる。クククっと笑ったシカマルは、尖らせた唇に自分の唇を寄せる。 「ンな簡単に死ねるかよ」 「わかんねーじゃんっ!」 ふうっと息を吐いたシカマルは、布の袋を取り出してナルトの前に掲げる。 「なんだってば?」 「消毒。…しないと死ぬんだろ?」 ピンク色の消毒液。脱脂綿にそれをとり、傷口をちょんちょんと消毒する。その手際は、はっきり言ってよろしくない。自分よりも怪我をする確立は多い癖に、恐る恐るといった風だった。 「痛くねえの…?」 「目で見えるほど、痛くねえよ。傷口はほとんど塞がってんだ。ちょい染みる程度だな」 ガーゼに塗り薬を付けて、傷口に当てる。簡単にテープで止めた後、包帯を当てた。その作業はナルトに任せるよりも自分でした方が早い。不器用な方だと思うが、人間なんでも慣れである。少し血の滲んだ脱脂綿をまとめると、ごみ箱に放り投げた。 「ホラ、終了」 「うん……」 初めて傷口を見たナルトは少しショックを受けていたようだった。沈んだ顔をしながら、自分の手をじっと見つめている。シカマルは背中からその身体を抱きしめた。 「ナルト…こんなん怪我の内に入んねえだろ?」 「オレ…九尾の力で、小さい傷口はすぐに治っちまうから」 「だから、なんだよ?」 「すげえ痛そうなんだもん……」 シカマルはナルトの耳元でくすりと笑った。心配性なのは誰に似たのか。いちいちこれくらいで凹まれても困る。 「痛くねえつったろ?」 「シカマル…ぜってー死なないでほしいってばよ」 いきなりの事に、シカマルは目を丸くする。 「話の脈絡がねえなぁ…お前は」 「オレ…やだから。シカマルの葬式出んの」 「出なけりゃいいだろうが…」 「オレ、泣くってばよ?」 「ナルト…」 「いっぱい泣いて、涙が枯れるくれえ泣くってばよ?」 寂しがりの怖がり屋であるナルトは、誰かをなくすことに少し敏感な所がある。だからだろうか、大丈夫だと言う言葉を込めて、その身体を抱く腕に力を入れる。 「そりゃ…簡単に死ねねぇな」 できるなら、死んでもナルトの涙を見たくないと思ってしまう。泣かせる原因が自分だなんて、御免被りたい。 「じゃ、お前も簡単に死ぬなよ?」 「シカマルも泣く?」 ナルトの身体をベッドに沈める。耳朶にキスして、その唇を首筋に這わせて、目尻に溜まった透明の雫を指先で掬う。 「わかんねえな…」 考えた事もない。自分を見上げてくるこの瞳を失くす事なんて。でも、きっとナルトよりも狡い自分は騙し騙し生きていけるような気もする。抜けがらになった自分を外側から観察しながら、淡々と生をつないでいくのだと思う。 「そうだなぁ…どっちが先に死んだら、三途の川で待ち合わせでもしようぜ?」 「三途の川?」 「死んだ人間が渡るっつう川の事だよ」 「変な約束だってばよ〜」 くすくす笑うナルトに捕らわれて、まだ白い肌に自分の印を刻みこんで行く。離すつもりがないのは自分なのだと、そう感じながら。何かにせっつかれる思いでナルトの快感を掘り起こす。 「んっ…シカ…」 ナルトの腕がシカマルを抱き寄せて。 今、頭の中を支配する何かに身を任せて。 「あ…」 「愛してんぜ?」 直接的に言葉で言われる事を恥ずかしがるナルトを知ってるから、意地悪のつもりで口にする。最高潮に達するのは、快感ではなくて、言葉に出来ない思いだけなのだから。 ベッドの上で絡みあいながら、お互いの熱を分け合う。空っぽになる思考が浮き沈みの激しい快感に飲み込まれる。 「は…あ……っん、シカ…マ」 声を飲み込む様な口づけで、お互いの全てを奪い合う。そして、快楽を分け合った。
■■■
ぼんやりして座っている肩に、手を乗せる。 「待たせたな?」 シカマルの顔を見たナルトがぱあっと笑顔になった。 「色々考えてたら、あっという間だったってばよ〜」 立ち上がったナルトはぱんぱんと服についた砂埃を払う。 「えっと、あれからすんげえ時間たったんだってば?」 じいっと見つめてくる大好きな瞳の色にシカマルは笑みを浮かべる。この瞳に映る自分だけが、本物だ。 「さあな…何十年かは経ってるだろ」 「へえ…死んじまうと時間の経つのに鈍くなんのかな?」 金色の頭を小突く。 「お前は元々鈍感だろうが!」 「いてえってばっ…」 むうっと膨れる顔を見て、シカマルはなぜか安堵した。 さらさらと水の流れる音が聞こえる。シカマルは顔を上げると、ナルトに手を出した。 「行くか?」 「ん、行くってば」 久々に絡め合う指先に、ささやかな喜びを感じた。ぎゅっと手を握ると、ナルトがはにかんだ様な笑みを見せる。 「ったくよ…火影と有ろう者が、肺炎なんかでポックリいくなよ」 「お小言はノーセンキュだってばよ」 「バカやろ。言いてえことは山ほどあんだよ」 「ふ〜ん……あ!」 にんまりと笑ったナルトは、シカマルの腕を引っ張る。 「なぁ、シカマルってば…オレの葬式で泣いた?」 「泣かねえな」 「なんだよ!泣いてくれてもいいじゃん…」 ぎゅっと抱きついたナルトに、シカマルが背中に腕を回す。 「死んでもお前が待ってるって思ってたからな。別に、悲しくなんかなかった…そうだな。お前がここに居なかったら、泣いたかもな?」 ナルトはじっとシカマルを見上げる。シカマルが大好きな青い瞳を潤ませて、それからそっと目を閉じた。 「シカマルは、オレが泣かせねえってばよ…?」 シカマルは当たり前のように、ナルトの唇を求める。ひとしきり舌を絡め合った二人は、軽い息を吐きながら唇を解放した。ナルトがにっこりと笑う。 その笑顔はシカマルが見たいと思っていた、太陽のような笑みで。 「さて、と。さっさと三途の川渡るか?」 「おう!」 賽の河原で待ちぼうけを食らっていたナルトは、ようやく待ち人がやってきた事に素直に喜ぶ。 「七日目に川を渡れ〜って言ってきたじいちゃんとばあちゃんと何回もケンカしたってばよ?」 「そっかそっか。じいちゃん達には悪いことしたな…しゃあねえ…俺からも詫び入れるか」 「うん、頼むってば」 ぎゅっと握りあった手をもう離さないと決めて、シカマルは指先の温もりを手繰り寄せるようにナルトの手をしっかりと掴む。それに気づいたナルトもシカマルの指先に絡んだ指に力を入れた。 「もう、離れないってばよ」
それは、永遠の誓いの言葉。
|
書きなぐりシカナルシリーズ(笑)
またバカな話、書いてんよ……
一応、死にネタになんのかなぁ?
でも、暗い雰囲気はなくて、やっぱバカな二人なんですけど。
死んじゃっても、シカナル♪
先に死んじゃうのはナルト希望。(どんな希望?)