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WILL second 2   side shikanaru

 

 

 

 木の葉に着いたら、一目散に自宅へ戻る。サクラは綱手の所へ行くと、すぐに別れてしまった。本来ならばナルトも任務の報告に綱手の元へ行かなければいけない。だが、サクラの見解ではナルトに報告するような事は何一つないのだから、付いてこなくてもいいという物だった。

 だから、なぜかアパートへの道を急いでしまう。もう、木の葉は夕暮れで、街灯がぽつりぽつりと灯り出していた。シカマルには今日、木の葉へ帰る事は告げていない。特に連絡方法がある訳でもない。それに、砂隠れの里から木の葉までは急いでも有に三日はかかる。行きの様に砂嵐に遭遇してしまったら、帰郷は遅れる訳だし、確かな事を伝えられないのが現状だ。

 それでも、なぜかシカマルが自分の部屋に居てくれる気がしたのだ。ナルトにとっては、それは願望に近い希望であった。

もの凄く彼の顔がみたい。その腕に抱かれたい。彼の鼓動を感じ、温もりを感じたい。もし任務で居ないとしてもいい。自分の元に来てくれるだろうシカマルを待ちたい。

 懸命に走って息が切れた。いつもの道を曲がって、肩で大きく息をつく。息は切れ切れで額に汗が滲む。そして、見上げたアパートの部屋に灯りが灯っている事を目視して泣きたい気持ちになった。息を整えながら、階段をのぼり、そっとドアノブに手を掛ける。玄関の三和土にシカマルのサンダルがあった。

「ただいまだってばよっ!」

 ナルトも慌ててサンダルを脱ぎ捨てると、自室に続く扉を開ける。そこにはのんびりと茶をすするシカマルの姿があった。

「タイミングいいな、ナルト。俺も今日任務から……ナルト?」

 突っ立ったままシカマルを見つめたナルトは、久し振りに見る大好きな顔をじっと見つめる。その視界がどうしてか歪んだ。その顔を見たいのに、滲んだ視界がそれを邪魔する。

「ナルト…どうしたんだ?」

 ナルトはぎゅっとシカマルに抱きついた。

「会いたかったんだってばよ……すんげえ、会いたかったんだってば」

 顔を見て、安心してしまったのか、今まで我慢していたものが堰切るように溢れてくる。シカマルは抱きついてくるナルトの腰を引き寄せると、自分の膝の上に座らせる。

「顔、見せろ…」

 潤んだ青い瞳からは止めどなく溢れる透明な液体。それを指の腹で拭った。

「なんだよ。そんなに劇的な再会か?」

「かもしんねぇってば…」

「馬鹿だなぁ。俺はいねえかもしんねえだろうが」

「でも、居てくれたってばよ」

 そう言ったナルトは嗚咽を漏らしながら泣く。シカマルは突然の事に二の句が継げない。どうしたらいいのか迷う。こんな風に声を漏らして泣くナルトを見るのは初めてだ。ナルトはいつもの騒がしさとは変わって、泣く時は静かに涙を流す事の方が多い。

「ナルト?」

 名前を呼ぶと青い瞳が自分を捉えた。そして、またくしゃりと顔が歪む。まるでその姿は子供の様だ。ひっくひっく言いながら、シカマルに抱きついてくる。どうしたものかと考え、髪を撫ぜた。自分との再会が嬉しくてここまで泣くはずもないだろう。茶化してみた自分を少し後悔した。普通に考えても、この状況はおかしい。

「なんか、あったのか…?」

 そう思うのは至極自然な事で。

「あったんだな?」

 もし、任務で失敗してもこんな風に泣く事はないだろう。自分の不甲斐なさを後悔することはあっても、泣いてすませてしまうような奴でもない。

 風が窓に当たって、カタカタと音を立てる。この部屋にある音は、その音とナルトの泣く声だけ。落ち着くまでこうして抱いていてやるのがいいのだろうか。ぽんぽんと背中を叩いてやる。子供をあやしているような気分だ。

「大丈夫だ…」

 何もわからないが、そう言ってやる事が精一杯だった。ナルトが自分を求めている事は確かで、望むように近くに居てやるしかない。今は、無理やりに彼から泣いている理由を問いただすのは得策ではないだろう。いや、問いただす必要もない。きっとナルトから口を開いてくれるだろうから。シカマルは久々にある腕の中の温もりを確かめるように、ぎゅっと抱きしめた。

 

 

 

 

 どれだけの時間が経ったのだろうか。湯気を立てていた湯呑の茶はもう冷めてしまっている。ナルトも少し落ち着いた様だ。今は涙も止まり、シカマルに身体を預けている。

「ナルト、なんか温かいもんでも淹れてやる」

「……いらないってば」

「俺が飲みてえ。なんでもいいだろ?ホラ、ちょい離れろ」

「やだってばっ」

「あんなぁ…ダダこねんなよ?」

 シカマルはナルトを抱き上げベッドに座らせた。その瞼は真っ赤に腫れてしまっている。薬缶に火を点けたついでに、タオルを水で濡らした。それをナルトの目元に当ててやる。

「冷やせよ。明日、ひでえ顔になんぞ」

「…うん」

 しゅんとしたようにナルトはそれに従う。シカマルに会いたかったと言っていた割には視線を合わせようとはしない。ナルトが視線を外す時に考えられる事は、何か自分に対して後ろめたい事がある時だ。それとも表情を読み取られたくないのかもしれない。そんな事を考えていると、湯が沸いた事を知らせる音が聞こえた。急須の中に茶葉を入れる。ナルトはシカマルが奈良の家で好んで飲む茶葉をわざわざ用意してくれている。いつかシカマルの母であるヨシノに分けてもらったのをナルトも気に入ったようだ。新緑色の液体をナルトの湯呑に注ぐと、それをナルトに渡した。

「ありがとだってばよ…」

 そっと湯呑に口を付けたナルトは、一口含んで自分が木の葉に帰って来たのだと実感する。ナルトの隣にシカマルが座る。飲みたいと言っていた癖に、彼の手には湯呑の存在がなかった。シカマルの腕が肩に回されて、抱き寄せられた。

「ちょっとは落ち着いたかよ?」

 ナルトは答えられない。話したい事はたくさんあったはずなのに、今は何から話していいのか何を話したいのかも分からなくなっていた。何も答えないナルトは、シカマルがしょうがないなぁと言うように笑った気配を感じる。

「どうだった?砂隠れは…」

「サクラちゃんは、なんかいい結果になったって…言ってたってば」

「そうか、無駄足にならねぇで良かったじゃねえか」

「うん。そうだってば…ね」

「お前は何してたんだ?サクラの手伝いとは…考えられないからな」

 ナルトは指が痛いくらい湯呑を握り締めた。シカマルはそれを目にして眉をひそめる。

「あ…うん。オレってば、そうゆう役には立たねぇし。我愛羅とかテマリの姉ちゃんとか、けっこう相手してくれたってばよ」

「楽しかったか?」

 任務と言ってもナルトにしてみれば、遊びに行ったようなものだ。シカマルもそれを分かっている。

「楽しかった……けど」

「なんだ?」

「すげえシカマルに会いたかったんだってばよ」

「ナルト?」

 ナルトの顔を覗きこむと、新しい涙が頬を伝って居る。

「泣いてても分かんねぇぞ?」

 自分から聞き出してもしょうがない。ナルトから話すのを待ってやる。だが、そっと涙は拭った。

「シカマル…ごめんってば」

「ナルト……」

「ごめんってば…オレ、浮気したってばよ」

「はぁ?!」

 ナルトの口から出てきた単語に、シカマルは素直に驚く。

「浮気って……」

 砂隠れの里に行く前にからかった事をふと思い出したシカマルは、じっとナルトを見つめる。もちろん胡乱な眼付で。はっきり言って、ナルトはそんなに器用な性格ではない。それはシカマルの方がよく分かっている。何がどうなったらそうなるのか不思議でたまらない。

「でも、シカマルに嫌われたくないってば…」

「あんなぁ…お前、浮気の意味分かってんのかよ?」

「だって…」

「それとも、俺よりも我愛羅の方がいいってふらついたってことか?それともテマリに色仕掛けでもされたのか?お前が相手してもらったってのは、夜の相手かよ」

「ンな事、ぜってーしないってばよ!」

 ナルトは顔を上げて、シカマルを見つめる。必死なナルトの表情を見て、シカマルが苦笑した。

「だろうな」

 やっと自分の方を見たナルトに満足する。ナルトから湯呑をとると、ベッドのサイドテーブルの上に置く。それから、震える身体を抱き寄せた。

「俺が見つけるつったんだから、おめぇは何も知らんぷりしてりゃいいだろうが」

「……できないってばよ」

「強情な奴」

「シカマルが好きなんだってば…」

「言われなくても知ってる」

 どこまでいってもナルトの事が好きなのは自分の方だ。誰からも好かれる恋人にヤキモキしている。ナルトがこんな心の狭い男に愛想を尽かさないかどうか心配だ。

「我愛羅と話をしてて……なんか気づいた時に、キス…してたんだってば」

「キス…ね」

 焼き切れるのは心の中にある小さな自分の嫉妬心。ナルトに対してではなく、我愛羅に対しての。

「ダメだって、そんなんはぜってーダメだって…それしか言えなかったってばよ。オレってば、すげえ無神経で我愛羅の気持ちなんて全然考えてなかったんだってば。だから…」

「お前は悪くねぇだろ。寧ろ、責めるとすれば俺は我愛羅を責める」

 ナルトは不思議そうな表情でシカマルを見つめる。

「お前は我愛羅の事を友達だと言ったからな。それに、あいつもそういった付き合い方をするとお前に言ったからだ。どんな事情があったのか、俺には分かりたくもねえ。最初にそれを破ったのはあいつの方だろうが…」

 それに、我愛羅の事は好きでも嫌いでもないが、ナルトの事は好きだからだ。これは、自分勝手な解釈だとも言える。同じ人間として、我愛羅の気持ちが分からないかと言われれば、それも否となるのかもしれない。それでも、自分で一旦決めた事を守れずに、ナルトを苦しめる奴の方がシカマルにしてみれば憎い存在だと言える。小さい人間だと思われてもいい。所詮は同じ穴の貉なのかもしれない。それでも、ナルトの隣にいるこの立ち位置を譲る気もないのだ。どこまで行ってもナルトは我愛羅の事を「友」としか思えないと言った。それに対して同情したのも確かだが、ある意味尊敬したのも確かだ。でも、自分も同じ事をしたかもしれない。シカマルはそんな事も思った。どれだけの恋情を心に抱こうが、それが報われないものと知りながらも彼と一緒に居たい。だから、ナルトの幸せが自分の幸せだと言った我愛羅を深い男だとも思った。

「シカマル…オレ、我愛羅を好きなんだって。嫌いとかにはなれねーんだって…」

「しゃあねえ、友達なんだろ?」

「いいってば…?」

「だから、しょうがねぇって言ってる。お前の交友関係にまで、俺は口出ししねぇ。そりゃ、会う度にキスされちゃ妬くけどな」

「しないってばっ!」

 ナルトは慌てたようにシカマルの上着をぎゅっと握る。

「じゃ、蚊にでも刺されたと思って忘れろ」

「忘れない…ってば」

 ナルトはそっとシカマルに身を寄せる。

「忘れたら、きっとダメなんだってばよ。オレもシカマルの事好きだから、忘れたらだめなんだってば」

「我愛羅の事が好きなら、忘れろ。お前の優しさはあいつにとっては酷すぎる」

「シカマル」

「別に、妬いてるから言ってんじゃねぇよ。我愛羅が、お前じゃない誰かを好きになるまで…お前はそれを忘れろ。これでも、譲歩してやってんだ…」

 ナルトがそっとシカマルを盗み見ると、彼は困ったような顔をしている。だからだろうか、ナルトはこくりと頷く。今は何もかもがよく分からないけれど、きっと心に感じたこの痛みは我愛羅も同じはずだ。それに、シカマルも同じかもしれない。人を好きになるのはこんなに簡単なのに、好きで居ると、心のか中でどんどんと成長する思いがある。厄介なものだと思うけれど、これが人を好きになると言う事なのかもしれない。

「シカマル…好きだってばよ」

 呟くと、シカマルの視線がナルトに向けられる。優しい笑みを見せた彼は、そっとナルトの唇にキスを落とした。

「知ってるっつったろ?」

 シカマルのその言葉が嬉しくて、ナルトからシカマルにキスを返す。もちろん、すぐには解放してもらえなくて、どんどんと口づけが深くなった。そのまま抱き合って、ベッドに崩れる。

 窓の隙間から見えた星がきれいで、ナルトは眩暈を覚える。今日はずっと傍にいて、この温もりを感じたい。離したくはないと、心から思った。

 

 

 

 

 

 

書いてたら、どんどん重たくなってしまって…

ナルトが「浮気しちゃったよ。ゴメン」って話だったんですけど(-“-)

それも、最後どうしたらいいか…ホント分からなくて。

今でも、いいのかちょっと迷い気味。

ナルトをいっぱい泣かせるのはシカマルの前だけです…