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てるてる坊主
二人の休みが重なったから、久しぶりに一緒に出掛けよう。 そう約束したのに。 「も、最悪だってばよ。信じらんねえって」 灰色の空からは大粒の雨。それを忌々しく睨みつけたナルトは、無意識なのかぷくりと頬を膨らませ唇を尖らせている。ベッドの横にある大きな窓から外を眺めて(否、睨みつけて)いるのだが、本人はベッドにうつ伏せになりながら、ずっとブツブツ言っているのだ。 「諦め悪りぃな、お前」 ギシリとスプリングが鳴り、シカマルがナルトの傍に腰かける。 「当たり前だっての!」 パラパラだとか霧雨みたいなだとかならシカマルも渋る気持ちを抑えて、ナルトを外へ連れ出したかもしれない。だけれど二人に見える雨模様は、形容するならバケツをひっくり返したような……の一歩手前くらいの降りなのだ。シカマルとて流石にそれはと諦めた。 「いや、でも…外に出た瞬間にびしょ濡れだぞ、これは」 「分かってるってばよ。だから、大人しくしてんじゃん」 「行きたい場所あったのか?」 そう聞かれてナルトは口を噤む。特別に行きたい場所ややりたい事があった訳ではない。だけれど、楽しみにしていたのだ。少しくらい天気が悪くても、嫌がるシカマルを連れて外へ出ようと思って居た。 「いっつもみたく、めんどくせえとか言わねえの?」 「言えねえだろ。お前の状況見ても」 揄うつもりの言葉に真剣な答えをもらって、思わずため息をついた。 「シカマルごめん。オレってば、めっちゃ嫌な奴になってたってばよ」 拗ねて八つ当たりしている自覚はある。ただ本当に素直になれなくてイライラしていた。そんな時に労わるようにシカマルに接され、自分が寂しくなってしまった。 ぽんっと後頭部にシカマルの手のひらが乗せられる。そのまま頭を撫ぜられた。 「シカマルと……出かけたかったんだって。別に行きたいトコ決めてなかったけど、なんとなく二人で一緒にでかけたら楽しいかな〜って」 「そうだな」 ナルトの視線の先には、吊るされたてるてる坊主。白っぽい布に適当にあった赤色の糸でぐるぐると首を締められて軒下に吊るされている。紐をつける場所は頭のてっぺんがいいのではないかと笑い合ったが、結局は首つりしているように引っかけてあった。 時折、風に揺れて。本当にアイツは晴れる事を望んでいるのかと問いたくなるくらい心許ない。それでもナルトが一生懸命に作っていたから、遠目でそんな姿が可愛いなんて思って居た。読書をしているふりをして、そんな背中を見つめたのだ。どれだけも時間が経った訳ではないけれど、やっぱり雨はやむ気配が見当たらない。 「ホントにそう思ってる?」 下から見つめてくる青い瞳にシカマルはくすりと笑った。こんなに真剣に自分と出かける事を楽しみにしてくれ、可愛い言葉で煽ってくる恋人がいじらしい。 「嘘つく方がめんどくせー」 「なんだよ、ソレ」 ぷっとナルトが噴き出した。 「やっと笑ったな」 「ふぇ?」 ナルトの両頬をぷにっと摘まむ。 「ずーっとしかめっ面したまんまで外ばっか見てんじゃねえよ」 「うん」 ナルトはちょっと頬を赤くしながら小さく頷いた。それが合図だったのか違うのか、二人の唇がそっと触れ合う。ただ触れるだけでは足りなくて舌を差し出すとナルトの方からそれを絡められた。 お互いに仕事があって、それなりに忙しくまるっと一緒の休みが取れることが少なくなっていた。待ち合わせて食事に出かけたり、お互いのアパートに泊まりあったりくらいはしているが学生時代のように気軽にデートらしい事はできていないのも確かである。 「次の休みは絶対にどっか連れてってやっから、今日は部屋の中でしかできねえことしようぜ」 ナルトの顔がさっきより真っ赤になった。ただその腕がシカマルの首に絡まる。 深くなる口づけに吐息が漏れた。
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2015/06/01