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tears
零れた涙に驚いた顔をする。そんな彼の顔を始めて見るかもしれない。そうなのだろう。だって、自分は誰の前でも泣いたことなんかないから。 悔しくても、突っ張って憎まれ口を叩くほうが気分が楽だ。 泣くことに疲れてしまったから。小さい頃から、訳も分からない事で泣いてしまっていたから。
一人きりで部屋の中にぽつんと座っているとき。 容赦ない嫌悪の眼差しを向けられたとき。 自分は忌み嫌われている存在だと、気が付いたとき。 その理由が見つからなくて、悲しくて悔しくて泣いた。
どうしてか涙は勝手に溢れてきた。そんな自分の事を誰も構ってはくれない。可哀想だとも思わない。戦争孤児なんて沢山いる。親や親類がいなくて一人で暮らしている者も沢山いる。自分がちっぽけで、情けなくてしょうがなかった。自分は「弱い」みたいで嫌だった。 自分はその中の一人で、それ以外の何者でもない。「うずまきナルト」という人間は最初から存在しないように、無視される。どこにあるのか分からないエクジスタンス。誰も自分すらもその答えを知らない。
「なんで…泣くんだよ」 ぶっきら棒な声に顔を横に振った。額宛てがするりと解けて、金色の髪の毛がぱさりと瞼に掛かる。 「分かんないってばよ…」 すらりと嘘が口をつく。 「ったく…めんどくせえな」 不器用な彼の指が涙を救った。意外だ。そんな事も似合っているじゃないか。柄じゃないとか笑ってしまえない。 「訳、話せよ」 決まっている。嬉しいからだ。この気持ちをどうやって伝えればいいのだろうか? 「シカマルがオレの事、好きだって言ってくれたから」 「…泣くのかよ。そんな事で」 「嬉しいってばよ……シカマルにとっちゃそんな事でも」 「泣くのが返事かよ」 ちょっと照れたような、それでいて不機嫌そうに聞こえる科白。ナルトは気が付く。今、頬を伝う涙は自分が始めて流した涙だ。嬉しいと思って泣いた事なんて、今まで一度も無い。 「シカマルは…オレの事、好きだってば?」 「何度も言わせんなよ」 口元が自然と緩む。 「オレもシカマルの事、好きだってばよ」 「……先に言ったの、俺だかんな」 存在理由を探してみようか。ふと、そんな風に思える。シカマルが好きだと言ってくれた、自分というものを見つめてみようか。 シカマルが身体を抱き寄せて、ついでに唇も寄せてくる。驚いて目を丸くして見つめると、彼の口元にも笑みが浮かんでいて。だから、ナルトもくすりと笑う。
「好きだぜ、ナルト」
重なった唇は、とても温かくて。 もらった言葉もとても温かくて。
このまま溶けてしまえばいいのにと、本当に思えた。
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WEB拍手用のお礼SSでした。
もっと元気なナルトがいいなぁと思うんですが。
泣くのはシカマルの前だけってのもいいかなぁとも思います。