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SWEET SWEET
シカマルがナルトのアパートに帰ると、ナルトはもう目が覚めていたらしく勢いよく体当たりされた。 「おっかえり〜」 部屋に入るなり抱きつかれたシカマルは、片手でナルトを抱きとめながら片手は白い小さな箱を死守する為にバランスを取り直す。 「遅かったってばね〜」 「報告書出しに行くついでに、ケーキ買ってくるって言っただろ?」 「あ、うん…ごめん。シカマルの誕生日なのにシカマルに買いに行かせちまって」 「行けねえ原因作ったのは俺だからな」 にんまりと笑ったシカマルの笑みに、ナルトの顔が真っ赤になる。 「……そ、それは、その…」 照れているナルトの顔を見たシカマルはそれだけで満足だ。ケーキの入った箱をダイニングテーブルの上に置いたシカマルは、ようやく自由になった両手でナルトを抱きしめる。 「いつ起きたんだ?」 「んっと、さっきだってばよ」 くぐもった声が肩口で聞こえる。大胆に抱きついてきたかと思えば、ちょっとした事で恥ずかしがって照れているナルトが可愛く見える。実際、こんなナルトの事をシカマルは可愛いと思っている。彼の言動がいつも自分のツボに入るのだ。不思議と心動かされると言うか、ついつい悪戯心に火をつける可愛い恋人をぎゅと抱きしめる。恥ずかしがっている癖に、抱きしめるとナルトの腕もシカマルの身体に回されて反対に抱きしめ返された。 「さすがに、腹減ったんじゃねーの?」 くすりと笑う気配を感じたナルトは、こくりと頷いた。帰宅して口にしたものは、お茶と風呂上がりの牛乳だけ。 「でもさ、オレんち…カップラーメンしかないってばよ」 ナルトは暫く考えて、「外に行く?」と提案してみる。 「ナ〜ルト」 優しく名前を呼ばれて顔を上げた。目の前には大好きなシカマルの顔がある。じっと見つめて、ちゅっと唇にキスを落とした。ふっと笑ったシカマルはお返しとばかりに、ナルトの唇を求める。 「シカ…」 甘い吐息の合間に漏れる掠れた声に満足しながら、舌を絡め取る。何度こうしても、何度抱き合っても、いつも新鮮ななにか。飽きる事がなく、彼を求めてしまうなにか。 「外出るにしても、用意とかあんじゃねえの?」 「あ…うん」 ナルトはちらりとシカマルを伺う。上目づかいのそれにシカマルは、やっぱり優しい笑みを浮かべるのだ。 「あのさ…」 「…ンだ?」 シカマルから少し身体を離すと、ナルトは俯いたままでシカマルの手を取った。指を絡めて、ぎゅっと手を握ってくる。甘えてくるようなその態度に打算も計算もない。ナルトにはそんな事はできないのだ。自分とは違って変に素直で本能で生きている彼。シカマルは自分の持ち合わせていないナルトと言う人間のありのままの姿に惹かれている。きっと、最初に出会った時から。彼に対する気持ちが、友達とか仲間とかの枠を超えて恋情になる前からずっと。 「言いたい事あんなら言えって。おめーらしくねえぞ?」 「……あのさ、我儘だって分かってんだけど」 「ん?」 「今日はカップラーメンで我慢してくれってばよ」 シカマルは別に食に拘っている訳ではない。シカマルなりにナルトの食生活の事を考えて、なるべくバランスのいい食事をとらせたいと思っているだけなのだ。毎日そうしてやれる訳ではないので、自分が一緒に居られる時はそうしてやりたいくらいの気持ち。ナルトのように自活している訳でないシカマルには、せっせと世話を焼いてくれる母親がいる。それを当たり前だと思っていた。特別な事だと感じたことがなかった。だが、ナルトが奈良家に遊びに来て嬉しそうに食事をする姿を見ていて、そうではないと知ったのだ。ナルトは自分よりも人に感謝する気持ちを知っているし、人一倍他人に気を使える。敏感すぎるくらい繊細な部分を持ち合わせていると、シカマルは感じている。 「構わねぇけど、理由くらい教えてくれんだろーな?」 シカマルの科白に顔を上げたナルトは、大きな青い瞳をぱちくりさせながらじいっとシカマルを見つめた。 「今日は…シカマルとずっと一緒に居たいんだってば……えっと、二人で居たいってか……」 早口でまくし立てたナルトは、自分の言葉に羞恥して頬を真っ赤に染める。 「うわ〜!オレってば、めちゃ恥ずかしい奴だってばよ〜っ!」 シカマルはあっけに取られて、思わず言葉を失ってしまう。こんな事を言われるとは想像していなかった。 「や、やっぱ、いい!今のなしにするってばよ。すぐに着替えるから待って…――――」 慌てふためいたナルトを背中から抱きしめる。 「ば〜か…」 「シカマル?」 「なに、可愛い事いって俺の事煽ってんだよ。バカナルト」 「だから、なしだって…言ったじゃん」 拗ねたような口調にシカマルは唇に笑みを見せた。ナルトの事をいつも独占したいと思っているのは自分の方だ。きっと、ナルトの知らない狡いものをいっぱい持っている。だから、キレイな感情を見せられると眩しくて直視できなくなってしまうのだ。ナルトという存在が与えてくれる感情が、最高のプレゼントだなんてナルト本人も知らないだろう。 「やっぱ、俺はお前がいいわ」 「シカ?」 「プレゼント、お前でいいって言ってんだよ。今日は、俺だけのものだよな?」 ナルトは自分を抱くシカマルの腕に手を掛けるとぎゅっと握った。 「バカはシカマルだってばよ。オレはシカマルのもんだって……言ってる。何度も言ってんのに」 シカマルは喉でくくっと笑った。 「そうだな…俺は馬鹿だから、いつも言われねえと忘れちまうんだよ」 「……バカシカ」 腕にナルトの柔らかい頬が寄せられる。今日は、ナルトのお許しの元この部屋に彼を閉じ込めて自分だけの物に出来る。誰も縛れないはずの彼を自分という檻の中に閉じ込める事が出来る大義名分。彼に、何もかもを与えたい。そして、奪いたい気持ちもある。心のバランスを失う前に、ナルトの身体を反転させると唇を奪った。柔らかく甘いそれに酔いしれる。誕生日にかこつけて、狡い自分を全てナルトの前にさらけ出し、それでも好きだと言わせたい。 「ん…っ」 「ナルト…」 視線の合ったナルトが少し恥ずかしそうに笑う。 「ケーキ…食いたいってばよ」 「デザートじゃねえの?」 「お祝い……カップ麺よりケーキでしてえもん」 拗ねたような口調にシカマルがにやりと笑う。今日はどこにも出かけずに二人きりがいいと言うのだから、時間はたっぷりある。怠惰に過ごす一日も悪くない。 「おめーが喜ぶかと思って、でっけえの買ってこようとしたんだけどな。ああゆうのは予約じゃねえと、出来ねえんだと」 「へぇ…そうなんだってば?」 普段ケーキなどを買いに行った事がないのはシカマルもナルトも同じだ。シカマルとてケーキ屋のお姉ちゃんに言われるまでは、大きくて丸いケーキを買ってやろうと思っていたのだから。 「そっか、じゃ…結局はオレってば用意できなかったんだってばよ」 箱を開けると数種類のケーキが鎮座している。目でも楽しめるようになっているケーキ達を見て、ナルトの顔がぱっと明るくなった。 「うまそうだってば!」 シカマルはインスタントのコーヒーを入れると、ナルトの前に置いてやった。だが、すぐにナルトの顔が渋いものに変わる。 「シカマル〜…コーヒーは苦くて無理だってばよ」 「しゃーねえなぁ」 ナルトのカップを取って、ごくりと喉をならす。ナルトはそんなシカマルの姿を不思議顔で見上げる。シカマルは冷蔵庫の中から牛乳を取り出すと、ナルトのカップの半分を満たした。そして、ついでに砂糖も投入してやる。 「…?シカマル?」 「これなら、お子様の舌でも飲めるっての」 「お子様……」 否定できないナルトはムスリとしながらもカップに口をつける。 「あ、苦くねえ」 カフォレにして砂糖もたっぷり入れたのだから、苦くはないだろう。甘いケーキとの相性は知らないが、ナルトは満足そうである。 「誕生日、おめでとさんだってばよ!シカマル」 一応、かちんとカップを合わせる。 「サンキュ」 ぱくぱくとケーキを平らげて行くナルトは満足そうに笑っている。その笑顔を見られるだけでシカマルとしても満足だった。二つ目のケーキを食べ終えたナルトは、ふうっと息をつくとシカマルに視線を向ける。 「シカマル、食わねえの?」 甘いものは好きでも嫌いでもない。特に食べたい訳でもなかったシカマルは食べかけの皿をナルトに進めた。 「食いかけだけど、食うか?」 「え!いいの? ラッキー♪」 へへっと笑いながらケーキを食べ始めたナルトが、ちらりとシカマルを伺う。 「どーした?」 「あ〜…あのさ」 「なんだよ、今日は調子狂うな。お前のその含んだ様な言いまわし」 「デザートは先に食っちまったし……その、オレでもいい?」 シカマルはおもむろにフォークを手にすると、ナルトの前にあるケーキに突き刺す。 「シ、シカマル?!」 少なくなっていた甘いスポンジを口の中に放り込み、コーヒーで流し込む。そして、ナルトの手を取る。 「可愛いことばっか言って、俺の事煽るなって言ってんだろうが」 「……そんなつもりは、…」 にやりと不敵な笑みを浮かべたシカマルは、本日二度目のデザートを食すためにナルトを抱きしめた。
誕生日も、悪くない。そう思いながら。
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ケーキあんまり関係ねえ!という突っ込みは要りません。
ってか、シカナルの時点でバカ決定なのです。
なかなかケーキを食べる話にならず、食べ始めたと思ったら違う方向へいきました(笑)
くそ〜ナルトはシカマルのツボを心得てんな。可愛いな、ちくしょー!
シカマルはいつもナルトにやられっぱなしなんですな。
は〜…もっとカッコイイナルト書いてみたい。