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雲と君

 

 

 シカマルはいつものように空を見ていた。ただ、理由もなく、青い空に浮かぶ真っ白な雲が好きだった。誰に何を言われるでもなく、かといって決まったモーションがあるわけでもなく。空を流れる白い雲は、シカマルにとって随意のない存在に思えて、なんだか羨ましく見える。

 いつもなら隣に幼馴染のチョウジがいるのだが、用事があるのかないのか、アカデミーが終わるとすぐに帰ってしまった。シカマルにとっては、一人だろうが二人だろうが関係ない。ただ、ぼ〜っとしているこの時間が好きなだけだ。

「いいよなぁ…雲は」

 修行しろしろと親からせっつかれる訳でもなしし、毎日つまらない授業を受けなくてもいい。雄大な空を漂っているだけでいい。思わず本音が口から零れて、意味のない言葉に失笑してしまう。

 そんな風に、しばらく雲を見つめた。特に意味なんて、最初から存在しないのだ。

 ただ、好きなだけ。簡単な答えだった。

 シカマルは、ふと視線を土手の向かいに移した。見覚えのある顔を見つけて、少しだけ面倒な気持ちなった。大切な自分の時間を邪魔されてしまうのではないか、そんな危惧の念を抱く。そして、それは本当になる。

 シカマルを見つけた少年は、にっこりと笑ってから自分に近づいてくる。名前は覚えていた。シカマルは記憶力がいい。小さい頃からそうだった。一度見聞きしたことは、余程のことがない限り忘れない。

 木の葉には珍しい、金色の髪と青い瞳。アカデミーでもお調子者な態度を何度も目にする。それに、担任であるイルカに一緒に説教されたこともあった。

彼の名は、うずまきナルトと言う。親や親類はいないらしく、一人暮らししていると誰かの噂話を耳にしたこともある。興味がなかったから、それ以外のことは覚えていない。

「よう!なにしてんだ?」

 片手を上げて、近寄る影。シカマルは座っているので、前に立ったナルトを見上げる形で見つめる。

「…別に、何もしてねぇ」

「ふ〜ん、そっか。…えっと、あの」

 金色の髪の毛が風に揺れる。ナルトは首を傾げた。シカマルは心の中で、「ああ…」と思う。こいつは自分の名前すら覚えていないらしい。わざわざ自己紹介をした事もなかったし、別段と気にするようなことでもないだろう。

「奈良シカマル」

 シカマルが口を開くと、困ったように顔を歪めていたナルトの顔に笑顔が張り付く。

「あ、オレ…」

「うずまきナルトだろ?」

 ナルトは驚いたように目を大きく見開く。その青い瞳が、きれいだとシカマルは思った。無意識にである。

「そんでさぁ、何してんだってばよ?」

 シカマルは「お前、やっぱバカ?」と口にしようとして、チッと舌打ちした。先刻、何もしてないと答えたし、ナルトに教える義理もない。シカマルはじっと押し黙った。つまらない奴だと思われて、どこかに行ってくれれば、これ幸いである。なのに、ナルトはシカマルの思ってもみなかった行動に出る。なんと、シカマルの隣に腰を落ち着けたのだ。反対に驚いたのはシカマルだ。好意的な態度をとった訳でもないのに、どうして彼は隣に座るのか。

 じいっとナルトを見ると、彼はシカマルがさっきまでそうしていた様に天を仰いだ。

「あ…そっかぁ、シカマルは空を見てたんだってばよ」

「ちげーよ…」

 どうして、答えてしまったのか分からない。ただ、ナルトの行動の逐一がシカマルには興味深いものに思えた。

「シカマル…空、見てたってばよ」

「だから、違う。俺が見てたのは…雲だよ。雲」

 面倒くさそうに言うと、隣では感心したような顔。

「あー…空には雲があるもんな!」

 少し違うといいたいけれど、面倒くさいのでやめる。小さな違いだが、きっとナルトには分からないだろう。個々の感覚の違いなのだ。それに教えてやる気もない。

「な〜な〜…シカマル」

「…ンだよ」

「雲って、うまいと思うか?」

「はあ?」

 シカマルは余りの驚きから、素っ頓狂な声を上げる。

「ふわふわしてて、甘いのかなぁ…」

「あんなぁ、雲ってのは…」

 シカマルは説明しようとして止めた。ナルトは雲を綿菓子かなにかと勘違いしているのだろうか。よくよく考えれば、至極子供らしい発想だ。強いて言えば、年相応な。シカマルは考えた事もなかったが。それに雲がなんであるか説明しても、きっとナルトは理解できないだろう。

「きっと、うまいってばよ!」

 決め付けたように断言するナルトを見て、シカマルは思わず吹き出してしまった。何故か面白くて仕方がない。

「……シカマル?」

 急に笑い出したシカマルを怪訝な瞳が見つめた。

「悪り…でも、くくっ」

「なっ…何がそんなにおかしいってばよ!」

 ようやく自分の事を笑われるていると気が付いたナルトは、ぷうっと頬を膨らませた。そんな態度がまたおかしく、可愛くも見えた。

 同年代の同性に感じる事はないと思っていた感情。いや、同性だとかそんな事は関係ない。誰かに対して、そんな感情を自分が抱くとは思いもしなかったのだから。

 

 

 

 

「…ってことがあったな」

「シカマル〜…ッ!」

 ナルトはちょっと困ったような顔で、シカマルを見つめる。何かを考え込んだようにしたシカマルは、行為の途中で昔語りを始めたのだ。それが、一緒にお茶なんて飲んでいる時なら、ナルトも素直に聞いていたかもしれない。小さな頃の恥ずかしい逸話は掃いて捨てる程あるので、余裕で受け流せたかもしれない。だが、今のナルトの状態は所謂、一大事の最中なのである。

「なんで、シテる時に…そんな事言うんだってばよ!!」

「あ?ああ…窓から、雲が見えたから」

 シカマルはのんびり答える。目に映った景色に、シカマルのシナプスがつながっただけのこと。シカマルの言葉の意味に気が付いてナルトは顔を赤く染める。

 シカマルはナルトの家のベッドボードに背を預けている。その上にナルトがいるのだ。正確になぞらえるならば、シカマルの欲望はナルトの中に埋まっていた。

「たまには違った体位でシテみるもんだな」

「…っんだよ、それ!」

 解放されないナルトの熱は、どんどんと身体の中に溜まっていった。切羽詰ったナルトの様子を見ながら、シカマルは口元に笑みを乗せる。

「自分で入れられたんだから、動けるだろ?」

「……、無理っだってばよっ」

 シカマルが僅かに動いただけで、ナルトの表情が変わる。シカマルの両肩に乗ったナルトの腕が少しだけ震えていた。

「バカやろっ!」

 涙目で言われてもシカマルは肩をすくめるだけだ。眼に溜まった透明な雫が、つっと赤い頬に流れた。扇情的に見える表情に、シカマルも自分が興奮していくのを感じる。ぎゅっと抱きついてきたナルトの金色の髪を指ですく。

「分かったって…」

 シカマルの腹部に押し付けられたナルトの陰茎からは、欲望の滴りが零れていた。

「…ったく。お前は昔から可愛いな」

「意味分かんないってばよ」

「動くぞ?」

 シカマルの声にコクリとナルトが頷く。シカマルはそっとナルトの腕を解くと、その手を彼の腰に当てる。

「へばりつかれちゃ、顔が見えねぇからな」

「…ばかシカ!」

 振り絞るように呟いたナルトの悔し紛れの批判を、シカマルは行動で返してやる。ぐいっと腰を押し上げると、シカマルを受け入れているナルトの後孔がきゅっと締まった。

「ア…あ、あっ…」

 それでも、自分の中を侵す快楽の波に逆らうことはできない。ナルトは異議を唱えたい言葉が、嬌声に変わるのを口惜しい気持ちで飲み込む。それも、シカマルに追い詰められることで頭の中から消えてしまうことなのだけれど。

「ん…あっ、ああ…あッ」

 仰け反ったナルトの首筋に歯を当てながら、シカマルも二人で感じる悦楽の余剰に身を任せることに決めた。

 

 

 

 今日は、空に浮かぶ雲のように、感興の赴くままに、二人でしか感じることが出来ない快感に溺れよう。

 

 

 

 

 

シカマルは空と雲を眺めているイメージが強いです。

青と白も、シカマルが空を見てたなぁ…

きっと、これからも書くだろうなって思います。

こうゆう、くだらないハナシはぽんぽん浮かんでくるんだなぁ…