ウェディングプランナー はなひらく

 

 

 

Sunflower ―夏の思い出―

 

 

 

 ナルトは納得できないような顔をしながら、じょうろに水を入れる。裏庭にある花壇までは割と遠かったりするのだ。ここから水を汲んで花壇まで、歩いて五分くらいかかる。それに、一回の水汲みだけでは花壇全体に水をやれ無くて、何回か花壇と水道を往復することになるのだ。

 水をたっぷり入れると、じょうろも重たくなる。水を溢さないように運んで、花壇の中にある植物たちに水をかけた。

「なんでオレばっか、こんなことしなくちゃいけないんだってばよ…」

 ぶつぶつ文句を言っていると、すぐに水はなくなった。まだ花壇の半分も水をやれて居ない。

「もう、帰ろっかな〜」

「こら〜、ナルト!」

 急に後からした声にナルトはびくりと背筋を伸ばした。ゆっくり確認するように振り返ると、担任教師の顔があった。彼は、腰に手を当てながらじいっとナルトを見つめている。

「イルカ先生…」

 ナルトに花壇の水遣りをするように言ったのは、このイルカである。

「なんだってばよ?」

「うん?…ちゃんとお前が真面目にやってるか、見に来たんだよ。なんか今、もう帰ろう…とか聞こえたんだけど、先生の聞き間違いだよな?まだ、水遣りは終わったように見えないし」

 ナルトの不平不満を聞いていたのだろう。イルカの言葉は責めているようには聞こえないが、後ろめたいナルトは返事に困ってしまう。

「先生との約束だろ?悪戯した罰に、水遣り一週間」

 ナルトが水遣りを始めてから、今日で三日目になる。

「先生、なんでこんな所に花壇があるんだってばよ。水道から遠いし…水やりもタイヘンだってばよ!」

「大変だから罰になるんだろ?」

「ほんとにたいへんなんだってば…」

 ナルトの言葉を聞いてイルカは苦笑する。

「そうだ、ナルト。一つ良い事を教えてやる」

 イルカはナルトと視線を合わせるように、膝を折った。真っ直ぐに自分を見つめてくる青い瞳は、期待を込めたようにきらきらしている。そんなナルトの姿を見て、やっぱりまだ子供だなとイルカは思うのだ。

「植物には人間の話す言葉が分かるんだぞ?」

「そんなん、ウソだってばっ!」

 もっと違う事を期待していたのか、ナルトは不服そうに唇を尖らせてじいっとイルカを見つめる。

「先生は嘘をいいません」

 きっぱりと言い切ると、ナルトの瞳が花壇に向けられた。

「…ほんとなんだってば?」

 イルカはぐりぐりと金色の頭を撫ぜる。

「ああ、ホントの話」

「ホントにマジだってば?」

「本当のホントのマジでマジな話」

「え〜…なんか、やっぱうそくさいってばよ」

「騙されたと思って、話かけてみろよ。きっと、伝わる」

「オレには、花とかの声…わかんないんだってば?」

 質問されてしまって、イルカは返答に困ってしまった。植物の話が聞けるとはいいきれない。

「分かるかもしれないし…分からないかもしれないし。それはナルトの事だから先生もわかんないよ?」

 曖昧に返した言葉をナルトはどう受け止めたのか、水遣りを再開する事に決めたようだ。

「イルカ先生、オレやってみるってば!」

 じょうろを抱えて走り出した悪戯小僧の後ろ姿を見て、イルカは思わずくすりと笑う。きっと彼はまだまだ子供で、しかも純粋である。そんなナルトの事を可愛いなぁと思った。悪戯をして他人の気を引こうとする所は、幼い頃の自分に重なる。そんなナルトの事をイルカは放っておけないのだ。へこたれないナルトを応援したくなる。それは、アカデミーに入学して彼と接して初めて思った事なのだけれど。

 

 

「おっきくなるってばよ〜。キレイな花をいっぱいさかせるんだってよ〜。今日は、用務員のおっちゃんから、えっと肥料っての?ゴハンもらってきたから、いっぱいやるからな!」

 ナルトはイルカと話してから、毎日のように草花に話しかけていた。たまには、自分がした失敗も話したり、楽しかった事や嫌な事も話す。

 じょうろから流れる水が、いっぱいに広がる葉っぱに雫となってたまった。太陽に反射するきらきらの水の玉を、ナルトは人差し指で弾く。

「今日の授業はつまんなかったな〜。きっとイルカ先生は怒るだろうけど、ぜんぜん分かんないんだてばよ……そしたら、教科書を何度も読めって言うんだってばよ。読んでも分かんないから困ってんのに…こうゆう場合はどうしたらいいんだってばよ〜。やっぱ、オレちっともわかんねぇもん」

 さわさわと風に揺れる葉っぱ。

「おまえらも、分かんないってば?やっぱ、そうだよなぁ……」

 ナルトはう〜んと唸った。イルカの言う通り植物たちに話しかけるようになってから、一ヶ月という時間が経っていた。イルカから与えられたペナルティは一週間だったのだけれど、誰に言われる訳でもなくその行為を続けているのだ。白い玉肥を土の上にばらまいて、ナルトは両手の土を払う。

「今日は、キバやシカマルたちと遊ぶ約束してんだってばよ。また、明日来るからな〜!」

 ナルトは小さく手を振ると、花壇に背を向けたのであった。

 

◆◆◆

 

『なぁなぁ…あいつナカナカいい奴じゃね?』

『玉肥はサイコーにうまい!あいつが来るようになってから、毎日水もたっぷりもらえるしな』

『でも、あいつの名前なんつったっけ?』

『物覚え悪すぎ〜!ナルトだよ、ナルト。自己紹介してったじゃねえか』

『そうだ、ナルトだ!』

『ナルト、ナルト!』

『あいつ、いつもぶつぶつ文句言ってんぜ?』

『でも、あいつだけが毎日水やり来てくれるじゃん…』

『………』

『…………』

『……………』

『………………』

『なぁ。あいつには俺らの声、聞こえてねえよな?』

『人間にゃ、草花の声は聞こえないってよ?』

『じゃあ、お礼とか言いようがないよね…』

『ナルトは、早く大きくなってきれいな花を咲かせろって言ってたぞ?』

『花が見たいのかな?』

『そうなんじゃね?』

『そうなんだ。そっか…ナルトは花が見たいんだ!』

『へ〜そっか』

『そうなんだな』

『ふうん。そっか…』

 

◆◆◆

 

「…と、俺の推測するとこ、そんなもんだ」

 シカマルが真剣な声で言う。ナルトは、毎日水やりを続けている花壇の花が一斉に咲いて、驚いてシカマルを呼びに行ったのだ。最初はそれを信じて居なかったシカマルも、悠々と咲く花を見て驚いたようだった。

「お前が毎日水やってんのは知ってたけどよ…マジすげえじゃん」

「え!オレってばすごい?」

「すごいんじゃね?」

 自分が褒められているのか、花が褒められているのか、ナルトはこそばゆい気持ちになった。

「イルカ先生が教えてくれたってばよ。なんかさ、ちゃんと植物には言葉が分かるんだって!話かければ通じるって教えてくれたってば」

「どうせお前の事だから、最初は信じてなかったけど…って口なんだろ?結構、一つの事にのめり込むタイプだもんな。ナルトは…ってか、一つの事しかできねぇタイプ」

 ナルトはシカマルの言う事が的を得ていて、反論することが出来ない。いくつもの事を同時にするのは、シカマルが言うように苦手である。

「でも、ホントに花が咲いたってばよ」

「イルカにも教えてやれよ。目ん玉ひんむいて驚くぜ?」

 シカマルとナルトは顔を見合わせてイヒヒと笑った。

「キバやチョウジにも教えようっと!あいつらオレの事、馬鹿にしてたから驚くってばよ」

「お前にも意外な才能があったんだな」

「イガイは余分だってばよ」

「褒めてんだろ」

 ナルトはやっぱり嬉しい気持ちになって笑った。居ても立ってもられらなくなったのか、シカマルを置いて校舎の方へ走り出してしまう。シカマルはその背中を呆れたように眺めながら、自分の身長よりも大きくなった植物を見上げた。

「まだ、五月だぜ?こんなに早く咲いてどうすんだよ?」

 太陽に顔を向ける金色の花が風に揺れた。

「ヒマワリって、夏の花じゃねえのか…」

 どんな気まぐれで咲いたのかは不明だが、校舎裏にある花壇にヒマワリが咲き誇っているのは事実である。ナルトによって連れてこられたイルカが驚いている姿が、シカマルの初夏の思い出の一つになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

何気に、シカマルとナルトが仲良しなのは強調してみましたが…

CPと言うには…って感じなんで、その他に分類してみました。

ナルトはガーデニングが趣味なんで*^_^*

植物には人間の言葉が分かると言うのは、どこかで読んだことがあって…

RUIもやってみたことがあります。(あの頃は純粋だった……)

そのお陰がどうかわかりませんが、チューリップがきれいに咲きましたよ〜。

「夏の思い出」はシカマルもナルトも共通って事です。