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落ち葉拾い
かさり……、と踏みしめた落ち葉が鳴る。 「寒くなってきたな」 シカマルの言葉に軽く頷いたナルトは、しゃがみこんで落ち葉を手にした。 「シカマル、黄色に赤に…すげえキレイ」 にこっと笑顔を向けられて、シカマルも笑みを浮かべる。確かにけもの道のようなこの山の中には、多くの落葉樹がある。紅葉に銀杏に、その他の植物。 「もう、冬支度してんのかな?」 ナルトは楽しそうに、落ち葉ひろいを始めた。シカマルは一時の安息を楽しむナルトを見つめながら、大きな木の幹に凭れかかって座る。 ナルトと旅に出て、数か月。里を逃げるように去ったのは春の終わりだったような気がする。 「あ…イテ」 ナルトの咄嗟の声に、シカマルは意識を彼に戻す。 「おい、大丈夫かよ?けがしたのか?」 「大丈夫だってばよ。小枝がちょっと刺さっただけ」 へへっと笑ったナルトはシカマルに人差し指を見せた。白い指の先には、ぷくりと血の塊が出来ている。見た目よりも深いのかすぐにその塊が地面に落ちた。 「…ったく、なにがちょっとだよ?血が出てんじゃねえか……」 ぽたぽたと溢れた赤い液体にナルトも驚いたようである。そして、その体液が落ちた場所が一気に変貌を遂げた。 「そうか……」 枯葉に覆われていた土が苔色に変わった。血を吸うごとに碧色が濃くなる。 「シカマル、この山は元気がたりねえみたいだって」 くっと唇を噛みしめたシカマルはさっとナルトの手を取って指先を口の中に入れる。ナルトには生まれながらに不思議な力が宿っていた。ナルトと会ったのは彼が幼少の頃だ。生まれてからそれまでどうやって生きてきたのかはシカマルも知らない。 簡単に言ってしまうとナルトの存在そのものが生命エネルギーの源のような存在なのである。動物の話している事も理解するし、自然の声にも耳を傾けられる。ただ、その強すぎる力はひとところに在る事を許してはくれなかった。 大きすぎる力とエネルギーは、十分に蓄えられると変化が腐敗へと変わって行く。器に見合った土地でなければ、芳醇すぎるエネルギーも毒気に変わってしまうらしい。シカマルの家に来た年から、里は異常なほどの豊作に恵まれた。米も野菜も、森も水も、動物たちも……全てにおいて恩恵を受けたのだ。枯渇した土地が潤いを持ち、清水が湧き出たりもした。それが、数年の内に自然の生態系に狂いを生じたのだ。それに気が付いたのは、シカマルとその両親だけだったかもしれない。誰もが、天真爛漫なナルトの事が好きだった。里に彼の秘密がばれる前に、そっと里を逃げ出したのだ。 「シカマル……少しくらいいいんだって。少しだけ力を分けてやったら、この山も元気になれんだもん」 シカマルは指から口を離すと、血が止まった指先をほっとした気分で見つめた。 「……バカな事言ってんな。慈愛とか、そーゆうのくだらなくって好きじゃねえよ」 最初は喜んでいるだろうが、ナルトの巨大な力を目にすれば誰もが畏怖するのだ。そして、自分たちと違う異形の者は消される。 それに、一滴だってナルトの何かを誰かに分けてやるのも癪に障った。これはシカマルの勝手な妬心だった。ナルトの全てを誰にも渡したくない。その存在すらもが影響を与えてしまうナルトは、知らずの内にイロイロな物から興味を抱かれる存在なのだから。 「シカマル、ごめんな」 「ナルト?」 ナルトはそっとシカマルの胸に身を預ける。 「オレが居なかったら、シカマルは里を出る必要もなかったし……おっちゃんやおばちゃんと一緒に暮らせたのに ―――――― 」 シカマルは細い身体を腕に抱いた。シカマルはナルトと共に里を出られた事を嬉しく思う。里にも両親にも興味がない。嫌いなわけではなく、ナルトと比べたらなんの興味もないと言う意味だ。 「何度も言わせるなよ。俺はお前と一緒に居られて、嬉しいんだぜ?お前が気に病む必要なんて、どこにもねえよ。俺の勝手なんだから、父ちゃんも母ちゃんも十分に分かってる」 「うん、シカマル……寒くなってきたってばよ」 「そうだな。今夜は宿を取るか」 夏の間は二人で野宿することもあったが、季節的に難しくなってきた。ナルトの手を取って立たせると、それを引いて山を下りる。
火の入れられた室内はすぐに温かくなった。 シカマルは茶をすすりながら、目の前で一生懸命に手紙を書いているナルトを微笑ましい気持ちで見つめた。食事も終わり、温泉で体も温めたので後は寝る時間を待つばかりである。 「お前、飽きねえな」 ナルトがしたためているのは、里に残してきたシカマルの両親であるシカクやヨシノへ宛てる手紙だ。安否が知りたいから手紙を寄越すようにとナルトに言ったのはヨシノだっただろうか? 「だって、約束だし…」 答えながらもナルトは手元に集中している。 「どこに居るとか、そーゆう事は一切書くなよ」 「何度も言われなくても、分かってるってばよ」 ナルトはむっとしながら顔を上げた。そして、夕方拾った紅葉した葉とどんぐりを入れて封を閉じたのだ。 「なぁ、シカマル。里も紅葉してるかな?」 その声が少しだけ寂しく聞こえる。 「そうだな…してるんじゃねえのか?」 「おばちゃんが、庭の桜の木の葉っぱの掃除大変だって言ってたから……今年は手伝ってやれねえなぁって。もう干し柿作ってんのかな?おばちゃんの干し柿、めちゃ美味いもん。あとさ…」 「ナルト」 故郷を懐かしく思うより、目の前のナルトに意識が向いている。手を上げると、照れた顔つきのナルトが四つん這いになりながら近づいてくる。目の前にちょこんと座ったナルトにキスを落とした。重なった柔らかい唇の間から舌を忍ばせると、ナルトの身体がぴくんと反応する。 「ん…っ」 深くなる口づけ。絡めた舌が熱を呼び起こした。ナルトの腕がシカマルの首に回る。そして、手のひらは彼の後頭部へ。 飲みきれない唾液が顎を伝う。静かなそして激しさも伴った口づけが、お互いの身体に怪しい火を灯した。唇を離して、うっとりと見上げてくる青い瞳が潤んでいる事にシカマルも嬉しくなる。くすりと笑って耳朶を噛むと、ナルトの口からか細い声が漏れた。そして、ぷるぷると震える身体からくったりと力が抜けて行く。 「布団、行くか?」 「…うん」 二組並べて敷いてある布団に、そっと身体を横たえられる。ナルトは逆光で見にくいシカマルの顔を指先で辿った。 「シカマル……、好きだってばよ」 この思いがどこから来たのかも分からない。 それでも、シカマルと離れることなく共にある事に感謝している。 「俺も」 「本当に?」 シカクやヨシノから頼まれたから、一緒に居てくれるとばかり思っていたナルトは、共に里を出た夜にシカマルから告白されて心底驚いた。そして、同時に涙が出るくらいの歓喜も味わった。 「何度言ったら分かるんだよ、バカナルト」 「バカは余分だってば!」 身体を重ねるのは、魂が重なっているようで好きだ。抱きしめられてぬくもりを感じる事も、キスをするのも好き。だけれど、その感情の源にはいつも彼を思っている“好き”が存在している。 シカマルは自分は狡い人間だといつも言うけれど、ナルトはそれは自分自身だと思っている。自分と言う存在にシカマルの人生を閉じ込めているのだ。存在自体が檻のようなもの。本当に離れたくないと思っているのはナルトなのだから。不意に口から零れる謝罪の言葉を聞くと、シカマルは嫌そうな顔をする。だから、ありがとうとは言えなかった。すぐに、この気持ちの根底を見透かされてしまうような気がして堪らないのだ。シカマルを離す事はナルトには無理なのである。 シカクやヨシノと共に暮らした数年間はとても楽しくて。そんな毎日がずっと続くものだと考えていた。それなのに、一所で安息を得られる事はないのだと言う現実を目の当たりにして絶望の淵に追い込まれる。一人で生きていかなければいけないと言う、現実。ずっと一人でいなければいけない事なんて容易いものだ。何が一番堪えたかと言うと、シカマルと離れ離れになるという現実。だけれど、彼は笑顔でナルトの手を取ってくれた。共に行こうと背中を押してくれた。 「…シカマル。したい」 もっと、近くに感じて。もっと、奥の方で彼の存在を感じたい。 「早く挿れてほしいってばよ……」 彼の熱を感じて、眠りにつきたい。 一緒に生きていくと決めた日から、その前から、この思いはきっと変わらない。 「ば〜か、煽んなよ」 くすりと笑ったシカマルが幸せそうに呟いた。癒してくれる存在が腕の中にある。シカマルも一生この手を離すつもりはない。多分と言うか、いつもナルトが黙ってしまう時は大抵くだらない事を考えているのだ。 「俺の事以外、なんも考えられねえようにしてやる………」 「シカマル?」 きょとんとした顔で見上げてくる青い瞳に吸い込まれそうになる。そして、その青も自分のもの。誰にも渡さないし、譲る事もない。 肌蹴た浴衣の隙間から手のひらを滑り込ませたシカマルは、ナルトの熱を誘うように優しく愛撫を繰り返す。ナルトの囁きのような嬌声が闇に紛れてシカマルを誘う。 白い肌には、夕方見たもみじと同じような紅い痕が無数に散らされた。
続く…(なんて嘘/笑)
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WEB拍手お礼SSにとっても長い間居座ってました(^^ゞ
夢にみたシカナル第1弾です(苦笑)
曖昧な設定とかは、夢なのでお許しを(>人<)
いつか大きく膨らませてみたいなぁという野望コミ。
今から思い返せば、第二弾はお姫様と王子様な話のファンタジーでした。
ええ、もちろんシカナルですけど。