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OPNING betterhalf
木々の間を抜けるナルトの足取りが早くなる。 夏の暑さは日々を追うごとに穏やかに変わり、今では秋の気配を感じる事が出来る。日中はまだ暑さを感じる事はあっても、鬱陶しいくらいの疲労感を伴う猛暑は去って行ったと言えよう。 「ちょっと、ナルト!何を急いでいるんだい?」 ナルトの隣に来たヤマトが必死の形相でいるナルトに訊ねる。 「オレってば大切な用事があんだってばよ。だから、早く木の葉に帰りてえのっ!」 その台詞を聞いて、やれやれと言ったように肩をすくめる。カカシの変わりに隊長として任務を終え、その帰路についていた。休憩と称して茶屋で団子とお茶をすすっていたナルトは、何かを思い出したようにいきなり腰を上げたのだ。訳の分からない事を言う彼の後を慌てて追う事となるのだが、こちらの注意は右から左で全く耳を傾ける気がない様に見える。 「あのね……急いでも急がなくても里に到着するのは明日だよ?全く……ナルト、体力の配分とか考えた事ある?それとね、僕たちはチームとして動いてるんだよ?勝手な行動は……って、おい!言ってる傍からこれか〜」 ヤマトは頭を抱えたい気持ちで、ナルトの背中に溜息をついた。 「隊長、ナルトにそんな事言っても無理ってか無駄ですよ?あいつ、根っからのバカなんですから」 いつの間にかヤマトに追いついていたサクラが呆れたような笑みを見せる。 「サクラ…あのねぇ」 「だから、こういう場合は言葉で諭すより手っとり早く行かなくちゃ!」 ニコリと笑みを浮かべたサクラの拳はぎゅっと握られている。それを見たヤマトはぎょっと目を剥いた。 「おいおい、サクラ。それって…」 苦笑いを浮かべたヤマトは、ナルトの後を追ったサクラの背中を見てもう一度深い溜息をついた。
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ナルトはカレンダーに目を向ける。そして、ニシシと笑った。見つめた日付は9月22日、シカマルの誕生日だ。毎年、決まったようにやってくるその日。なのに、今年は妙に気になってしまった。そして、右手に持っていた赤マジックの蓋を閉める。カレンダーにでかでかと丸なんて書いてしまったら、きっとシカマルも気が付いてしまう。気のない素振りをして、いきなり驚かせたい。むくむくとナルトの中に悪戯心が生まれる。 自分が出来る事なんて少ないだろう。ありがちにケーキやプレゼントなどを用意して、シカマルの誕生日をお祝いできればいい。それを、彼が喜んでくれたら尚いい。にやにや笑っていたナルトの耳に、呼び鈴の音が聞こえた。不思議に思ってドアを開ける。そして、視界の中に現れた男に首を傾げる。 「シカマル?」 「なんだよ、その驚いたような顔…」 「…入ってこればいいのに、呼び鈴なんて鳴らすから」 「おい、ナルト。俺の両手がふさがってんの見えてねえのか?」 言われるとそうだ。シカマルの手には重たそうな書類やら書籍やらが積まれていた。 「どうやって、ベル鳴らしたんだってばよ?」 「口?」 ナルトはむっと口をへの字に曲げる。 「なんでオレにする前に、ベルなんかとキスしてんだってば!信じられねえしっ!」 「俺はそこに拘るお前がわかんねえよ。いい加減、中に入れてくれねえか?」 ナルトはむっとしながら、シカマルを部屋の中へ招き入れる。しょうがなく荷物を預かると、見た目より重い事に気がついた。サンダルを脱ぎ捨てたシカマルは、自分の変わりに荷物を持つナルトの顎に手を掛ける。 「シカマ…」 近づいてくる唇を確認したナルトがそっと目を閉じると、触れるだけだった口付けが深いものに変わる。 「ん……っ」 両手が自由になって自分の事を抱き寄せてくれるシカマルとは反対にナルトの両手は塞がっていた。本当はそれが邪魔で仕方ないが、だからと言って放りだす事も出来ない。 「は…あっ…」 息継ぎの合間に漏れるナルトの声にシカマルがくすりと笑った。舌が歯列を割って柔らかい歯茎を刺激する。飲み込めなくなった唾液が口の端から零れて顎に伝った。 「ばか、捨てちまえ。ンなもん…」 唇が触れ合ったまま囁かれて、ナルトの身体がびくんと反応した。シカマルは機嫌良さそうに笑いながらナルトの指に手を掛けると、先程自分が預けた荷物がバサバサと音を立てて床に落ちる。 「シカ…マ…」 ようやく自由を取り戻したナルトの腕が、シカマルの首にかかった。二人を隔てるものはなくなり、ぴったりと身体が密着する。角度を変えながら何度も口付けを交わして、微熱を孕む舌を絡め合った。唇が離れる頃にはくたりとしたナルトが額をシカマルの胸に摺り寄せる。 「変なヤキモチ妬くお前って、めちゃくちゃ可愛いのな」 「……変なヤキモチじゃねえってば」 「なんだよ、満足してねえって感じだな?」 シカマルはナルトの身体を抱きしめて、ふうっと息をついた。ナルトはシカマルの腕の中で瞬きを繰り返す。 「どうしたんだってばよ?」 「ん…?なんか、安心できんだよ。こうすっと」 任務がどうとかも関係ない。全てのしがらみから解放される瞬間が好きだ。自分の腕の中に愛しい者を抱いて、その存在を感じる事に心がほっとする。気を張り巡らせる必要もないし、ただ目の前のナルトを好きで居るだけでいいのだ。怒ったり泣いたり笑ったりと忙しいナルトの表情を見ているだけで心が満たされる。もちろん、見ているだけでは飽き足らず彼の全てを求めてしまうのがいつもの「結果」なのだけれど。 「茶…入れるから、シカマルはコレ拾ってから中に来いってば」 少しだけ照れたように頬を赤らめたナルトが、床に散らばる書類を指差す。シカマルは短く了解と告げて腰を下ろしたのだった。
湯気のあがる湯呑から新緑の薫りがする。それを啜りながら、シカマルはもう一度息をつく。それを見たナルトは少しだけ彼の事が心配になってしまった。 「なんか、忙しいんだってば?」 ナルトの視線は真っ直ぐテーブルの上に積まれた分厚い資料に向けられている。 「忙しいっつうか、ま…調べごと」 たまに難しい顔をして任務依頼書を見ている事はあるが、こんな大荷物を持って現れたのは初めてだ。 「管轄外ってか…俺にも知らねえ事が多いからな。下調べ」 「ふ〜ん…そっか」 「なんだよ。なんか気になるのか?」 否定する意味で首を横に振る。ただ単純に、仕事をするなら自宅に戻った方がいいのではないかと思っただけだ。それを素直に言葉にすると、シカマルがふっと笑う。 「こんな重てえもん持って帰るのめんどくせえだろ?」 「えっ?それってば…シカマルんちより、オレのアパートのが近いから来たってこと?」 非難する様なナルトの科白にシカマルが、ククっと笑った。 「いちいち今日は突っかかってくんな〜お前」 「そんなつもりねえけど…」 「別に理由なんかねえよ。来たいから来ただけ、そんだけ」 「…ふ〜ん」 ナルトはむくれたまま湯呑に口を付ける。その分かりやすい態度にシカマルは苦笑してしまう。たまに推測も憶測も必要ない程ナルトが甘えてくる時がある。今、まさにその瞬間だ。ナルトの顔が見たいし構いたいのだから彼の元に足が向いてしまうのだが、それを一からナルトに言う必要もない。なんとなく分かってくれればいいし、彼も同じように感じてくれていればそこそこ満足なのだ。 「ナ〜ルト」 「なんだってばよ」 「好きだぜ?」 青い瞳が見開かれる。見る見る内に顔が真っ赤になった。視線が彷徨う。そんな面白いナルトの変化を見ているシカマルは余裕の笑みを浮かべて、肘をついた手の上に顔を乗せる。 「お前の返事は?」 シカマルの声に、頬がもっと赤くなる。唇も身体も何度も重ねていると言うのに、ささやかな言葉遊びで照れて真っ赤になるナルトが可愛いと思う。 「お…オレも、好き…だけど」 しどろもどろになって応えるナルトの視線は両手で握った湯呑に向けられている。 「お前は湯呑に告白してんのか?ちゃんと、俺の顔見て言えって…」 だから、少し意地悪になってしまう。ナルトが恥ずかしくて照れているのを分かっているが、その行為を要求してしまう。ちらりとシカマルを伺う青い瞳。上目づかいのそれにシカマルの口の端が笑みの形を描く。 「シカマルが…好き、だけど」 「だけどが余分」 「う……」 「最初の勢いはどうしたんだ?」 「シカマルが好きだってばよっ!」 思わず立ち上がって大きな声を出したナルトは、よく分からない声を上げながら顔を両手で覆いながら椅子に座り直す。 「熱烈な告白、サンキュ」 見ていて飽きる事がない。どうしてこんな事で照れているのか不思議なくらいだ。だけれど、そんなナルトの事が好きで、愛しくて可愛くてしょうがない。 「からかうなってばよ〜…シカマルのバカヤロー!」 「アカデミーの成績はどんぐりの背比べだもんなぁ、オレたち。でも、お前より俺は馬鹿じゃねえぜ?」 「ンなの…言われなくても知ってるってばよ」 アカデミーの試験では鉛筆を動かすのも面倒でいつも寝ていた事くらい知っている。ただの紙面上に記された成績なんて意味がない。彼は部隊長として今は頼られる忍になっているし、それを認めている。 「それじゃ、覚えとけよ。お前に会いたくなけりゃ、わざわざ来ねえって」 「うん…」 「ちゃんと言わなきゃお前は分かんねえみたいだしな」 くすりと笑ったシカマルが手招きした。ナルトは渋々と言ったように腰を上げる。ぐいっと腕を引かれてシカマルの膝の上に座らされたナルトは、真っ直ぐにシカマルの事を見る事が出来ない。 「なぁ、ナルト」 「ん?」 そして、名前を呼ばれて初めて顔を上げるのだ。 「メシにする?俺にする?」 ぎろりとシカマルを睨みつけた。それからぎゅっと彼に抱きつく。 「シカマルに決まってるってばよ。バカ!」 「分かってても聞きてえもんだな」 再度文句を言おうとした唇を塞がれた。そのまま、息が出来ないくらい抱きしめられて意識が遠のいた頃、ナルトは首筋に温かい唇の感触を覚えたのだった。 熱に浮かされてただ求めあうだけで必死になった時間を過ごしたナルトは疲れてその瞼を閉じてしまった。十分にシカマルによって満たされた心と身体が、幸せだという感情を纏っている。 だが、カタリという音で意識が現実に引き戻される。ゆっくりと目を開けると、ベッドに横になったナルトの視界に映ったシカマルは、ダイニングテーブルの前に座ってくだんの書類に目を通していた。その真剣な横顔を見つめてしまって、息をつく。その気配を察したシカマルがゆっくりとナルトに視線を向けると、にっこりと笑みを浮かべた。 「悪りぃな…起こしちまったか?」 「違う。腹減っただけ」 夕方だった筈なのに、時間は随分と経っているみたいだ。窓から見える空は真っ暗である。ナルトは自分が思ったより眠っていた事に気が付く。 「メシにするか?」 「いいってばよ。シカマルがきりつくまで待ってるってば」 今はこの倦怠感の中でシカマルを見て居たい。仕事をするシカマルを見られる事は少ない。元々チームも違うし、同じ任務に就く事も殆どないのだ。 「なんだよ、惚れ直してんのか?」 シカマルは書類に目を向けているが、ナルトの視線も感じているようだ。 「そんなとこ」 「ンな可愛い事言ってんと、また襲うぞ」 「腹減って死ぬ」 「お前が言うと冗談に聞こえねえから不思議だな」 シカマルはぱたりと書類の入ったファイルを閉じると、テーブルの上に置いた。 「シカマル?」 「きりなんてつかねえの。メシにしようぜ。こんな時間だから居酒屋くれえしか、店やってねえな」 壁の時計に目をやったシカマルがベッドに腰掛けてナルトの身体を起こすと、頬に唇を寄せる。 「オレの秘蔵のカップラーメン食う?」 「……居酒屋でいい」 ナルトはお返しのつもりでシカマルの頬にちゅっと唇を落とす。そして、シカマルの腕をすり抜けて着替える為にベッドから降りた。
賑やかな雰囲気の中で、ナルトはテーブルの上に置かれた料理にわくわくしている。食事の名目でここへ来たのだが、二人の間には小さな酒瓶とグラスが置かれている。おすすめされた冷酒をシカマルが頼んだのだ。 「いっただきます〜」 あれこれ箸を進めるナルトの皿に、シカマルは彼がわざと取らなかった野菜を投入していく。眉間にシワを寄せながらも、ナルトもしょうがなくそれに口を付けるのだ。 「ほら…」 そして、冷えたグラスに注がれる甘めの酒。それを口にしたナルトはその口当たりの良さに感心したようにシカマルにもすすめる。 「おすすめされるだけあって、上手いってばよ?」 「ナルトに酒の良し悪しなんて分かるのか?」 「わかんねえけど…上手いって思うから、いいんじゃねえの?」 「確かに、口に合うかどうかが基準だわな」 ナルトは普通の会話が楽しい。特に意味もなく交わされるそれが楽しいのだ。それに目の前に盛られた料理の味も文句のつけようもない。フランチャイズではない個人経営のこじんまりとした店は、それなりの繁盛を見せている。酒も肴も上手ければそれなりに満足できし、やっぱりシカマルと一緒に食事をしていると言う所が大きい。 「そう言えば…シカマル。次の任務長くなんの?」 「ん?」 サンマを突いていたシカマルが顔を上げる。少しだけ考えて、酒を口にした。 「わかんねぇな」 「なんか、難しい本ばっか見てるし。そうかなぁとか思ったんだけど」 「早く片付きゃいいし、長くても…そうだなぁ、どんくらいかかるんだろうな。別に考えてなかっけど、長くなっても一週間くれえで帰ってこれんじゃねえのか」 他人事のように応えるシカマルはサンマを再び解体する作業に戻って行く。 「いつ行くんだってば?」 「明後日」 ナルトは「ん?」と考えると、箸をおいて指を折った。 「一週間…って、七日間……ってことは」 「おい。サンマ」 骨を取ったサンマをナルトの前に置いたシカマルは、どんどん難しい顔つきになって行くナルトを不思議な気持ちで見つめた。 「どうした?」 「……一週間って、めちゃギリなんだって」 「は?」 「一週間かかってたら、間に合わねえの!」 「だから、なにがだよ?」 「何って、シカマルのたんじょ…」 言いかけたナルトは、しまったと言う顔つきになって口を噤んだ。 「俺の、…なんだって?」 シカマルの視線に耐えられなくなったナルトはしゅんとしながら口を開く。 「シカマルの誕生日……」 「誕生日?」 ナルトは不貞腐れたように頷く。 「せっかく内緒にして驚かそうって思ってたのに…バレバレだってばよ」 それは自分に対する文句なのかシカマルに対する不満なのか、ナルトは渋い顔つきだ。 「いや、十分驚いてんから…」 「そうなの…?」 「考えてもなかったからなぁ」 彼らしいと言えば彼らしい。確かにいちいち自分の誕生日を気にしている様には見えない。 「たかが生まれた日だろ?」 「シカマルが生まれた日だってばよ」 「なんだよ、そりゃ」 「ちゃんと、ケーキ買ってお祝いしたかったんだって。オレが…」 「単にケーキが食いたえだけじゃねえのかよ?」 くすりと笑ったシカマルに対し、ナルトはぷうっと頬を膨らます。 「違げえしっ!」 「むきになんなって…」 「オレがシカマルの誕生日をお祝いしたいんだってばよ」 プレゼントを用意して、驚いたシカマルの顔を見たかった。そして、少しでも喜んでくれればいいと思っていたのに。 「あ〜あ…」 本当に残念そうなナルトの顔を見たシカマルは、内心驚きながら箸を置く。そして、くいっと冷酒を煽った。 「……気持ちだけで嬉しいぜ。ま、俺もそれなりに努力するってか…」 「え?」 「期待に応えられるかどうかわかんねぇけど、それなりに努力はして帰ってくるから祝ってくれよ」 シカマルが照れたように鼻の頭を指先でくすぐっている。ナルトはじいっとシカマルの顔を見つめて、にかっと笑った。 「了解だってばよ!」 ナルトは嬉しい気持ちになりながら、シカマルが小骨を取ってくれたサンマに箸を付けた。
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ナルトは薄っすらと目を開ける。薄日が差し込んで居るこの場所には覚えがある。そして、鳩尾に鈍痛。 「痛ってぇ…」 「や〜っと、お目覚め?」 ナルトの呟く様な声に、サクラの声が重なった。軋む身体を無理やりに起こして、胡坐をかいて座る。そして深い溜息をついた。 「サクラちゃん……腹がいてえんだけど」 「あんたが悪いんでしょ?人の言葉も聞かないで、どんどん先に行っちゃうんだから」 「だからって鳩尾パンチはキツイってば…」 サクラの声が後方から聞こえた事は覚えているが、気を失った事は覚えていない。 「よく言うわよ。あんたが先走るから宿場からも離れちゃって、ヤマト隊長の四柱家の術がなかったら私たち野宿だったのよ?感謝しないさい、感謝!」 「今日中には木の葉に着くから安心するといいよ、ナルト。どちらにしろ、君がどんなに急いでも今日の到着は変わらなかったんだけどねぇ」 呆れたようなヤマトは苦笑しながら肩をすくめている。 「……悪かったってばよ」 「ナルトの用意が整い次第、木の葉に帰ろうか」 ナルトはぐるりと辺りを見回す。サクラやサイはもう準備が出来ているようだ。 「悪りぃ…」 ナルトは落ち込んだ様に呟くと、いそいそと帰路の準備を始めた。
数日ぶりに目にする木の葉の風景は変わらない。ナルトは気落ちした足取りでアパートへの道を辿る。何度も何度も溜息をつきながら。 そして、アパートのドアに鍵を差し込んでまた溜息。鍵は開いていた。ドアノブを回して中に入ると、三和土にはシカマルのサンダルがある。それを見て、急に悲しい気持ちに襲われた。 「…最低だってばよ」 サンダルの留め具を外して中に入る。そして、椅子に座っているシカマルを見て肩を落とした。 「シカマル……」 「悪りぃ…ちょい待ち。あと少しで報告書、書き終わっから」 「うん」 疲れているのは身体ではない。ナルトは薬缶に水を入れると、ガスコンロにかける。そしてその前で湯の沸くのをじっと待った。 ふわりと抱きしめられる感触。ナルトは情けない気持ちになりながら、その腕に顔を寄せる。 「シカマル…いつ帰ったってばよ」 「昨夜、遅く」 「そっか…」 シカマルは約束を守ろうとしてくれたのだ。反対にそれを破ってしまったのは自分で、それを思うと気分が落ち込む。 「シカマル…ごめん」 「なにがだよ」 「誕生日、お祝いするってオレが言いだしたのに、ケーキもねえし…シカマルの誕生日終わっちまったし…」 今日は9月23日。 「そんなにケーキが食いたかったのか?」 耳元をくすぐるようなシカマルの声。ナルトは首を振る事しかできない。言葉にしたら泣いてしまいそうだった。 「任務だろ?気にする事ねえよ…」 ナルトは何も答えられない。シカマルにとっては誕生日なんて何の興味も最初からなかったのだ。ただ、ナルトが拘っているからそれに応えたいと思っただけの事。 「こら、意地張んな…」 くるりとナルトの身体を回転させると、自分の方を向いたナルトを抱き寄せる。彼はずっと下を向いたままだ。どういう意味だか考えなくても分かるシカマルは、ぎゅっとナルトを抱きしめた。すぐに鼻をすする音が聞こえる。 「俺に言いたい事、あるんじゃねえのか?」 「ごめ…」 「違うだろうが…」 ナルトの顔を上げて、涙でぬれた青い瞳を見つめる。零れた雫を舌で舐めとって、触れるだけのキスをした。 「別に、俺は今日が生まれた日でも構わねえぜ?」 「シカマル……」 「俺は、俺がお前を泣かせる方がやなんだよ」 「だって、プレゼントも用意できてねえもん」 「お前がいりゃいい。いらねえよ…」 「ケーキ…」 「食いたきゃ、買いにいけばいいだろうが」 「だって…」 「だってもクソもねえ…」 ナルトは鼻をすすりあげながら、目をごしごし擦る。 「誕生日…おめでと。シカマル…」 「サンキュ」 ナルトはぎゅうっとシカマルに抱きつく。ぽんぽんと金色の髪を撫ぜながら、シカマルはガスコンロの火を止めた。 「茶、淹れてくれよ。ナルト」 コクリと頷いたナルトがシカマルから離れようとする。だが、何故かそれはシカマルによって止められた。 「シカマル…?」 「プレゼントはナルトっちゅうベタな展開でも俺はオッケーだぜ?」 「ベタ過ぎじゃねえの?」 ナルトは思わずくすりと笑ってしまう。 「人生、ンなもんだろ?」 シニカルな笑みを見せるシカマルは、腕の力を緩めた。 「まずは、茶で乾杯だってばよ!」 久し振りにナルトの笑顔を見たシカマルは満足そうに笑うと、書きかけの報告書の元に戻って行く。
仕事を終えたシカマルはナルトの淹れてくれたお茶と、ナルトを美味しく頂いたのであった。
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シカマル、誕生日おめでとう!
ナルトと同じくRUIも寝こけていたのでした…
日付が変わってしまった時の絶望感ったらありゃしない(笑)
なんでナルトにこんなにリンクしてんだ!わたしゃ…
と言う事で、前置きないですが(笑)
始まりました!シカナル誕生祭〜(*^_^*)
なにはともあれ、シカマルの誕生日がお祝いできる事が嬉しい〜!
ナルトを美味しく頂く話は次回に…