キャッシング

 

 

 

ムシノコエ

 

 

日中はまだ日差しがきつい。だからだろうか。なぜだか体調が万全とは言い難かった。食べ物より飲み物、もしくはアイスクリームなどの冷菓。ついつい食事をする事に億劫になってしまう季節だと言える。だからだろうか?そんなナルトを見かねてシカマルが食事に連れ出してくれた。

 

ちびちびと焼き魚と格闘していると、ひょいっと皿をさらわれる。

「あっ!」

顔を上げたナルトは苦笑しながら自分を見ているシカマルを見つめた。

「すげー面倒だって顔してるぜ?」

「ンな事ねえってばよ!」

苦手な野菜も最近は克服しているのだ。ほんの少しずつだけれど。それに、肉や魚は大好きなのである。たしかに魚の骨と身を分ける作業には必至になってしまうのは本当なのだが……面倒などと思ってはいない。

「なんか、いっつもシカマルに骨取ってもらってるみてえ」

「いや、実際そうだけど?」

「別にオレ頼んでねえもん」

「まあ、俺が勝手にやってるからな」

 シカマルの手元を見ていると、無駄な動きがないのにきれいに骨と身が分かれていく。毎回感心してしまうほどに。

「でもっ!オレってば面倒とか思ってないってばよ」

 ムキになって自分を睨んでくるナルトにふっと笑ってしまう。垣間見せる子供っぽい表情だとか態度だとかが、彼を可愛く見せるのだ。

「言い方が悪かったか?俺がお前にしてやりてえんだよ」

「はっ………恥ずかしい事言うなって」

 一瞬返事をするのが遅れる。嬉しいけれど、甘やかされている事を面と向かって言われると正直照れる。自分を認めてくれている事を前提として、甘やかしてくれているのだ。そんなシカマルの事が好きだなあとか思わず考えてしまう事がまた恥ずかしい。

 食べやすいように骨のとられた魚が目の前に置かれた。

「いただきます…」

「メシも食えよ」

「ウン」

 居酒屋と飯屋を足して二で割ったようなこの店を、ナルトもシカマルも贔屓にしている。酒も飯も済ませられて、その上料理も上手く値段も手ごろだ。店内はざわついているが、それ程に気にならない。客席の間に置かれた観葉植物やら、気にならないくらいの衝立が程よくプライバシーを確保しているのだ。

「うまい」

「だろ?ちゃんと、食えよ。適当に済ませねえで」

「でもさ、一人だとなんとく味気ないって感じで、美味いのも半減すんだってばよ」

 ぽろりと零れた本音はもうしまう事ができない。思わずシカマルに視線を向けると、彼は少しだけ困ったように口元を緩める。

「お前のいう事、尤もだよな。やっぱ、誰かと食った方がメシも美味い」

 実を言うと、シカマルだってなんとなく腹を満たすつもりで食事をすることが多く、味わうだとか感謝するだとか、そういった当たり前の事が欠落する事がある。体力勝負な所があるから、体調は万全にしておきたく最低限の睡眠と栄養を保持しているのだ。

「お前と一緒だと、食いもんがすごく美味い」

「オ…オレも」

 視線を合わせないまま、二人でへへっと笑う。一通り食事を終えた所で、シカマルが珍しく酒を注文した。ナルトは思わず口元に笑みを浮かべる。外ではあまり口にしないアルコールなのだけれど、彼と一緒だと安心して口にする事ができる。泥酔してシカマルを困らせるつもりは毛頭ないが、気を張る事なく酔えるのが一番いい。

「少しだけな」

「少しだけだってばよ」

「疲れてるとこにアルコールはよくねえしな」

「そうだってばよ。ほろ酔いみたいな感じで……少しだけ?」

 誰に対しての言い訳なのか、二人して酒を注ぎ合う。ガラスの酒器をカチンと合わせた。去年も二人で飲んだ覚えのある冷酒が喉をすうっと通る。飲みやすくてナルト好みの喉越しとフルーティな後味。

 ナルトはふわりとする感覚の中で、シカマルの手をぎゅっと握る。誰からも見えないが、二人だけがこっそりと感じられる温もり。指先が絡まって名残惜しくて離せない。

 会計を終えて店の外に出ると、秋の気配を感じる。

「……風、涼しい」

 この日中と朝晩の気温差が体調を崩してしまう原因になるのだが、アルコールで火照った頬には気持ち良い風だ。

「今日も暑かったのに……」

「ちゃんと季節は変わってんだな」

「そうだってばよ」

 忙しくしていると見逃してしまいそうな季節の変化。楽しまないのは損なのだけれど、疲れて眠ってしまったり怠惰な時間ばかり過ごしていると、ついつい変化というものに鈍感になってしまうのだ。

 夜道を歩きながら隣にいるシカマルの袖をちょんと引っ張る。

「ナルト、どうした?気持ち悪りぃとかじゃねえよな……」

「その反対だってばよ。めっちゃ気分いいって!!」

 心配そうにのぞき込むシカマルの真剣な表情に思わず吹き出す。少しだけむっとしたシカマルがぎゅうっとナルトの鼻をつまんだ。

「ごめっ…!シカマル、心配してくれてありがとだってばよ〜」

「心配して損した」

「も、だから、…ごめんって―――――」

 ナルトは言葉の続きを奪われる。シカマルの舌が甘い。きっと、さっきまで飲んでいたアルコールの甘味が残っているのだ。シカマルも同じことを思ってくれるだろうか?なんだか不思議な気持ちのままシカマルに応えながら、ナルトの手がシカマルの背中に添えられる。

 離れた唇。だけれど触れ合ったままの鼻先。ぱちぱちと瞬きをしたナルトが、ちゅっとシカマルの口唇にキスをする。啄むみたいなキスをお互いに贈り合い、意味がなく同時に吹き出す。

「酔っぱらってる」

「違げーよ」

「酔ってるって」

「そりゃお前の方だろ」

 普段の彼ならば、誰もいない道端であろうともキスをする事を恥ずかしがる。誰かに見られている訳でもないが、憚らないような事は好きではない。公然と手を繋ぐのも躊躇うくせに、いつになく大胆である。

「……ん、酔っぱらってるかもな〜」

 へへっとわらったナルトがシカマルの手を取る。そのまま指を絡めてゆっくりと歩いた。

 特に言葉を交わす訳でもなく、ただただ二人で夜道を歩く。

その心地よい空間に、ひとつの音が響いた。否、一つではない。耳を澄ますと聞こえてくるのは、秋の音色。

「……シカマル、鈴虫だってばよ!」

「鈴虫だけじゃねえな」

 コオロギに、マツムシ……もしかしたら、知らない虫もいるかもしれない。

「なんか、上手く言えないんだけどさ」

「ン?」

「きれいだってばね、虫の声」

 二人の間をそよりと冷たい風が吹いて頬を撫でる。

「秋だってばよ」

「そうだな」

 繋いだ指先が深く絡まる。寄り添うようにして、秋の音色を楽しんだ。

不器用な理由はいらない。ただ肩が触れて肌で感じる温もりが心地よくて。

 

 

 

 

  

 

 

書きかけSSシリーズ、みたいな(苦)

でもこれは少し最近!!

初秋の候って感じです。

定期的に書いてる、シカナルがただのバカップルですぜ?

という話です。

シカとナルがべったべたラブラブしてるだけで満足です!