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言葉のチカラ

 

 

 ふと、天井に見える木目を数える。特に興味がある訳でなく、ただなんとなく。ベッドに寝転がって見えた景色がそれだけだったという事だ。

 声に出さずに、心の中でカウントをする。その無意味な行為の最中にも頭の中に過ぎる影。目尻を伝って、耳元にぽろりと透明な雫が流れた。

 泣きたくなんてないのに。強くなりたいと思っているのに。

 悲しい訳ではない。無気力な訳でもない。やる事が見つからない訳でもない。その涙に、なんの意味もないのだ。埃でも入って生理的に流れたそれのような存在。

「おい、ナルト」

 だから、気にしないで声のした方に顔を向けた。すると、自分の顔を見て明らかに顔を歪める姿を目にしてしまった。むすっとして、不機嫌そうだ。ナルトは思わず眉を潜めてしまう。彼の気に障る事をしてしまっただろうか。

「なんだってばよ…?シカマル」

 ずかずかとベッドまで歩いてきたシカマルは、どかりと座ると態度とは裏腹に優しい仕草でナルトの涙を拭った。

「なに、泣いてんだよ…」

「……わかんねえ」

「目ぇ…真っ赤だぞ」

 純血した瞳が潤んで、新しい雫が零れた。

「下らねえ事、考えてたんだろ」

 目尻を拭って頬を包み込むように触れてくるシカマルの手に、ナルトはそっと目を閉じた。温かくて、なんだか安心してしまって、新しい涙が溢れる。この涙には意味がある。シカマルの事を好きだと感じて、その感情が物質に変わったのだ。形のない感情が、形あるものに変化した。

「シカマル…」

「…ンだ?」

 優しい声を聞いて、ナルトはほうっと安堵の息を吐く。

「力って、なんだと思う?」

「ち、から…?」

 シカマルの問いかけにナルトはこくりと頷いた。

「修行して強くなりてえと思って、……新しい技の修行して、それでオレは力を手に入れられたのか、わかんねぇ…」

 シカマルはふうっと息を吐いた。

「サスケか……」

 ナルトの瞼がすっと上がる。

「サスケ?」

 意外な人物の名前を聞いたかのように復唱する唇。それが一瞬、シカマルには憎々しく見えるから不思議だ。無意識にナルトはシカマルを煽る。それが態とならば許せるのに、と思う。態とでないから反対に怒りを露わにできないのだけれど。

「強さとか力とか、なんか分かんなくなったんだってばよ」

 唇が薄っすらと笑みの形に変わる。

「作り笑いなんてすんなよ。お前には似合わねえよ」

「してねえ」

「してんだよ、バカナルト」

 ナルトはむうっと口を歪めた。この方が自分の知っているナルトらしい。弱々しく笑う、まるで諦めたかのような表情は彼には似合わない。シカマルは自然と唇を重ねる。

「ん…シカ…」

 開いた唇の隙間から舌を差し入れて、甘いそれを味わう。逃げる事なんて許さない。絡め取って、触れ合う場所から溶けてしまう様な熱い口付けを交わす。角度を変えて深くなる交わりに、ナルトの身体からくたりと力が抜けた。シカマルの誘う様な舌の動きに、ナルトの意志を持った舌が絡まる。

「ふ…っ、んん…」

 鼻から抜ける様な甘い声が、その行為をより一層熱いものに変えていった。歯列を割り、咥内の全てを犯す様な口付けに二人して夢中になった。それは、子供が真新しいおもちゃを与えられて、夢中になって遊んでいるかのようだ。二人にとっては初めての行為ではないが、それはいつも新鮮な感覚をお互いに与える。

 唇がそっと離れると、荒い息を吐きながら溶けた瞳で見つめられた。大好きな青い瞳が潤んでいる。

「シカ…」

「別に忍びとしての技を究めるとか、そーゆうんだけが強さじゃねえだろ?」

 ナルトはぼうっとしながら、シカマルを見つめた。頭の中をすり抜けて行くシカマルの声。甘くて脳髄に響く様なそれをうっとりとした気分で聞いてしまう。

「そんなんだけが強さじゃねえよ」

「なに…?」

「俺はここだと思う」

 シカマルの拳がナルトの胸元にコツンと当たった。

「心の強さがなけりゃ、力なんて必要ねえし…ほんとの意味で強いのかどうか俺にしちゃ謎だってことだよ。俺が求めてるのは、ソコだな」

 優しい笑みを浮かべたシカマルに、ナルトはふふっと笑った。

「そっか」

「俺の考えだぞ?」

「すげえってばよ…」

 ナルトは嬉しそうに笑いながら、シカマルの首に腕を絡めた。そのまま抱きついてぎゅっとシカマルの身体を抱き寄せる。

「なんだよ、いきなり……」

「シカマルの言葉には力があるってばよ。別に慰められた訳でも励まされた訳でもねえのに、オレ…すげえって思ったもん」

「よく分かんねえ解釈だな」

 くすりと笑った気配を耳元で感じた。空気が揺れる感触が、くすぐったくて身体を捩る。ナルトは腕の中にある温もりを引き寄せる様に、もう一度腕に力を入れた。一瞬、音も色もなくなった世界に堕ちていたのだ。そこから現実に引き上げてくれるのは、彼の腕。彼の言葉。

「シカマルの言葉は……力だってばよ。強さなんだってば」

 誰もが己の信念を持って生きている。ただ、それを見失ってしまう時がある。先が見えない闇の中に居る様な錯覚に陥ってしまうのだ。闇の中で、何も見えなくなり聞こえなくなり、何も感じなくなる。

「オレの気持ち、シカマルに届いてるってばよ」

「意味不明だっつうの!」

「上手く言えねえもん」

「別に期待してねえし、望んでもいねえし」

 時々、砕けてしまうナルトの感情を自分が一つにできればいい。彼が彼であって、自分が自分で居られればそれでいい。難解なパズルを解くように、ナルトの言葉をかみ砕いて自分なりに解釈出来ればいい。時には間違いもあるかもしれない。それでもいい。

 目には見えない確かなものが、二人の間には存在していると信じていたい。独りよがりな感情に酔って、そのままナルトを掻き抱いた。

「シカマル…」

「ん?」

「でも、オレ…強くなりてえって思うんだ。力が欲しい訳じゃねえ…シカマルが言うように、本当の強さがオレはほしいんだと思う」

「分かってんよ、お前は…火影になる男だからな」

 ベッドにナルトを横たえると、シカマルはふっと笑ってから唇に触れるだけのキスをする。

「足らねえってばよ…」

「誘ってんのか?」

 ナルトはくすりと笑った。

「かもしんねえ…」

 悪戯を見つけられた子供の様にぺろりと舌を出したナルトが愛しい。心の中にある何かの引き金を引く様なナルトの表情に魅せられる。

「なぁ…お前の隣に居てえよ。その為にゃ…俺も強くならねえとな。お前と肩並べられるくらいにさ」

「シ…シカマルはこれ以上強くならなくていいってば!オレが火影になんだからよ!」

 ナルトの言う事がツボに入って、シカマルは声を出して笑った。その指が金色の柔らかい髪をすく。指先で遊ぶようにくるりと指先に巻きつけて、そのまま引き寄せられるようにナルトの頬に自分の頬を寄せる。

「惚れた方の負けだな…こりゃ」

「意味不明〜」

「別に、意味なんて分かんなくていいんだよ、お前は」

「難しい事考えるのはシカマルの役目だもんな」

「だな…お前は、難しい事考えんじゃねえよ。めんどくせーことになるからよ」

「ん〜?」

「愚痴るのも駄々こねるのもいいけど……難しい事は考えるな。出口のねえ迷路に迷い込む事、必須だからな」

 ナルトの心が揺れる。シカマルの言葉は不思議だ。特に意味を深く理解しなくても、すうっと心の中に沁み込んでくるのだ。砂に消えて行く水の様に。

「シカマル…好きだってばよ」

 シカマルの名前を呼ぶ声が、甘ったるいような気がする。好きだと口にする度に、心の中に生まれるなにか。その感情の名前は知らないけれど、心地よい事に変わりはない。

「……あ、これが強さかもしんねえ」

 言葉にする度に、心に湧く感情は勇気だと感じた。自分を見ていてくれるシカマルを嬉しいと思う。言葉を掛けられるだけで、感情を向けられるだけで、心がざわつく。声を聞くだけで、心が和らぐ。

「ナルト?勝手に一人で納得してんじゃねえよ」

「いいんだってばよ!シカマルは、勝手にオレのこと納得してくれってば」

 首に巻きついた腕に力が込められて、ナルトから唇を重ねられる。それが合図なのか、二人の間から言葉が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、雰囲気だけで思いついた話。

意味分かりにくいですよね〜…はは。

個々に求める「強さ」や「力」は違うものだと思うんですよね〜

十分にシカとナルはラブラブしてるつもりなんですが(^^

 

日常のヒトコマ?