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KISS Me
鍵を開けようとしたら、扉は開いていた。 「へ?」 ナルトは首を傾げる。 「…鍵、閉めてったよなぁ」 泥棒に入られても捕られる物は特にない。 「ま、いいけどよ〜」 ナルトはとりわけ気にした風もなくドアを開けた。そして、いつものように部屋の中を見渡す。ベッドの上が少しこんもりして見えるのは、何故だろう。手探りで電源を探り当てた指がスイッチを押した。 「あ!」 やはり、見間違いではなかった。確かに人の居ないはずのベッドの上に、誰かが寝ている。そんな事をする者は、この木の葉の里を探しても誰も居ないはずだ。 たった一人を除いては。 「シカマル!」 ナルトは自然と笑顔になる。慌てて部屋の中に入って、転げながらベッドに近寄り、布団に潜り込んだ体を揺すり起こした。 「シカマル!起きろってばよ」 いつも、家に帰る理由は一つ。任務で疲れた身体を休めるため。この部屋に帰っても、待っている人がいないことは重々承知で、それ以外に特に理由がないからだ。それを、サミシイと思ったこともあったが、何時の間に何も感じなくなった。寂しいと感じることが馬鹿らしくなったから。 「なぁ〜なぁ〜。起きろってばよ、シカマルッ!」 「…ん、うるせぇ」 「なんで寝てんだってばよ?」 「ンなの…眠てぇからに、決まってるだろ?」 眩しそうに目を細めたシカマルは、ベッドの上に両肘をついて自分を見るナルトを見つめた。 「起きるか?」 「うっせぇのが帰ってきたからな」 「うるせえってのはムカツク〜。そんなら自分んちに帰って寝ればいいだろ〜が」 むすりと頬を膨らますナルトは、ぷいっと視線を外した。その膨らんだほっぺたを人差し指で突付くと、シカマルはくすりと笑った。 「なんだよ。めんどくせぇな…機嫌直せっつーの」 「シカマルが悪いんだろ。俺のベッド横取りしときながら、俺を邪魔者にしてさ」 「してねぇっての。そうゆう、面倒臭いのヤメにしようぜ。ナルト」 名前を呼んでもらえると嬉しい。 意識が自分に向いたことも、本当は嬉しい。 ナルトはじっとシカマルを見つめた。 「お前、目ん玉おっきいな」 シカマルの掌が、頬を滑る。 「なんだよ、今更…目の大きさなんて、いきなり変わらねぇ」 「零れそうだぜ?」 「だから…!」 シカマルの手が後頭部にまわって引き寄せられたと思ったら、急に視界が狭くなる。 「シカマ…」 そして、唇を塞がれた。 「んん…!?」 いつも寄せられる唇は熱くて、火傷しそうだと思う。何時の間にか絡められる舌も、熱くて。息苦しさから逃れようとするのに、逃れようとすればするほど、どんどんと身体は熱くなっていって。頭の中が真っ白になってしまうのだ。 ようやく唇が開放される頃には、任務を終えた後よりもぐったりと疲れる事になっている。 「ホラ、零れてんぜ?」 目尻にたまった涙を親指で掬われた。 「く…苦しいってばよ」 ギロリと批判を込めて睨み付けるが、シカマルはにやりと笑っただけだった。そんな余裕な姿も嫌いになれない。否、好きなところの一つだと言える。きっとそんな自分の気持ちはお見通しなんだろう。 「やっぱ…むかつくってば」 「なんだ、まだ機嫌直ってねぇのか?」 「…いっつも、何もかも分かりきってますって顔して」 「分かってねぇって」 「嘘だ!」 「噛みつくな?お前」 シカマルはぎゅうっとナルトの両頬を引っ張る。口をへの字に歪めて、上目遣いで自分を見上げる瞳が少し潤んでいる。キスの余韻を残した瞳の色に吸い込まれそうになった。 「機嫌、直ったか?」 優しい声色になったシカマルに、ナルトがぱちっと目を瞑った。シカマルは両手をぱっと離すと、ぽんぽんとナルトの頭を撫ぜてやる。 「へいへい。任務、ご苦労さん」 くしゃくしゃに頭を掻き回してやると、不満顔のナルトが目を開ける。 「シ〜カ〜マ〜ル〜!……分かってやってるだろ!!」 「だから、分かってないって言ってるだろうが」 「絶対、嘘!嘘嘘嘘!!」 「はぁ?」 「すっげえ腹立つ」 シカマルはベッドの上に胡座をかくと、ふうっとため息をついた。鼻息の荒いナルトは床の上に胡座をかきながら、またギロリと睨み付けてくる。 どうしたものかと考えようとして止めた。 「………バ〜カ」 ナルトの性格は熟知している。少し突っついてやれば、すぐに響くことも。 「バカとはなんだよ、バカとは!」 シカマルがわざとからかっているのに、ナルトは必死な様子で立ち上がる。ようやく視線の高さが同じになった。シカマルはしめたとばかりに口元を緩ませる。 「もっかい言ってやる。ばかナルト」 そして、面倒くさそうに両手を広げる。 「……なん、だってばよ」 「いくらバカのお前でも分かるだろ?」 「う〜〜」 「唸るな、ホラ」 「むかつく〜!ムカツク!!ムカツクってばよ〜!!!」 ナルトはしかめっ面のまま、シカマルの胸の中に抱きつくように擦り寄った。シカマルは、擦り寄ってきたナルトを抱きしめる。 「お前は両手を広げられたら、抱きついていくんだな?どっちかってぇと、イルカ相手の時なんか両手離しで抱きついていくっけか?」 ナルトとしては非難の言葉を口にしたいのだが、どうやってもシカマルに勝てる見込みがない。反対にやり込められて、悔しい思いをするのが関の山だ。それに、シカマルの言っていることは本当なので、口を噤むしかない。 「なんだってばよ」 「いや、お前のムカツク理由を探そうかと…」 「嘘くせぇ」 「じゃあ、これ以上考えるの面倒くせーから、自分で話せよ」 ナルトはぱっとシカマルから離れる。離れたナルトは、顔を真っ赤にしてシカマルから視線を外した。 「…んだ?」 「それは…えっと、なんつうか…シカマルが、悪いんだってばよ」 「俺が悪くて、嘘つき呼ばわりまでされたのか?」 責めていなくても、なんとなく言葉の内容が非難っぽい。 「普通、…普通さ。オレが目つぶったら、普通キス――――」 「キスして欲しかったのか?」 シカマルに復唱されて、赤かったナルトの頬がもっと赤くなる。恥ずかしがる内容なのかシカマルには不明なのだが、ナルトからしてみれば十分に恥ずかしい内容だったらしい。 「わかった。お前が目を瞑ったら、キス…だな?」 「そそそそれは、今の例え話で!」 「どこをどう考えたら、例えなんだよ。ん?…ま、理屈は合ってるか?目を瞑ったらキスね」 シカマルはにんまりと口元に笑みを浮かべる。 「なんだ。俺にはぐらかされたと思って拗ねてた訳だな」 「違わねぇけど、違うし!」 「めんどくせぇ奴…最初から可愛く強請ってみればいいだろ?」 そんなこと出来る訳がない。ナルトはぎろりとシカマルを睨みつけた。完全に遊ばれているのだと気が付いて、本当にむかついたのだ。 「お前はオレと違って、頭良いんだからいちいち言わなくても分かるだろ!」 「頭がいいと、人の気持ちまで読めると思ってんのか?」 「違うのかよ」 「残念ながら、俺は神様じゃねぇよ」 人の顔色ひとつで、なんとなく気持ちが分かることがあるが、それは面倒な事を避けようと言う自己保護力のひとつだ。こと、ナルトに関して言えば考えることすら必要ない。ころころ変わる表情や、感情の起伏の激しさは分かりやすいものではあったし、もともと裏表のない性格をしている。ひん曲がった自分とは相対しているので、考えていることも分かりやすい。ただ、本当の事を口にすればナルトが完全に拗ねてしまう事も分かっているので敢えて言わない。 「だから、逐一口に出してもらわねぇと、分かんねーな」 「そんな恥ずかしいことできるかよ!!シューチプレイだっつーの」 「羞恥プレイなんて、お前がよく知ってたな」 シカマルは面白い事になりそうだと、ほくそえむのを止められない。ナルトに関わっていると、本当に退屈することがない。 「いいねぇ…そうゆうのも」 「……シカマル、目がマジだってばよ」 「したいんだろ?」 ナルトは、うっっと言葉に詰まると恐々とシカマルを見上げた。シカマルの言った「したい」とは、ナニを指していっているのか、よく分からない。キスの事を言われているのか、羞恥プレイの事を言われているのか。どうしようかと視線を右往左往させてから、もう一度シカマルを見つめた。 「ナルト、ひとつ教えといてやる。目は口ほどにものを言うってな」 「な…なんだってばよ、ソレ」 「ナルトは、目で誘うからなぁ…俺のこと」 「さ、そ…う?」 シカマルに言われた事を、頭の中で反芻してみる。 目は口ほどにものを言う、しかも、自分は目で誘うと言われた。と、言うことは――――言葉にしなくても、自分は物欲しそうな顔つきでシカマルを見ていることになるのだろうか。 「だ―――――――――っ!!違うってばよっ!」 ナルトは思わず頭を抱える。 「したいなんて思ってないってば、どうしてそうゆう方向に話がいくんだよっ!」 大きな声で叫んだ所為で息が荒い。顔が熱くなるのも感じる。こんなことを言われては、まともにシカマルに視線を向けることも出来ない。ぶつぶつ独り言を続けるナルトを、苦笑しながらシカマルは抱きしめる。頭の中では、可愛い反応を見せるナルトに楽しくてたまらない。 「まずは、キスしようぜ。ナルト」 「……え?」 カチンコチンに固まった身体をぎゅっと抱き寄せ、ナルトの返事を待つ。 「嫌なら嫌ってハッキリ言えよ?」 「嫌じゃ…ないって、ばよ…」 語尾がどんどん小さくなっていって、ナルトの額がこつんとシカマルの胸にぶつかる。 「シカマルは意地悪だってばよ〜」 「嘘つきでも意地悪でも、勝手に言ってろ」 ナルトの後頭部にシカマルの大きな手が添えられて、宥めるようにぽんぽんと撫ぜられる。そんなことをされている間にナルトの中からは、先ほどまでのシカマルとのやり取りは払拭されていた。心地よいリズムを刻む手に、気持ちが素直になっていく。根が正直な分、立ち直りも早いナルトである。それをシカマルも分かっているから、余分な事は口にしない。ナルトが顔を上げるのを待っているだけでいい。 「シカマル…」 すっと上がったナルトの顔は、少しどころかかなり紅潮している。じっと自分を見上げている青い瞳が、瞼によって隠された。 「はいはい」 目を閉じたのだから、キスをして欲しいと言う事なのだろう。ナルトなりの必死な要求を叶えるために、シカマルはそっと口付けた。
「まずは、キス」の、「まずは」を完全に理解していなかったナルトは、その後散々シカマルから責められる事になるのだが。 後悔先に立たず―――、ナルトの耳に念仏。毎回シカマルの策略にはまり、結局は翌朝後悔の嵐の渦中にいるナルトだった。
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初めてのシカナルがこんなんでいいのか…と迷う所。
私はシカマルが大好きなのに、彼をどこかで勘違いしてるかもしれません(大汗)