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ワガママLOVER シカマルvr
まさか…とシカマルは自分を疑う。 今は任務明けで睡眠が足りて居ない事もあるし、確かに疲労もある……だけれど、ただ疲れているだけでは説明できない倦怠感がシカマルを襲った。しかも、嫌な頭痛がするのと悪寒がするのと。 「……こりゃ、もしかしなくても」 はあっと重たい溜息をついて、視界に入ったベンチに腰を落ちつけた。立って歩いている時は良かったが一度腰を落ち着けてしまうと、どっと倦怠感が増す。 「最悪だな、こりゃ」 パッケージから煙草を一本。口にくわえて火を点けるが、なんともまずく感じるのはどうしてだろうか。自問自答しても、導き出される答えはただ一つ。つい最近、ナルトが珍しく風邪をひき甲斐甲斐しく世話など焼いてしまった。彼からの風邪を熨斗をつけて貰ったみたいだ。 「…ん〜―― あいつが、またぶり返すとなぁ。性質悪りぃし…」 味覚まで可笑しくなっているのだから、これから益々症状は悪化するのだろう。自宅へ戻るよりもナルトのアパートの方が近い事は近いのだが。ふうっと吐きだした紫煙の行方を眺めて、もう一度溜息をついた。頭を抱えたい気分の所に、非情に運が悪い御一行が目の前にやってくる。 「おいおい、マジかよ…?」 シカマルの気分は一気に凹んだ。今、一番会いたくないと思っている相手が飛び跳ねながら手を振っているのが視界に入る。 「やっぱ、最悪だな」 同じく任務明けなのだろうか。来た方向から推測しても、火影の所へ行っていたに違いない。シカマルは座り込んだ自分に後悔する。 「シッ〜カマル〜!」 頭痛の種は満面の笑みだ。その両脇にはサクラが苦笑して、サイが取り繕ったような笑みを張りつけている。いつものカカシ班。一緒にカカシはいなかった。 「よう…」 なるべく普通を装って片手を上げた。いかにも、今は休憩中…という体裁を演出するために。 「シカマルも任務、終わったのかよ?」 目の前に来たナルトはニコニコとしている。 「まぁな…今、報告に行ったとこ」 「オレらもそうなんだって。火影のばあちゃんとこの帰り」 「へえ、そっか」 余り興味のない素振りで、まずいと感じる煙草を口にする。笑ったままのナルトはシカマルの前から動こうとはしない。シカマルはどうしたものかと考えた。 「な〜、シカマル。みんなでメシ行かねえ?」 即効ノーと言いたいのをぐっと堪える。身体は食べ物より休息を欲して居るのだ。 「俺は、……まだやる事あるから、サクラたちと行って来いよ」 「え〜…シカマルも一緒に行こうってばよ〜」 がっかりと顔に書いた様なナルトの表情に、シカマルは心の中で手を合わせる。ナルトからの風邪を貰ってしまった事は、この際しょうがない。だが、病み上がりの彼にまた自分の風邪が移ってしまうのは避けたいのだ。 「悪りぃ、悪りぃ。また今度な?」 ぶうたれたナルトはしょうがないと言う様な溜息をつく。そこにサクラがやって来て、シカマルの顔を覗き込んだ。 「シカマル…あなた、ちょっと顔色悪くない?」 シカマルは内心冷や汗がタラリである。 「ンな事ねえよ」 「この間のナルトみたいに、風邪でもひいたんじゃないの?」 あしらうつもりが反対に突っ込まれてしまった。サクラの言葉にナルトは目を大きくしてシカマルを見つめてくる。何故だかその視線が痛い。 「……ンなんじゃねえって。それより、ナルトんちに薬用意したのサクラだろ?こいつがそこまで頭回る訳ねえもんな」 「うん、そうだけど…最近、木の葉で風邪が流行ってるのよね。バカなナルトでも風邪ひくかなぁって…」 いつもならば、そこで「ひどいってばよ!」とか言いながらナルトが突っかかってくるのだが、その気配はなかった。 「シカマル……風邪、ひいた?」 「違げーよ」 「オレの風邪、移った?」 短くなった煙草を灰皿に押し付けて消す。その手にナルトの手がかかった。 「おい、ナルト?」 ぎゅっと手を握られたシカマルは驚いてナルトを見上げる。ナルトはふうっと溜息をつくとクルリと回れ右した。 「サクラちゃん。メシはまた今度にするってばよ」 「ナルト?」 首を傾げたサクラにシカマルは頭痛がひどくなる予感を察知する。 「だって、シカマル…熱あるみてーなんだもん」 ナルトの科白にシカマルは首を傾げた。確かに倦怠感はあるが、発熱しているようには感じられない。少し頭痛がひどくなっているくらいだ。 「ナルト、構うこたねえから…メシ行って来いって」 「やだってばよ。今度はオレがシカマルの看病すんだって!な、サクラちゃん。オレと一緒の風邪だったら家にある薬が効くんだよな?」 「ナルト、聞けって。俺は自宅に帰るし、大丈夫だ。お前が風邪ぶり返したら厄介だろ?」 サクラにはシカマルの気持ちもナルトの気持ちもなんとなく分かってしまった。至極簡単な事。シカマルもナルトもお互いの事を心配し合っているだけなのだ。当てられている気分になりながらサクラはシカマルの手首を取る。 「脈は…少し早いかしら?シカマル、口を開けて……腫れてるわね?」 頸動脈に人差指と中指を当てて、頷く。 「まだこれから熱があがるわよ、シカマル」 「そっか…」 「他に自覚してる症状ある?」 「倦怠感と頭痛、少し悪寒がする」 「食欲もないようなら、早めに木の葉病院に行って点滴した方がいいわ」 「わかった」 二人のやり取りを見つめていたナルトはソワソワしている。 「サクラちゃん…」 「情けない顔しないでよね。シカマルに必要なのは栄養と安静よ!」 「わかったっ!」 ナルトは力強く頷くと、強引にシカマルを背中に担ぐ。 「お…おいっ!サクラの話聞いてたのかよ!」 そして、批難するシカマルの言葉を無視して、サクラとサイの前から脱兎の如く立ち去って行ったのである。 「ねえ、サクラ。君の話では、シカマルは自宅に帰った方がいいって事なんじゃないのかな?」 「そうよ。ナルトに病人の食事の支度が出来るとも思えないし……言ったでしょ?安静が必要だって」 「ナルトと一緒に居ても、栄養も安静も確保できないと思うのはボクだけかな?」 サイの疑問に同意する意味でサクラはくすりと笑う。そして、この気持ちはシカマルも同じなのだろう。 「しょうがないじゃない、ナルトだもん」 それに、恋人に対しては、いつも以上のワガママになれてしまう生き物なのだ、人間と言うのは。
ナルトのアパートに奪略されたシカマルは、家主のベッドの上で熱い息を吐いていた。本格的に熱が上がって来たようだ。額に当てられた氷嚢が心地よい。 この安息の時間が訪れるまでは大変だった。家の中で地震が起きているのではないかと思うくらいの音の嵐だったのである。慣れない事に手惑うナルトは、パニクりながらもシカマルをベッドに寝かせて懸命に看病する為に立ち回ってくれたのだ。サクラの用意してくれた薬は余分があったので、すぐに飲んだ。悪寒が去った後は、急に頭がくらくらして起き上がっているのも困難でベッドに潜り込む事となる。こんな状況ではナルトの隙を見て自宅に帰る事も侭ならない。もちろん、そんな事をしたらナルトの傷ついた顔を見る事になるのだろうから出来ないのだけれど。 そのナルトも静かにして、ベッドに背中を向けながら静かにしている。その気配を感じてなんだか気持ちがほうっとあたたかくなる。そして、シカマルは意識を手放すように眠りの中に入って行ったのである。 呼吸が穏やかになったシカマルの顔をそっと覗きこむ。その頬が赤い。 「シカマル…ごめんな。移しちまって」 手際良く自分の看病をしてくれた彼と勝手が違い、自分は戸惑う事しかできなかった。シカマルに指示されるままに氷嚢を作り、薬を飲ませただけ。本当はナルトも分かっているのだ。彼を自分の所に連れ帰るのではなく、ヨシノの居る自宅へ帰した方がいい事くらい。でも、少しでもシカマルの傍に居たかった。ちょっと我儘な自分。出来る事は少ないと思う。だけれど、出来る事の全部でシカマルの看病をしたかった。ナルトが風邪をひいて寝こんでしまった時、看病してくれる人の手が合った事よりシカマルが傍に居てくれた方が嬉しかったのだ。気弱になる気持ちも、シカマルの存在を感じる事で落ちつけた。それをシカマルも同様に感じてくれるかは分からない。自己都合の押し付けなのも十分に承知している。 一応、サクラに言われた「安静」はクリア。次にくるのは「栄養」。苦手分野を目の前にしたナルトは腕を組んで考えて、「あ!」と声を上げた。ふふっと笑ってから、そっとシカマルの頬に手を当てる。 「早く、元気になれってばよ?」 小さな声で呟いたナルトは、身なりを整えてからアパートの扉を閉めた。
シカマルはそっと瞼を開けると、ぼうっと天井を見つめた。見慣れた天井の染み。ここはナルトのアパート。そして、風邪でダウンした自分はベッドに張り付けられている。 カサリ、と紙をめくる音が聞こえた。視線をずらすと、ベッドの脇でうつ伏せになりながら巻物を見ているナルトの姿が見える。足をぷらぷらさせながら、熱心に文字を追っているだろう青い瞳。シカマルの額から氷嚢がずれた音で、その瞳がシカマルに向けられる。 「あ、起きた?気分はどうだってばよ?」 ぴょんっと跳ね起きたナルトが心配そうに顔を覗き込んでくる。 「随分と、楽になったかな…」 「そっか。薬、効いたんだってばよ。シカマル、汗かいてると思うから着替えよっか?起きられる?」 ナルトの言うように、来ている寝間着は汗で湿っぽくなっていた。随分と汗をかいたようだ。だが、眠る前に感じていた悪寒がない。まだ倦怠感はあるが、頭痛も少しだけ軽くなっていた。身体を起こすと、まだ意識がふわりとして居る。相変わらず、熱はあるのかもしれない。ナルトに手渡された新しい寝間着に、のろのろと着替えた。 「シカマル、食べれるんだったらお粥食べねえ?」 ナルトの言葉にシカマルは返事を返せない。もしかしなくても、彼が作ったのだろうか?ナルトの料理の腕前は良く知っている。視覚でも味覚でも。 「ちょっとでも口にして、栄養つけた方がいいってばよ?一口食べたら入るかもしんねえし、用意してくるってば」 「あ、おい…」 シカマルの返事を聞かないナルトは鼻歌交じりにキッチンに向かってしまった。気持ちは嬉しい…のだが、正直な所困惑してしまう。気落ちするシカマルの前に、すぐに盆を持ったナルトが戻ってきた。その上には小さな土鍋とレンゲが用意されてある。ベッドヘッドに背中を預けながら、シカマルは目を瞑り心の中で溜息をつく。床の上に盆を置いたナルトは土鍋から小鉢にお粥を移すと、シカマルに手渡した。腹をくくったシカマルは、そっと目を開けて小鉢の中を見て驚愕する。 「……これ、お前が?」 見た目がお粥だ。誰が何と言おうと、お粥。シカマルが今まで目にしてきたこの世の食べ物のひとつ。ナルトの料理には最大の欠点があった。それは、味は良くても見た目が最悪なのだ。お目にかかった事のない物体を何度も目にしてきたシカマルは、素直に驚く。 ナルトはぺろりと舌を出した。 「オレが作りたかったけど……無理だから、おばちゃんに頼んだんだってばよ」 「…って、母ちゃんか?」 「うん。オレはなんもできなくって、ごめんな」 ナルトはシカマルの着替えを取りに行くのと同時にヨシノにお粥を用意してもらった。それは温めるだけの状態でナルトに渡されたのである。お粥を口にするシカマルを、ベッドに頬杖をしながら見つめるナルト。 「どう、食べられそうだってば?」 「…ああ、サンキュ」 ナルトは少しだけ嬉しそうな顔をしながら、咀嚼するシカマルを見上げている。 「なんだ?にやにやして…」 「にやにやなんかしてねーもん…早くシカマルが元気になればいいなって思ってたんだってばよ!」 くすっと笑ったシカマルはナルトの指に絆創膏が張られているのを見逃さない。何もできないなどと自分を卑下しているが、彼なりに自分の為に色々と頑張ってくれた事が分かる。 「母ちゃんが作るのより、塩辛いかな…」 「え!あ、無理して食べなくて良いってば!」 「すげー美味いってこと」 ナルトは自分の出来る範囲でヨシノの手伝いをしたのだろう。その気持ちが一番嬉しい。それに、どうしてだろうか。ナルトの体調を気にしている割には、彼と一緒に居られることに安心している自分が居る。 一人きりの部屋で寝こんで居るよりも、何倍もいい。 「悪りぃな、ナルト」 「全〜然、悪くなんてないって…!オレが勝手にしてんだもん、オレが勝手にシカマルの近くに居てーの。前に風邪引いた時にシカマルが一緒に居てくれて、オレすごく嬉しかったんだってば。だから、そのお返しがしたいって言うか…」 「残念。まだ清算してもらってなかったのに、お互い様ってやつだな?」 ナルトは軽口を叩くシカマルを真っ赤になって睨みつけた。 「そ、そんなエッチな事考える余裕あんなら、けっこー回復してるってばよ!」 「ば〜か…いつもソッチの想像してんのはお前だろうが」 思わず噴き出すと、ナルトは不満あり気な目で見つめてきた。 「…ばかはシカマルだってば!もう、ばかばかば〜か!」 いつもみたいに大きな声ではないが、必死になって抵抗してくるナルトが可愛い。余り食欲がわかなくて、最初によそわれた一杯を食したシカマルは再び薬を飲んで横になった。それを見て、ナルトも巻物の続きを読み始めようとする。少しでもシカマルに障りがない様にナルトなりに気を使っていることが分かって、シカマルは微笑を浮かべる。 「なぁ…ナルト」 「なに?やっぱ、しんどい?病院行く?」 「違げーよ、いっこワガママ。……手、握ってくれよ」 ナルトは寝こんで居る間、不安な自分の手を握ってくれていたシカマルの事を思い出す。 「しょうがねーなぁ…」 触れ合えるだけで嬉しい気持ちを隠しながら、ナルトはシカマルの指に自分の指を絡めた。 「シカマルが寝るまでこうしてるから、安心していいってばよ?」 ふっと笑う事で返事をしたシカマルはそっと目を閉じる。その穏やかなシカマルを見つめながら、ナルトも心に幸せを感じていた。
たまにワガママになれる感情は、厄介な恋の病。
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イベント参加した時の無料配布本です。
その時にWEB拍手のお礼SSだったナルトvrの対になってました。
こちらも、長々とお礼画面に居座っていた(笑)
まったく、バカップル…そして、ヨシノママ公認な二人に密かにニシシとなっていた話です。