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ワガママLOVER

 

 

  真っ暗だったから、鍵穴に鍵を突っ込んでシカマルは「ん?」と首を傾げる。

「……あいつ、閉め忘れか?」

 ナルトのアパートの鍵は開いていた。シカマルは呆れながらドアを開けて、ナルトのサンダルを発見する。推測するに、帰宅したが鍵もかけずに眠ってしまったと言う所だろう。彼らしいといえばそうなのだが、戸締りには気をつけろというシカマルの言葉は、今日もキレイに忘れ去られていると言う事になる。

「お〜い、ナルト!」

 熟睡してしまったナルトがこんな声くらいで目を覚まさないのは知っていた。真っ暗な部屋に人工的な灯りがともる。電気のスイッチを押したのはシカマルだ。その視界の中にベッドがこんもりとなっているのが見えた。シカマルは溜息を落としながら、ベッドの端っこに座るとぺらりと掛け布団を捲った。

 すうすうと寝息をたてて眠っているナルトを見て、なんだかほっとしてしまう。

「…ったく、バカ面しやがって」

 頭まですっぽり布団をかぶっていたからか、ナルトの頬が少し高潮して居た。シカマルはそっとナルトの頭を撫ぜる。

「起きろよ、バカナル」

 さらりとした金色の髪をすくと、汗で濡れた感覚を指先に感じる。

「おい、ナルト。風邪引くぞ?汗かいたまま寝るんじゃねえよ」

 むにっと柔らかい頬を摘まむと、ようやくナルトの瞼がゆっくりと上がる。少し純血して潤んだ青い瞳がシカマルを捕えた。

「…あ、シカ?」

「ちゃんと戸締りしろって何度言えばお前は分かんだ?」

 ナルトはにへらっと笑い、その言葉を無視して身体を起こすとぎゅうっとシカマルに抱きつく。

「おかえりだってばよ〜」

 くすくすと笑うナルトはご機嫌のようだ。

「お〜い…ナルト?」

「会いたかったってば。今日はさ、早く任務終わって…んで、帰って来て、んで…腹減ったとか思いながらベッドに入ったら、寝ちまったみてえ」

 少し呂律の回らない声。甘えたように舌っ足らずに言葉を紡ぐナルトはまるで子供ようだ。加えてその頬はやはり赤くて…

「お前、酒でも飲んだのか?」

 最近のナルトの行動からみて考えにくいが一応聞いてみる。シカマルから身体を離したナルトはきょとんとした顔をして首を傾げた。その姿が子供っぽくて可愛く見えてしまう。

「ん〜?…ンな訳ねえってばよ」

 シカマルはそっとナルトの首筋に手を当てる。そして、自分の考察は間違っていないと確信したのだ。

「ははっ…シカマルの手、冷たくて気持ちいいってば〜」

 ふうっと思い息を吐いたシカマルは、じっとりとナルトを見る。

「バ〜カ、お前が熱いんだろうが」

「へ?」

「へじゃねえよ!自分が熱あるのも分かんねえのか」

「熱?」

「ふらふらすんだろ?」

 ナルトは一瞬考えて、こくりと頷いた。

「ふらふらっつうか、ふわふわって感じで…」

「分かったから…寝ろ」

 シカマルはナルトの肩を押さえてベッドに張り付ける。

「やだってばよ!」

 なのに反抗的な眼差しで見つめてくるナルトは、不機嫌そうに唇を尖らせていた。シカマルはナルトの鼻をむにっと摘まむと、睨みを利かせる。

「寝る前に着替えだな。汗かくってのは良い事だけど、このままじゃ悪化する一方だ…」

 まるで自分に言い聞かせるように呟いたシカマルは、ぎゃあぎゃあと騒ぐナルトを置いて着替えを取りに行く。替えのパジャマを顔に投げつけられたナルトは、まだ不機嫌のままだ。

「シカマルの意地悪。シカマルは意地悪だってば〜」

「まだまだ熱あがるぞ、お前。少しは大人しくしてろって…サクラかいの連れて来てやるからよ」

 パジャマを抱きしめたままシカマルを睨みつけていたナルトの顔がくしゃりと歪んだ。驚いたのはシカマルの方だ。ナルトは元々感情の起伏が激しいと言える。

「サクラちゃんもいのもいらねえもん…」

「おいおい…」

 ナルトは手を伸ばす。その意図に気が付いたシカマルはそっとナルトに近寄った。そして、シカマルの手をぎゅっと握ったナルトは俯いて鼻をグズリとすすった。

「一人にすんなってば」

「ナルト…あんなぁ」

「一人はやだってばよ。薬なら、薬箱ん中にあるしシカマルが居てくれるだけでいいんだって」

「クスリ箱?」

 ナルトの家にそんなものが存在していただろうか。あったとしても、傷薬が入っているくらいだと予想が付く。ナルトが指差した向こうには、目新しい小さな木箱があった。あんな物があっただろうか?シカマルの記憶の中にはない。

「分かった!とりあえず、あの箱の中見るから…手、離せ」

 これで、シカマルからナルトの手を振り払いでもしたら癇癪を起しそうな勢いだ。ナルトはシカマルの科白に素直に従った。シカマルがこの部屋から出て行かない、自分を一人にしないと彼なりに感じたのだろう。シカマルは木箱の中を確認する。その中に入っているのは、総合の風邪薬に胃腸薬…と、ナルトには似合わないような薬ばかりだ。内服薬だった事に反対に感心してしまう。袋には有効期限のラベルが貼ってあり、それはどれも切れていない。それに真新しい紙袋は最近用意されたものだとすぐに分かった。

「これ、お前が用意したもんじゃねえだろ」

 顔を上げたナルトは少し驚いたように目を丸くしていた。

「それくれえ、分かるっての」

 サクラあたりの心遣いだろうか。季節の変わり目、しかも不規則な仕事をしている自分たちは確かに病気と言うものに気を使わなくてはいけない。普段から生活には気遣っているとはいえ、所詮は人間。抵抗力の弱い時には、強靭な肉体をもってしても「たかが風邪」に勝てない事もある。気合ではどうしようもない事もあるのだ。そして、たかが風邪も万病の素と言われている。大事にするのに越した事はない。

「まずは着替えろ、ナルト」

「シカマル…どこにも行かねえ?」

 上目づかいで聞いて来る恋人にこくりと頷く。甘えるような仕草に応えたい自分がいる。珍しく体調のすぐれない(怪我ではなく)ナルトは心細さを感じているのかもしれない。それに、自分を頼ってくれるナルトがやっぱり愛しくて堪らないのだ。

「行かねえよ、一人にもしねえ」

 薬を飲む為の水を汲んでくるだけだ。ナルトは分かったと言う様にごそごそと着替え始める。シカマルの言う事に従ったナルトは着替え終わって、ちょこんとベッドの上に座っている。シカマルが渡した薬を嫌そうな顔をして飲んだナルトが、うえ〜っと舌を出した。

「苦い!」

「良薬口に苦しってな」

「まず…」

「美味しいクスリなんてねえのっ!」

「シカマル〜」

 ぎゅうっと抱きついて来るナルトは、すりすりとシカマルの胸に頬を寄せる。

「ちょっと寝ろって。要りそうなモン買ってくるし…」

「やだ。シカマルが居なくなるなら、寝ねえ!」

「ナルト〜…」

 半分諦めたように呟いたシカマルは、ナルトが落ち付いて眠りに着くまで外出するという言葉を口にするのを止める事に決めた。

「分かったから、一緒にいてやるから…とりあえず横になれよ。あったかくして、いっぱい寝て早く元気になれって」

「シカマル?」

 シカマルの優しい笑みを見たナルトは嬉しそうな表情になる。

「分かったってばよ」

「元気になったら、この借りはきっちり清算してもらうからな」

 にんまりと笑ったシカマルの含み笑いにナルトが赤面する。熱が上がっているのではなく、きっと頭の中で「借りの清算」の意味を理解したからだろう。

「離せねえのは、俺の方だからよ」

「シカマルの……えっち」

「よく言うぜ。エッチな事考えて赤くなってんのはお前だろうが」

 ナルトがふくれてぷいっとそっぽを向く。それでも、しっかりとシカマルの手を握って離す事はない。そんな些細な事が可愛くて、多少の我儘も聞いてやろうと言う気になってくる。

「ったく、惚れた弱みってのは…」

 独り言を零したシカマルだが、ナルトがそっと目を閉じるのを見て少しだけ安心した。たまには一方的に甘えられるのも悪くない。

 ナルトの呼吸がゆっくりとしたものに変わり、薬の効果で眠りについた頃を見計らってシカマルはちゅっと真っ赤な頬にキスを落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

長い間、WEB拍手お礼画面に居座っていた話です(^^

バカなナルトも風邪をひくんだぜ?ってのと、シカマルがナルトにメロメロな感じ?

これを書いた時は冬だったのですよ。

そして、サイトに移動させる今は…秋?泣ける話だぜ。